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失念していたマナ補足、そして仮体験

「申し訳ありません、マナに関して伝えなければならないある重要な要素を失念していました」


気付けばマネキンさんが土下座している。


 「なぜに土下座、そこまでしなければ許されないほどの重要な情報なのかね?」


マネキンさんは立ちあがり、咳払いをして切り出す。口ないんだけどな。


 「マナの要素に精神が多大な影響を与えるのは、ある要素を作り出すのに必要だったのです。しかし作り出された要素が想像以上にマナの力に適応しすぎていた為、創造主が情報を洗い出した際『生身の生命体でも影響あるけど問題になりそうなほど使えるかは条件次第だしまぁいいか』と流されたようです。この流された要素が先の魔法に繋がります」


 「それって創造主の知識だだもれじゃないのか、問題ないのかね」


 「問題ありません、なにより開示できる情報のなかに紛れ込んでいましたのでいまさら取り消しはしないでしょう」


 「それで、教えてもらっていない要素ってどんなもの?」


 「ファンタジーの定番でよくある死霊系やアンデット、精霊という存在です」


 「死霊や精霊はなんとなくわかるけど、アンデットもか」


 「はい、詳細は禁句ですが素体が残っている死霊の出来損ないというのがアンデットになるようです」


 「人為的に作れたりは・・・」


 「こちらの返答で推察されるでしょうからお答えします、作れたりはしますが詳細は禁句です。追加としてほぼ全ての種族が忌避、禁忌としているので口に出すことは控えたほうがよいでしょう」


嫌悪する内容はどこも一緒か、難しく考えないでいいのは心情的に助かる。


 「それでほかに情報はある?」


 「開示した情報で知りたい内容がなければご希望の仮体験をしてもらえますが」


 「ん~死霊と精霊の善悪、あと定番なら精霊には間違いなく自己があって意思があるよね」


 「死霊はそちらの世界でも言われていた自縛霊や浮遊霊、怨霊や悪霊というカテゴリで存在します。ただし怨霊はなってしまった要素次第では善悪が分かれます、悪霊は名が示すとおり生きるものすべてに害を成す存在ですね」


 「怨霊の善悪が逆転する可能性は」


 「精神に起因する存在なので長期間無念を晴らせなかった怨霊が悪霊になる事例があります」


 「精霊はどういうものになるのかね」


 「精霊は火、水、風、土、生命、精神の6種です。ちなみにテンプレな世界を構成する因子や要素とは違いますので精霊という種がいると認識されれば良いでしょう」


 「種ってことは火と炎とか溶岩とか種族のようなものが存在する?」


 「火と炎は同一種で力の強弱による他種族がつけた区分ですね、溶岩というのはただの自然現象です」


 「水は雪とか氷とかいろいろありそうだけどそれも同一種扱い?」


 「雪や氷は水がそのような状態になっただけの自然現象です、精霊としては水のみです」


 「その話を聞く限り、属性1種しかいないってことになる?」


 「はい、人型を取るものもいれば獣型もいますがどんな姿でも属性は変化しないのでひとくくりにされています」


 「テンプレじゃ世界を構成する存在なのが多いけどここでは違うと言ったよね、自然とかに影響を及ぼすことはない?」


 「各属性の力が強いところには多数の精霊が居たりします、火山のようなところには火と土の精霊が多く居ますし、湖と呼べるところには間違いなく水の精霊が居るという具合です。自然現象に関してですが影響を及ぼすことはないとはいいきれません」


黙って聞いてるこちらを見てマネキンさんは続ける。


 「強く風が吹く場所では風の精霊がはしゃいでいることが多く、大雨が降る場所では水の精霊が空の上に少数見られたり、エルフが住む大森林のようなところでは植物や動物がかなり生息しているため、生命の精霊が多数いるという具合です」


 「自然現象に関わっているのかいないのか微妙なところだけど、いまの内容で水の精霊に雨を止めてもらうことは可能だったりする?」


 「精霊になにかを頼める前提だとしても無理ですね、精霊が関わることで雨の量に差が出るくらいです。基本起きてしまう自然現象をそれ以下にするのは精霊でもできません、自然現象に対して出来るのは精霊が扱える力の分上乗せさせるくらいです」


 「じゃあ溶岩の流れを直接止めるのは無理なのか、土の精霊に壁や溝を作ってもらえればいける?」


 「そういう条件ならば可能です、補足ですが精霊は自分の属性を否定されたり消すという頼みや命令を実行された場合その場を去るか消滅しますので注意してください」

 

 「それは火の精霊に火を消してくれとか風の精霊に風を止めろとかそんなたぐい?」


 「はい、特に生命と精神の精霊は名前のとおり精霊のなかで特にマナと密接していますので、それぞれの否定は確実に存在を消滅させます。生命の場合は『命を奪え』『弱らせろ』精神の場合は『心を奪え』『精神的に殺せ』などです」


 「ちなみにどんなことができたりするか教えてもらえるか」


 「生命の精霊はそのまま命に直結する頼みなら大抵は、致命的な傷で治癒の時間が間に合わないとき『生きたい』と強く思うと自ら手を貸す場合もあるようですね」


 「次に精神の精霊ですがいわゆるマインドコントロール系の力をもつと理解されると早いでしょう。否定される頼みや命令でなければ『あの子を魅了したい』とか『怒らせて』などが可能です」


 「それは物騒だな、悪用されないかそれ」


 「精霊も自己がありますからあからさまに遊びやいたずら、まして謀略ということに手を貸すのはほぼありません。真っ当というのはどうかわかりませんが精神の精霊の力を使われた記録では戦争ですさんだ精神を安定させたり、絶望を知り心を閉ざした者の心に呼びかけて呼び戻したなどですね」


強制カウンセリングだこれ。


 「大体把握した、あと注意しなければならないことはなにかある?」


 「精霊も死霊も力が弱いとその姿を普通に視認することは出来ません。上位精霊や怨霊悪霊ともなれば条件次第で誰の目にも見えるようにはなります。基本見えませんが力の強い死霊や精霊側からだとこちらに物理的な干渉が可能です」


 「自分の目で意識してみる方法はあると思うんだが」

 

 「魔眼などのテンプレですね、存在はしていますが現状では禁句になります」


 「じゃあこんなところでいいか、仮体験のほう頼めるかな」

  

 「承知しました、まずどのようなことをお望みでしょう」


まずはテンプレ逝っておきますか


 「SAN値チェックとかいっていた仮想人格の体験かな、制限は付けるけど問題はないよね」


 「問題ありません、こちらで把握していることから忠告をひとつ、人格の設定をしておくとひどいことにはならないと思われます」


 「人格設定しないとどうなるのか一応聞いても?」


 「人格設定されなければ人格を持とうとするマスター基準となるため、寸分の狂いもない同じ性格のもうひとりの自分が出来ます。その為なにをしようにも同じ行動、思想、思考でトラブルがないように感じますが特定の条件下で問題が起きます」


続けるように促す。


 「まず寸分の狂いもないコピーとなるため仮想人格では生身のマスターとどうしても違う部分が出てきます。睡眠欲、食欲、性欲、趣味趣向などの肉体のあるなしによるものです」


 「予想通りか、仮体験したやつの状況を聞いても問題ない?」


 「はい問題ありません、まず睡眠欲は仮想人格が意識をシャットダウンすることでクリアしましたが、必要なときに寝ていたりした為その役割を果たせていませんでした。食欲と性欲は主人格と仮想人格が協議して感覚の共有という手段をとりましたが、人格が別々であったので互いに見られてる感覚に忌避感をもちました。趣味趣向はその延長ですね、肉体はひとつしかないため仮想人格は主人格が楽しむのを見ているしかなく、また感覚共有しても互いに見られている上まったく同じ行動をしてるように感じて最終的に人格の破棄となりました」


うわぁ想像以上にヒドイ、ゲーム感覚やテンプレ小説にあることが手に入ると思ったんだろうか


 「人格設定だけどおおまかとかでもいいのかな、それともなにか効率のよいものとかある?」


 「主人格とかぶらなければ大抵の問題はクリアされるはずです、この問題は主人格そのままを利用したからこそ生まれた問題なので主人格の否定や指示を拒否しない執事や秘書、メイドというイメージで設定されればさほど問題はないでしょう。また歪んだ欲求で求められるほかの人格でも設定は可能ですがそういった声で頭の中から話しかけられるのをどう感じるかですが」


 「それって理想の人格作れちゃうぽいけど、人形のような存在にならんか?」


 「人形のような存在になるかは主人格次第でしょうか、仮想人格の自由思考を与えるかどうか、人格の成長を可能とするか、自身が仮想人格であることを自覚させるなどその辺も自由に設定できます。また機械のような淡々と情報を処理、事務的に受け答えする人格も可能です」


それだけはさすがにイヤだ、どんな生活になるにせよもしこの仮想人格が居てくれるのなら癒し枠でなきゃ精神的に困る


 「ベースは落ち着いた女性タイプがいいな、成長する要素はありで冷静にツッコミを入れてくれてたまにボケる、クーデレってわかるかの」


 「神の知識には歪んだテンプレを含めたヲタ文化もありましたので相当ひねたものでも問題ありません」

 

握った拳に親指を立ててビシッとこちらに突き出してきた、実はマネキンさん人格か自我があったりするのか?


 「と、とりあえず人格的なのはこんなもので。あとは仮想人格であると自身を理解させれば自己の否定や悲観はしない?」

 

 「はい、仮想人格の仮設定もしましたしいつでも体験可能です」


二度深呼吸をしてマネキンさんに顔を向けるとマネキンさんが「あーあー」とマイクテスのようなことをしている。


 「このくらいでよろしいでしょうか」


マネキンさんの声が女性のソレに変わっていた、ワシが知る理想の女性ボイスいかんたぎる!


 「てことは新しい人格を作るんじゃなくマネキンさんが代理なのか」


 「いいえ、代理とは違います。創造主が私を設定されはしましたが使われているリソースは主人格である貴方ですから、声色は貴方の記憶を参照しましたが問題はないでしょうか」

 

そういえばそんなこと言っていたな。声色に関しては微妙に怖いこと言ってたがOKとしよう考えるのコワイ


 「いきなり頭の中から声をかけてくるナニカを受け入れてもらえるかは創造主でもわかりませんでしたので、あのような対面となりました」


 「でもマネキンそのものがうしろから現れて話しかけてくるのもちょっとしたホラーだった気もするんだけど」


マネキンさんは軽く頭をさげ申し訳ないオーラが見えた。


 「申し訳ありません、ですがそのあと淡々と話を進めた貴方にもすこし言いたいことがあります」


ずいっと顔を寄せてくるマネキンさん、ちょっとコワイ


 「この姿を見たほかの候補者は外見を変えられないかとか変身しろとか言っておりまして、それぞれが好みの外見をした仮想人格と対話していたのです」


ええ、変身機能ありとか教えて欲しかった


 「創造主いわく『気付けた人へのささやかなプレゼント』だそうです、ヲタク系候補者の大半は気付けたようですね。90歳まで生きたヲタクとしてはどんな気持ちでしょう、ねぇNDK」 


ぐはっ、鋭いツッコミ!


 「もしかしてすでに仮想人格の設定生かしてる?ねぇどうなの?!」


 「秘密です、ではそろそろよろしいでしょうか」


うん、考えるのはよそう。ワシの理想とか詰め込んだわけだしハズレとかありえん・・・はず。


 「よろしく頼む」


 「始めます、戸惑わないようにしてくださいね」


そう言うとマネキンさんの姿が消えていき、このなにもない広間で一人になってしまった。



 

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