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なんでも屋とご都合展開

食堂に着くとアンサムは厨房のほうへ行き、飲み物と思えるものが入ってるコップを2つ持って来て席につくと俺を対面に促しコップのひとつをそこに置く。


 「さすがに職務中っすから酒じゃなくコーヒーですけど大丈夫っすよね?」


ブラックかな・・・飲めないわけじゃないしいいか。


 「ありがとう」


席に座るとコップを取り口をつける。


 「おいい・・・」


 「秘密っすよ?」


見た目はブラックだったがコーヒーリキュールっぽいのが混ざってるのかほんのり甘かった。


 「それでホルスさんの相談ってなんすか」


アンサムもコーヒー?を飲みながら聞いてくる。


 「マーニさんとも話したの聞いてただろ、金を稼ぐ手段だよ」


 「どんなことができるかにもよるっすねぇ・・・腕っ節が強ければ街の衛視や傭兵に護衛、この辺じゃないっすけど剣闘士ってのもあるっす」


 「そっちはシンプルだな・・・知識的なほうは何がある?」


 「それって魔術とか錬金術といったほうっすか?それとも医者とか薬学とかのほう?」


 「何が出来るかはどんなものか内容がわからないと判断できないから、いまの4つはどんなことが仕事になるんだ?」


 「魔術のほうは開発と検証に関連の商会での販売っすね、錬金も大体似てるっすけど違うのは魔術の媒介や媒体に依頼されて作る道具関連の作成があるって事っす。医者は分かると思うっすけどまんまっすね」


 「薬学はどんな感じ?」


 「薬草やら効果のあるものを採取や栽培して調合、医者の見立てた症状や病に効果のある薬をつくるのが仕事なんすけど・・・調合の配分が分かっていて効果のでる薬もあるにはあるんすけど大抵秘匿されてます。一番の問題は急病や医者の知らない病ではどういったものを作ればいいのかわからないんで弟子入りして学んでから就く職っすね」


 『これって向こうの漢方のようなものか?』


 『ですね、向こうの薬学のようなのはこちらの知識にはないようです』


ふむぅ・・・


 「とすると大抵は医者が薬学を習得しているのか?」


 「ほとんどがそうっすね」


 「やるかは別にして教会の奉仕活動ってのはどんなことするんだ」

 

 「住人たちを全員見回ってなにかあるなら相談や解決に手を貸すことっすね」


お布施とか多めに出す人は優先するっていう暗黙もあるっすとアンサムは小声で教えてくれた。


 「それを恩着せがましく命令してくるのもいたっすけど隊長が本気で殴って黙らせてました」


あれはしびれたっすよ~とその時でも思い出したのかアンサムは興奮気味だ。


 「俺としては旅をすることが前提なんだがほかに出来そうなものあるか?」


 「無難なのはなんでも屋っすかね、日雇いで街中の仕事もあれば商隊や旅人の護衛とかさまざまっす」


 「冒険者って言う職業はないんだな」


 「なんすかそれ、宝探し(トレジャーハンター)とか遺跡調査(ルインサーチャー)ってのはあるっすけど」


 「なんでも屋って安定するのか?」


これ一番大事。


 「中規模以上の街ならどこかしらに仕事はあるっす、日銭を稼ぐくらいは普通に可能っすよ」


 「それを仕事にするとして旅をする俺でも問題にはならないのか?定住するにしても旅が終わってからだし」


 「そっすねぇ一応登録制なんすけど特になにかしなきゃならないことってないんで・・・」


 「約束事とかは登録するとこで聞いたほうがいいか?」


 「そのほうが確実っす、登録には3銅貨と血を一滴必要になるっすね」


 「国境を越えたらどんな扱いだ?」


あるよな?


 「国境を超えた場合っすか?よほど閉鎖的な国でなきゃどこにもあるんで困らないはずっす」


 「ふむ、なんでも屋か・・・」

 

無難なとこだがあとは俺の問題かな。


 「ありがとう、聞く限りじゃなんでも屋が問題なさそうだ」


 「役に立てたんならよかったっす、だからホルスさんの後ろから睨まないでほしいっす隊長」


アンサムの言葉を聞いて振り向くとそこにはデリムがこっちを見ていた。


 「一応仕事だというのは認めてやるがソレは見逃せんな」


デリムがコーヒーの入ったコップを指差す。


 「いやもう勤務時間はすぎてるっす、飲んでもいい時間っすよ?!」


 「アホ、そっちの問題じゃねぇよ・・・ソレに入れたもんは俺の私物だゴラァ!!」


すみませんでしたぁ!的にアンサムは土下座をする。


 『なぁ、こっちの世界でも土下座って文化あるのか?』


 『見てのとおりです』


 「デリムさんすまなかった」


俺も椅子から立ってデリムさんに頭を下げる。


 「いやホルスは悪くない、悪いのはアンサムだから全部コイツに責任を取らせる」


勘弁してくださいっすと土下座状態からしゃべっているアンサム。


 「はぁ、弁償しろっつっても今品切れなんだよ、で次の商隊が来るまでちびちび楽しむつもりだったんだがな」


頭をがしがしかきながらアンサムを睨む。


 「とりあえずアンサムは今日夜勤追加で勘弁してやる」


 「思ったより軽くすんだっす」


ああ?とガラ悪いやつみたいな声と顔になったデリム。


 「じゃあ10日連続夜勤だ、昼の勤務もあるから忘れんなよ」


 「ひどいっす!」


 「デリムさん、俺はそろそろ戻ってもいいか?」


 「いやダメだ」


俺もなにかやらかしたか!?


 「なにを心配してんのか知らんがもうすこしで晩飯の時間だ、食堂に居るんだし食ってからもどりゃいい」


 「そういうことか」


 「なんだ、ホルスもなんかやましいことしたのか?」


 「心当たりが無いから逆に疑心暗鬼になったんだよ」


そんな感じで話をしていると気付けば厨房から湯気もでていて入り口からちらほら団員たちが入ってくる。


 「ホルスはこっちにこい、俺らの専用席なら落ち着いて食えるだろ」


向こうに混ざりたいならとめんぞ?とデリムは言いながら奥の窓際にある席へ移動する。


 「いや、助かるよ」


晩飯はすこし固めのパンにベーコンみたいな肉と野菜の入ったスープ、コンソメに似てる?のと焼き鳥みたいなサイズの串肉が1本、肉は豚っぽい味だった。




部屋に戻ってきた俺は早々に寝るフリをしてワイズと話をすることにした・・・


 「ワイズ、そろそろ教えてくれるか」


 「なにをでしょう?」


 「マナの実事件から俺の身体に起きてることだ」

 

 「わかりました、まずは慰謝料の話からいたしましょうか」


 「マジデスカ?」


 「マジですがなにか?」


お手柔らかにお願いします・・・


 「難しい説明は省きます、世間では術者が対象である子供の中にあるマナを動かし、知覚できたらマナを流し込んでいきます。徐々に増やしていくことでリソースが拡張されていき生活魔術を支障なく使えるレベルまでにするのです。そこからは個人の努力次第なのですが・・・」


 「俺の場合どうなった?」


 「・・・ご都合主義というのは便利な言葉です、マスターの場合は外部からのそういう干渉をマナの実というモノから受け、破裂することが無い風船のようにばんばん膨らまされたのです。例えるならホースとそれに繋がっている風船をイメージしてください、ホースと風船は柔らかく一度広がれば戻らない材質とします。そこに大量の水を流すとホースも風船も膨らみますが中身を抜いてもホースと風船は膨らんだままなのが・・・」


 「いまの俺のリソースの状態か、ありえる現象なのか?」


 「・・・ありえないでしょうね、外部からの干渉ではそれに似たようなことをした子供のリソースは使い物にならなくなったとチュートリアルで読んだ記録にありました」


 「使い物にならなくなるってのは聞いてないぞ」


 「私が読んだだけで伝えてないだけですよ、ましてそんなことをさせる気もありませんでしたが・・・それ以上のとんでもない状況にされたわけです」


 「もしかしてあの全身の満腹感って・・・」


 「若干違います、物理的に取り込んだことがなにかしら影響したのだと思うのですが、マスターはリソースの限界を知らせる痛みを感じませんでした」


確かにあのとき満腹感はあったし動きたくないでござる状態だったが痛みはまったくなかった。


 「それでも有り余る量が流れていてマナがにじみ出るような感じになりだしたので慌てて対処に回ったのがあのときです」


 「それでどうなったんだ」


 「ここから慰謝料の話です、まず有り余るほどのマナを私の一存で消費、マスターのリソースに手を加えました。人体改造しちゃいましたということですね♪」


なにしてくれてんのぉおおお!?


 「あんな量溜まったままにしておけませんでしたし、それならいっそ消費してしまえ、なにで消費する?魔法や魔術はまだ使えないし、なら安定して使えるような改造をしよう幸いにもマナは捨てるほどある、いじる権利を事後承諾だが慰謝料として請求してしまえ、これでよしとなりました」


 「おいいい・・・」


 「慰謝料はまだ続きます」


 「まだあるんかい!」


 「ええ、マスターを改造した(いじった)あとでもマナの量は余り過ぎていましたので私自身も改造し(いじり)ました」


ワイズも自己改造したってのか・・・


 「ええ、ですが魔王様の相棒のような能力を得るにはいたりませんでした。いろいろ検証したのですがあのような能力を得るのは100%無理だとわかっただけマシでしょうか」


言葉に無念さがあるような気がする。


 「実際無念です、まず私が出来ることをお話しましょうか」


 「どんなことが出来るようになったんだ?」


ワイズが出来るようになったことはまずヴァイスの範囲を知覚できる能力の劣化版、ヴァイスが使ってたときに能力の分析をして俺のヲタ知識とそうでない知識を読み取り、ソレがマナを使った反響レーダーのようなものだとわかったそうだ。範囲はおよそ100メートルで5メートル範囲なら詳細な知覚も可能。

俺が寝ていても視覚に頼らない探査が可能になるのではとワイズ自身も真っ先に考えたらしい。ちなみにワイズの知覚では3D映像に見えるようにしたとかなんとか・・・マナの無駄使いされた?


次に俺の視覚、聴覚、触覚、嗅覚に味覚も追加され分析できる内容の強化、反響レーダーの効果もあり触覚による分析などはかなりの精度になるそうだ。また毒物等も判定可能でそこまで強くないものなら分解や無効化も可能、残念ながら暗殺や凶悪な獲物を狩るのにつかうような毒は出来ないそうだ。


最後にトンデモ内容が出た、ワイズも独自に魔法を使えるようになった。ただし人格設定などの影響からワイズ自身が独自の判断で対象になにかををするのは出来ないとのこと。防御や俺の保護などに関しては問題なく使えるが、基本俺の魔法などを補佐するのがメインになるというかソレが目的だったようだ。


 「・・・となります」


 「・・・これチートっていっても差し支えないだろ」


 「いいえ、とんでもないy・・・とんでもない内容ではありますが100メートル以上からの遠距離攻撃などは知覚できずに一撃を貰いかねませんし、近接攻撃なども知覚したところでマスターの身体能力に依存しますから」


無論、なにかしらの方法で防御はしますがとワイズは付け加える。


 「マスターの感覚器官を使った調査などををカッコよく言うと『解析(アナライズ)』とでも言いましょうか、これはうぬぼれではなく会心の出来ではないかとは思います」

 

 「どこまで出来る?」


 「人体の構造を余すところ無く見れるくらいには、細胞レベルは情報量がおかしいことになると試算されましたので省きましたが十分なはずです」


 「ああ・・・コレはやらざるを得ないのか・・・」


 「そのとおりです、ですが話はまだ終わっていませんので後にしましょう」


 「ほかにもワイズの能力が増えてるのか?」


 「違います、マスターのほうですよ」

 

 「いじった内容か、詳しく頼む」


自分のことだから真面目になる。


 「私もマスターの一部なのですが、大事にしてもらえないんですね・・・」


わざと言ってるだろ!?

 

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