中央研究所のやり方
中央研究所がしけかけてきました!!
※次話は19:00に更新予定です!
「設備としては川村部長、照明事業部にございます設備には劣りますが、
こちらでも試作機で有機ELが作れる環境下にはございます。」
クリーンルーム内のある製造設備を説明して、前室へと戻ってきた。
「そうですね・・・。
ですが、これだけの数の設備があれば
様々な研究が有意義に進めることができるでしょう。」
そう言いながらクリーンウェアの帽子を外し、
マスクを外して一息つく川村部長。
「いえいえ、それでもやはり事業部にはかないません。
我々の力だけでは商品化まではできませんからね。」
「そうですね。そこはやはり畑が違いますから。
中央研究所は物事の基礎になる研究を行っていところ。
我々事業部はその成果の一部の力を借りて、製品化をし、商売をしているところです。
やはり最終目標が違いますからね。」
「ええ、おっしゃる通りです。
ですから、今回のプロジェクトでもお互い力を合わせていければ
必ず世界一を取ることができると思っております。
「ええ、その通りです。」
服を着替え終えた川村部長、そして柊君を案内しながら
中央研究所の会議室へと案内する。
「「「「「お疲れさまです。」」」」」
そこには中央研究所の今回のプロジェクトに参加する15名ほどの人員が
待機していたのである。
「・・・こんなにも人員を割かれるのですか?」
「ええ、当然です。
今回のプロジェクトは社長の肝いりプロジェクトですから。
同程度の人数をディスプレイ事業部にも送る予定です。」
「いやはや、大盤振る舞いですね。」
「ははは、無駄に人だけが多いのが中央研究所ですからね。」
「それも優秀な人材がでしょう?」
「はははは、まあまだ未熟な人間もおりますがね。」
その後も私と川村部長の会話が続いたのだが、
「そろそろ時間も押しておりますので・・・・。」
本田の言葉でこの会話が終了して、本題へと入っていく。
「これは失礼しました川村部長。じゃあ、本田。説明を。」
「かしこまりました。それでは私の方からご説明をさせていただきます。」
本田が手慣れた様子で資料を写し出し、説明していく。
それは中央研究所が誇る独自開発した材料の説明であった。
「・・・なるほど、これほどの種類の材料開発をなされているということですか?」
ここで説明を受けた柊君が我々に質問をしてきた。
「ええ、その通りです。いくつかはまだ検討段階ではありますが。」
「検討段階というのはどういった意味ですか?」
「それは母体になる部分は新しく作っておりますが、
その一歩進んだ先のモノへは進めておらいないということです。」
「・・・じゃあ、挙げてはいるけど、
そもそもそんな材料は存在しないと言う意味ですか?」
「母体となる部分はありますが・・・。」
やはり・・・この男は煩わしい男だな・・・・
「まあ、母体があるということは、
ここに載せてある材料はどれでも作れますよって事なんだし、
気にする必要はないだろう柊君。」
「・・・わかりました。」
ここで川村部長が我々に助け船を差し出すが、
どうせこの流れもそちらが考えてのことだろうに・・・
ここに居る15名の研究者たちが先ほどのやり取りだけで、憤慨してしまっている。
自分達のプライドを傷つけられたからだろうな・・・。
「それじゃあ、皆さんが提供を考えている材料について教えて貰っていいですか?」
そんな空気を気にすることもなく質問してくる柊君。
その質問には本田の下についていて、材料開発リーダーの野口が応える。
「ええっとですね・・・。こちらの材料を検討しております。」
パワーポイントで画面を差しながらどの材料かを説明してくれる。
「これらの材料はいつぐらいに、どのくらい出してもらえるんですか?
それとそれぞれの材料についての物性データも含めて。」
「物性データもですか!?」
「ええ、もちろん。材料検討をする上で物性データは必要ですから。」
「そうなると・・・日数をいただきたいのですが。」
「それはかまいませんが・・・
新しく開発した材料の物性データは取られていないんですか?」
「・・・。」
押し黙ってしまう野口に代わって、本田が、
「必要な材料については物性データは採っておりますが、
今回提供しようと思っている材料のデータはないです。
そのため類似の材料のデータを提供したのではどうですか?」
「いやいや、類似と指定した材料とでは違う材料ではないですか。
それだとこちらの検討には参考程度にしかなりません。
ですので、提供してもらう材料の物性データが必要です。」
「それはそちらの考えでしょう?
こちらの考えでは類似材料の物性データで十分だと考えております。
なので・・・
我々は類似材料の物性データを提供させていただきます。」
「ですから!!」
「それ以上のデータ必要と言われるのであれば、
そちらで採ってください、柊君。」
しばらく本田と柊君の間に喧騒な空気が流れるが、
時間が経つと冷静になったのであろう柊君が、
「材料の提供と量はいつになりますか?」
「ざ、材料の提供は1カ月後に0.5gを提供できるように手配します。」
「え?ちょっと待ってください!
僕は事前にうちの設備では試作をする前の前段階処理のために
最低でも1gが必要と伝えていたはずですが?」
先ほどは野口が応えていたが、すぐに本田が回答をする。
「それはそちらが我々に伝えてくる時期が遅かったために
準備が間に合わなかったんです。
ですので、どうしても1g必要というのであれば・・・
2カ月は必要です。」
「・・・こちらはご質問があったその日のうちに回答しているはずですが?」
「こちらが質問をするまで必要量をそちらが伝えてこなかったのでしょう?
ですから、こちらが親切心で尋ねたんです。
柊君、その言い方ではこちらが悪いと言っているように聞こえますが?
そちらのミスをわざわざカバーした我々がね。
それと材料手配が伸びてしまったことは・・・
そちらのミスとして次回のミーティングでご報告してください。」
「はぁ!?」
思わず柊君が声を上げてしまうのだが、
「まあまあ、お互い初めの試みなんだから不明な点、至らない点はあるでしょう。
常識と思っていたという思い込みもあって、今回のようなことになりましたけど、
これからも発生するということが分かったんだから、いい教訓になりましたね。」
ここで川村部長が間に入ってくれた。
存外役に立つなこいつ・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。