#6
「みんなー、ご飯よ!」
お母さんの声に私と腹ペコペンギンは、食卓に座った。
「誰が腹ペコペンギンだ」
聞こえてたのかよ。
「今日はちょっと時間がなかったから、お惣菜で我慢してね。
でも、今日はキュータンちゃんが大好きな子持ちししゃもフライよ!」
大好物を目の前にし、腹ペコペンギンはかなり上機嫌のようだ。
「だから誰が腹ペコペンギンだ」
なんで聞こえてんのよ。
「うふふ、本当に大好きよね、私の分もあげるわね。」
お母さんは自分の分のししゃもを、キュータンのお皿に移した。
「あー!ずるーい。キュータンにだけ」
「え?ムッちゃんも欲しかった?」
別にししゃもはどうでもいいが、キュータンに特別扱いするのが、私は気にくわなかった。
「でもね、キュータンちゃん。好きなものだけじゃなくて野菜もとらないとダメよ」
そう言うと、大好物のししゃもの上に、山盛りのピーマンを盛り付けた。
普段無表情なキュータンだったが、今回ばかりは露骨に顔を歪ませていた。
私はそれを見て、だいぶ機嫌がよくなった。
食後、私達は部屋で寛いでいた。すると、
「うわーっっ!!」
キュータンが珍しく、大声を出し、わめき始めた。
「ムッ、ムツミそこに足がいっぱいある気持ち悪い虫が!!」
こいつは本当に虫が大嫌いなようで、私の足にしがみついてきた。
「落ち着きなさいよ!ただのムカデでしょ!」
こんなに震えているキュータンも珍しい、面白いからもっと見ていたい気もした。
でもムカデは私も気持ち悪い。
だからさっさと退治することにした。
台所からポットを拝借し、部屋へ戻ると、
「おい、なにしてんだ!」
ムカデのいる場所に熱湯をかけてやった。
「昔ね、お婆ちゃんに教えてもらったことがあるの、ムカデはお湯に弱いのよ」
私はキュータンに知識を見せつけた。
「いや、問題はそこじゃ……」
なんて、騒いでいるとお母さんがやってきた。
「さっきからなにやっているの……」
普段はとても優しい母が明らかに目の色を変え、ものすごい気迫を出していた。
「こっちにいらっしゃい!」
ムツミの手を引っ張ると、膝の上に乗せた。
「すぐにお仕事辞めたのは許したけど、18にもなっておねしょするなんて許さないわよ!」
そう言うと、ムツミの尻めがけて、強烈な平手を叩きつけた。
ムカデが居たのがベッドのシーツの上だったのが最悪の結末を生んだのだ。
「ひぃーーー!違うってそれは、ただのお湯だってば!」
苦しい言い訳としか思わなかったのか、しばらくお尻ペンペンは続いた。
キュータンはと言うと、一部始終を終始黙って見てた。
この薄情ペンギンめ。
「…………」
これは無視かよ。