二十章六十話 『Day5 霧の谷の決戦⑩ vs修羅王』
兄貴の様になりたかった。
後の大戦士イチゴは、いつでもオオバコの目標だった。
自分よりも逞しい体。でもそれを使って横暴をすることはなく。
村で困りごとがあれば率先して手を貸し、村中から頼りにされ、親しまれていた。
「お前、最近体鍛えてるよな。少し逞しくなったよ」
冬に使う薪を集めた帰り道だった。
倒した木を二人で運ぶ、帰り道での兄弟話。前を行く兄の背中は大きい。
「え、なんで分かった?」
「なんでって、筋力ついてきてるだろ。今日の木こりっぷりもパワーアップしてたぜ。
隠れて筋トレでもしてんのか?」
時折オオバコの意表をつくことがあったのは、兄のその観察眼の高さだ。
長男たる兄はいつも、自分よりもしっかりと弟たちのことを見ていた。
隠していた怪我を見つけたり、妹が髪留めをなくして落ち込んでいることに気付いたり。
「兄貴さ、よくそう色んなことに気付けるよな」
「はは、腐ってもお前らの兄貴だぜ。弟のことはよく見るさ」
そうではない。イチゴは家族以外、村人の異変もよく気付いていたりしていた。
山の天気の兆候。夜の林の様子から狼の接近を感じ取った夜もあった。
今思い返しても兄は、とにかく何事にもよく気付く。
「どうやったら兄貴みたいになれるんかねぇ」
「はは、もしかして筋トレは俺に憧れてくれたからか?」
もしかして、ではなく既に確証に行き着いているのだろう。
兄貴は顔を捻っていたずらっぽい笑顔を見せた。
「そうだな………俺が思うに、どうやらこの世界には今ある形と、どうしてそうなったかのきっかけがあるみたいだ」
「あぁ?」
「オオバコの手際が良い。斧一振りでの進みが良くなってる。どうやら筋トレしたみたいだ。
ツクシがいつもより暗い。髪を気にしてる。髪留めがなくなってる。
今夜は梟が静かだ。風も少ないのに木の葉の音は聞こえる。どうやら林を駆ける奴がいる。
谷ってのは、川が山を削って溝になったらしいぜ。
今の姿にはそう至った経緯がある。普段と比べて違和感があれば、何か異変が起きている。
俺が思うに、オオバコが感じてる不足を埋めるために必要なのは二つだ。
あるものを見て、何かに気付けるか。感じた違和感から想像を巡らせて、何に辿り着けるか」
それは勇者一行の一員、勇者の隣で相棒を勤め上げた“大戦士イチゴ”の視野の広さの源泉だ。
「兄貴の話はたまに難しい」
「はは、まぁまずは弟達の面倒をよく見てやれよ。
あいつらの隠す体調不良に気付けるようになったらそれが一歩目だ。
コツは何事にも興味を持つこと……この世にお前に無関係なものなんてないんだぜ、オオバコ」
兄貴のようになりたいと、いずれは“大戦士”も超えてやると銀の団に入った。
それでも現実は厳しかった。
団内で頭角を現していくアシタバ。団長として覚醒していくローレンティア。何度も窮地を救ってもらったキリ。
仲間に置いて行かれたような、劣等感を抱いていたのは事実だ。
無力感と焦りは、自分の意識できないところで積み重なっていく。
「迷いの森の攻略の時に、観察が足りなかったなってアシタバに言われたの」
違う記憶。クラーケン討伐の帰路、船の上でのキリの呟きだ。
確か、斑の一族とカミングアウトされた後だった。
樹人の森でアシタバとキリが対決をし、結果としてアシタバの大茸の胞子が決着を制した。
地下一階の樹人と大茸が住処を分けている理由を、キリは気付けなかったのだ。
「いい探検家っていうのはああいうのを言うんでしょうね。
どうしてそうなっているのか。それはおかしい。
異変に気付ける者がきっと、最後までダンジョンで生き残れる」
(首の傷は一旦忘れろ………。
グラジオラスは動けねぇがキリと自分に治癒魔法は掛け続けている。
こいつを倒して俺も混ぜて貰えば死にはしねぇ)
自分を奮い立たせる。けれど、時間制限が生まれたことは変わらない。
血が体力を奪いきる前に決着はつけなくては。
堅牢に持久戦を展開し、相手の隙を待つ戦術は取れなくなった。
現状劣勢のオオバコには打開策が要る。
(違和感は、三つあった)
改めて武器を構え直し、オオバコは思考を巡らせる。
(まず、なんで急に撤退を勧め始めた?楽勝なら俺なんかとっとと倒しゃいい。
俺が逃げたふりして背中打つとも限らねぇし。
つまり、よほど索敵能力が優れてて唐突に気まぐれを起こしたか……。
もしくは俺の攻撃が当たればヤバいと思ったからだ)
首を裂かれた時の一閃、その威力は敵に伝わっていた。
そもそもが十分な力を込められた竜殺しの一閃を防げる魔物は、存在しないと言ってしまっていいだろう。
(二つ目)
修羅王が駆け出し斬撃を浴びせて来る。
オオバコは既に、対等に斬り合いを演じるのは諦めた。
端部への浅い切り傷は許容する。どのみち決着は長くはない。
二の腕、脛、頬に切り傷を刻まれながら、その目は臆さず敵を一心に観察する。
「なんでお前、攻撃を弾くんだ?」
その言葉が、修羅王に響いたのかは分からない。
でも、道理に合わない。
あの鎧がゴブリン製の防具なのか、カブト虫に似た表皮なのかは分からないが、堅い防御を身に着けたならそれを敵に押し付けるのが基本だ。
足りないから、欲しいから硬くなったはずだ。
なのにこちらの攻撃を鎧で受けることは一度もせず、攻撃の機会を捨ててまで頑なに鎌で弾こうとする。
火力面の進化には納得がいく。
相手はそれほど瞬足ではなく、また擬態ができるような姿でもない。
恐らく堅牢でも鈍重な獲物を狩る為に、龍の鱗すら貫く刃を手に入れた。
理想の相手に出会えず狩りが捗らない時は、配下のカマキリの魔物に餌を献上してもらうのかもしれない。
(けど………)
なんだ、なんだ。ピースの嵌らない違和感。実態とかみ合わない防衛手段。
火力面はいいとしても、あの射程の短さで本当に攻撃面は満ち足りたのか。
敵の防御を貫く鋭い太刀も、当たらなければ意味を為さない。
この魔物には、攻撃を当てる為の進化が見られない。
冷気が、オオバコの頬を撫でた。
否、それは正確にはオオバコが感じ取った敵の異変。
とっておきが来ると言う脅威の前兆だ。
(来る………!)
繰り出される、修羅王の必殺の一閃。
「―――“不可視の刃”」
敵の奥の手の初撃。この戦いにおける最初の分水嶺と言ってもいいだろう。
オオバコの選択は、武器を捨てることだった。
カランカランと音を立てて、両手斧は横たわるグラジオラスの元まで転がっていく。
寄生獣と対峙した彼女の対応を見ていた。
長い得物では素早い敵に対応できない。今も同じだ。
見極めを誤れば腕が両断されるだろう。
けれど両腕を使い、適切に黒龍の鎧の小手で流せば致命傷には至らない。
そして恐らく、敵が今から繰り出す奥の手も想像がついていた。
オオバコは腕を防御に使う気は最初からない。
一閃、振るわれる刃の根元………敵の手首を掴んだ。
「なっ………!?」
虎穴に入らずんば虎子を得ず。オオバコは両手斧を捨て、接近戦を超えた密着戦に挑む。
猶予は少ない。短期決戦、掴むべきは敵の正体。
そしてオオバコの感じていた違和感の三つ目、その答えを今掴んだ。
気になっていたのは、敵が単体であったことだ。
俯瞰してみれば、風来王も妖精王も白兵王も、配下たる魔物を引き連れた群れの王だった。
この谷の王で、愚臣四王の中で修羅王だけが単体行動をしている。
それがおかしいと、他の愚臣四王に遭遇していないオオバコは気付けていた。
この一年、アシタバと行動を共にし探検家として成長してきた彼だ。
魔物勉強会も皆勤賞、この谷に落ちてから、キリと一緒に探検家の端くれとして考察を重ねていた。
辿り着いた結論。
この谷のボスは恐らく群れである。高低差と足場の悪さ、個としての強さを極める土壌ではない。
これは熟練の探検家タマモとモロコシが導き出していたのと同じものだ。
だから修羅王が配下を伴わず姿を現したことが、まず腑に落ちなかった。
そして斬り合いの中で、敵の防御の仕方がおかしいと気付いた。
これは騎士タチバナも到達したが、オオバコはその正体の予想にも成功した。
オオバコが全力で握力を込めると修羅王の掴まれた部分、手首の小手の部分が砕ける。
否、潰れたのだ。出血と、隠されていた刃が飛び出た。
敵の反応は待たない。オオバコは間髪入れず逆の手で敵の顔面を殴り抜き、胴体に重い蹴りを入れて思いっきり相手を吹っ飛ばした。
「今、奥の手出すつもりだったか?当ててやるよ、お前の正体」
驚きで着地後も姿勢を崩し、地面に伏せる修羅王を見下す。
カシューと死別してから、アシタバと駆けてきた日々は彼の中に蓄積されている。
迷宮蜘蛛が迷宮に擬態していたのを見抜けなかった。兄が言っていた観察への意識が、あの時点では足りなかった。
ミノタウロスの前後切り替えを見抜けなかった。相手の切り札へと注意を巡らせる必要がある。
大司祭オラージュには勝てなかった。体重の軽い彼女が肉弾戦を仕掛けてきたことに対しておかしいと、別の戦い方を持っていると気付くべきだった。
メドゥーサ撤退戦では、同じ戦場にいながらトウガの結末を変えられなかった。非力で、もっと強くならなければならないと思った。
バレンツ港では、戦いの修行を積んだ。剣の国の剣闘士達の戦い方を学び、新たな強さを手に入れた。
そしてクラーケン討伐作戦。観察で得た違和感から敵の正体を当てたアシタバの姿は、かつての兄を見ているかのようだった。
沢山の個体が集まって一つの生命となる。そんな形もあるのか。
どうして鎧ではなく刃で攻撃を弾くのか。どうして群れを連れていないのか。
オオバコの感じた二つの違和感は、シンプルな一つの答えで説明できる。
「お前の正体は群体だ。パっと見じゃ一個体に見えるがそうじゃねぇ。
お前はこの谷の理屈に正しく従って、群れをちゃんと引き連れてる。
その鎧に擬態させてな」
オオバコによって割られた籠手、そこから滴っていたのは血と内臓だ。
修羅王はしばらく黙っていたが、やがて諦めたのか、ゆっくりと立ち上がった。
「いかにも」
その言葉と共に、鎧の肘から、膝から、肩から関節から刃が飛び出る。
全身に仕込まれた隠し刃……否、体表全体を覆う、配下のカマキリの魔物。
それは後に、黒鋼蟷螂と名付けられる新種だ。
正確に言えば彼らと修羅王は群体ではなく、強固な共存関係にある。
生態はコバンザメに近く、主たる修羅王が仕留めた獲物のおこぼれを貰って生きる。
背中は熊甲虫程ではないが硬く進化し、金属光沢に似た色合いを有する。
彼らの群れは修羅王の体に取り付き、鎧のような擬態を為す。
その硬さで主の身を守るのは勿論、敵の集中が修羅王に集中した頃合いを見計らって鎧の隙間から刃を放ち、致命傷を負わせる。
それこそが、タチバナを襲った“不可視の刃”の正体だ。
斬り合いの中で刃に集中する敵は、籠手の隙間から伸び刃の後ろに添えられる二太刀目を認識できない。
(鎧武者かと思いきやハリセンボン……全方向の攻撃範囲か!)
敵の正体を見るや否や、オオバコは踵を返しグラジオラスの方へ転がった斧へと駆け始めた。
虚を突いて制した密着戦、けれど二度目を仕掛ければ串刺しは確実だ。
改めて対峙するには武器が要る。
(何より、射程の問題が解決してねぇ!!)
振り向いたオオバコの目に、その答えが映る。
修羅王の本来の右腕が露になっていた。黄緑色の肌、筋骨隆々の腕。
その先に黒鋼蟷螂たちが脚と脚を連結し合って連なり、巨大な鎖鎌の様相を為す。
「“不可避の刃”」
修羅王が腕を振るうと、鎖状に連なる黒鋼蟷螂達は遠心力のままオオバコを襲う。
逃げられない。斧まであと五歩のところまで来ていたオオバコは踏み止まり、その薙ぎ払いに備えた。
(こいつ…………)
目は観察に預けたまま。その攻撃の対処自体は、オオバコは思考を介さず本能でやったと言っていい。
横から迫ってきたカマキリ達の鎖。その一ピースを、オオバコは殴りぬいた。
遠心力の中の小型のカマキリ達には、オオバコの黒龍の鎧を貫通し得る攻撃は繰り出せない。
千切れた鎖よろしく、カマキリ達は空中にバラバラになって散る。
「ちっ!」
自分の一手が完全に防がれ、修羅王はオオバコへと駆け出した。
また接近戦に持ち込まれる前に、オオバコは両手斧を拾い上げる。
「来んじゃねぇよ!!」
繰り出したのは寄生獣戦で見せた、半円状の地面への薙ぎ払い。
巻き起こる土煙と共に石礫が飛び、修羅王の肩に付いていた黒鋼蟷螂の鎌がそれを弾く。
「足止めにもならんぞ、なんだその攻撃は!」
「…………………」
土煙が晴れる。迫る修羅王を、オオバコは静かな目で見つめていた。
既に、修羅王の弱点は予測を付けていた。
先程の“不可避の刃”は、逃げる獲物を仕留める為の技なのだろう。
だがそれはオオバコを仕留めるには至らなかった。正直容易く対処できた部類だ。
恐らく敵は、ただ単純に“逃げる敵に使う技だから”あれを放った。
修羅王……いや、愚臣四王に共通した弱点は、彼らに知恵比べの経験が乏しいことだ。
谷に四体しかいない知性魔物、彼らがぶつかった機会はそれほどない。
日常において彼らの戦いは、本能に従うだけの習性魔物をいかに蹂躙するか。
だからこそセオリーが崩れた時に捻りだす手は、最善とは少しずれたものになる。
カマキリを鎖鎌にして放ったあの技は、使うべきではなかった。
密集し守りを固めるからこそ強い配下を紐状に伸ばして攻撃する。
薄くなった守りは素手のオオバコでも破壊でき、一体でも崩せば攻撃は文字通り瓦解する。
つまり、修羅王に対し仕掛けるべき戦いは、接近戦でも持久戦でもない……知略戦だ。
修羅王の頬に、何か液体が付着した。
遅れて理解が追いつく。それは血だ。彼女の配下のカマキリと、そして自分の血。
彼女の左の二の腕に、剣が突き刺さっていた。
「は?」
修羅王は気付けなかった。
それは土煙を起こした間に、オオバコが拾い上げて上に投げたグラジオラスの剣だ。
放物線を描いた投擲は、組手で何度かキリが見せていた。
初戦で敵に当たるかはかなり分の悪い賭けだったが………。
修羅王の理解は追いつかない。
剣を抜くより前に鈍い金属音、投げられた何かを彼女の右腕が弾いた。
想像よりずっと重い衝撃に右腕が痺れる………両手斧だ。
遠心力のままぶん投げられた、敵の武器。
そして修羅王が正面へ視界を戻した時には、既にオオバコが目の前にいた。
「なっ………!」
土煙。上からの奇襲攻撃。武器の投擲。
意識を散らして本命の攻撃を通すのは、キリから学んだ戦い方だ。
オオバコは本命の攻撃、剣と一緒に拾っていたキリのナイフを、修羅王の心臓目掛け突き立てる――――。
オオバコの誤算は。
自分こそが、死の脅威に晒されても勇敢に立ち向かえると思ったことだ。
エンバクの指摘は真理ではなかったが、オオバコはその指摘に含まれていた一部を受け取り損ねた。
「―――感服したぞ、人間」
オオバコのナイフは、敵に届いていた。
修羅王の左胸に突き立てられたナイフ。傷口から敵の血が出ている。
修羅王の血……そう、胸当てに当たる部分に擬態していた黒鋼蟷螂のものではない。
決着を着けると、そう思っていた。
けれど……オオバコが描いた結末とは違う交差になっていた。
予想では女王たる修羅王を守るべく、黒鋼蟷螂が盾になって来ると踏んでいた。
だからそれを貫くぐらい力を込めて突きを放った。
だが修羅王の胸を守っていた黒鋼蟷螂は道を明け渡した。
ナイフは修羅王の黄緑色の素肌に刺さる。
更なる予想外はその後、避けた黒鋼蟷螂はその鎌でオオバコの手首に攻撃を仕掛けた。
威力より速度を重視した一振りは、黒龍の鎧を貫きはしたが手首自体の傷は浅い。
だがその真の目的は、こちらの攻撃の軸をずらすこと。
オオバコの誤算とは、命に晒されるのは自分だけではないという事だ。
そしてエンバクの指摘で見逃されたのは。オオバコの経験に不足し、今初めて相まみえたのは。
生を渇望して全霊で襲い掛かって来る、死地にて覚醒した敵との戦い。
手首をずらされたオオバコのナイフの突きは、胸を突いていたが心臓には達していなかった。
深手を受け入れても致命傷は避ける。
この激動の谷が生んだ、常軌を逸した救命措置。
「………渾身の一撃が実らず、絶望を感じ始めたか?
それとも、ここまで生き延びようとするのが理解できないか?」
血を流しながら修羅王が語る。二人の顔は息がかかるほど近く。
けれどオオバコはもうナイフを持つ手を動かせない。
手首に突き立てられた鎌。
そしてそれ以外にも、敵の鎧の肩から、隙間から突き出た刃がオオバコの体を貫いていた。
肘、二の腕、肩、腿。ナイフを持って突き出していた両腕が、結果的に中心部の盾となり致命傷を避けた。
敵を仕留められるならと覚悟した深手だ。仕留められなければ、それは。
「この世で生き残るためには“強靭さ”が必要だ。
あらゆる敵を裂き、喰らい、そしていかなる攻撃も通さない強さ。
そして窮地に陥った際にも、立ち上がり足掻き、九死の一生を何度でも掴む強さ。
私はそうして幾千の夜を超えて来たぞ。
この谷で戦い続けた私に、お前が敵う道理は何一つない」
修羅王自身の鎌の一太刀には、ギリギリで対応できた。
盾として持ち上げた左腕の籠手を刃が刻む。
半ば左腕の骨で攻撃を受け止めながら、オオバコは吹っ飛んで地面に叩きつけられた。
「ッ………」
さっきの交錯で倒すべきだった。
ツワブキを始めとして探検家たちは、手負いの獣の厄介さを良く知っている。
だから最後、命を奪う前の詰めは一気に持っていかなければならない。
敵の全力を引き出す前に仕留めなければならなかった。
全身の至る所を貫かれ、流血が地面を赤く染めていく。
激痛と失望感でオオバコは地面に伏せ、その姿を今度は修羅王が見下す。
「終わりにしよう。人間よ、死ぬ覚悟は出来たか?」
二十章六十話 『Day5 霧の谷の決戦⑩ vs修羅王』




