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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

流行りの婚約破棄物に乗っかってみました

作者: はな☆はな

短編を思いつきで書いてみました。

考えながら書いたので多少?の矛盾があるかもです!

少しでも楽しんでもらえたら幸いです

「侯爵令嬢アリアナ・ディアリスト、お前との婚約を破棄する!」


大勢の人たちの前で突然婚約者である伯爵令息アラン・マンテストに告げられた




ここはアリアナたちの通う学園のダンスホールである


今日はこの学園の卒業式

そして今は卒業式後のパーティの真っ最中だ



本当ならこのパーティに婚約者のアランと一緒に出席するはずだった

それなのに時間になってもアランは迎えにきてくれなかった

とりあえずこのまま待っていてもどうにもならないと慌てて侯爵家の馬車で送ってもらった次第だ


着いてすぐアランの事を探した


ひょっとして体調でも悪くて急に来れなくなったのかも

急な用事で一足先に会場に来ているだけかも


本当は自分でも理由はわかっていた

それでも、それを認めたくなかった

だから、色々な理由をつけてアランの姿を探した



アランはホールの中にいた


なぜか婚約者である自分ではなく、最近一緒にいる姿をよく見かける女性と談笑しながら


ーその女性はあなたにとって何なのですか?


ーどうしてわたくしではなく、その女性が隣にいるの

ですか?


いろんな感情が湧き上がって来た


まずは声をかけて、どういうことか聞いてみなくては

そう考えてアランに向かって行った


するとアリアナの姿を目にとめたその女性が急に怯え始め、アランにしがみついた

その事でアリアナが来たのに気づいたのか、先ほどまで楽しげに談笑していたアランの目が、酷く冷たくアリアナを睨みつけ、その女性を自分の後ろに庇った


「アラン様、どうして迎えに来てくださらなかだのでしょうか?何か急用でもございましたか?

それにそちらの女性はどなたでしょうか?酷く震えておられますがいかがなされたのでしょうか?」


アリアナからしてみればアランになぜ迎えに来なかったのか問い詰めたいところだ

しかしここはホールの中央

他にもたくさんの招待客がいる

更にもう時期王族の方々も祝いに来られる

大きな騒ぎにするわけにはいかない

また、自分ではない女性がアランのそばにいるのは納得いかなくても、なぜか酷く怯え、震えている女性を無視などできない

アリアナはとても心優しい女性であるので、自分の不満よりその女性を心配する言葉が先に出たのだ


そこで上記の言葉がアランから発せられたのだ


アリアナからしてみたら寝耳に水

なぜ急にそのような事を言われたのか全く意味がわからなかった


「アラン様、どう言う事でしょうか?

あの、これからここではパーティが始まりますし、また後でお話をさせていただければと思うのですが」


突然のことに困惑をにじませながらも、これからのパーティのことを考え、この場をとりあえず収めようとした

しかし


「この場で自分の罪を暴かれたらお前が困るからそのようなことを言うのだろう!」


ますます意味がわからない

自分の罪?

暴く?

いったいアランは何を言っているのか?

全く身に覚えのないアリアナからしたら困惑以外表せない


「お前はここにいるリーザのことを執拗に虐めていただろう!しかもつい3日前には階段から突き落とそうとした。幸いリーザが手すりにつかまったおかげで大きな怪我もなく済んだが、一歩間違えば命の危険もあったんだぞ!」


「ま、待ってください!わたくしはそのようなことしておりません!そちらの女性は最近ご一緒されている方ですよね?わたくしは名前すら知りません。名前もクラスも知らない方をどうやって虐めるというのでしょうか!」


アリアナは最近アランと一緒にいるというのは知っているがそれ以外の事は全く知らないのである


「ふんっ。僕といつも一緒にいるという事で嫉妬したのだろう。クラスも名前も知らないなど、見え透いた嘘だ」


アリアナは全く嘘など言っていない。本当に知らないのだ

仮に知らなくても後をつけて何がしかをする事はできるかもしれない

しかし、アリアナは暇人ではない

学生会の役員をしているアリアナは授業が終わればそれなりに仕事がある

また、家に帰るとアランとの婚姻に向け、花嫁修行や淑女教育などあり自由になる時間は寝る前のほんのひと時しかないのが現実だ

それでどうやって後をつけていじめを行なったりできるというのか逆に教えて欲しいくらいだ


事の成り行きを見守っていた参加者たちもこの男はいったい何を言っているのかと信じられない眼差しで見つめている

アリアナが学園で忙しくしているのは皆んなが知っている事だ

そもそも嫉妬して人を虐めることなど、アリアナに限って絶対あり得ないのだ

それだけ優しく、他人思いな令嬢だと学園中の人間が知っている

だからアリアナに対して同情する人間はいても、一緒になって批判するような人間はこの場にはいない

それどころか婚約者であるアリアナがどういった人間か一番理解しているべき男が全く理解しておらず、それどころか婚約者がいながら違う女性と一緒にいる姿に呆れた眼差しや冷たい眼差しを向けている

それに気づいていないのはアランとリーザだけだ


「アラン様、最近その女性といつも一緒にいたのは存じています。しかし、わたくしはアラン様のことを信じておりました。ですので嫉妬を全くしなかったとは言いませんが、それでその方を虐めたり、ましてや階段から突き落とすなど断じてしておりません!」


「えぇーい!見苦しい!言い訳はたくさんだ!正直に話しリーザにきちんと謝罪するなら婚約破棄で済ませようと思っていたがこれ以上嘘をつくならそれなりの対応をさせてもらう」


それなりの対応とはなんだ?とこの場にいた全員が思っていた

そもそも身分制度がきちんとしたこの世界で侯爵令嬢のアリアナより伯爵令息のアランは格下だ

そのアランが婚約者をないがしろにし、あまつさえ他の女性と親しくし、この様な公の場で婚約破棄など恥をかかせるような真似をしたのだ

侯爵家よりなんらかの処罰が与えられるのはアランの方だ


「お待ちください!とにかく控え室に行ってお話を致しましょう」


アリアナは焦っていた

自分がこの場で恥をかかされたというのに、ましてやでっち上げで責められているというのに気にかけているのは自分のことではない

もうすぐ王族の方々がこの場に登場される

その事は皆んなが知っている事だ

更に言うとアリアナの父は実は王妃の兄にあたる

この場面を見られて困るのはアリアナではなくアランなのだ

この様な騒ぎを起こしている場合ではないのだ


しかしアリアナの気持ちは全く気づいてもらえず一向に移動する気配がない



「ふんっ。どうせこれだけの人の前で悪事を暴かれるのは困るからその様なことを言っているのだろう

この際だからお前がいかに心の狭い、意地の悪い女だということを知ってもらえば良いのではないか?」


「アラン様」


その時弱々しく可憐な声がした

アランの隣にいるリーザという女性だ


「私はもういいのです。アラン様と一緒にいられればアリアナ様に謝ってもらわなくても平気です」


「リーザは優しいな

しかしここで追求しないとアリアナは調子に乗ってまたリーザに意地悪をするかもしれない。また階段から突き落とすような危険なことをするかもしれない

君に何かあったら僕の心は張り裂けてしまう

だから止めないでおくれ」


先程からアリアナに向けて発する冷たく荒々しい言葉ではなく、優しく諭すようにリーザには声をかけている


だからお前の婚約者はその女じゃないだろ!とは周囲の人間の満場一致の心の声だ


そんな呆れた空気の中



「国王陛下、王妃陛下、王太子殿下がいらっしゃいました」


あぁ、来られてしまった

もうわたくしではどうしようもないわ


アリアナはこの後の展開が目に見えるようだ



「なんだ、この騒ぎは」


国王の登場に皆んなが膝をおっていた

そんな中

怖いもの知らず

と言うより

はっきり言って

バカとしか言いようのない発言をする男がいた


「陛下、発言をお許し下さい」


そう。アランである

頷いた国王を見てなぜか得意げな顔

意味がわからない


「陛下、まずはこの場をお騒がせしたことをお詫びいたします」


一応悪いとは思っているのか?

だったらやめろよ!と思っても仕方ないだろう


「私の隣にいるのはモンテ男爵令嬢のリーザです」


男爵令嬢だったのか

やっとここでリーザの正体がわかった

わかったところでなぜここで紹介をするのか?と疑問に思った参加者である


「わたくしはアリアナと婚約しておりました

しかし、アリアナはわたくしのそばにいるこのリーザに嫉妬をし、執拗な虐めをしたのです。わたくしはその様な意地の悪い女を妻に迎えるつもりはございません!

そして先日など階段から突き落とし大ケガを負わせようとしたのは犯罪だと思っております。それはいかに侯爵令嬢といえども許されることではありません

なのでわたくしはこの場でアリアナとの婚約を解消し、更に反省の色の見えないアリアナに罪を償うべく罰をお与えいただければと思っております

どうぞ、よろしくお願いいたします」


バカだ

ここにバカがいる!


王妃陛下の姪であるアリアナの事を国王陛下が溺愛しているのは周知の事実である

本来なら王太子殿下の婚約者になってもおかしくなかった

しかし、アランの父親の伯爵とアリアナの父親は学生時代からの親友である

伯爵から是非息子の嫁にと言われ、侯爵が受けたことにより王太子殿下の婚約者になることはなかった

要は申し出が伯爵の方が一歩早かっただけである


そんな現状を知らないはずはないのに、いや、知らないのか?知らないとしか言いようのないこの仕打ち


この後を想像すると参加者は顔を上げることができない


顔は上げていないが、ホールの空気が段々と冷え冷えとしてきたのは感じ取れる


「そのほうはアリアナが意地が悪い女だと言うのか」


氷点下の声である


一方、アランはなぜこんなにも国王の声が冷え冷えとしているのか訳がわからなかった

いや、自分の発言にアリアナに対して強い怒りを感じていて下さっているのだ


なんとオメデタイ頭なのか

とんでもない方向に思考が進んでいた

おかげで更に場の温度を下げる発言をかました


「はい、その通りです!

この様な女は侯爵令嬢などという地位は剥奪するべきです!そして、この国から追い出すべきです!」


あぁ、言ってしまった

なんてバカな発言をしたんだ


周りは冷や汗ダラダラである


アリアナはあまりのことに口を挟むこともできず、唖然としてアランの顔を見つめることしかできなかった


「ほぉ。アリアナの身分剥奪に国外追放となぁ

ユリアナ、イルヴェルト、あの様な事を言っているがどう思う?」


「そこの男爵令嬢ですか?少し伺いたいのですがよろしいかしら?」


いつもの優しそうな眼差しとは正反対の凍える様な冷たい眼差しで王妃が声をかけた


「はい!何なりとお聞きください!」


しかし、空気が全く読めないのか、ただのバカなのか嬉しそうに返事をするリーザ


「あの様な事を言っておりますが、あなたは本当にアリアナに虐められたのですか?」


「はい

私はただアラン様のそばにいたかっただけなのですが、アリアナ様はアラン様から離れろ!お前の様な身分の低い人間は学園を去れ!と暴言もはかれました」


いやいや、アリアナ様は貴族だろうが平民だろうが分け隔てなく接し、誰にでも優しいことは有名なのになんて事を言うんだ!

聞いていた学生たちは怒りを覚えた


学生の中には平民もいる

そして学園の中では身分に関わらず皆んな平等に過ごすことが伝えられている

だが残念なことに貴族の中にはそんな平民をバカにしたり、平気で罵倒し命令をする者も残念ながらいたのだ

しかし、アリアナはそんな平民を庇い、優しく声をかけた

また、そんな貴族には時には厳しく叱責をし、諭し、誰しもが過ごしやすい学園を作ろうと努力し立ち回っていたのだ

そんなアリアナが男爵令嬢であるリーザを身分が低いから学園を去れなどと言う訳がないのだ


「おかしいですね

わたくしはアリアナは身分の低い者にも優しく、学園で過ごしやすい様に尽力したと話を聞いています

それは本当にアリアナの話なのですか?」


「本当です!

この場にいる誰もがその事を知っています」


…………………は?


なぜそんな発言が飛び出したのか

全くもって意味不明である


「それではここにいる者たちに聞いても良いと言うのか?」


初めて王太子が発言をした

それを受けて頬を染め更に嬉しそうに発言するリーザ


「はい、構いません!アリアナ様の横暴ぶりは誰もが知っていることです

虐げられていた者も多くいます!」


「それでは聞くが、この中にアリアナにバカにされた、虐げられたと言うものはいるか?」


勿論、誰も返事をしない

それどころか


「発言をお許しいただけますか?」


1人の女性が王族を前に緊張しているのか震える声で、しかしはっきりと声を発した


「あぁ、構わない」


王太子の許可が出たことで前に出てはっきりと告げた


「私は平民です。この学園は貴族も平民も関係なく平等だという話でしたが、それでも中には私たちをバカにしたり、使いぱしりのようにこき使う方がいたのです。でも!

でも、アリアナ様は平民である私たちにも優しく声をかけてくださり、時には助けてくれていたのです!


そこにいるリーザ様はアリアナ様にバカにされた、虐げられたと仰っていますがリーザ様こそ私たちをバカにし、学園をやめろと言っておられました!」


「な!

嘘よ!そんなこと言ってないわ!


王太子殿下!私はそんな意地悪していません!きっとアリアナ様に脅されて発言しているのです!」


まさか自分の事を言われるとは思っておらず大慌てである


「アリアナに脅されているのか?ここに私は勿論、国王もいる。真実を嘘偽りなく述べよ!」


「脅されてなどいません!それにアリアナ様に助けてもらったのも、リーザ様に暴言を吐かれたのも私だけではありません!」


「私も助けてもらいました!」


「僕も暴言を吐かれました」


次々に声が上がる




リーザは焦った

まさかアリアナの味方がこんなにいるとは思わなかったのだ

男爵令嬢という身分は決して貴族の中では高い地位ではない

しかし、平民よりは上である

だから自分のした事を喋る人間はいないと思っていた

それどころか散々虐めたから自分に逆らう人間がいるとは思わなかったのだ

随分と浅はかな考えだ


ここで今まで黙っていたアランが声をあげた


「アリアナはとてもうまく立ち回っていました

自分が虐めておきながら陰で脅し、リーザに罪を着せようとした

今発言した女性もきっとアリアナが怖いのです」


やはりバカである

どう見ても周りはアリアナの味方だ

それは王族もしかり

だがそんな事は全く気づいていない、お目出度い思考の持ち主である


さすがに国王も呆れてしまった

これ以上こんな馬鹿げた事に付き合う義理もない


「わかった

それでは報告を聞こう


アレックス」


「はい」


呼ばれて出てきたのはこの学園の教師の1人


「御前失礼致します


さて、それでは報告を致します

その前に

これから発言することは嘘偽りなく

全て真実であると女神オーレスティアに誓います」


女神オーレスティアとは、この世界で信仰される唯一の神である

この女神に違うということは嘘をつけない、ということである

なぜなら嘘をついた時点で神罰がくだるからだ

過去には軽い気持ちで誓い、嘘をついた事により声が出なくなった人間が1人や2人でなくいるのだ

中には呼吸ができなくなってそのまま絶命した者もいる

それだけ女神に誓うということはおおごとなのである


その発言を受け、周りもざわつく



「まず伯爵令息アランであるが、アランはアリアナ様という婚約者がいるにもかかわらず、リーザと随分と親しくし、毎日所構わずイチャイチャしていました。

そして今日のパーティでも、本来ならアリアナ様を迎えに行きエスコートすべきところをリーザをエスコートし、遅れてきたアリアナ様にいきなり婚約破棄を告げていました」



「そしてリーザですが、まず、ニ月前に突然アランにわざとらしくぶつかり、上目遣いで誘惑。その後しばしばアランの前に現れ急激に接近。一月前には常にそばにいるようになりました」


「ちょっと待ちなさいよ!わざとらしくとか誘惑とか失礼でしょ! 」


「黙れ!

勝手な発言は許さない」


さすがの国王も苛立っており、かなりの威圧感を発している

リーザもこれには顔色を悪くした


「アレックス、続きを」


「御意!


それでは続けます

アランに婚約者がいるのは、そしてその婚約者がアリアナ様であることは知らないものはこの学園にはいません。にもかかわらず、アランに接近。誘惑したととられても仕方ないことだと思います

更に、アリアナ様とは直接顔を合わせたことがないにもかかわらず、執拗に虐められたとアランに伝え、その証拠となる破られた教科書、切られた制服などを自作自演していました

そして、階段から突き落とされたとの事ですが、実際その現場を目撃したものは1人もおりません

にもかかわらず、アランはリーザの発言を全く疑うこともなく鵜呑みにし、アリアナ様を責めておられました


以上がわたくしが目にし、調べた真実です


あぁ、余談ですが

ここにいるリーザがアランを誘惑したのは、父親であるモンテ男爵が事業に失敗し大借金を作ったため金持ちの男をたぶらかす必要があったからです

更にアランの家は国王の信頼も厚い伯爵家。そこと繋がりを持つことができれば国政にも関わることができると計算したようです


あとはアリアナ様に対する嫉妬ですね

美人で可愛らしく、学園の人気者

成績も優秀でいつも人々の注目を集めています

自分の方が可愛い、自分の方が人々の中心にあるべきだと思い上がり、アリアナ様を蹴落とすために今回のことを父親と計画したようです」


ここまでなんとか黙って聞いていたリーザだったが、真実を暴かれ真っ青になり恐怖からか、怒りからかブルブルと震えていた


そしてその発言を聞いてブルブルと震えている人間がもう1人


「リーザ

今の話は本当なのか?

アリアナに虐められたのも階段から落とされそうになったのも全てうそなのか!?」


そう、アランである

アランは信じられない気持もあったが、女神に誓ったアレックスが嘘を言うはずがないという怒りに身体が震えていたのだ


「アラン、私は嘘なんてついてないわ

きっと先生が嘘を言っているのよ!アランは私のことを信じてくれるわよね!?」


「ではリーザも女神に誓うんだ

誓って、アリアナに虐められた、階段から突き落とされたと言ってみるんだ!」


そのセリフを聞いたリーザはまだ騙せる!まだ大丈夫だと思った

なぜならリーザは女神への誓いなどただの迷信だと思っていたからだ


「えぇ、いいわ!


女神オーレスティアに誓うわ

私はアリアナに虐められ、暴言を吐かれたわ!

それに階段から……」


突然リーザが黙った

いや黙ったのではない、声が出なくなったのだ

パクパクと口を動かすが出てくるのは空気だけ


ここまでくればアランもリーザが嘘を言っていたと信じるしかない

いや、アレックスが女神に誓い発言した時点でリーザの嘘はわかっていたのだ

しかし、リーザのことを信じたい気持ちもあった

それも今の状況ではどうにもならない


アランはアリアナと向かい合った


「アリアナ、すまない

君のことを蔑ろにしリーザの言ったことを間に受け責めた

本当に悪かった」


ここで終わればまだ良かったのだ

それなのに


「だからもう一度僕とやり直そう

やっぱり僕の愛する人は君しかいないよ」


バカである

そしてKYである

あれだけの発言をし、どうして元サヤに収まることができるなんて考えれたのか

呆れてものも言えないとはこの事だ


「黙れ!」再び冷たい声が響いた


「貴様はアリアナをバカにしているのか?

アリアナがいるにもかかわらずその女の誘惑に負け、嘘を鵜呑みにし一緒になって断罪し、あまつさえこんな大勢の中で婚約破棄を宣言した

更にこの国の国王でありアリアナの叔父にあたる陛下にアリアナの身分剥奪、国外追放を願い出ながらよくもやり直そうなどと言えたな!」


「へ、陛下がアリアナの叔父!?」


まさかのまさかである


本気でアリアナと王室の関係を知らなかったようだ

伯爵令息ともあろうものが、とんだ無知である


「あり得んな、婚約者だったにもかかわらずそんなことも知らなかったのか?

それでよく婚約者などと、伯爵令息などと言えたな?


お前などにアリアナは勿体無い


もう遠慮なんかしないぞ」


そう言うと王太子はアリアナに近づき跪いた


「アリアナ、これまでは婚約者がいると思って我慢していた

だが、こんな風に君を傷つける奴になんて遠慮するんじゃなかった。そのせいで君のことを傷つけてしまった、すまない


アリアナ、俺と結婚してくれ

小さな頃から君のことを愛していた

いずれ君と結婚できるとあぐらをかき悠長にしているうちに横から掻っ攫われてしまった、情けない限りだ。

君が幸せならと自分の気持ちは言うつもりはなかっ

だがこれからは俺が君を幸せにする

いや、一緒に幸せになろう」


真摯な眼差しで見つめられ、真剣な告白にアリアナの目から涙が溢れた


「わたくしは婚約者に婚約破棄されるような女です

それでも良いのですか?」


「今回のことは君に非は全くない

それどころか君は被害者だ

君でいいんじゃない、君が、いいんだ。アリアナ、返事は?」


ポロポロ、ポロポロと涙は止まらない


「 …っ!

はい!イルヴェルト殿下、お受けします

よろしくお願いいたします」


その瞬間会場中が沸いた


誰よりも優しく、美しく、心の広いアリアナだからこそ、未来の王妃に相応しいのだ



立ち上がったイルヴェルトは涙の止まらないアリアナをそっとその胸に抱き寄せた


その眼差しは先程までの冷え冷えとしたものとは違い

、どこまでも優しくあたたかかった









なんとか短編で収められてホッと一安心!他のお話も是非読んでください!

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― 新着の感想 ―
[良い点] これ以上ないくらいストレートで読みやすく、面白い作品でした。 次回作も期待しています。
[良い点] やっぱり婚約破棄物は面白いです。 [気になる点] 個人的にはアランとリーザの末路が気になりました。
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