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転生少女は雑貨屋になりたい  作者: conon
第一章 幼少期
4/64

1-4 青い水晶

4話目です。

サバイバル二日目の朝。今日もあまりサバイバルしてない真琴さんのお話。


「・・・・・・さん・・・・か・・・・・・きてっ!おかーさんってば!!」


 体を揺さぶられ目が覚めた。

 顔を上げると呆れ顔のわが娘がそこに立っていた。


「もーっ!日曜だからって寝すぎっ!お昼近いよ?」

「え、あぁ・・・うん、ごめんね。なんか夢見が悪かったみたいで起きられなかったよ。」

「ふ~ん。・・・何の夢見てたの?」

「うんとねぇ・・・・・・・覚えてないっ!さっ!起きるよっ!ご飯食べた?お腹すいてない?パパとお兄ちゃんは?」

「朝はパン食べたよぉ。パパもお兄ちゃんもリビングにいるよ。」


 珍しく寝坊してしまった。失敗した。

 夢の内容は覚えてないけど、とても辛かったような気がする。

 いい眠りができてないのだろう。寝すぎたせいか腰が痛い気がする。

 さっさと起きて、洗濯機を回して・・・・・お昼ご飯の準備もし始めないといけないな。

 娘が部屋から出て行くのを見送ってから着替え一旦リビングへ移動する。



「お?今日はずいぶんゆっくりだったな。疲れてるのか?」

「かーさんおはよう。俺の青いシャツ知らない?午後出かけるんだけど」

「おかーさんねぇ、怖い夢見たんだって~寝起きの顔が超酷かったんだよぉ~」


---見慣れた家族の顔。何故だか安堵感が沸いてくる。


「ごめんねぇ、今から洗濯しちゃってすぐお昼ご飯作るからねー」

 三者三様の肯定の返事が返ってくる。その声を背に受け、洗面所へ。


---何気ない日常。自然と笑みを浮かべる。


 洗濯籠の中身を分別し、タオル類だけを洗濯機の中に投げ入れていく。

 液体洗剤と柔軟剤を投入してスタートボタンを押す。

 洗濯層が数回空転した後勢い良く水が流れ出し、ふわっ柔軟材のフローラルな香りがした。


---結婚して二十数年。幾度と無く繰り返してきた光景。


 この洗濯機も私と一緒に二十数年共に歩んできた。もう型落ちなんてレベルではない。

 正直、動いているのが奇跡な位だと思っている。

 洗濯機が正常に動作している事を確認し、蓋に手をかける。

 洗濯層の中の小さな滝が心地よい水の音を奏でている。

 この音を心地よいなんて思ったのは初めてだ・・・。


【飲みたいっ!!】


 突然の喉の渇き。どうしてもこの水が飲みたいっ!!

 いやいや、おかしいでしょ!冷蔵庫にまで行けば、冷たいお茶やコーラがあるじゃないか!

 今、私はこの水が飲みたいっ!せめて普通に水道水のもうよっ!洗濯機の水だよっ!

 でもでもでも、今!今飲みたいのっ!


---冷静な自分と乾きを抑えきれない自分が脳内で口論を始める。


 洗濯機の蓋にかけられた手が動かない。閉められない。

 耳は小さな滝の音に、目はその流れの勢いに釘付けになる。

 生唾を飲み込む音がする。

 何分この小さな滝を眺めていただろうか。こんなに洗濯機を眺めたのははじめてだ。


洗濯機の中の小さな滝に吸い込まれるように私の視界はホワイトアウトした---



------------------------------------------------------------


「口の中が、カラカラだ・・・・・・・・」


 気分は最悪だ。悪い夢は夢じゃなく。あの日常が夢だった。

 微かにジャリっとする口内から砂を吐き出そうとして思いとどまる。


---ゴクン。


 水分は貴重だ。体外に排出するべきではない。

 体を起こして、伸びをする。気分は最悪だが、足の疲労感は取れている。

 枕にしていた腕は岩の後がクッキリついて赤くなっている。

 ガラ袋ワンピースの皺を伸ばすように、パンパンッと砂を払う。

 

「さて、どうしようか」


 辺りを見渡して確認する。

 空はほんのり明るくなってきている。朝4時過ぎ、そんな感じがする。

 相変わらず空は曇っているようだが雨は振った形跡がない。

 乱れた髪を直しながらの情況把握。良くも悪くも何の変化もないようだ。


【赤い水晶】


 ふとその存在を思い出し、座ったまま振り返る。


「あった、よかった。」


 何だか分からないこの存在には助けられた。無くす訳にはいかない。

 まだ動き出すには少し早い。コレについて考えよう。

 ずっと【赤い水晶】とは言っているが、これが水晶なのかは正直分からない。

 ただ、かなり透明度が高いコレを【石】と表現するのはどうかと思った。

 なので【赤い水晶】と呼んでいる。もう1度コレの情報を整理しよう。


===================================================================

【赤い水晶】

・赤くて透明な直径5cm程の球体。中心部では黄色い砂の様な物がキラキラと蠢いている。

材質は不明だが、重みがあるので鉱石の類ではないかと思う。

・少し暖かい(終わりかけのカイロ位)

・少し光ってる(手元が見える程度)

===================================================================


 暖は取れそうもない。指先あったかな位。夜の明かりとしても不十分。

 無いよりはマシな程度だけど、そもそもその為の物じゃないのでしかたない。

 昨日よりちょっと暖かさが増している気もするけど・・・。謎だ。

 情報を整理したところでコレが何なのか分からないけど、今の私には貴重な品だ。

 大事にしよう。

 危なくなったら捨てればいい。元々私のじゃないし!


「そうだ、青い方!」


 寝床にしていた岩の横にある別の岩の上に手を伸ばす。


---グショ


 青い方の入った皮袋が濡れていた。驚いて伸ばした手を引っ込める。

 雨が降った形跡はない。夜露?にしては濡れすぎじゃない?

 もう一度しっかり回りを見渡すが夜露によって湿った物は他にはなさそうだ。

 何よりここは空気が乾燥気味だ。夜露が発生する条件を満たしてない。


---恐る恐るもう1度手を伸ばす。


 やっぱり濡れている。というか、布袋から染み出している?

 皮袋の口紐部分を摘み上げて、あまり触れないように袋を広げ覗き込む。

 見えない。

 当たり前だ、辺りはまだ薄暗いし遮光が効いた皮袋の中だ。見えるわけがない。

 皮袋を岩の上に置きなおし口を限界まで広げて、【赤い水晶】を近づけてみる。


---【青い水晶】の周りに少しだけ液体が溜まっている。


 ちょっと突いてみる。---無色だ。

 匂いを嗅いでみる。---無臭だ。

 水・・・か?水なのか・・・?水じゃないのか・・・?でもなんで?どういう事?

 水ならば飲みたいっ!一口分もないけど飲みたいなっ!

 だめだ、焦ったらいけない。

 できるだけ調査してからにしよう。体に悪いかもしれない。


【正体不明の鉱石から染み出した無色透明の液体】


 ほら!言葉だけ並べたら危険しかないよっ!

 でも水分は貴重だ。直ちに異常がないなら飲んでもいい気がする。


---10分経過。


 最初に謎の液体がついた手を確認する。

 見た目、変化なし。痺れなし。痛みなし。

 素人考えだが、すぐに影響の出る物ならパッチテストで変化があるはすと思ったのだ。

 よし、次の段階だ。

 もう1度指先に液体をつけて舌先につける。味はしない気がする。

 人の味覚は舌の位置によって感じる味わいが違う。今のとこ味はしない。

 そのまま口を開けて飲み込むことの無いように舌を出したまま待つ。

 かなり間抜けだ。


---10分経過。


 舌先に痺れなし。痛みなし。・・・よし、触った感じ腫れてないし出来物もできてない。

 安全とは言い切れないけど、飲めるんじゃないか?

 この渇きを和らげて、生存時間を延ばしてくれるんじゃないか?


---10分経過。


「よしっ!飲もうっ!」


 皮袋から【青い水晶】を取り出し【赤い水晶】と並べて腿の上に置く。

 皮袋に顔を近づけると、皮独特の香りがした。

 大丈夫だ、伝家の宝刀「直ちに影響は無い」きっと大丈夫。

 短期的に見れば生存時間を延ばしてくれるはずだっ!長期的には寿命削ってるかもだけど・・・


・・・ゴクンッ


 口に含んで軽くテイスティングをし、我慢できず飲み込む。

 舌に感じるのは、良く知っている水のそれと同じ気がした。


「----っ!生き返るぅーーーーー訳ないじゃん!もっと飲みたーーーーーーいっ!」


---視界の確保ができる程明るくなった頃、真琴の水分への欲求は増幅した。

本日2度目の投稿でした。時間の許す限り頑張っていきたいです。

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