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GESU FOUR MAN ARMY  作者: 白黒 鈴
7/15

七:護衛開始





「ふざけんなゴラァア!!だれもフラグ建ててねぇぞおおおぉお!」


――――オオォォオ

―――オォォ

――ォォ


『Kisyuuuaaaaaa!!』


 チャーリーの怒号が森に木霊すると、落雷のあった方から絹を裂くような雄叫びが返ってくる。それは猫の威嚇に金切り声を混ぜたような音で、背筋に寒気が走る。


「ヤバくない?」

「マジヤベェな」

「音は光ってから一秒ちょっと後に聞こえたよー」

「となると五百メートル以内にはいるな……、おーし警戒怠るなよ。雷が落ちた方に注意」


 ひきつった顔のギルと苦虫を噛み潰しながら笑うチャーリーに対し、冷静にこれからの方針を纏める二人。それぞれガスマスク以外の外していた装備を付け直し、マークスは通信端末を取り出す。


「念のために」


 通信端末を操作しある装備を召喚すると光の粒子が集束し、≪WEAPON BOX≫と書かれた暗緑色の長方形のケースが形成される。


「ほぉ……」

「これは…一体……」

「……キレイ」


 ケースの留め具を外し開ければ、二段重ねになった六本の筒が露になる。

 それは『M72 LAW』と呼ばれる使い捨て対戦車ロケット弾で、小型軽量かつ安価簡便の個人携行対戦車兵器。

 ベトナム戦争から導入され、対戦車攻撃以外にも対装甲車・対人・はたまた壁破壊ウォールブリーチ等、手榴弾感覚で使用されており、現在でもその簡便さから一部では現役である。

 マークスが取り出したのは派生型の一つで、一九六五年から採用された『M72 LAW』に幾度の改良を施したアメリカ海軍仕様の『M72A7』。

 バズーカと間違われるがそれはまた別の対戦車兵器である。


 スリングを伸ばし背負うと、ギルも一本取り出す。


「こんなに必要いる?」

「なんとなく、な。使わなかったらそれでいいが、問題はこいつが通用しない時だ」

「異世界人に対してはお気楽なのに、こういう時は慎重だね」

「当たり前だろ、死にたくねぇもん」

「それもそうだね」

「とりあえず、もう一本ほい。俺とお前で二本ずつな」

「りょーかい」


「あ、あの~」


 災厄ディザストロとか言う化物対策をしていれば、おっかなびっくりな声をかけられた。声の主を見れば、今の空のように綺麗な色が映る。


「どうしましたステラさん?」


 両手に武器のギルが柔和な笑みで応対する。


「その、持ってるおっきな筒?みたいなのは……」

「これ?M72っていう武器ですよ。ちゃんとした手順を踏まないとただの筒ですけどね」

「これが…武器なんですか」

「持ってみます?」

「いいんですか」


 妹の後ろにいるルイスにギルが視線を送り許可を求めると、頷かれた。こちらは興味津々といった様子だった。


「どうぞ」


 ドキドキワクワク。そんな擬音が聞こえてきそうであるがマークスは無視して散弾銃手ショットガンナー機関銃手マシンガンナーにも渡す。


「ほい」

「おう」

「ありがと」


「え?」

「は?!」


 何事かと振り返ればぽかんとした娘と驚愕で固まった三人がいた。


「どうした?」

「いやランチャー渡して手を離したら、ほら」


 もう一本を渡して手を離した瞬間、光の粒子(ポリゴン)となって消えてしまった。


「「「え?」」」


「What’s happened?」


 チャーリーがネイティブな発音をするがそれどころでは無い。さっきそこにあったはずのモノが消えたのだ。

 試しにさっきあった空間に手をやってもなにもない。端から見れば変なことしているマヌケだ。


「何で消えたし」

「いやわかんないよ」

「てかどこ行った」

消失ロスト扱いかな?あと他に考えられるとするなら~倉庫に送られたとか?」

「あー、ちょいまち」


 通信端末で倉庫内の並び順を"入手順"に変更すれば……、ない。


「ない」

「補給の欄とかは?」

「そっちは~、あった」


 画面に表示される『M72A7』の文字。


「んー、これ他のアイテムとかはどうなんのかね?」

「と言いますと?」

小銃ライフル手榴弾グレネード弾倉マガジンとかその他諸々、持たせたらどうなんのかって事」

「あーなるほどね」


 通信端末を操作し、先ほどのより大きい≪WEAPON BOX≫が形成される。

 留め具を外せばぎっしりとつまっている()()()


 ロングブレードのサバイバルナイフ、黒いマチェット、M67破片手榴弾アップルに消耗した分の7.62×51mmNATO弾の詰まった二十発弾倉(マガジン)AKS-74U(クリンコフ)とその空弾倉、先程無くなったM72A7が二本、その他etc……。



◆◇◆◇◆◇



 ステラさんに協力してもらった結果、わかった事は三つ。


一、銃、砲、爆発物、NBC兵器類は渡せない。

二、但し、分解した部品パーツは渡せるが、組み立てると消失する。

三、近接武器(ナイフ、鉈、バールのようなものやモンキーレンチ等々)、衣類、食料品関係は渡しても消えない。


「大方のこんなもんか」

「だね」



「そういえばよー、この後どーすんだよ」


 のんびりとした口調でチャーリーが呟き、全員の視線が集まる。


「言われてみればなんも考えてなかったな」

「私達としては、早く屋敷に帰りたいのだがな。父上に報告せねばならん」

「そうですねぇ、ルイスさん。俺達を護衛として雇いませんか?今回は場合が場合ですんで格安にしますよ」

「ふむ、それはありがたい。報酬の支払いの詳細は……」

「仕事が終わった後でかまいません」

「では雇うとしよう」

「交渉成立ですね」


 お互いに握手を交わす。スラッとしたなりだが、握った手はしっかりしており、剣だこがあった。


「結構鍛えてるんですね」

「私はいずれ父上の跡を継がねばならん。民を守るのは領主の務めだ。民の盾にならずしてなんとする」


 その目には確固たる意志があり、なかなかに好感の持てる人だ。


「んで隊長」

「何?」

「具体的な行動方針は?」


「ソレについては、どうしよっか」


 隊長のあまりものノープランぶりに全員がずっこける。


「参謀!後お願い!」

「あんたねぇ」


 おもいっきり呆れ返る作戦参謀。いつもの事かと割り切り、思案を巡らせる。


「とりあえず、さっきの道に行こう。その後は実験を兼ねてビークルを要請して移動。ダメだったら諦めて徒歩だね」

「だそうですよ」

「了解」

「ルイスさん達もかまいませんね」

「ああ、かまわない。ただその"びーくる"というのは一体?」

「それはぁ、まぁ着いてからのお楽しみという事で」



◆◇◆◇◆◇



 マークス達の行動方針が決まってからの行動は早く、湖から襲撃のあった場所に舞台は移る。


 オークの死骸が腐り始め、血と糞尿の臭いがよりキツくなっている。


「臭い……」


 鼻を摘まんでげんなりとしているアスカ。目にも刺激が来ているのか涙目である。


「焼いたほうがいいぜ。伝染病が起きたら目もあてらんねぇぞ」

「それは避けたいのだが、どうしたものか」

「お兄様、私の魔法で燃やしてはどうでしょう?」

「それは良い案だが魔力は持つのか」


 道に転がる二十を超えるの肉塊。それも一つ一つが二メートルはある。


「あ、えと、ちょっと厳しいです」


 死骸を見ながら考える。隣でもアスカが処理方法を考えて唸る。


焼夷手榴弾サーメートで焼けばいいんじゃないのコレ」

「だな」


 




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