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転生少女は雑貨屋になりたい  作者: conon
第一章 幼少期
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1-1 黒い雷

1話目です。

真琴の情況把握がはじまります。

本当はそうじゃないけど【自分の中の常識】から抜け出せない。

「背中が痛い・・・」


 まるで岩場にでも寝ている様な、そんな痛みを感じ目が覚めた。

 目に映ったのは、今にも雨が降り出しそうな灰色の雲。

 自分が本当に外で寝ていた事実に驚きながら慌てて体を起こすと目の前にはどこまでも続く起伏の 少ない岩場が続いていた・・・


「ここはどこだろう・・・」


-------------------------------------------------------


 その日は、特に変わった事もないただただ平凡な1日だった。

 私、萬井真琴よろずいまことが20年以上も繰り返してきた変わらぬ1日。


 朝5時起床、大雑把に掃除洗濯を済ませ、朝食と同時進行でお弁当も作る。

 大学生の長男長女と夫を慌しく起こし身支度と朝食を急かす。

 3人を送り出し、自分の身支度を整え自分も出勤。フルタイム。

 夕方帰宅、洗濯物を取込み夕飯の準備。そして、家族の風呂と夕飯のお世話。

 ここまでが妻として母親としての1日・・・


 ここから寝るまでは私の時間。趣味の時間。

 私の趣味は物作り。所謂、手芸。手芸といっても様々で多分野に手を出してきた。

 和裁、洋裁、編み物に羊毛フェルト、紙粘土や樹脂粘土。皮細工に木工も少々。

 UVレジンを使った小物作りやウッドバーニングにも手を出した。

 近所のカルチャースクールも手頃な教室は一通り通った。

 私の作業部屋は沢山の小物達で溢れてる。

 元々は若い頃にやってたコスプレから始まった手芸好きだが、今は作るのが楽しい。

 もういい年だし長く時間も取れないのでコスプレもゲームもやめてしまったけど・・・


 そろそろインターネットでの販売をやってみようかなーなんて夢をみている。

 素人に毛が生えた程度の作品ばかりだけど・・・




 そんな毎日。

 ちょっとした夢はあるものの、もう後は孫の顔が見れればいいかなぁ~なんてそんな小さな幸せの中で日々生きてきた。

 そしてこの日もそんな日々の繰り返しの中の1日になるはずだった・・・





「今日も疲れたなぁ・・・」

 うっかりそんな事を口にしてしまう程、肉体的に疲労感を感じていた。

 趣味の延長線上で金属加工を知りたいと思い、小さな金属加工の会社の事務に勤めていたが職人さんに気に入られ休憩時間に色々と教えて貰えるようになり・・・気が付けば何故か事務員から職人見習いになっていた。

 どうしてこうなったかは長くなるので割愛。

 その日も腰や腕に痛みを感じながらも自転車で15分の距離を帰宅していた。


 なんとなく足元に違和感を感じ下を見ると靴紐が解けていた。

 自転車を道路の脇に停め、靴紐を結び直す。

 立ち上がり、なんとなく空を見上げるとどんよりとした黒い雲が凄い勢いで流れていた。


(ここは風あんまりないけど、上空は凄い事になってるんだなぁ・・・雨が降るな、急ごう)


 そんな事を考え視線を戻そうとした瞬間、一瞬物凄い痛みと熱を感じ視界がブラックアウトした・・・


--------------------------------------------------------


「黒い雷だったよなぁ・・・そもそもあんなに真っ赤に空が光るもんかな・・・」


 現状を理解するべく、意識が途切れる前の事を思い返す。

 不自然な空の赤い発光と黒い何か、そして激痛と熱。

 見た事も聞いた事もないが、自分は黒い雷に打たれて感電し気絶したのではないか・・・。


「道路に倒れたままなら分かるけど・・・岩場って・・・・・・・・・・」


 気が付いたら病院とか家に運ばれていたなら理解できる。

 しかしそうではなく、全く知らない場所にいる理由を必死で考える。


 倒れた方の理由は置き、とにかく【私は意識を失った】それは確かだ。

 そして【目が覚めたら岩場だった】と言う事は【第三者の手によって移動させられている】と言う事。

 その移動先が、【病院や自宅ではない】と言う事は【特殊な事情か悪意を持って移動された】と言う事。

 倒れた人を岩場に運ぶ【特殊な事情】なんてある訳がない!これは【悪意】だっ!

 そうとしか考えられないと結論した所で気が付いた・・・

 背中に背負っていたはずのリュックがない事に。

 慌てて周囲を見渡すもリュックが隠れる程の大きさの岩は回りにない。


「やられたっ!」


 倒れた私から荷物と自転車を奪い、隠滅の為?に遠くに捨てた。そうとしか考えられない。

 良からぬ事を考える事もあったが考えるだけ、基本善人で在れと生きてきた。

 事件や事故に巻き込まれる事もなく平和に過ごせてきたのは行いのお陰だと思っていた。


「酷いよ・・・携帯もないし、どうすんのさ・・・神様なんとかしてよ・・・家に帰りたいよ・・・」


 神様なんて信じてないけど、なんでもいいから縋り付きたいそんな思いだった。

 口にした瞬間止め処なく涙が溢れてきた。年甲斐もなく・・・

 胸を締められる様な感覚がして、苦しくて、辛くて・・・両手で顔を覆った。


「・・・・・・・ん??」


 顔を覆う瞬間に目に入った物に疑問を感じた。

 おかしい。絶対におかしい。

 慌てて自分の体を確認しはじめる。そもそも、体が痛くないのに気がつくべきだった。

 アレが雷でもそうでなくても私は倒れたのだ、怪我でも打ち身でも痛くて然るべきだ。

 それがどこも痛くない。それどころか意識を失う前まで痛かった腰も腕も痛くない。

 そして私は眼鏡をかけていたはずだ。顔を覆った時に気が付いたが眼鏡がない。

 でも、見えている。ぼやっとしてない。ハッキリクッキリと見えている。


私が顔を覆う瞬間に目に入った物。・・・・・それは、手だ。


 明らかに小さい。子供の手だ。小学生かそれ以下か・・・そんなサイズの手だ。

 私は自分の意思で自分の手を動かして、自分の顔を覆ったはずなのに。

 肩まであった髪も短く、着ている服も全然違う物だった。なんで気が付かなかったのかっ!


「・・・・・・ぇぇぇぇええええええええええっ!?なにこれえええええぇぇええええ!????」


 そんな私の絶叫が何もない岩場に響き渡った。

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