1-11 大地豊穣
11話目です。
アデールはまた一人になりました。ボッチです。
───数時間後、アデールが目が覚めるとそこにウェンネスの姿はなかった
ウェンネス様は、最後の魔法で私に【風の加護】と【知識の一端】を与えてくれた。
【風の加護】は、私が風の魔法を使える様に───
【知識の一端】は、私がこの世界の住人として修復者として不自由しない様に───
事情を把握し立ち去る事もできたはずなのに、私に与えてくれた。
私はもう地球には帰れない。
この【ガー・ナーク】と言う世界の住人として生きなくてはならない。
ウェンネス様は、新しい人生を楽しめと言った。
ならば私は、ウェンネス様の願い通りに自分の思うが侭に生きよう。
いつかまたウェンネス様に会う為に・・・
「物思いに耽るの終りっ!!さーっ、どんどんやっていくよっ!」
ウェンネス様は言っていた『貴女の"大地豊穣"の魔法は局所的で効果が高いわ』と・・・
先にその効果と範囲を確認しよう。
緑地化した部分と岩場の境目を見ながらゆっくりその場で回転すると円状である事が解った。
これは通常の"大地豊穣"と同じだ。【知識の一端】がそう教えてくれる。
歩幅をだいたい50cmになる様に目検で確認しながら円の直径を計る。
念の為、2往復して確認。途中で解らなくなったので実際は3往復したのは内緒。
「25m。これが私の"大地豊穣"の範囲か・・・。状態はー・・・」
25m範囲内の大きな岩が土壌化したのか岩はなく綺麗な芝生のようになっている。
【知識の一端】曰く、この大地をこの状態までするのに人間の力で10年は掛かるらしい。
通常の"大地豊穣"は、儀式の場で魔力量の多い4~5人で年に4回行う。
魔力量は、年齢を重ねるごとに一定量づつ増えていく。
他に、魔法への素養的な努力面と寵愛や加護等、世界から恩恵面で増やす事ができる。
私の場合、地球年齢の45歳+【ガー・ナーク】年齢の7歳+【風の加護】 になる。
しかもそこに、【神の落し子】という謎の効果が乗っかっているらしい。
その効果の程は良く分からない。何故なら【知識の一端】にもないから。
【知識の一端】は万能な辞書とは違う。
疑問に思えば答えが浮かぶが、解らないものは解らない。何も浮かばないのだ。
ゲームの様に数値化されていたら、計算できたかも知れないのに残念だ・・・。
ちなみに人は魔具という道具を使って魔力量を色合いで測定できるらしい。
【知識の一端】曰く、私の"大地豊穣"はもう二つ通常の物と違うらしい。
一つ目───
通常の"大地豊穣"が年4回なのは魔力が大地に馴染む時間が必要だから。
私の"大地豊穣"は魔力が大地に馴染むまで3日程と推測されている。
二つ目───
通常の"大地豊穣"は、儀式の場から半径50kmが効果範囲とされる。それ以上の土地を豊かにするには新たな儀式の場を設け"大地豊穣"行わなければならない。
私の"大地豊穣"は、完全に任意だ。儀式の場も必要としない。私の意志で、その土地を更に豊かにするか範囲を広げるかを決められる。その最大面積は───不明。
「え?」
おーいっ!そこまで説明して不明なの!?
【知識の一端】さん?───え?これも【神の落し子】の効果だから不明なの!?
・・・まぁいいか。私の仕事の一つは十分に解った。
【知識の一端】によると"大地豊穣"以外に与えられる知識は───
【300年程前からの枯渇へ至る歴史】【大陸地図】【魔法】そして【精霊核】。
"大地豊穣"が一番大切な仕事として、次にするべきは【精霊核】についてだ。
しかし、【知識の一端】曰く【精霊核】は魔樹のある"大地豊穣"の地で育てるものらしい。
【300年程前からの枯渇へ至る歴史】は、とりあえず後回し。
【魔法】は、気になるけど安定が先だと思う。きっと簡単な事ではないと思うし、私の魔力は今無いに等しい。回復するまでお預けだ。
残る知識は【大陸地図】だ。
私の"大地豊穣"の地を決めるにしても、教えを広めるにしてもざっと確認の必要がある。
そう考えた瞬間、頭の中に【大陸地図】が浮かんだ。
「なんですかね・・・これは・・・」
物凄く大雑把で島も大陸も輪郭が丸い・・・うろ覚えで書いた地図みたいな事になってる・・・。
これはウェンネス様の【知識の一端】だ。ウェンネス様が理解している事しか入っていない。
ウェンネス様は風を司る精霊だから空を飛ぶのであんまり意識した事がなかったんだろう・・・。
「ウェンネス様・・・全然解らないですよ・・・」
役に立つと思って持たせてくれた【大陸地図】なのに、全くわからない。
【悪魔の頂】を中心に【死の大地】が広がっているけど現在地がわからない。方角も解らない。
そして【死の大地】が・・・物凄い広い。近くにある国より広い・・・国3個位入りそう。
「これは困った。どうしたもんか・・・」
そもそも【死の大地】って、赤と青の精霊様がやっちゃったんだっけ?
【赤の精霊】様と【青の精霊】様でしたね、はい。
【知識の一端】さんが突っ込む様に知識を挟んでくる。
【知識の一端】曰く、今から100年前 人族に激怒した【赤の精霊】様が大暴走し「人間滅ボス絶対」とかなってしまって全ての魔力を使って大爆発しようとしたらしい。
それを【青の精霊】様が止めに入ったと。
【赤の精霊】様と【青の精霊】様の力は魔逆の性質があったので抑え込もうとしたが、抑えきれず3個の国を魔素寄せ付けないも何もない大地になってしまったそうな。あ、本当に国3個分だったのね・・・。
「精霊様にも色々いるんだなぁ・・・ん?待てよ?」
この土地には、今も魔素が存在していない。
私の今回の"大地豊穣"は、魔樹を食べた効果で偶然起きた物だから今も黒魔素は生まれてない。
【知識の一端】によると、"大地豊穣"で放出された魔力が完全に馴染む3日後に魔樹が芽吹くらしい。
魔素を寄せ付けないはずなのに、何故か大地復活の下地ができてしまっている。
「あれ・・・。もしかして最初から選択肢なんてなかった・・・?」
・【大陸地図】があっても私は迷子。恐らく隣国は凄く遠い。
・肉体的にすでに限界に近い。暫く休まなくてはならない。
・白魔素のある場所まで自力で行かないと私の魔力も回復しない。
・魔樹は3日後に"大地豊穣"の効果で芽吹く。住める土地になる。
・魔素を寄せ付けないので何者からも見向きもされず100年放置されてた誰の物でもない土地。
「うん・・・コホン!よく聞け、いいかっ!ここをキャンプ地とするっ!」
───アデールは【死の大地】を拠点とする事を宣言した。そして赤面した。