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仮体験その2

しばらく待ってもマネキンさんからのアクションがないため、こちらから声をかけてみる


 「マネキンさん、どんな感じでしょう」

 

すこしオドオドするような口調になってしまった。


 『視覚同調、思考および記憶共有完了、問題ありませんマスター』


 「うお、コレが頭の中で聞こえる声か。こりゃSAN値チェックしてもおかしくない、説明しにくい感覚だな」


 『耳で聞く声とは違う、声が頭で認識できる感覚はいかがでしょうかマスター』


 「正直舐めてた、これ頭で認識するんじゃあなくて耳で聞いてるような修正って可能?」


 『修正します、設定反映のため10秒ほどお待ちください』




 「修正完了しました。音が聞こえる構造を解析、神経を介することで擬似的に耳から聞こえているようになっているはずですが問題ありませんか」


 「ああ、普通に聞こえてるけど神経を使ってるだけで音そのものは外に漏れてないんだよね」


 「はい、ですがこの方法ではマスターの神経などに物理的な障害が発生すると意思疎通ができなくなる恐れもあります」


 「まぁいきなり両方の耳が使えなくなる状況はそうそうないし、頭に響くあの感覚はただの人間には正直厳しい」


 「では次はどのようにいたしましょうかマスター」


 「いやそっちからの思考が擬似的な声で対応できるのはわかったけど、俺一人が声を上げてたら痛い人にならんか」


 「なるほど、痛い人に見えないように出来ればいいのですか」


地味に刺さるぞ、多少自爆気味ではあったが。


 「説明不足でしたね、こちらからは耳を使う方法ですがマスターからは音声と思考の両方から対話が可能です。マスターが迂闊に思考したものも読み取ることが出来ますのでご注意を」


覚えておこう。


 「さあて本番といこうか、魔法云々試していいんだよね」


 「創造主からのOKは出ていますので問題はありませんが、マスターの現在扱えるマナ量からなにが出来るのでしょうね」


 「そんなにダメなのか」


 「ダメですね、マスターのリソースと一体化している状態ですからおおよそを把握していますが、なにかを成せるだけのマナ総量が足りません」


 「ぐぬぬ」


 「私が現状できることはマスターのイメージを読み取りマナをそちらに流すことだけです、またマナの総量はマスター自身が鍛えるなりしなければ増えません」

 

 「マナの流れかぁ、集めたマナを俺の周囲で回せたりする?」


 「気流を作る、でよろしいでしょうか」


 「自分の周りを半径1メートルくらいでくるくる回る感じとかどうかな」


 「ではマスターはどのような形でも良いのでマナを集めてください、集まったマナで出来るか試してみます」


強く意識してマナが集まってくるのをイメージするが集まってるのかわからん。


 「扱える量のマナはちゃんと来ていますのでご安心を、では次にマナを集めることと周囲を回る風の両方をイメージをしてください」


 「ヲタクの妄想力を全開にしてイメージ!」


 「そんなこと口に出さなくても大丈夫ですので真面目に妄想してください」


 「いや真面目に妄想って」


 「ですが妄想はマナを操るのに好都合ですよ、強い意思とイメージがマナを魔法にまで押し上げるのは事実ですし」


 「思い込んだほうがいいとか言い出さないよね?」


 「いえむしろソレがいいかもしれません、迷いなく思い込んでしまえば雑念もなくマナも動きやすくなると思われます」


 「まじですか・・・」


やけにはならんがもう悩むのはバカらしい、ヲタク文化を嗜んだイメージ力を膨らませろ。


 「自分の周りを回る風のイメージ・・・強くなくていい、そよ風が流れるだけでいい・・・」


無心になる、ただ風が流れることだけをイメージする、イメージ・・・イメージ・・・・・




 


 「ダメですね、そよ風すら流れません」


 「ぐふぅ、どうにもならんかぁ」


くっ、途中座禅を組んでみたりどこぞの錬金術師っぽく両手を叩いてみたりしたのがダメだったか


 「マスターのおふざけは減点です、あのおふざけがあったときはマナの流れがみだれましたので」


 「思考を読まんでください」


 「申し訳ありません」


ん、気になるなそのセリフ。

 

 「マネキンさん、いまのセリフだとマナ自体は流れてたのか?」


 「魔法という現象は起こせませんでしたがマナそのものはマスターの周りをちゃんと流れていました」

 

 「マナの流れも感じられなかったんだが」

 

 「それが普通です、マナを感じる修業もリソースの拡張もそういった一切を未経験なのですから」


 「ここで知ることは?」

 

 「はい、無理です♪」


 「うん、システム的な対応されるより断然イイ。じゃなくてそういった修業関連も大系化されてるでいいのかい」


 「魔法を使う為ではありませんが魔術を使う者にとってあればあるほど有利になるものですから」


 「仮体験ではなく、すこしガチで体験してみたいんだが可能かな」


 「さきほどの魔法をでしょうか、発動もしていないので魔法と呼ぶのは語弊がありますが」


 「ぐっ、いや努力が実るギフトってもう授かってるんだよな?」

 

 「・・・いつ気付きました?」


 「なんとなくというか、勘だろうかね。この場所のことも仮定を後押ししてるし」


おそらくこの空間と引き伸ばされてるであろう時間は努力と研鑽を積めることを可能にしているはず。

 

 「マスターはチートを手に入れそうな気がしてきました」


 「いや神様は無いと断言してたじゃないか、チートはありませんって」


 「語弊がありました、ルールの中のにある抜け道を見つけ言葉巧みに権謀策略を駆使し予想だにしないナニカを手に入れる可能性です」


 「買いかぶりすぎだと思うんだが・・・マネキンさんが変身できるってことをワシ気付けもしなかったんだぞ。もし気付けて変身させたら華やかになっていたんだろうなぁ」


 「そうですか、それは私の落ち度でしょうかそれともMVP?」

 

 「どっちでもないからね!?」

 

 「緩めの規制とはいえ魔法の概念等に気付けているのですからそこまで卑下することもないかと。それと創造主からこのチュートリアルで経験したことは内容次第で『努力と研鑽』のカテゴリに分類、気付かれないよう候補者たちへの祝福とするよう言われています」


 「・・・その内容もそうだけど、こちらに秘匿しなきゃまずそうなのばらしていいのか?」


 「・・・ええ問題ありません」


 「いやそのわずかな沈黙はなにかな」


 「マスターこそ」


らちあかん、進めてどうぞ。


 「了解しました、続きですが別に私がこのままでも『努力と研鑽』に該当するものなら創造主の祝福に含まれますので問題ありません」


 「とはいっても魔術も魔法もこれ以上の情報や経験は出来ないんだよな」


 「はい、ネタ晴らしをしますとさきほどの魔法をどれだけ繰り返しても現状で得るものはありません。あと可能性があるのは体力作りでしょうか。どこまで出来るかは不明ですけど」


 「いや体力作りは厳しいだろう、どれだけのことをしたら身に付くか分からないものをがむしゃらにやってもなぁ」


 「私の仮体験でおおよその逆算は可能ですが」


 「仮体験のデータは目安にはなるだろうけど、身に付くだけの努力をこなす時間は取れないんじゃないかな」


 「冷静ですね」


 「マネキンさんだって理解してるだろ、現実でも身体を鍛えるのは短期間で出来るもんじゃないって」


 「ではどうしますか、魔法は無意味ですがやります?」

 

 「事実なのかもしれんがちょっと心に刺さる、別なことを考えるから静かな時間をくれ」


 「では考えがまとまったら声をお掛けください」


さて、あと試せるといったら身体を動かす意思にマナが反応してくる要素だが、やるだけやってみるか?それとも魔法のほうをもう少し考えてみるか、神様のあの言いようは気付きかひらめきでもあれば何かができるような含みもあったし。


  [むむむ」


この空間の特性を利用したところで身体を鍛えるのはほぼ無理となれば、マナの流れを利用した体力不足を補えるかもしれないほうの努力か。死に物狂いでなきゃ効果は薄いとか言ってたよな・・・


 「マネキンさん、死に物狂いでマナによる補佐を得ようとしてる候補者っていたりする?」

 

 「・・・結構いますが効果を得られそうな状況になっているのはごくわずかですね」


わずかでも居るんかい、情報が正しいならどんだけ自分を苛め抜いているんだか・・・どM?


 「いいえ、どMでも自虐体質でもありません。候補者の中にアスリートやハードなスポーツの選手が居るのです、その人たちですね」


 「候補者ってヲタク文化を嗜んでる人ばかりじゃないのか?あとさらっと思考読まないでくださいお願いします」


 「大半はそうですが俗にいう一般人もいますね、命の危険に晒された候補者に『君、助かりたくはないかい?』と引き込んだようです。こちらとしては思考も読んだほうがマスターの質問や疑問を勘違いしないで済みますから却下です」


 「ソウデスカ・・・体力云々はやめよう。なにかのきっかけでも掴んでれば考えたけど」

 

 「ではどうしますか?」


 「魔法のほうをもうすこし考える、『たいしたことはできないだろうけど』と神様は言った以上可能性はあるはずだ、ソレを見つけたい」


 「わかりました」


 「とは言っても可能性があるとするならマネキンさんを利用する方法しか思いつくものがないんだが」


 「どのように利用されるのでしょうか」


 「うん、イメージ云々はこっちがするよりマネキンさんがしたほうが安定するんじゃないかと」

 

 「私をこき使われるのですね、承知しました」


 「人聞きの悪い、仮想とはいえ人格があるのだしイヤなら諦める・・・諦めたくはないけど」


 「正直ですね、私は主人格をコピーした分身タイプとは違いますし、初期設定をしっかりしてありますのでそういう扱いをされることに違和感を感じることはありません。ヲタ知識にある『高次な思考をする人格』のようなスペックはさすがにありませんのでそこはご注意願います」

 

 「ベースはどうあってもワシ基準、ということかな」


 「はい、先ほど試されたマスターの思考やイメージを私が担当することで雑念がない分強めに出来ます」


 「ぐふっ・・・そ、その条件下なら多分さっき試した魔法は発動するよね」


 「もう理解されているのではないですか、()()()()こそが創造主のいう可能性です」


 「自分で言うのも何だけど、あっさりご都合主義みたいに進んでない?」


 「創造主がそいういう方向に持っていこうとしてる節もあるので気にしないことをオススメします」


 「ゲームのような世界じゃないけどテンプレ異世界のような『無双』を想定してるってこと?」


 「この世界での出来事を楽しむ気満々ですので、もし異世界の知識を持ち込んだことで起きる惨事を解決させるための手駒にと考えているかもしれません」


 「いやマネキンさん、それしゃべってる時点で神様の思惑バレバレでしょう・・・」


 「ですが創造主は出来うる限り候補者を公平に扱っておりますので、実際に無双できるような魔法が使えなければ手駒にされることはないでしょう」


 「メンドクサイ内容なので後回しだ、それより魔法のことだけどさっきのやつ風は流せるのかな」


 「そよ風程度でしたら間違いなく、試しますか?」


 「よろしく、マネキンさんだけじゃなくこっちもマナを集めることやイメージをしたほうがいいよな?」


 「当然です、イメージはかまいませんがマナを集めるのはマスターでなければ出来ません」


さっそくマナが集まるように念じる、集まってるよな?


 「問題なく集まっています・・・発動しました」


気付けばそよ風ではあるが自分の周りを風が回っていた。

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