1-2 ガラ袋ワンピース
2話目です。
真琴が歩き出します。サバイバル生活の1歩目のお話。
岩場にばかり気を取られ、全く自分の変化に気が付いてなかった。
周りを見ても基準になる物がないので不明だが、どう考えても縮んでる・・・
雷に打たれて背が縮むなんて聞いた事がないっ!
ここはどこっ!?私はどうなってるっ!?全く理解がおいつかないっ!!
涙はすっかり引っ込んでしまった。
とにかく、1個1個解決していこうっ!そうするしかないっ!
落ち着け私。落ち着きのない息子に散々言って聞かせてきたじゃないか!
ゆっくり少しづつ・・・深呼吸して・・・
「スーーーーーーッ・・・・・・・ハァーーーーーー・・・・・ゲホッゴホッ!!」
空気が悪い。それはそうだよ・・・見渡す限り岩場だもん・・・砂も舞うよ・・・
よしっ、1個1個・・・地道に・・・
まず、今の自分の姿を再確認しよう。
怪我はない。手足は短くなってしまったけど動くのに支障はない。
しかし裸足だ。これは問題だな・・・絶対歩いたら痛い・・・
何かで足を保護しないと、とてもじゃないけど移動できそうもない。
服は・・・これは服と言っていいんだろうか・・・
質の悪い麻の様な素材でできた、大きなガラ袋をひっくり返して腕と頭の部分に穴を開けただけの服のような何かだこれ・・・学芸会とかで見た事あるよこんなの・・・アレは黒いゴミ袋だったけど・・・
腰に紐のような物が巻いてある。ベルト?意味があるとは思えない。
と思ったら柔らかい皮でできた小さな袋が腰紐からぶら下がってた。
「なんだろう・・・おおぉっ!?凄い綺麗・・・」
中には、直径5cm程の綺麗な球体の赤と青の水晶が入っていた。
透かして見ると中で何かが蠢いてる・・・
赤い方は、極小の黄色い砂が中心部でふわふわしている。ほんのり光っている気もする。
青い方は、中で水がゆったりと渦を描くように回っている。少し冷たい。
一体これはなんなのだろう・・・こんな物見た事がない。
私から色々奪った犯人が残していったのだろうか・・・
しかし、盗られた物よりもこの水晶の方が価値があるような気がする。
「また謎が増えてしまった・・・とりあえず閉まっておこう」
腰紐に皮袋を結び直し辺りを見渡す。
地平線が見える。
どれぐらい気絶していて、どこまで運ばれたのだろうか・・・
記憶の限りでは近所にこんな場所はない。地平線なんて見えない。
まさかの海外まで運ばれたなんてないよね・・・
まぁこの際場所はどうでもいい、英語だってちょっとはしゃべれる。
問題は、人に出会えるかだ。
振り返って更に周囲を確認する。背後には離れた所に切り立った崖が見えた。
救助はきっと来ないだろう。自力で救助されに行かないといけない。
どの方向に向かうべきか。地平線に向かうか、崖に向かうか。
草木1本ない岩場では動くのに情報が足りなさ過ぎる。
しかも、水も食料もない。
ましてや子供の体だ。飲まず食わずじゃ3日位が限界だろうか。猶予はない。
この後気温がどうなるかもわからない。この空だ、雨も降るかもしれない。
「考えれば考える程、どつぼに嵌まっていってる気がする・・・」
情報が何もなさ過ぎて身動きが取れないな。
よし、とりあえず足をなんとかしよう。
動き出すにしても素足のままじゃ歩くのもままならない。
もう1度、周囲を見渡し目的の物を探す。
なるべく痛くなさそうな石の上を渡るように歩く。
10分程たった頃、手頃なサイズの鋭利な部分のある石を見つけた。
「あったあった。よかった。」
続いて作業できそうな大き目の平たい岩を探し移動。
準備は整った。
まずは、大胆に服を脱ぎます。すっぽんぽんです。
「あ、かぼちゃぱんつは履いてたのか・・・」
ガラ袋ワンピース1枚しか着ていないのかと思っていたが、かぼちゃぱんつの下着を履いていた。
さて、次にガラ袋ワンピースの裾10cm位に鋭利な岩で縦に切ります。
格子状に編まれているだけなので1本亀裂を入れるだけでスルスルと解ける。
解けたら、ガラ袋ワンピース側の裾を解けない様に結び直す。
次に解いた裾を岩の切れ目に何本か固定して格子状に編み3cm幅位の長い帯を作ります。
「よしっ!できたーっ!」
1時間位かけて2本の帯の完成!!これを足に巻きつけてぇ~!
少々歪ではあるものの、足保護用の【簡易帯靴】の完成!!
やっとこれで移動が可能になった。すでに気がついて3時間は経過している。
少し喉も渇いてきた。できれば飲み水は確保したい。
あんなにも空は曇っているのに雨はまだ降ってこない。
降ってきたところで器になる物もない。やはり移動は急務だ。
「そういえば、少し暗くなってきたような気がする・・・」
作業している間に日が傾き始めたようだ。
夜になってしまえば身動きが取れなくなる。なんせ何もない岩場だ。
空も曇っているので月の光は期待できない。
砂漠みたいに急激に寒くなる事も考えられるし、もしかしたら獣とか・・・
急ぎ野営の準備が必要だ。救助を求める旅は明日からだっ!
雨が降るかもしれないので少しでも濡れない様に崖側に移動して屋根になる場所を探そう。
地平線側はどう考えても影になりそうな場所はない。
それと、火を起こす準備をしないといけない。獣対策大事。寒さ対策大事。
思いつく火起こしの手段は大きく二つ。
移動中にその為に必要な道具を探しながら歩く事にしよう。
一見、石や岩しかないけど探せばきっとあるはずっ!!
「希望を持たなきゃ!生きて帰るぞーっ!!」
真琴は、切り立った崖の方へ歩き出した。
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