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こちら魔王城居住区化最前線  作者: ささくら一茶
第五章 照り月序、魔女のお茶会編
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五章十二話 『流れ月分・円卓会議(後)』

「それでは、ローレンティア団長の戦闘部隊参加につきましては、賛成七、反対五により可決とさせて頂きます」


苦い顔をするグリーンピース達。ツワブキはへらへらとしていた。


「ま、この俺の名前に誓って命の危険には晒さねぇよ。

 今日の議題はこんぐらいだろ。ユズリハ、お終いにしようぜ」


資料を見ながら問いかけるが、彼女はすぐには従わない。


「いえ、まだ1つ残っております。

 昨日の夜、議題入りの要請が来たため資料には挟めませんでしたが………」


「昨日の夜?なんだぁ、誰からだ」


「私です」


そう口を開いたのは彼の隣………王女ローレンティアだった。


「……………お姫さんが?何を?」


「まず、これを」


そう言ってローレンティアがユズリハの方を向くと、彼女が円卓の、ローレンティアの前へ1つの瓶を置く。

オレンジ色の、プルプルとした生き物が中にいる。


人魂ウィルオ・ウィスプ……………?」


ツワブキは展開していく話に面喰うばかりだ。

お姫さんが?人魂ウィルオ・ウィスプを?どうして?


「ゴジカさん、お入りください」


ローレンティアが名前を呼ぶと、外で待機していたのか男が一人会議室に入ってくる。


いかにもな中年オジサンの恰好。

工匠部隊の実質的なまとめ役。鍛冶師ゴジカだ。


「まず今回の発案は、私鍛冶師ゴジカとグリーンピース公、ウォーターコイン公、ワトソニア公の四名で共同で進めていたものであります」


「それを、私の方で今回の議題に入れさせてもらったの」


胡散臭い前口上。いや、明らかにローレンティアの発案だろう、とツワブキは思う。

グリーンピースを見れば、腕組みをしてふんぞり返っているだけだ。

恐らくそういう前口上を条件として、話が通されている。


人魂ウィルオ・ウィスプ、魔王城上階の探索で見つかった魔物と聞いています。

 なんでも火を管理し、末永く保つ性質を持っているとか。

 私は人魂ウィルオ・ウィスプを鍛治に利用できないかと考えております。

 円卓会議の皆さまにお願い申し上げたい。

 どうか、人魂ウィルオ・ウィスプの鍛治利用を見据えた実験の許可を頂きたい」


「駄目だ」


即座に、円卓会議でも最も魔物に精通するツワブキが断じる。


「確かに人魂ウィルオ・ウィスプを鍛治に利用するのは悪くない発想だ。

 魔王軍の武器製造にやつらを使ったんじゃないかとも言われている。

 火力を制限すれば弱い魔物だ、襲われる心配も低い。

 だが可能性が消えないわけじゃねぇ。

 リスクがでかすぎる。あいつらは山火事の火種になるんだ」


「それは承知しております。工房街から離れた地下に石造りの実験場を設け、可燃物を極力近づけないよう注意を払って望むつもりです。

 人魂ウィルオ・ウィスプの管理にも気をつけます」


「一匹逃がしただけで火災の可能性があるんだぞ?魔物の専門家としては容認できねぇ」


「しかし、リスクばかりでなくメリットも考えるべきだろう」


割って入ったのはグリーンピースだ。


「もし人魂ウィルオ・ウィスプを管理できて火の元を任せられるのなら、鍛治士達の助けになる。

 武器の値段も下がるぞ。未だ残る魔物達への兵装も潤う。

 樹人トレントやスライムと同じだ。ここで試してみればいい」


「その2つは水問題や食糧問題っつー直近の死活問題があったから俺も容認したんだ。

 鍛治への貢献は優先課題じゃねぇ」


「しかし、魔王軍の鍛治技術の中には人類にはないものもあったと聞いた。

 人魂ウィルオ・ウィスプを利用することで、その解明に繋がるやもしれぬ。

 貴様のいうリスクは理解するが、元より危険を覚悟で銀の団は魔王城へ来たのだ。

 それを飲みこんで新たな価値、技術を創造することも銀の団の使命だろう」 


ツワブキは、それ以上は踏み込めなかった。



「……それでは、人魂ウィルオ・ウィスプを利用した鍛治の実験について、各代表者の賛否を取りたいと思います」


まとめに入るユズリハ。一番に応じたのはツワブキだ。


「俺は反対だ。火災のリスクがでけぇ。

 仮に実験が成功したとしても、それを世界中に展開するのはやはりマズい。

 どこかで管理体制に漏れが出て大きな火災を起こす」


「俺も悪いが反対だ。樹人トレントの実験場を燃やされたらたまらない。

 農業に携わる者としては怖いな」


農耕部隊隊長クレソンも続く。


「私も、祖国に森が多い者としてはやっぱり心配ね~」


森の国(スレイアード)ベルガモットも反対の意を示す。


「反対じゃな。学問の国出身として、魔王軍の未知技術は興味があるが……。

 ツワブキ殿のいうリスクも頷ける」


月の国(マーテルワイト)ブーゲンビレアも反対の意を示した。


「私も反対しておこう。武器の価格下落は、賊の武装強化に繋がりかねない」


日の国(ラグド)ゼブラグラスも反対だ。



反対5。だが。



「私は賛成です」


ローレンティアが、その口火を切った。


「管理については国を超えた法で規制する必要があるでしょうが……。

 これから魔王城深くに潜っていくにあたって、いい武器は必要だと思います。

 技術はできる時に高めておいた方がいい」


「俺も賛成だ。技術を持ち帰るのが銀の団の使命………。

 反対するものはそれを忘れた腰ぬけどもか?」


鉄の国(カノン)グリーンピースが見下したように言う。


「僕も賛成させてもらう。ハルピュイア迎撃戦では役に立ったと聞いているし、人魂ウィルオ・ウィスプはゴブリンが道具的に使っていた魔物なのだろう?

 彼らは使い方がある魔物だ。もう少し長く触れてそれを模索した方がいい」


波の国(セージュ)ウォーターコイン。河の国(マンチェスター)ワトソニアも続く。


「ぼ、僕も賛成だよ!!」


「悪いが儂も賛成やなぁ~。こんだけ商売の香りを醸しだされると抗えん」


工匠部隊隊長エゴノキは、困ったような声を出し。


「私も賛成させてもらう」


橋の国(ベルサール)アサツキも従った。


「……………シャルルアルバネルの嬢ちゃんは」


問うツワブキはしかし、全容を把握していた。


「私も、賛成よ」


賛成7、反対5。人魂ウィルオ・ウィスプを用いた鍛治の試験も、可決される。






「俺ぁ、お姫さんを戦闘部隊入りさせるために根回しをしていたんだが…………。

 お姫さんは、人魂ウィルオ・ウィスプの件で根回しを進めてやがった」


現在、夜の酒場『サマーキャンドル』。


「ティアが……?」


とアシタバは意外そうな声を出す。


「グリーンピース達三人の賛成は不思議じゃねぇ。

 人魂ウィルオ・ウィスプは、あいつらの成果だからな。

 それに基づく成果が生まれることに、あいつらは肯定的だ。

 橋の国(ベルサール)アサツキは今のとこローレンティアの意見を尊重しているし、エゴノキも商機にゃ食いつく。

 だから本格的な根回しと言うのは、シャルルアルバネルだな」


砂の国(ランサイズ)の」


「そう。俺も最初は、どうしてあいつが賛成したのか分からなかったが……。

 よくよく考えれば妥当だ。砂漠の国の夜は冷える。

 鍛治とは関係なく、砂漠の夜の熱源管理としてあいつは人魂ウィルオ・ウィスプを見ていたんだ。

 鍛治の場で問題が起こらないようなら、砂漠の各村に熱源としてくばりゃいい。

 あの国は石造りの家ばっかり、燃やす植物もねぇ土地だしな」 


「………成程」


「しかし、正直たまげたぜ。

 お姫さんが積極的になっているのは認識していたが、自分で議題を持ちこんで、その根回しも済ませておくとはな。

 しかも俺が反対すると見込んで、内緒の上でだ。

 円卓会議の後で謝られちまったよ。

 内勝手なことをしてごめんなさいって。俺が怒ると思うかぁ?」


ふ、とアシタバが笑う。


「あんた、大好きだろそういうの」


「ああ!本当大好きだ!いいねぇお姫さん、俺惚れちまうかも。 

 アシタバ、お前しっかり掴まえとけよ~」


「何の話だよ」


じと目のアシタバに、ツワブキは少し間を置いた。

にやにやとした顔の熱は引き、ツワブキは真剣な面持ちになる。


「どうしてお姫さんを引き入れたって話だ。そろそろ本題に入ろうじゃねぇか。

 どうして俺が、お姫さんをお前の班に入れたがったのか」



五章十二話 『流れ月分・円卓会議(後)』

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