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中二病黙示録  作者: 原初
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魔術と魔法

 「オレ様の力が通じねェ・・・。カオスがか・・・」


 クライシスハイザーは自室のソファでゴロゴロしながら昨日の事件を思い返す。アヴォスの絶殺の一撃とそれを防ぐネロ。クライシスハイザーの最強を受けてもなおダメージを与えられない存在。


 「ちィッ・・・・・・『大翼』だの『円環』だの良く分かンねェモンがごちゃごちゃとォ・・・」


 そう愚痴を言いつつ残っていたコーヒーを啜る。空になった缶をポイっと投げ捨てると、また近くにあったコーヒーを開ける。


 「カオスがオレ様の過去に関係があるッてかァ?ンな訳がねェ、あンな顔は初見だぞ」


 「カオスとの関係が分からねェ限りオレ様はアヴォスの視界にも入らねェッ・・・だとォ・・・!!」


 思い起こされるアヴォスの挑発。手に持っていた缶コーヒーを強く握る。少しへこむがそれ以上はない。『操縦者』を使わなければコーヒー缶も潰せないのだ。


 「・・・ンだッてンだァ・・・・・『大翼』も『円環』も知らねェコトばかりだ!ソレを発動する条件は何だ!知ッてる奴ァ誰だ!!思い出せェ思い出すンだ・・・・・!!」


 左手で頭をかく。過去にクライシスハイザーが出会った人物に『大翼』、『円環』を知る、否、知ってそうな人物を探す。そして、それは1人の人物を導き出して・・・・・!!


 「レイゼロ・レイオン・・・・・!!」


 厨病教感情大司教『我』担当の名を口から摘まみ上げる。クライシスハイザーは持っていたコーヒーを長テーブルに置き、その『扉』を開ける。


 「アイツが言ッてたなァ。この『扉』は念じたところの『扉』に繋げるモノだってなァ」


 その『扉』の先には大聖堂のような場所に繋がっていた。ガラス細工と言えるほどにギラギラした装飾。円形に椅子が並び、ステージのようなところに1人の影。それは、


 「ほう、これはこれは珍しい客人で、・・・・良く来たな迷える子羊よ。我は厨病教感情大司教『我』担当、」


 「聞きてェ事がある。レイゼロ・レイオン」


 座標移動で直接レイゼロの目の前に顕現するクライシスハイザー。真剣な彼の顔持ちにレイゼロは「ふむ」と首を傾ける。


 「『大翼』と『円環』・・・・・汝の求めるはその発動条件と言ったところか・・・」


 「あァ」


 「そうだな、少し『大翼』と『円環』について話させてくれ。長くなるがいいか?」


 「別に構わねェよ」


 「じゃぁ城下町付近の水辺で。少し待たせるがすぐ行くよ。軽く50分はかかるかもしれない」


 「何かやるのか?」


 「ここ最近の次元災害の多さについての会議。どこからか異世界の隔たりを破ろうとする輩がいるみたいでね。調査隊を編成するんだ」


 「そうかァ」


 「・・・・やけに従順だな。我に50分も待たされるというのに、・・・・Mか?」


 「違ェよ。テメェはある意味、オレ様にとッちゃァ恩人だからよォ」


 「ふっ・・・・ありがとよ」


 レイゼロはそう言い、その場から立ち去った。どこからか開いた扉に入っていく。


 ====================================


 「ちィ、まだ真昼間じゃァねェか。日差しがキチィ」


 無意識のうちに『操縦者』を発動し、太陽から出る紫外線を30度で反射する。


 「まだ43分もあるのかァ、コーヒー持ッてくりゃ良かッた、クソッタレ」


 クライシスハイザーは愚痴りながらもその場に腰を下ろす。水辺はクライシスハイザーとは違い澄んだ透明色だった。

 

 「あれ、君は確か、・・・・『操縦者』クライシスハイザーだね?」


 「あン?」


 上から声を掛けられ、クライシスハイザーは階段の上にいる人物を見る。それはレイゼロに似た顔つきだが、白い髪に全身真っ白な服を着た存在。


 「ネロ・ディクランか・・・・」


 「自己紹介は必要ないみたいだね。うん、僕は『明星龍』ネロ・ディクランだ」


 その明るく澄んだような声の主、ネロは「これじゃぁ上から目線だなぁ」と言いながら階段を降り、クライシスハイザーの横に座る。


 「何か用かァ?」


 「いやいや、少し暇でね。話し相手が欲しかったところなんだ。嫌でなければ話相手になってくれないかい?」


 「良いがよォ。何を話すンだ?」


 「そうだねぇ・・・・魔術とか興味あるかい?」


 「何でもいい」


 「まぁ、いいか。ではまずは魔術の基本から行こうか。魔術は魔法や呪術とは違うんだ。一見異能の力を使っているから同じだと思われるが実際は違う。さてどう違うか説明できるかな?」


 「呪術は簡単に言やァ、『対象をできるだけ触れずに殺す』ことをモットーにしてンだ。魔法は自身の魔力や大気のマナを利用して『強大な力を扱う』ことだ。魔術はァ・・・・・なンだ?」


 「まぁ、そうだね。正解は呪術についてだけだったが、惜しいところまで来てるよ。本来、異能の力は『願い』を原点にしてるんだ。だから魔法は『願いを現実にする』という目的だよ。そして魔術、これは魔法と同じ『願いを現実にする』だけど、少し違う」


 「何がァ?」

 

 「意味が、だよ。魔法は、簡単に言うと『東京の黒ネズミランド行きたーい!!』で、魔術は『冬に東京の黒ネズミランドに行って期間限定の、『魔法使い黒ネズミー』を1番目に買う!絶対に!!』だよ」


 「魔法は大雑把、魔術は細かい、か・・・・」


 「そうだね。合ってるよ。そして何故こんなに細かい設定が必要なのかと言うとだね。魔術の歴史が深く関わってるんだよ。ーーーーーーーそう、それはこの世界ができる前の世界。前世界の1998年、それは魔力量の大きさで優劣を付けられる世界だった。魔力量の大きさは運命的なものが大きくあって、決して遺伝的なものではない。だからこそ、個人個人の魔力量には大きな差が存在した」


 少し、息を吐き、喉の調子を整えてからネロは再び口を開いた。


 「故に魔力量が高ければ『英雄』『貴族』『神に恵まれた人』扱い。逆に魔力量が低ければ『穀潰し』『疫病神』『社会のゴミ』扱いだ。生まれの良し悪しで社会的立ち位置が決まる。当時は宗教色が強く、なおかつ魔法学が進んでいたこともあり魔力量が小さいと老若男女問わず『奴隷』扱いだ」


 「ほォ」


 「奴隷と評される彼彼女は世界から自身の権利を勝ち取るため革命を起こすんだ。だが、それは原子爆弾100発相手に木の棒1本で立ち向かうことと同じなんだ。だからそのために少ない魔力量でどう抗うか・・・、魔力量が大きいと使えず、魔力量が小さいと使える魔法を人々は考えた」


 ネロは空中で指を動かし魔法陣を出現させる。黄色く、そして赤い文字の刻まれた魔法陣。それを空高く放り投げる。すると魔法陣からすさまじい熱量を発する炎の珠が顕現した。そしてもう一つの手でいくつもの魔法陣に文字、左手にはペンで書いたであろう刻印が刻まれており、


 「魔術を、開発した」


 頭上の赤い珠めがけて人差し指をはじくと極光を放つ光の弾丸が飛び出し、炎の珠にぶつかりそのまま貫通する。炎の珠は一瞬にして大輪の花火となる。


 「今のは僕が少し手を加えたものだけどね。本当はもっと複雑で何重にも書き込まれた刻印と聖域文字、古代文明の記号や魔法陣を利用したんだ。さて、問題だ。クライシスハイザー、この魔術は魔力量の高い人には扱えません。なぜでしょうか?」


 「レイゼロが言ッてやがッたが、確かァ、魔術は何も持てねェ奴が才能ある奴と並ぶための物でありつつ、才能のある奴が上に立てないようにするンだッたか・・・」


 「うん。満点ではないが良いところまで来た。最初の魔術は攻撃とか防御とかじゃないんだ。最初の魔法が『願い』であったように、最初の魔術は『意思』だったんだ。魔力が高い人は生活にも多少の魔力が関わっていて、何をするにも『願い』が元となっていて、無意識にも魔力を放出している。呼吸や考えること、反射神経で動くこと、心臓を動かすこと、傷ついた皮膚が細胞分裂で治ること、その細胞分裂すること、ありあらゆることに『願い』が連動し魔力を放出している。簡単に言えば魔力を含んだ汗みたいなものだね」


 「つゥことァ魔力量の高い人間は生活にも『願い』が元に魔力が関係してッから、魔力の少ねェ奴は『意思』による魔力放出、いや、魔力は『願い』だから魔法が使えないのはおかしい。つまりそもそも身体的に放出すらしてなかった・・・・。身体構造が違うが故の魔術ッてことかァ!!」


 つまり、魔力量の少ない人々はそもそも魔力(・・)すら持っていなかったのだ。前提の魔力量が少ないは『無い』という扱いであり、魔術は『魔力を含まない汗を流す人』が使う『意思の具現化』。『願い』を原点とした『魔力を含む汗を流す人』とはそもそも身体的な構造が違う。

 ネロはその反応に満足したのか笑顔である。


 「その通り、お見事!身体的構造が違えば魔力量の高い人間は魔術を使えない。魚は大空を自由に飛べないし、鳥は深海まで泳ぐことはできない。同じ生命体だとしても体の構造が違う。つまり、魔術師と魔法使いは同じ人間でも種類的には違う者なんだよ。故に、魔術は反逆の矛となり、意思は革命の礎になったのだ」


 「・・・・」


 「そして革命は成功を遂げ、魔力を持たない人間は生きる権利を取得し、彼らを奴隷扱いする者はいなくなったんだ」


 「すげェなオイ」


 「だろう?どうだい?少しは魔術に興味を持ってくれたかい?」


 「あァ、そォだな。オレ様もなンかやッてみてェな」


 「そうだね。じゃぁ少し面白いものにしよう」


 ネロはそう言い、水辺の近くまで行き、クライシスハイザーを手招く。


 「これは今からの自分にとって大切な事について教えてくれる魔術だ。魔力があっても使えるように僕が手を加えておいた。では、まずは想像から。目を瞑り、今、自身の困っていること、現状を細かく思い描く」


 「次は?」


 「復唱して。『我は道から外れた者也。我、救いを求む』」

 

 「我は道から外れた者也。我、救いを求む」


 「利き手の掌を水面にかざす」


 クライシスハイザーがネロの言われたとおりに掌をかざす。目では見れないが噴水の音が聞こえなくなったのをクライシスハイザーは感じた。それだけじゃない。城下町の雑踏と騒ぐ声が一瞬にして静まり、まるで虚空にいるかのような何もない世界だけが広がっていた。


 そして、


 『声を、聞け』

 

 男とも女とも似つかない声が響き、世界そのものが動き出す。

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