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チュートリアル

扉を抜けるとそこは真っ白な床が延々と続く、そう時間が引き延ばされる有名な部屋のようなところだった。

 

 「流石にそんなわけないよな、ここの時間が引き延ばされているなんて」


そうつぶやいたとき、男とも女とも取れる声で返答があった。

 

 「はい、引き延ばされているのはここではありません」


背後から声を掛けられて振り向く、そこにはなんというかのっぺらぼうな顔のかなーりリアルなマネキンが立っていた。


 「君がワシのチュートリアルを担当してくれるのか?」


きれいなお辞儀を返すマネキンさん。


 「はい、なんなりとご質問してください。回答不能なものでなければすべてお答えいたします」


色々知りたいことはがっつりあるがまずは確認をするか。

 

 「返せることならすべて、ならまず確認をしたいことがいくつか」

 

動じることもなくマネキンさんは答える。


 「なんなりと」


ようし、まずはコレだ。


 「神様の説明中に魔術云々があったけど、マネキンさんは神の知識を介して理解しているんだよね」


すこし間を置いてマネキンさんは答える。


 「はい、私自身は知識を一時的に共有していますので魔術がどんなものであるかは理解しています」


ふむ、間を置いたのは神様からなにかの介入でもされたのかな。コレも確認してみようか。


 「いま回答をする前にすこし間をあけたよね、なぜかな?」


返答は間を置かず、さらっと出てきた。


 「私のことを『マネキンさん』と呼ばれたことに戸惑いました、このチュートリアルが終わるまではその固有名詞をお使いになりますか?」


そうだった、呼んでもいいかとすら聞いてもいない。反省しよう。


 「すまない、見た目がマネキンそっくりだったのでつい口に出してしまった。名前はあるのかな?」


 「私そのものに固有名詞はありません、なのでマネキンさんと呼ばれてもかまいません」


 「じゃあ、しばらくはその呼び名でお願いするよ。時間がどの程度許されるかわからないしさくさく質問していくよ?」


 「承知しました、質問内容に相槌を打つような感じでよろしいでしょうか」


 「それでよろしく、じゃ次の質問だけど・・・魔術のほかに魔法があると言ってたけど」


 「はい、魔法という概念は存在しています」


 「ワシが使うことは可能?また習得に関しては?」


 「習得は可能ですが通常では無理です、使用に関しても習得という過程を終わらせない限りできません」


 「魔法に関してはあとでじっくり聞こう、ほかのことも知らないといけないからな」


 「了解しました」


 「亜人の分布状況はどうなってるのかね、主な居住してるエリアとか」


 「大まかなところだけでもよろしいでしょうか、一部の希少種族の生息地は禁句に指定されております」

 

 「それでもかまわない、ついでに住んでいる環境もあると助かる」


 「種族名エルフはロシアの左半分くらいの地域をメインに、大森林と呼ばれるところです。種族名ドワーフは北米大陸全般、かなり起伏のある山岳が多いところです。オーストラリアに該当する島は魔族の住処ですが環境に関しては禁句になります。南米は種族名リザードマンの国になります、環境はアマゾンに似ています」


 「日本にあたる地域にはなにが住んでる?」


 「種族名『鬼』と上位種族の『鬼人』が住んでいます」

 

 「獣人はどうかな、あとそれぞれの特徴から部族分けみたいなのはあったりするか」

 

 「アフリカ大陸に該当する地域が主です、部族分けというのは良い割り方ですね。それに関してはそのとおりです」


 「では次から内容を変えるとしよう、努力が実るっていうギフトだけど漠然としてて判断しにくい。分かりやすい目安になりそうな例えが知りたい」


しばし沈黙するマネキンさん


 「目安となりえる例えは存在しません」


 「理由を答えてもらえるかの?」


 「身体を鍛えるのも知識を蓄えるのも、個人の才能や趣向が大きく反映されるからです。勉学が好きな者が勉学に励むのと好きでもないほかのなにかをやるのとでは『差』が現れます、ですがやったことが身に付かないというわけではありません」


なんとなく予想はできていたが非常にアンバランスな贈り物だ


 「いまの回答はいやな感情や苦手意識があっても、努力と思えるほどの研鑽を積んでいけば身に付く、身体も鍛えられていくということであっているかね?」


 「身に付く内容などは個人差もでますがおおむねそのとおりです」


 「ふむ、このギフトは剣術や魔術などの本来知りえない技能を習得しやすくさせるためか」


感情らしきものがないはずのマネキンさんがピクリと反応する


 「はい、リ・アースでは剣術も魔術も10歳前後から学びだして使えるようになっていきますから」


少なくともこちら側の面子からしたら5年以上の差があるのか、へたすると子供でも魔術を使うと大人でもやられかねないか、いや間違いなく負けるだろう。


 「魔術に関してだがおおまかな理屈が知りたい、出来れば魔法との差も」


 「魔術とはわかりやすく言えば科学的な反応をマナというエネルギーを術式に通して変換、代用して現象を起こすものです」


 「簡単なものでいいからもう少し砕いた回答がほしいのだが無理かの?」


マネキンさんが思案するように手をアゴにもっていく

 

 「攻撃魔術や治癒術というものはここで教えることができませんが生活魔術なら可能です、よろしいですか?」

 

迷うことはなく「よろしく」と告げる。


 「火を起こす魔術の工程ですが『小さな空間』を指定する術式、そこへ『火種』『燃焼する空気』をマナで生み出す術式を発動させることの大まかな3つです」


聞けば大体納得できるが細かいツッコミも入れてみるか


 「燃焼する空気というものはワシが知るガスのようなものであっているのかな」


 「ガスのような人体に影響するものではありません、『燃焼する空気』という術式は単独でも行使可能なため『小さな空間』という範囲を指定する術がない場合広範囲に広がるからです」


 「人体に影響しないけど広範囲に広がったら大惨事になるのでは」

 

 「はい、過去の事例にそういったことが起こったとあります」


 「危険はないのかね」


 「長い検証や研鑽を積み重ね、生活魔術「発火」はその術式を組み合わせることでしか発動しないものになっていますので、発火そのもので懸念されるような大惨事を引き起こすことは現在ありません」


 「古い術式を知ってるものはソレが可能なのでは?」


 「対面的にそういう危険を伴う術式は『禁術』扱いとなり犯罪となります」


 「詳しくは教えてもらえないだろうがワシの推測が正しいか答えてほしい」


 「どうぞ」


 「現在、さまざまな魔術は安全面と効率を含め使用する術式は大系化されている」

 

 「そのとおりです」


 「いやにあっさり答えてくれたのぅ」


 「こちらから直接教えるのは禁じられていますが、地力でたどり着いたことまで否定、黙秘しろという指示は受けておりません」


理屈が通ればいろいろ話してもらえそうな感じもするが次に進もう。


 「攻撃魔術とか治癒術はそういう指定される術式が膨大なのか多いのかというくらいで、理屈的には生活魔術と根っこは同じであっておるか?」


 「はい、そのとおりです」


 「使うために必要なことはなにがあるかの、また鍛える必要があることがあればそちらも知りたい」


 「魔術に関しては『術式』そのものが売られています、高名な魔術師は独自の大系を持っていたりするのでそれを譲り受けるなどもありますが、その『術式』を指定された領域に焼き付けることで行使が可能になります」


うん、すこし物騒になってきた。


 「焼き付けるってことは消せなくなるのかの」


 「身体の表面に焼き付けるタイプなら上位の治癒術で消せる場合もありますが、術式が見えるということは何が使えるかを知られるため、ほぼ大抵は脳内に焼き付けるのが主流です」


 「それのデメリットは?」


 「脳内の領域はマナを扱う器官に付随するイメージが分かりやすいと思われます、私の仮想人格もそこにあります。脳内の領域『リソース』と呼称しますがそこに焼き付けるイメージですが、もちろん個人差も含め限度が存在します」


 「限度を超えたらどうなる?」


 「イメージとしてはノートに油性マジックで色々書いていきますが、いずれスペースはなくなります。そこに無理やりなにかを書き込めば文字は重なります」

 

 「そうか、そこに書いた文字は上書きされたものと重なり意味が無くなるのか」


 「意味が無くなるというのは少し違いますが大体そうなりますね、そして焼き付けた術式が無駄なラクガキになると術の行使が出来なくなる上リソースはつぶされたままになります」


 「リソースは個人差もあるのかね」


 「はい、また拡張も含めた成長の可能性があります」


 「ゲームじゃないと言われてたから明確な数値のようなのはないんだよね、限界とかは知ることが出来る?」


 「リソースの限界は風船がイメージしやすいでしょうか、限界が近いと圧迫されるような痛みがあると事例にあります。あとは創造主のような存在であればおおまかではありますがわかるそうです」


 「デメリットはそれだけ?」

 

 「魔術の行使に慣れが必要になることでしょう、目に見える術式ならそこへマナを通し活性化させることで発動しますが、脳内に焼き付けた場合は補佐術式があるとはいえ直接見てるわけではないのですから」


 「補佐術式ってなにかね」


 「そちらの世界でいう呪文とか発動キーワードとでもいうものです、生活魔術の発火は現在『着火』というキーワードで脳内の術式が起動、イメージも多少強化されるので意識しやすくなりマナも流れやすくなる、そうした工程を通って発火という現象が起こります」


 「補佐術式も術式なんだよね、工程として増えるんじゃないのか?」


 「焼き付けた術式は人の記憶のようなものです、記憶というのはよほどでなければちょっとした気付きで思い出せます。それを利用したもので術式もシンプル、マナもほとんど消費せずというとても便利なものだそうです。付け加えるならマナそのものが生命や精神に作用するのでこの術をさらに有効にしています」


 「脳内イメージってどんな感じだろう、知らないから実感も沸かないし」


 「ソレばかりはこちらで再現する許可がおりないと思われます、言えることはそのイメージにある術式をはっきり認識できれば発動するので難しく考えなくても問題はありません」


 「それも長い検証とかが効率化を進めてきた結果、か」


 「長々とめんどくさい説明になっていますが、魔術は相応の答えが出ているため術式を焼き付けられるリソースがあればまず発動します。習熟は行使時に脳内イメージが起きることの違和感やマナの流れに慣れるということです」


 「魔術に関することでタブーとなることはある?」


 「さきほども言いました禁術の取得、行使があります。また術式の内容を独自に解読するのは問題ありませんが、個人で保有する固有魔術や攻撃系の上位魔術の解読結果を開示するのはソレに関わる魔術師に間違いなく狙われるでしょう。あとは10歳以下の子供にはリソースが安定しないため生活魔術ですら習得させてはいけないことになっています」


魔術は術式を手に入れ脳内に焼付け保存しキーワードで発動するか、あとは現地で手に入れてから理解するしかないな。


 「魔術は大体把握したから、つぎは魔法を教えてほしいかな」


 「魔術の説明でも話しましたがマナというものが術を通してさまざまな現象や行使、工程などを代行、代用しているのは理解されていると思います」


内容を思い出しうなずく。


 「魔法とは術に頼らず、別の方法でマナを運用することで起こる現象をいいます」


 「それはこちらに開示してもいい内容なのかな」


 「はい、魔法そのものは向こうの世界でも使えるものが少数居ますので知る人は知ってるので問題ありません。開示できないのは魔法を行使する方法で、使うことができるすべての人が使用方法を秘匿しているからです」


現在の情報だけだと魔法の原理はわからないか、もうすこし突っ込んだ情報が欲しいな。


 「マナについて、開示できる情報を教えてほしい」

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