怪物 2の続き
クライシスハイザーの鼻を誘ったのは、明らかな血の匂い、それはまさに飢餓感に呑まれた狂暴なモンスターの目の前に極上のしもふりがあるようなが、食欲を強制的に引き出す魔性の匂い。しかし、クライシスハイザーはその匂いに飛びつくこともなく、それが人間の血の匂いにほとんど似ていると判断した。
「この渦のナカから発せられてイるのかァ。しかも、この匂い濃ゆくなったり、薄くなったり、統一性の欠片もネェな。」
クライシスハイザーはその匂いが一向に近づく気配がないことが分かり、実力行使に出ることにした。クライシスハイザーは静かに、目の前の暴風を吹きまくる漆黒の渦に呟いた。
「操縦」
絶対的支配のことばを口にし、脳内妄想力が爆発する。爆発した妄想力は直接渦に干渉し、漆黒の渦の操縦権を握る。とたん、渦が吹いていた暴風は瞬時に何事もなかったかのように、あたりに露散する。
「はァ、此奴だな。匂いの元凶。」
クライシスハイザーはうずの中に何のためらいもなく、腕を入れる。渦の原因も能力も未だ判明していない危険な黒い空間に、だ。そして2秒もたたない間に、クライシスハイザーはその匂いの元凶らしき、真っ黒のローブを纏った中学生サイズの物体を片手でつまみ、渦の外に連れ出す。
その物体の纏っているローブにはところどころ泥がついていて破れている。しかも、一方的に攻撃されたのか金属やナイフらしき刃物が刺さっていて出血している。
その物体が生きているかどうかは後にして、クライシスハイザーは渦の方に立ち直る。いくら能力による絶対支配権を握っていても、さすがにこの毒のマナが漂う場所にずっといたいとは思わない。
だからこそ、クライシスハイザーは操縦中の異常現象の渦に愚痴とともに命令する。
「するべき任務は・・・・・多分終わっただろうし、次の依頼もたまっていやがる。・・・・・・・・
・・・・・・・・・・終えろよ。」
最後の言葉は禍々しく、渦とは比べようがない執念と怨念がこもった絶対必中にして絶殺の一撃と化し、渦の存在ごと抉り取る。
刹那、渦が圧縮され、何事もなかったかのように、もともとの毒のマナに汚染された木々や葉が生い茂る樹海になった。その光景をクライシスハイザーは見届けると、ずっと放置していた物体に目を落とす。
とりあえず、毒のマナの操縦によってその物体が毒に汚染されるのを防いでいるが、気を失っているのかピクリとも動かない。例え死んでいたとしても、クライシスハイザーはこれを持って帰らねばならないという任務があるのだ。
「じゃぁ、帰るかァ。・・・・・・操縦『座標』・・・・・・・・。」
クライシスハイザーは今さっきまでの禍々しいオーラを抑制し、いかにもめんどくさそうに能力を行使する。隣には操縦によって、空気の膜で包まれた物体がある。ふと、クライシスハイザーがその物体を見る。違和感ではなく、ちょっとした確信で。数秒後、座標移動によって、クライシスハイザーと黒い物体は、空気色になじみ、とけるように消えた。




