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転生少女は雑貨屋になりたい  作者: conon
第一章 幼少期
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1-7 木の削り粕

7話目です。

二日目の就寝までのお話。

---すっかり日も暮れ、飲み込まれそうな程の闇が岩場に広がっている。


 その岩場に1つ。小さな明かりがあった、吹けば消えそうな程の仄かな光。

 光に照らされているのは一人の少女。俯き加減に光を眺めていた。暗い表情で---


 

「ハァー・・・」


 結論から言おう。火は点かなかった・・・。

 途中までは上手く行っていた。焦げ臭い匂いと微かな煙が上がるところまではいけた。

 そこまで行ければもう一息のはずだった。

 もう少し擦っていくと黒い削りカスに火種が発生する。

 それを火口に乗せ息を軽く吹きかけ、火を燃え移らせる。

 そこに小枝から順に薪をどんどん大きくしていく。そうなる予定だった。


「ハァー・・・」


 簡単に黒い削りカス(炭粒)ができるとは思っていなかった。

 ここが難関で、あとは作業だと思ってた。


「まさか、折れるとは・・・」


 そう、折れたのだ。軸にしていた方の先端を丸めた枝がポッキリと折れた。

 上手くいきそうだっただけに、私の心もポッキリと折れた。


 私も阿呆だ。

 完全に乾ききってて、子供の手で折れちゃう枝に強度なんてある訳ないじゃないか。

 自分でも加工自体には不安を感じていたじゃないか・・・。

 こうなる事も想定するべきだった・・・。


---岩に腰掛け、両手で【赤い水晶】を包み込む様に持ち語りかける。


「少し前まで何も無かったのに、突然やれる事が一杯出来てさ・・・嬉しくなっちゃったんだ・・・」

「・・・」

「うん、他の道具は思ってた通りに出来上がったからさ・・・出来てるって思い込んじゃった・・・」

「・・・」

「そうだよね、明日頑張るよ・・・」


---返事なんて無い。でも、その優しい光が励ましてくれていると思いたかった。


「グゥゥゥゥッ・・・」

「・・・」

「ごめん・・・。・・・・ハァ。お腹すいた・・・。」


 遭難、1日半位。口にしたのは、たぶん水と思われる液体一口のみ。

 やれる事ができたテンションですっかり忘れていた。

 そうだ、【青い水晶】の液体っ!結構時間もたったし溜まってるはず!!


「おぉ!?二口分くらいあるかな?やったっ!!」


 寝る前に喉を潤す事ができる!

 しかしこれじゃあ空腹は満たせない・・・薄明かりの中で枝が目に入った・・・


「枯れてるけど・・・もしかして食べれるんじゃない・・・?」


 きっと食べてもお腹を壊す事はないだろう。

 少量ずつ飲み込んだら空腹が紛れるかもしれない・・・。

 尖った岩を縦にした枝の先端に当て、別の岩で思いっきり叩き込む。

 

---カーーーン!!


 乾いた音が響き渡る。ミシッ!と言う音と共に枝に縦の亀裂が入る。

 それをそのまま裂く。乾燥しきっているので水分は無いが白い中身が露出した。

 白い部分を爪で引っかく様に削り取る。


---カリカリ・・・カリカリ・・・


 一摘み分の小さな木の繊維。

 摘んだ指を暫し眺め、そのまま口に運ぶ。---パクッ!


 まず、口の中の水分が一気に持っていかれた。

 諦めずにそのまま咀嚼する。ちょっと痛い。でもモグモグと口を動かす。

 少し噛んでいるとドンドン柔らかくなっていく。唾液も追加されて口内は潤ってきた。

 味はもちろんしない。微かに木の香りがするような気はする。

 5分位噛んでいると飲み込めるレベルになるので、少しづつ飲み込む。


「これならイケる・・・」


 裂いた木を只管削り取る。


---カリカリカリカリ・・・カリカリカリカリカリカリ・・・カリカリカリ・・・


 片手一杯位の小山ができた。一摘み口に運んで咀嚼する。

 咀嚼している間に、壊れた【ユミギリ式火起こし器】を解体し腰紐を回収する。

 また一摘み口に運ぶ。【簡易帯靴】を解き広げて重しを載せておく。また一摘み。


 【赤い水晶】の明かりしかないのであまり大した事はできないが作業をする。

 

 【薪】と【小枝】を【蔦】で一まとめにし、どうにか背負って持って歩ける様にする。

 また一口。残った【蔦】を足裏のサイズに合わせて編み上げていく。編みながらも食べ続ける。

 両足分編みあがる頃には、木のカスの小山が無くなった。


---小山が無くなった瞬間、待ってくれていたかの様に風が吹く。


「危ない危ない。もうちょっと遅かったら風で飛んでしまうとこだった。」


 口の中にはアチコチに飲み込めなかった物が残っている。

 それを【青い水晶】の液体で口の中を濯ぐ様にして飲み込む。一口・・・二口・・・・。


「はぁ・・・いくらかマシになったかな・・・よし、このまま寝てしまおう。」


 いそいそと【青い水晶】を片付け、岩の上に【赤い水晶】を抱えて丸くなる。


 今日は失敗もしたけど収穫も多かった。

 掘れば何かが出てくる可能性に気がつけたのは大きな収穫の一つだ。

 実際手に入る品も大事だけど、情報も大事だ。

 今日は午前中こそ移動したが午後は移動していなに等しい。

 救助される為には、もっと移動して自ら人を見つけるしかない。

 明日は、最初に考えていた生存リミット3日目だ。

 少しの水と口にした【木のカス】のお陰でまだ動ける。

 挫折で何度も心が折れているけど、生存への執念はまだ残ってる。

 失敗したっていい。動けなくならなければいいんだ。


「大丈夫。私は、まだやれる・・・。」


 生きて帰って、家族で美味しいご飯を食べるんだ・・・。

 小さくなった私を家族は受け入れてくれるだろうか・・・。驚くだろうなぁ・・・。

 治るのかなコレ・・・。

 アッ・・・、【二つの水晶】の反応距離を測るの忘れてたな・・・。




 色々な事に思いを巡らせているうちに眠りに落ちていった---------

実際に爪楊枝を食べてみました。口の中に刺さるので絶対に真似はしないで下さい。

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