2-26 村を超えて
「お姉ちゃん!予備の器って何処だっけ!?」
「えーっとねぇ…、最初に作ったやつだから…あっ!地下倉庫~!」
「はぁ~いっ!」
今、店前の仕立て小屋予定地にこの森にいる全員が集まっている。
雑貨屋の品物の一部として作られた品物の中に、大容量の寸胴2個があった。まさか、こんな風に自分達で使う事になるとは…エルが予備と言った食器類も予備ではなくいつかお店に並べる予定だった品物達だ…これじゃあ中古になってしまう。どうしよう…クスン
イジイジしつつも大急ぎで昼食のスープの具材を切っていく。
ふと顔を上げると森人族の男が此方へと向かって来ているのが目に入った。
ロンの案内で数人づつ風呂へと案内している最中で、彼は最初のグループの一人であり私の店で対峙したあの男だ。そういえば、まだ名前も聞いてなかった…
「随分とさっぱりされた様ですね。」
「はい。お湯に浸かるのは初めてでしたが、中々に気持ちの良いものですね。」
「泉に浸かるとお伺いしましたが、ここの様式を体験してもらうのもいいかなと思い温めではありますが通常のお風呂を体験してもらいました。」
「あれで温めですか…本物の風呂に入るには鍛錬が必要そうですね。」
「慣れですよ。温いのが好きな人もいます。体を温め、血行を良くし疲労回復させるのが目的ですから温めで長く浸かってもいいんです。」
「なるほど…風呂とは奥深いのですね…」
むぅ…何の話をしよう、自己紹介もだけどここへ来た本題もまだだし…かと言ってこんな料理しながらの立ち話する事でもないしなぁ…あ、エルが走ってきた。
「お姉ちゃん!交代っ!お父さんが、大事な話をするだろうからってっ!」
「ありがとう!後はこの葉物入れて一煮立ちさせて味を」
「大丈夫!クララさんにも声掛けてあるからホラホラ行った行った!」
「あ、はい。」
なんかここ最近、急激にお姉さんし始めたエルがとっても頼もしいです。
森人族さんも目を伏せて心なしか笑ってるっぽいし…ぐぬぬ…
───
室内の私の工房にて、私・ヴァン父さん・クララさん・森人族3名の計6名が集まった。
「うーん、そういう手段に出たかぁ~予想外…と言うか、タピオキス様がそういうタイプとは思ってなかったなぁ…そうか~そうか~う~ん…」
「申し訳ありません。森の王の御言葉は絶対、我等は従うしかありません。しかし、今回は一族全ての命が掛かっていました。我等は命を懸けて安全を確保しなくてはなりませんでした…。」
「あー、もういいです。その話は、終わりました。話はもう次の段階に来ています。色々なタイミングが重なり過ぎててちょっと悩んでるだけなんで…う~ん、一度話を整理しますね。」
・タピオキス様は、アステア王国のクーデターは知らなかったが帝国が近くで偵察を繰り返している事は気が付いていたし、大森林への侵入者は全て排除していた。しかし、ここ数年魔物の襲撃が多く少しづつだが森は減少していた。
・そこへウェンネス様が来たので、状況が把握できた。
・アステア王国への義理を通す理由も無くなったので眷属の移住を決断。
・大事な大森林を簡単に手放す事は出来ないので何かするらしい。
・大森林を離れる事に反発し、共に戦うと申し出たが聞き入れて貰えなかった。
・先遣隊として今30名がここに来ている。
・この後、400名近くが此方に来る。
「こんな感じですよね?」
「…はい。本当に大きくまとめるとそうなります…。」
「えーっと、キュリオスさんは長の息子さんなんでしたっけ?」
「はい、この先遣隊の隊長にも任命されましたが普段は大森林の警備副隊長をしていました。」
「大まかな世帯数は解りますか?」
「う、受け入れて貰えるのですか!?」
キュリオスさんが興奮して立ち上がった。
この人、最初とかなり印象変わったなぁ…最初に私を試した時は寡黙な猛者みたいな雰囲気だったのに、一族を守る為に必死なのか良く喋る…
私が少し呆気に取られてるのに気が付いたのか助け船が飛んできた。
「若長、神の子が驚いています。冷静に事を運ばねば上手く行く事も儘ならなくなるとお話ししたではありませんか。」
「そうですよ、若様。段々いつもの若様になって来てますよ!」
「あ、あぁ。すまない…デュリス、ミュッキス…少し…落ち着いた。ありがとう。」
ふむ…、全員同年代の様な見た目だからあまり考えてなかったけど、デュリスさんはもしかして年上なのかもしれないな…やっぱエルフだし長寿なのかな?
「先にお話しをしておきますと、もちろん受け入れます。私の使命は、この世界を守る皆の為にこの森を守る事です。この森をその為に使うのは、当然の事です。まぁ、理由はある程度聞かないとモチベーションに繋がらないので色々伺いましたけどね。ヴァン父さん、クララさん、いいよね?」
「アディが選ぶ道が、家族の道だ。」
「アディさん、私は逆にお願いする立場ですよ?森人族の皆様、アステア王国が至らないばかりに申し訳ありません。私にできる事を精一杯手伝わせて頂きます。」
よかった。勝手に話進めてたからちょっと心配だった…
「じゃあ、話を進めますね。それで、何世帯程になりますか?この様な家に、抵抗はありますか?」
「世帯数ですか…人族の様に区画に分けて家を建てる訳ではないので数えた事がないのですが、恐らく130世帯程ではないかと思います…。住める様な木が無い事は聞かされていたので大丈夫です。」
「解りました。移住組の皆さんと連絡を取る方法はありますか?」
「はい、森人族のイロンデルを連れて来ていますので大丈夫です。」
「では、だいたいの到着予定日と正確な世帯数の把握をお願いします。後、今いる先遣隊の皆さんの魔法の系統を書き出して下さい。それで作業を分配していきます。」
「解りました。」
「それから…、ヴァン父さん。」
「うん?あぁ、家が無いのは緊急事態だからな構わない。」
「よっし!じゃあ、皆さんよろしくお願いしますっ!」
さー、ヴァン父さんのお許しも出たので本気で行きましょうか!
魔法大工アデール!本気で町作りしますっ!
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