vs光の勇者Ⅱ
vs光の勇者Ⅱ
時計台にて。
時計に突っ込んだ二人の勇者、大須と栗島は時計台内の奥に居座る大ボスと対峙していた。大須と栗島は、黄金を纏い片手剣を持っていた。対する相手は鎧で身を固めた黒騎士の姿をしていた。
「ふ、あの黒騎士隙だらけだ。料理してくださいと言ってるようなものだぞ。」
大須が慎重な顔で剣を構えると、
「料理し放題!!はっっ!!相手もザマぁねえもんだな!!」
今にもとびかからんと栗島は一気に大技で詰めようと、詠唱を始める。
「落ち着け、栗島。この町でこいつが一番強い。あの鎧、怪しいぞ。攻撃反射、吸収能力があるかもしれない。ここは、攻撃力が低くても貫通効果のある技に変更した方がいい。」
大須が注意を促し、深呼吸をする。そして、
「行くぞ!栗島。」
広い部屋の中をいっきに駆け抜け、二人の刺突が鎧を穿つ。鉄板を切るような音とともに鎧がはじける。
「距離を開けろ栗島。中身が出るぞ。」
立っていた鎧騎士の鎧が積み上げた積み木のように崩れ落ちる。大須と栗島は素早く、距離を置き本体を見る。本体は黒い瘴気に当てられて良く見えない。人型をしているのは分かる。
「やっぱユーレイ的な!!ここは、大技で仕留めちゃうか!!」
栗島は片手剣を空気中に消し、左手を掲げる。瞬間だった。
地面をめくる音が響き、栗島の体が浮く。
「へ?」
栗島の体を衝撃が蹂躙し、大須に向けて吹っ飛ばされる。大須は自分に飛ばされる栗島をがっちり捕らえたが、
「ぐっ!」
栗島をキャッチしたときの衝撃とは比べ物にならないくらいの衝撃が全身を貫く。油断したのが運の尽き。今度は二人の居たところから数センチ離れた空気から、強大な衝撃波が大きな大砲となって二人を吹っ飛ばす。
「なっ!!この黄金のオーラはどんな攻撃も跳ね返すこの世界最強の防御だぞ!!ありえねーだろ!!」
そんな愚痴の返答に黒い瘴気に囲まれた人型が見当たらない口を開く。
「簡単だ。それは『この』世界の最強防御だろ。じゃあ、オレの力は、
「じゃァ、オレ様の力はァこの世界『以外』の力だよなァオイ。」
時計台の壁から、消し飛ばすような一撃を叩き込み、大穴を開けて入り込んだのはカオスをお姫様抱っこしたクライシスハイザーだった。さらに瞬間移動でもしたのか、突如として見えなくなり、また元の立ち位置に戻っている。
「おい、オレのセリフを横どっておいて、・・・え・・・それってお前オレと同じ異世k
崩れた騎士の仮面が人型をした個体の顔らしきところにめり込む。そのまま吹っ飛ばされ、壁にめり込む。それが華奢な足から出た蹴りとは想像できないが。赤面するカオスを下ろした後、殺人鬼のような目つきのクライシスハイザーは堂々宣言した。
「カオスの記憶を探しに来たが、お前ナンか知ってそうだなァ。つゥワケだ。今から惨殺劇が始まるぜェオイ。」
「操縦
言いかけた時だ。
「反電圧縮電磁雷光線」
真上から、それも黒い瘴気に向かって一直線に。正確に。音と色を置いていき、威力と言う単純な衝撃。それを撃ったのが、
「ネロからの通告だ。記憶はそのバケモンが取り込んだらしい。取り出すにはそいつを破壊しなければならないとのことだ。」
ギィ・ネクロン。電気をつかさどる雷撃の死神。故に「雷槍者」。黒いモコモコした服を着た黒サンタっぽい中二病である。
「オイギィどォいうことだ。オレ様がギリギリと追い詰めようとしてたのによォ。」
クライシスハイザーが忌々しげに舌打ちすると、ギィは悪びれる様子もなく言い返した。
「ククク、・・・生体電気の巡りを感じ取って、行動を予測する。それでお前が能力を発動する前にデコピンでいける技を高速射出する。どうよ、クライザー!今のがオレの新型、プラズマを圧縮し音速の5000倍で撃ちだす、『反電圧縮電磁雷光線』だ。ついでに言えば、エイ語とカン字があってるかは知らん!!」
「最後に物凄いコトを暴露したなァオイ。まあいい。あの煙野郎、生き物じゃァねえ。見ろよ。テメェの『プラナントカガン・ミニサイズ150円税込みで、今日は十割引きです。』くらってもピンピンしてるぞ。付け加えるなら、もっといたぶって欲しいと言っているぞ。」
「言ってねーよ!!」
電撃が直撃したにもかかわらず、黒い瘴気に覆われたバケモンはやけに元気そうに突っ込んできた。クライザーとネロ、カオスは後ろでボロクソにやられた勇者をことごとく無視し、バケモンに向き変える。
「な?」
「そうだな。次は両手で放ってみるか。」
「これがレイズが言ってたドMっていうの?気持ち悪い・・・・。」
「あの魔女ォ、カオスにナニ教えてンだ。アイツなに考えて生きてんだァ。」
「おーい、お前ら仲良く話あってんじゃあねえ!!」
「でよ。この前、クライザーの飲むコーヒーにレイゼロがミルクと砂糖入れてよ。それを飲んだクライザーがぶち切れて、レイゼロが隠れた300階高層ビル丸ごと塵にしたんだよ。確か、・・・・・『ブラックこそ至高のコーヒーだぞテメェ!しかも入れすぎなンだよ!道理でコーヒーにしては白すぎると思ッたくそったれがッ!!』って言ってたな。あの時のクライザーの顔はやばかった。魔王もショック死できるくらい怖かった。マジで。」
「オイテメェ。ナニ暴露してンだオイ。」
「えぇっ!・・・ちょっと見てみたいな・・・・。」
「乗るなカオス。忘れろ。記憶も一緒にマントルの地下深くに埋めろ。」
「だからちょっとまてお前ら。オレの存在を無視しt
「雷切ぃ!!」
ギィが手刀の構えで斜めに一閃する。すると、一秒遅れて刃の形をした白い雷が宙を駆ける。そのまま黒い瘴気に直撃する。だが、
「くくく、その程度の威力。オレの力の前では無意味。正しくはここで拾った力だがな。」
黒い瘴気は無傷でその場に立っていた。
奇襲攻撃が通じなかった今、2人の中二病がとる行動は1つ。
「じゃァ、本来の力でごり押しといこうかァ。」
「今宵はお前の命日だ。オレの雷刃の錆にしてくれる。」
クライシスハイザーは脚力のベクトル強化、風圧や摩擦を一切無視し、一撃必殺の構えをとる。
ギィは手から長さ2mに及ぶ高電圧の大鎌を出した。
沈黙などこの2人には似合わない。一瞬にして刹那、2人は消えた。否、消える程速く移動したに過ぎない。後にビル一つが爆発したような音が響く。こんな一撃を叩き込まれたら黒い瘴気でも完全防御には至らない。風圧だけで時計台の屋根が木っ端微塵になったのだから。2人の勇者は唖然とその光景を目にしていた。開いた口がふさがらないとはまさにこのこと。自分らが最強だと思っていたのに、余裕で自分を上回る存在が出てきたのだ。
「やっぱこいつただモンじゃないな。」
攻撃して、一端退いたギィが言った。それに続いて、
「感覚でじゃァいつもの50%くらいしか手ごたえがなかッたなァ。」
クライシスハイザーが舌打ちをして、トコトコと歩いて戻ってきた。
クライシスハイザーの後ろには「あれで50%かよ」と思いたいほど、黒い瘴気はくたばっていた。
「そうだなァ、能力でいう『反射』に近いモンだな。好きな場所に衝撃波を発生させる。あの煙野郎を蹴った時、脳の構造とか身体の構成とかどうなッてンのかなァと思って透視してみたンだよなァ。それで分かったことなンだけどよォ。」
クライシスハイザーはギィとカオスに「聞きたいか?」と聞くと、二人とも頷いた。
「これは推測だがな、あいつに蹴りいれた瞬間、あいつの脳の電気信号に普通の人間には見られない特殊な信号があッた。その信号をまんまコピッて脳内で演算して翻訳したらなァ、『同時攻撃を観測、左脇腹に最大面積123.19㎠、頭に最大面積180㎠の打撃、どちらも音速の900倍、一方は9000億ボルトの電流、衝撃例マグニチュード599近く。瘴気の効果で1兆ボルトまでの対応可能、実行。衝撃予測、片方の衝撃は相殺完了。もう一方は観測不可。最大衝撃例巨大彗星着弾時の衝撃、衝撃例超えにより最大衝撃例と同じ衝撃を予測される患部に集中します。成功。直撃時の衝撃観測は失敗。残りの衝撃は瘴気の効果で全身に分散します。成功。約20分の回復時間が必要となりました。スリープモードを起動。』ッてところだ。多分、あの黒瘴気に原因があるとオレ様は思う。」
「なるほど。オレの攻撃がなくなったのもその力のせいってわけか。ならそれがカオスの記憶の一部になるな。・・・でも記憶ってそんなに攻撃性や対応能力が高いもんなのか?」
「分かんねェ。人の記憶ッてのは信号だッていう説がある。中二病黙示録の究明論文によれば、能力を持つ生き物の記憶は能力そのもの。だから、脳の中にある経験や体つき、想像力を取り込んで無能力はその宿主にあった能力になる。でだ。身体から出た能力は無能力に戻る。」
「ふむ。なら、納得がいく。じゃあ頭に強い衝撃を与えると出ていくのか?」
「そうだろうよ。」
長々と話しているうちに、簡単に時間は過ぎていく。
「く、いったいな~。これじゃあ計画がまるつぶれだよ。」
振り返ればそこには、黒い瘴気が立っていた。
「このまま記憶を引っ張り出されるわけにはいかないんだよなあ。しかし、悪いことばかりじゃなさそうだ。わざわざ自分から出てきてくれるとは。」
笑っているのかいないのか分からない表情で、瘴気は笑う。人型だからこそ気持ち悪いものがある。瘴気は怪訝な顔をする3人を置いて、指らしき指を指す。
「そこの副産物だ!!」
指のさされたのは、カオスだった。
「その副産物、いや『万物崩壊解錠兵器』の材料!いやぁもう待ちくたびれた!何兆年ずっと見つからず、記憶(材料)の半分をバラバラにばらまいていなくなったからね!これで我が星は安定だぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!お前と残りの半分の材料を合わせれば全て完成だ!全異世界を支配することだって夢じゃない!!!見たことのない種族に見たことのない兵器!さらには天然の能力者!ああ~~~~~~、半分諦めかけてつくった異世界移動装置『ノティングス』が材料集めの役に立った!でも材料が『ノティングス』をくぐって逃げたのは分からなかったな。さて、材料。そんな女の子の姿をしてどうしたの。元の無能力に戻ってよ。さぁ!早く!材ry
「カオスを材料扱いしてンじゃねェこのクズ野郎ォ!!!」
瘴気男が壁をぶち抜いて大空に飛ばされた。衝撃は衝撃でいなしたが何故自分が大空を舞っているのかわかっていない。後々にクライシスハイザーに殴られた威力だと気づいた。
「これで塵灰にならねェことはアイツにはもう一つの能力があると言ってもいいかもなァ。」
実際に、クライシスハイザーは拳に風圧、摩擦、重力、斥力、衝撃のベクトルを一切無視した上に瘴気の間合いへの超光速移動。それで一撃必殺をした。にもかかわらず、瘴気は人間の形を保ってるし、無傷でもある。やはり瘴気はもう1つの能力を持っていると考えるべきだ。
「多分だが、・・・・致死性のある攻撃の無効果とか?」
ギィがそう言った。分からんことはない。が、それが瘴気男の能力とするのはおかしい。なぜなら、
「いや、最初ッからオレ様もお前も致死性どころで終わる攻撃はしてねェだろォ。蹴りで失神してンだ。だとしたら。」
「自分が死ぬ瞬間、死ぬ前の状態に戻す。とか。」
ギィが思いついたように言う。
「そうだなァ。」
クライシスハイザーは宙を舞う瘴気男を見て呟く。
「だがよォ。これで終わらねェだろ。こういう生きのいい新鮮かつ清々しいほどの『悪党』はこういう時に限って狂って逝って最終兵器を導入してくるンだ。・・・・・・・ハァ、最初ッから本気で潰しにこねェのはコイツが下っ端であることを指す。なんとなく『最終兵器を出さずに勝ったら上司に褒められる~~~フォオオオオ!!オレ有能!オレTUEEEEEEEEE!!』ッて考えてるのが目に見えるンだよなァ。」
クライシスハイザーの言う通り、宙を飛んでいる瘴気はなんか言っていた。
「どうやら最終兵器導入と行こうか!!材料を手に入れたら、昇格間違いなし!!オレ有能オレTUEEEEEじゃん!!材料はオレの想像でより強い能力となる!!さぁコイツがオレの真骨頂!!」
瘴気男は瘴気を拡大させ、世界そのものを包み込んでいく。
「チっ、離れろ。奴は危険だ!」
ギィは勇者二人を両脇に抱え、クライシスハイザーはカオスをお姫様抱っこする。
「なァギィ。」
「何だ。名前呼びとはどうした。血迷ったか?」
「うるせェ。そんなことよりも、オレ様ならあの程度の雑魚簡単に瞬殺できるが、やってもいいか今。」
「駄目だ。」
「なぜだ?」
「お約束だからだ。」
「はァ?」
「流石に瞬殺は慈悲がなさすぎる。せめてもの救いで、最終兵器とこの勇者とオレらで、お茶してからにしよう。ちょっと見てみたいしな。最終兵器。」
「・・・・分かッたァ。」
瘴気はこの世界を飲みこむかのように一体化した。
黒光りする世界。電撃の死神と白い怪物まさに二人の光の勇者が誕生しようとしていた。敵対者は意思のある世界。能力不明。残酷にして荘厳なる世界を目の前に、想像力の化物の『お茶会(戦い)』が始まる。




