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3 勇者リリアは報告を受ける

「勇者さま。ラミは、またクエストに出るそうです」


 マクシミリアンからそう報告を受けたのは、昼過ぎだった。


「おーう、了解。ラミも頑張ってんね」

「一生懸命に強くなろうとしているようです。……この前の龍族(ドラゴン)の件があってから、なおさらですね」

「……そっか」


 マクシミリアンが言うのは、先日、『ファウ村』にて屍龍族(ドラゴンゾンビ)と戦った一件。

 実際に戦ったのは屍龍族(ドラゴンゾンビ)に付き添っていた龍族(ドラゴン)らしいが、マクシミリアンもラミも、多少関わっている。


 リリアは、結末以外は何も聞いていない。あの時の自分は、疲れて帰ってきた二人を迎えてやることしかできなかった。

 もっとも、低レベルのリリアが一緒に行ったとしても、何の役にも立たなかっただろうことは予想できる。


 屍龍族(ドラゴンゾンビ)が相手では、むしろ足手まといにしかならなかっただろう。

 確かに、事の詳細は気になる。だが、それは聞きだすものではなく、二人が語りだした時に、静かに聞いてやるものだ。

 リリアが少しばかりの葛藤を胸に抱えていると、マクシミリアンは気づいたようで、


「そのうちお話します。そうですね、もう何十年かしたら、昔話として」

「その時、わたしはおばあちゃんじゃないか?」

「そういう頃合いになってからの方が、聞きやすいでしょう?」


 気遣いが上手いのか、ただのいじわるなのか。どちらにしても、リリアの気を晴らそうとしてくれたようだ。

 なので、リリアもマクシミリアンの言葉に乗ってやる。今は、これだけで十分だ。


「おっと、そう言えば、今度のラミのクエストですが、同行者がいるようです」

「ん? 誰かとパーティ組んだのか?」

「えぇ、そのようで。いつもはソロなんですけどね。人手が足りないようならば、私と勇者さまにも相談するように言ってあったのですが」


 特別な事情でもあったのだろうか。ラミは、冒険者としての腕も上げてきている。大概のクエストならば、ソロでも簡単にこなしてくる。


「誰とだ?」

「そこまでは聞きませんでした。ラミが認めた相手なら、特に問題もないでしょうから」

「大雑把だなあ」

「あまり、言いたくなさそうだったので。深く聞くほどのものでもなかったですし」

「ふうん。ま、あいつなら大丈夫か」

「ええ。心配はいらないでしょう」


 ラミのパーティメンバーは気になるが、もう既に『都市エステカ』を出たらしい。帰ってきた時にでも、聞いてみよう。


 ――あいつなら、変な奴に捕まったりもしないだろうしな。


 リリアも、ラミを信頼している。腕前もだが、人となりも。

 言いたくなさそう、というのは少し引っかかるものの、今回も無事に帰ってくるだろう。


「万が一の時は、私が行ってきますよ。場所も聞いてありますし」

「近いのか?」

「近い、という程でもありませんが、遠くもありません。私なら、飛翔の吐息ブレスですぐに行けます」

「んじゃ、任せる」


 マクシミリアンは、うなずくと手近な椅子に腰かけた。また大きいだけでつまらなさそうな本を読み始める。

 出ていかないのは、ここがマクシミリアンの部屋だから。リリアは、特に用事がなければいつもマクシミリアンの部屋でゴロゴロしているのだった。


 ――クエストかあ。


 リリアも、冒険者たちの仕事を聞いたことがある。受注したことはないが、ピンからキリまで幅広く募集があるのだという。


「なんのクエストなんだ?」

大鬼族オーガの駆除らしいですよ。この前、小鬼族(ゴブリン)掃除はしましたけど、また魔物がいるようですね」


 人族が治めているとはいえ、『都市エステカ』も魔族の領土に近い。小競り合いのような魔物討伐クエストもかなりあるそうだ。


「普通の大鬼族オーガなら、余裕そうだな」


 独り言のように呟いてから、リリアはまたマクシミリアンのベッドで横になる。

 干した果物をかじりつつ、面白味のない天井を見上げた。


 ――休んでるだけってのも、ヒマだなあ。


 と、仕事に励む冒険者とは真逆のことを考えながら、リリアは昼寝を決め込んだ。

ストックが無くなってきました。

更新に支障のないよう努力します。

評価、ご感想お待ちしております。

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