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人狼サバイバル  作者: 牛丸
絶望
4/5

招待 ールール説明ー

「あなた方が連れて来られた理由は、大きく分けて2つです。1つ目、犯罪者はこの世の癌である事。2つ目、あなた方は賭けの対象。」


この世の癌…賭けの対象…?なんだそれは。相変わらず、全く話が読めない。

少女はそんな僕達の気持ちを無視し、淡々と続ける。


「我々の第一の目的は、この世からの悪…即ち犯罪者の根絶。あなた方は、選ばれた犯罪者達です。まずは悪を消すのが世作りの定石です。」


「ちょっと待ってくれ、僕達が犯罪者で、その理由なだけにここに集められたと?」


そういう村上和人に鋭い目を向け、変わらず淡々と答える。


「はい。その通りです。それぞれ自己紹介…なんてしなくともいいですね」


冷めた目で睨むでもなく、特別な感情があるでもなく、村上和人を単純に見つめ、ゆっくり視線を戻す。


「では、早速〝ゲーム〟説明をさせて頂きますね。」


トントン拍子で進めていく少女とは裏腹に、緊張が走り、皆が一体になった気がする。三浦紗枝だけは、相変わらず痛みに悶えているが、その他は唾を飲み、今にも糸が切れそうな、瞬きをも許さない空気を漂わせる。


「あなた方にしてもらうのは、人狼ゲームです。それも、サバイバルをしながら行って頂きます。」


「では、何日か長引くものということ…で宜しいかな?」


口火を切ったのは斎藤守。この初老の男性も手配書で見たことがある程度で、よく分からない。


「はい。期限は取り決めがなく、勝敗が決した時点で終了になります。」


「わかりました。すみませんね、続けて下さい。」


少女は続ける。


「はい。では、人狼における配役ですが、予言者、霊媒師、猫又、狩人、狐、背徳者、狂人、狂信、の各1名ずつと、共有者の2名、そして最後に、人狼は5名で14個の配役があり、残りは村人となります。」


「じ、人狼が5人も!?」


僕は思わず大きな声が出てしまった。僕は人狼というゲームを知っている。だからこそ、20人に対して人狼が5人もいる状態の異常性を理解していたのだ。


「ん…なんだ?じん…ろうが5人だとなんかあんのか?」


井上誠二が頭を捻ってきょとんとしている。同じように、意味が分からない人もいれば、知っていて、僕と同じように顔の険しい人もいる。


「役は以上です。後ほど、厳正な抽選のもと、役決めを致しますので、次に移り、勝敗の付け方を説明致します。」


大男は退屈そうに体を捻って落ち着きがない。それはそうだろう。当事者である僕ら以外からしたら、良い見世物か、映画の上映前のCMみたいなものだ。

待てよ…見世物…


「勝敗の付け方だが…」


僕は何かが引っかかる感じがした。何かが、なんなんだ、これは。


「大きく分けて、3つの陣営に別れてもらいます。1つは、予言者、霊媒師、猫又、狩人、共有者、村人を含む村人陣営。次に、狂人、狂信、人狼を含む人狼陣営。最後に、背徳者、狐を含む狐陣営です。」


見世物…もしかして僕達は…。


「それでは最後に各役目を説明致します。毎晩1人を指定して、人狼か村人か知ることができる占い師、毎晩その日の昼間に処刑した人が人狼か村人かを知ることができる霊媒師、毎晩1人を指定して人狼から守ることの出来る狩人、人狼に襲撃されても道連れに出来るし処刑されても誰かを道連れにする猫又、お互いを把握し合い唯一村側で相互関係にある共有者、人狼が誰かも知らないし何の能力も無い村人ーー」


「ちょ、ちょっと待ってくれ…ええと、うん、うんうん。よし。続けてくれ。」


またもや付いていけなかったのか、井上誠二が割って入る。

だが、僕は知っているから良いものの、知らないものからしたら、序盤で理解するのは至難の技だ。いくら記憶力に自信があるものでも、この役目を覚えた所で、どこにどう活かすかという重要な部分までは分からない。


「続けますよ。」


と少女。


「人狼が勝利した時に自身も勝利となる何も出来ない狂人、同じく人狼が勝利した時に自身も勝利となる人狼を知っている狂信、狐が勝利した時に自身も勝利となるが狐が死ぬと共倒れする背徳者、人狼に襲撃されても死なないが占われると死ぬ狐、これらの役職が各1名で、共有者に関しては2名、毎晩1人指定して村人を襲う人狼5名、残りが村人です。狩人は連続して同じ人を守ることができず、それぞれの役職は死んでも明かされることがありません。」


……僕は何も無いが、皆黙ったまま、何かを考え込んでいるようだった。あの井上誠二でさえ、視線を落とし、考えにふけている様子だ。


「質問がないようでしたら…」


「質問!」


少女の話を途中で切り、少し背の高い女性が勢い良く集団の中から飛び出てきた。


「我々がこのゲームをすることで身体的悪影響は出るのでしょうか?だとしたら、そもそも義務の無いこの遊びに時間を割く利点が見いだせません!」


この女性は確か、磯川みなみ。元自衛隊にして、その戦闘技術を活かした殺人により指名手配されている人だ。


「ーー遊びですか。」


少女はこう綴るのだった。


「生きるか死ぬかの事柄を遊びで片付けるあなた方、犯罪者の気持ちはやはりわかりませんね。」


ザワつきが広がる。質問をした当の本人も、口を半開きにして何も出てこない。生死をわけるゲームなんてノンフィクションの世界だけだ。だが、ほとんどが信じている様子なのは、三浦紗枝の指が躊躇いなく切り落とされたからだろう。


「それでは、あなた方の命を〝賭けて〟ゲームをして頂きます。差し当って、約決めに移ります。」

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