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原因

 「まさかなぁ・・・」


マーニさんを触診する前に原因と思われるモノにイキナリ接触するとは思いませんわ・・・


 「ほぼ確定であっても触診はしてください、能力の確認がしたいので」


 「正直だなおい!」


 「マスターから派生したのですから当然です」


言いきりやがったよチクショウ・・・だがどうしよう、いきなり突拍子のないこと言って聞いてくれるかな?


 「おそらく無理でしょう、なによりここでアレを使うなと言われても困るでしょうし」


 「はぁ・・・説明もしたほうがいいんだろうし朝飯前に伝えるか」


 「それよりも食堂で朝食を作っている料理人に言っておくべきでは?」


 「そっちも聞いてくれるかどうか・・・」


 「迷うだけ無駄です、間違いなく混じっているのですからすこしでも早く影響を減らすほうがいいと断言します」


気が重くなる・・・なぜならマーニさんや街の住人の身体を蝕んでいる原因と思われるソレは生活に欠かせない『飲料水』であったからだ。


 「行動に移るか・・・」


気が重くなるが自分も人事じゃないと割り切り、食堂へと向かう・・・





 「水を使うなと言われても困るんですがね、なにを作るにも必要なんですよ」


厨房で料理人に水が危ないと伝えるも聞く耳持たず・・・説明不足なのはわかってるが言っても理解できそうに無いんだよなぁ。


 「いま使ってる水じゃない飲料水ってないのか?」


 「しつこいですね、仕事の邪魔になるんで出てってくれませんか」


交流すらない客人(おれ)の一方的な注意に料理人もうっとおしいとばかりに対応しだす。


 『もういい、少なくとも忠告はした。これからマーニさんとこ行くから飯を食わないように言えばいいだろう』


 『よろしいので?』


 『俺は聖人君子じゃない、たしかにこんな状況で言われても納得できないってのは俺でも分かるが一から説明するのもメンドクサイし理解も出来ない・・・いや理解しようともしないかもな』


偏見かもしれないし自己中心的な考えになっているかもしれない、それでも水が必要で大事だとわかっていて()()()()()()()()()()ことに何かあると思ってくれれば説得も考えた。


 『時間も無い、マーニさんとこへ行く』


俺が説得をやめたことに気付いた料理人は作業をし始めた。それを確認した俺も用はないと入り口から出てマーニさんの部屋を目指す。


 「わかっちゃいたがコレも人の世なんだよな・・・」


人付き合いというのは大事だと痛感するがココに来て一日しか経ってないんだよな・・・交流なんぞあるわけない!


 「フラグが立つの早すぎたのですね」


 「そういう問題じゃない・・・よね?」


そうしているうちにマーニさんの部屋まで来た俺はノックをして挨拶と確認をする。


 「おはようございますマーニさん、朝早くですみませんがすこしよろしいですか?」


部屋の中から「あらあら?」という声と「お断りしてきます」という声が聞こえてきた。


 『二人いるのか?』


 『付き人ではないでしょうか?』


 『なぜ疑問系・・・』


 『私が知覚できるのは形だけですのでその人の職業や性格などわかりません』


ドアが開き女性が姿を見せるとこちらを睨み付けてくる。


 「こんな時間に何用でしょうか、せめて朝食の後に来て頂きたいのですが」


 「それじゃダメなんでこの時間に来たんだが、話が出来ないなら忠告だけしておく」


 「なんでしょう?」


 「朝食は食べるな、特に水はダメだからノドを潤したいなら水以外のものにしてくれ」


 「・・・あなたはなにを言っていらっしゃるのですか」


女性のなんだコイツという視線に俺もちょっと気分を悪くしてしまった・・・沸点低いな俺。


 「聞けないならそれでもいい、忠告はした」


俺も毛嫌いされてまでおせっかいをする気はないので言うだけ言うと部屋の前から去る。


 「さてどうすっかな・・・デリムさんやアンサムに伝えるべきかどうか・・・」


 「その二人ですがマスターを探しているようですよ?」


 「マナソナー(仮)で調べたのか?」


 「これも能力の検証の一環です」


 「ああ・・・おおかた料理人あたりになにか言われたから確認でもしに来たか、最悪のケースは混乱を招くようなのは困るから出て行けとか言われるかもな」


 「どうします?」


 「探してる時点で話さなきゃ終わらんだろうよ、どこにいる?」

 

 「では礼拝堂に向かってください、そこで鉢合わせると思います」


言われるままに礼拝堂へ向かい・・・探してる二人と出会えた。


 「おはようデリムさんにアンサム、俺を探してたんだろ?」


デリムはめんどくさそうな顔をして俺を見る。


 「・・・なんであんなこと言った?」


 「事実だったから言っただけだ、信じないならそれでもいい」


はぁーとため息をつくとデリムは強い視線で俺を見る、ちょっとコワイ。


 「混乱させたいわけじゃないんだな?」


黙って俺はうなずく。

 

 「理由は?」


 「話を聞く気があると?」


 「聞いた内容が納得できなきゃ切るだけだ」


こわっ


 「座って話そうか、すこし長めになる」


礼拝堂にある長椅子に座ると二人も近くに来て座る。


 「いまから突拍子のないことを言うがとりあえず聞いてくれ」


いいかな?と目で二人を見るとうなずくのを確認して話し出す。


 「俺が目を覚まして顔を洗おうと水場の場所を歩いてた団員に聞いて行ったんだ、んで顔を洗ったら違和感に気付けた」


 『どう説明するんです?』


 『味で表現してみる、実際確認したのは俺の味覚だろ?』


 「顔を洗おうと水をすくい顔を洗った、そのときの水滴を舐めて『水の味』がおかしいと気付いた」


 「そんな違和感なかったと思うっすよ?」


アンサムがそう言ってくるが俺は目だけですこし待てと言う。言ったつもり・・・


 「確認したい、あの飲料水って街全体で使ってるよな」


デリムはうなずく、洗ったときに確認したが水路的なものがあったから多分街の所々に水を汲める場所があるんだろう、水路は剥き出しじゃなかったしゴミやらは入り込まないんだろうがこっちの生活インフラってどうなってるか気になる。


 「・・・二人にはこれから衝撃的な事実を話す、ただし確証がもてるまでマーニさん以外には話さないで欲しい、聞かれるのもダメだ」


 『マーニさんには話すのですか?』


 『あの人は神託を受けてるし俺の正体を知ってるはずだ、異世界の知識で俺が警告をしてるとわかれば自衛するだろうしなにより聡明だ。事がどれだけ重大か理解すると思いたい』

 

なにを話すんだ気になるぞ的になってる二人を見て、深呼吸を2回ほどする。


 「あの水は微量ながらある毒物が混じってる、どこでどのようにしてどのくらいとかその辺りは判らないがあの味は覚えてる。間違いが無ければその毒は体内に入る量次第で身体にさまざまな障害が出る」


目を見開く二人。


 「あの水をいつから使っているのかは知らないが長期間あの水の毒を知らずに摂取してじわじわ身体を蝕んでいったんだろう」


 「本当の話・・・なんだよな?」


 「ここで嘘を言う意味が無い、ただ毒の量がかなり少なかったからあの程度なんだと思ったほうがいい。俺が知るかぎり摂取した量が多ければ確実に死ぬ、生きていられても身体を動かすための神経などを壊されるから治療も難しい」


 『けど俺の知る知識だと食物連鎖が一般的なんだよな、マナが満ちる世界の影響か?』


 『可能性はあります、アレは微生物から蓄積されて食物連鎖の上位になるほど多く保有するハズですが・・・もしその連鎖がなく微生物も生命力が強くてさらに水から微生物を除去する設備などが無かった場合はソレを直接口にするわけですし』


 『俺も昨日の晩飯食ったがそのときはどうだったんだ?』


 『そのときは感じませんでした、火を通したスープなどだったからでしょうか』


 『火を通すだけで毒性消えたっけ?』


 『出来ないのでは?』


そうだった俺の知識じゃその辺わからないんだよね・・・


 『万能な不思議要素(マナのちから)とかある世界ですし雑菌消えろ!とか水は消毒だぁ!とか考えながら火にかけると無毒化するのかもしれません』


マジかよ・・・ありえそうだな。


 『その辺りは後にしよう、ただの水を飲む場合はダイレクトに影響するのは間違いないんだ』


 『わかりました』


すこし溜めてから二人の顔を見て続ける。


 「水銀っていうものに心当たりあるか?」


 「銀の水のことっすかね?錬金ギルドの目玉商品だったはずっす」


アンサムのあとにデリムが続く。


 「それなら確かに有毒で扱いがデリケートなもんだが管理は徹底してるはずだ、自分たちも危険に晒されるわけだしな」


 「本当にか?」


 「あの水道は街に入る辺りで浄化の魔術が掛かっているところを流れる、銀の水や砂や土といったものはそれではじかれたはずだぞ?」


街中でも数箇所にそういうところがあり水質管理は出来てるとデリムは付け加える。


 「それは無機質なものだけはじくのか?」


二人は「無機質?」と首をかしげる。


 「無機質ってのは砂や土に鉱物とかの『生きていない』もののことだ」


 「それならそうだ、銀の水はそれではじかれてるのを確認してる」


デリムが設置されるとき実際に見たと言う。


 「なら原因はソレだ、俺の知識だとその毒素は生き物が原因のはずだからな」


 「まて、そんな生き物なんか見てないぞ」


デリムがそんなはずはないと言わんばかりに反論する。


 「相当目を凝らしても見えるか分からないほど小さいはずだ、口に入ってもおそらく気付けない」


こっちの知識だとプランクトンがメインだったか・・・


 「そんな馬鹿な・・・見えてないものを信じろと言われても納得できないっす」


アンサムは疑っているようだがデリムは違うのかこちらをじっと見ている。


 「とにかく、俺はあの水にその生き物が腹に溜めている毒の味を感じた。俺の言うことが納得できないなら仕方が無いがすこしでも思うところがあるなら水を飲むのはやめるんだ」


 「どうしてもか?」


しぶい表情のデリム、なにか迷っているフシがある?


 「それとその毒はタチの悪いことに蓄積するし毒素の回りが速い。街中の人も似たような症状になってると聞いたからな、すぐにでもやめて対策を考えたほうがいい」


二人とも唖然とする。


 「・・・ホルス、お前のその知識は『()()()()』のものか?」


 「マーニさんから聞いたのか?」


 「いいや、救生教では助祭でも神託を聞けることがあるんだ。俺は分隊を任されてるから最低限として助祭の資格を取ってる」


アンサムははてな顔だ。


 「アンサムは知らないみたいだぞ?」


 「黙らせるからいい、それより答えを聞かせろ」


真剣と書いてマジと読む・・・おふざけはやめますから内側から冷たい視線が来るような感じがするのでワイズさんやめてください。


 「そうだ」


あえて短く答えた。これ以上言う必要がない的に感じてくれればいいかな?アッヤメテカンベンシテ・・・


 『度が過ぎるおふざけはマスターの品位を下げます、ご注意を』


ハイ・・・


 「毒のことも本当だとしたら対処方法はその生き物をどうにかしたらいいのか?」


 「間違っちゃいないが根本的な解決じゃない、まず水にソレが居ることがまずいんだ」


 「わかるように頼む・・・事実だとするなら大問題なんだ」


アンサムは事態についていけないのか黙って聞いている。


 「もし外で水を使うことになれば浄化すらされてないソレを口にすることになる、街の人だけじゃない他所から来た人が知らずにソレを口にしたらどうなる?」


デリムが怖い顔になっている・・・


 「街の被害がこの程度で済んでるのは浄化するための魔術がそいつの腹の中の毒に干渉してその数を減らしてる可能性もあるんだが・・・もし外の水が俺の予想通りなら恐ろしい被害が出るぞ」

 

 「恐ろしいとは?」


 「引き込んでる水道だが街の外側はどうなってる?」


 「水路を作って引き込んでるが根っこは山のほうから流れてくる湧き水が流れる川だな」


 「となれば魚、居ないか?」


 「いるっすね、やたら元気なのが寒い時期でも泳いでるっす」


 「それを食う獣はどうだ?」


 「居るな、時折狩人が持ち込むのを見てる」


アウトくさい・・・倒れてるのを持ち込んでいないだろうな?


 「もしその魚や獣が予想通りならかなりの毒が溜まった状態のはず、ソレらを食ったとなればすぐに倒れたりしてるはずだ」


 「そんなにすぐ回るもんなのか?」


デリムはあれの危険度を知らないからな・・・


 「若干話がそれたけど一番問題なのは湧き水が出てるところに銀の水が流れ込んでる可能性かな、銀の水が水の中にいるその生き物に取り込まれることで最悪の毒になるんだ」


デリムはまさかとつぶやく。


 「湧き水が出て池になるところは銀の水が出るところの側だったな?」


アンサムに向かって聞くデリム。


 「そっすね、坑道の入り口から見える位置にあるっすから工員たちの休憩所になっているはずっす」


やばいなぁコレ・・・採掘による水源への流れ出しから工員の手洗い等による汚染もありえる。


 『いろいろ問題になりそうですね・・・』


 「その辺は錬金ギルドがちゃんとやってるんじゃないのか?」


俺が聞くとデリムはもうこれでもかってくらい顔が怖くなっていた・・・あマジで額に青筋が見える。


 「ホルス、悪いんだがマーニ司祭に毒も含めたすべてを伝えてくれ。俺は野暮用ができた」


 「お、おう」


 「野暮用が済んだら俺たちは湧き水の池の調査をしたい、詳しく調べるのに力を貸してくれ」


断る理由はないのでうなずく。


 「アンサム、詰め所に行って荒事になれてるやつ数人集めとけ」


了解っすと言ってアンサムは席を立ち早足で出て行く。

 

 「じゃ、あとでな」


デリムもそういうと席を立って出て行った。


 「やべぇめっちゃコワかった・・・」


 「すごい迫力でしたね」


 「さて、仕方ないのでもっかいマーニさんとこ行くか・・・」


俺も席を立ち、マーニさんの部屋へ向かった。


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