2-18 お告げ
【青の精霊】の泉の美しい状態に目を奪われていると、水中からプクプクとシャボン玉の様な物がふわふわと浮き上がり幻想的な風景を見せたと思えば、突然一斉に割れた。
「今のは一体…」
「凄い綺麗だった…」
「…ふわぁ~!!」
「こんなに幻想的な光景は、はじめてだ…」
「美しい」
「【青の精霊】様の魔力が…」
皆が思い思いの感想を口にしていると、クララさんがゆっくりと此方を振り返り戻ってきた。
「【青の精霊】様より、お告げを頂きました…」
「聖女様っ!」
「タオル、借りてきますっ!」
スマリナさんとジオディットさんが家の方に走り出した。ナサメアさんとチェルシーさんは駆け寄り、おろおろとしている…その姿を横目に、レスファさんがクララさんの衣類を回収していた。レスファさんはしっかりものかも知れない…
「クララさん、お告げって…」
「はい。見てください…、どの司教様も占い師の方もどうにも出来なかった病が…」
そう言って、私に手の平を見せてくれた。何故か一番酷く進行していたと思われる、真っ黒に侵されたいた両手が少しだけ薄くなっている…あの短時間で…
「クララさんっ!クララさんの手がっ!」
「はい。【青の精霊】様は、わたくしにお告げを下さいました…
───クララの子孫よ、清らかな娘よ。其穢れ、我癒しにて浄化せよ。日に1度、祈りを捧げよ。100の月日が流れた時、穢れは浄化されよう─そして、その強い意思を持って【ガー・ナーク】の全てに癒しを───
「【青の精霊】様が…」
「はい。【青の精霊】の加護の残滓がわたくしを導いて下さった様です。あぁ、お婆様…お婆様が頂いた加護のお導きでわたくしは救われました…アステアを…この世界を救う為、この命尽きるまで癒し続ける事を誓います…」
ポロポロと大粒の涙が、クララさんの頬を伝った。
お爺ちゃん、ありがとう…クララさん、本当に良かった…もしかしたら同じ病の人々も助かるのかもしれない…100日か、結構長い。狂暴化した獣の様には行かないって事だ。人が侵されると言う事は、それほど酷い情況って事なんだな…
「聖女様!お待たせ致しましたっ!スマリナが、ヴァンさんに頼んで湯を用意してもらっています!すぐに行きま…参りましょう!!」
ジオディットさんが戻ってきた。直ぐ様、聖女様をタオルで包み込むとナサメアさんがタオルごとクララさんを抱き上げた。流石、団長だ。ロンと同じ位の長身であれだけの剣の腕前だ。そうとう、身体を鍛えているのだろう。
「アディさん。聖女様の事、感謝します。一度聖女様にはお休みになって頂く方がいいかと判断します。」
「そうですね、チェルシーさん。是非、そうしてください。祈りとはいえ、風邪を引いてしまっては元も子もないですからね。」
「では、失礼します。」
皆が自宅の方に向かったのを見送り、泉を回って【青の精霊】様の滝の裏側へと回った。【青の精霊】様の滝の岩に手を触れ、少しだけ多目に魔力を流し込む。
「【青の精霊】様、有難う。」
それから工房まで戻り、数日振りに作業に没頭しているとドアがノックされた。
「あいてるよー!どうぞー」
「よう、アディ姉。」
「なんだ、ロンかー。どうしたの?」
「俺じゃ悪いかよ。」
眉を顰めたロンが私の前の椅子を引き、こちらを向かずにドカっと座った。
「あのよ…、さっきは悪かったな。話しに割って入って…」
「あっ!そうだった!酷いよロン、解ってたなら教えてくれてもいいじゃんかー」
年甲斐も無く、ぷぅっと頬を膨らませてみた。すると、ロンが此方をチラリと見て「ぶふっ」っと噴出し、立ち上がって作業テーブル越しに頬を突いてきた。先程のロンと同じく私の口から「ぶふっ」っと音が漏れ反射的にロンの指を掴んだ。
「ちょっと!意地悪しないでよねっ!」
「わかった!わかったから離せよっ!」
「この指が悪いのかーっ!!」
握った指に力を込めるが、そんなの大した事ない様子で指を引き抜かれて逆に手を握られた。
「あのな、俺はアディ姉が困るのが一番嫌なんだ。」
「一番困らせるのは、ロンでしょっ!もーっ!」
「俺はいいんだよっ!って、そうじゃなくて!アディ姉には、アディ姉でいて欲しいんだ!矛盾してても、この先苦労したとしても!俺が助けるからっ!」
「…うん。ありがとう…?」
ロンが何だかんだ言っていつも私を助けようとしてくれてるのは知ってる。今日のあれだって、不器用だけど皆が私を買いかぶらない様に、特別なんかじゃなく普通なんだって、私の変わりに伝えてくれたのも解ってる。
それにしても、ここ1年位のロンはちょっと変だ。協力してあげれる事はしてるけど、無理してるって言うか背伸びしてるって言うか…これも大人になりたい思春期のそれなんだろうか…。私の前世の子とはタイプが違いすぎて、ちょっと解らない…。新たに下に弟と妹が増えたし、自覚でも湧いたのだろうか…
「わかってるならいいんだ。作業邪魔して悪かったよ。」
掴んだ手を離して、また椅子に座りなおした。相変わらずこっちを向いて座らないが、目だけはしっかりこっちに向いている。作業が気になるのだろうか…勉強熱心だな。ちょっと危うい物を感じるな…気持ちが先行しすぎて無理してないといいんだけど…長女の私が弟を支えてあげないとな…
「いいよ。あのね、ロン…なんか隠してたりしない?」
「っ!!…なんも隠してねぇよっ!いきなり何だよっ!」
「あのね、無理は良くないよ?ロンの気持ち、私に教えてくれないかな?」
「っば!!なんでっ!!そんなの!!…心の準備ってもんが……」
ロンが目すらも逸らして俯いた…。やっぱり、無理してるんだ…。まだ遊びたい盛りの男の子だもんね…見た目こそ高校生みたいだけど、実際は9歳だし…心の成長も早いのかもしれないけど、それでもやっぱりまだ子供だと思う。私が姉として引っ張ってあげないといけないっ!
「そうだよね、言いたくない事もまだ言えない事もいっぱいあるよね。でもね、溜め込むのは身体に良くないよ?ストレスって解る?それで病気になる事もあるからさ…。無理はしないでほしいなっ!」
「…」
「よし、今日の作業はおしまいっ!三つ子達の様子見てくるよっ!ロンも行く?」
「…いい。もう少し、ここにいる…」
「そっか…。じゃあ、夕飯でね。頑張ってるロンも好きだけど、無理しないでね。」
─────ギィ…パタン。
私は、そっとドアを閉めて工房を後にした。頑張れ、ロンっ!さって、私のかわいい三つ子ちゃん達のところにいくぞっ!名前、ヴァン父さんがだいぶ決めかねてたけど…そろそろ決まったかな?
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「アディ姉…あんま、俺を煽るなよ…くそっ…どうしたらいいんだよ…」
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イメージイラスト
アデール13歳・オディロン8歳(肉体年齢18歳位)
アナログな絵しか描けないので、きっちりとデジタルで挿絵をつけてる作家さんは凄いなぁと思います。
少しでも皆様のイメージの足しになればいいのですが…




