招待 ー始まりー
「人狼…サバイバル…?」
村上和人が小さく言う。
「ち、ちょっと待ってっ!なんなの一体?まず私達はなんでこんなわけの分かんないとこにいるの!?ここは島?あんたらはなに?もう意味不明!」
と、野次を飛ばし始めたのは西川祈。彼女も指名手配書で見たことがある。にしても、実物はどうも小さくて可愛い。守りたくなるような人だ。いや、そんな事はどうでもいい。まずは彼女の言う通り、状況を把握する事から始めないとだ。
「その、僕達は…集められた…のでしょうか?」
恐る恐る聞いてみると。
「あなた方は、皆、共通している事があります。お気づきの方もいると思いますが、指名手配されている犯罪者です。」
やはりそうだった。村上和人が口を挟む。
「つまり、何らかの理由があって、指名手配中の犯罪者である僕達を一つの共通点として、ここに拉致…いや、集めた?の方が正しいか…てことかな?」
「はい。あなた方は、犯罪者です。この世から消されても、何も不具合の無い癌です。」
「おいくそがき!散々言ってくれるじゃねえか!ああ!?あんまり舐めてっと…」
「やめろ誠二。状況が把握しきれていない今、大人しくしていた方が無難だ。」
少女に煽られ、感情的になった井上誠二を宥める村上和人。
キーーーーーーン
「痛っ…!!くっ…」
突然頭の中から割るような劈く音がした。
「な、なんだこれは…」
僕だけじゃない。皆、頭や耳を抑えて顔を歪めている。どうなっているんだこれは。
「あなた方は、ここに集められる前に、頭に遠隔マイクロスピーカーを埋め込まれています。その他にも、各々〝役に合わせて〟体には様々な動きを可能にする手術が施されています。」
ようやく鳴り止んだ。と同時に少女が言った事に皆、理解が追いつかないようで、疑問の表情を隠しきれないでいる。
「おい、デカ男。俺といっちょ殺し合わねえか?なあに、どっちかが死ぬだけだよ。心配すんな。」
周囲がどよめく。このビルの屋上からばりの目線で物騒を言う男は、確か国際手配されている、ゴウと呼ばれる軍人崩れの殺し屋。名も含め、詳しいことはよくわからない。
「なあ?どうだよ?俺と…」
「では、本題に入らせて頂きます。」
少女がゴウの言葉に割って入る。
冷たい視線ははるか先を見据え、目は開いていても、何も見ていない様な印象を受ける。冷酷とは、こんな目を言うような気がする。
「ちっ。邪魔が入ったな。また今度なデカ男。」
鼻で軽く笑い、集団の中へと消える。
「まず、ここにあなた方が連れて来られた理由から、お話したいと思います。」
僕達はまだ知らない。これから始まる絶望という名のサバイバルゲームを。