十七章十五話 『Day7 銀の団、二年目』
アシタバ達が救助されて、一日が経った。
団員達は失踪者の無事に、ほっと胸を撫で下ろし。
そして探検家達は、得られた包帯男の新情報に歓喜して、鬼蜻蛉の死体を徹底的に調べたという。
この時に共同で作成された報告書により、それまで別の魔物と認識されていた砂漠百足と包帯男は、鬼蜻蛉の幼虫、蛹だと周知されることとなる。
モデルはウスバカゲロウ、アリジゴク。
砂漠という厳しい環境で彼らは、蛹へと到達した個体を守る生態系を構築する。
彼らは恐らく砂中に生みつけられた卵から孵化し、何度かの脱皮を経て、アシタバが“大蟻地獄”と名付けたあの幼虫の姿へと成長する。
待ち狩りの魔物の特徴を持つ彼らは、砂中に地下牢を作り、上を通った獲物を中に閉じ込め、衰弱したところを捕食する。
砂漠百足はその次の形態、終歳幼虫にあたる。
ムカデの形態となった彼らは砂漠を自由に泳ぎ、包帯男に近づく敵を襲い、時には獲物を追い立てて大蟻地獄の縄張りへと追い立てる。
彼らの生態の遊撃兵といった役割だ。
そしてその後の調査で、彼らのみでも生殖を行えることが判明した。
鬼蜻蛉達は、蛹まで行かずとも種を回せるよう進化したということだ。
ではそれより先、蛹と、成虫の段階はどうだろうか。
蛹である包帯男は、砂繭から砂上の蛹へと場所を移した。
捕食できない飛行生物からは目立たず、地上生物からは目立つ配色。
そして成虫になった後の交配確率を上げるため、彼らの繭は雌雄一対の玉繭によって作られる。
羽化し成虫となった鬼蜻蛉が担うのは、種の散布だ。
彼らは雌雄で別の地へと飛び立ち、そこで産卵をして、子供が防衛陣を形成するまで彼らを守る。
彼らの戦略になかったのは、天敵化した殺人蜂の存在だ。
狩りバチから寄生バチへ、包帯男をターゲットとした進化を遂げた彼らは、蛹の内部に卵を植え付け、食い荒らしてそのまま巣としてしまう。
獲物の少ない砂漠において、大きな獲物を狙って骨の髄まで使い潰してくる。
「いやぁ、我ながらいい仕事したぜ!
長年謎の存在だった包帯男の姿を解き明かしたんだ!
俺の人生のハイライトの1つだぜ!!」
昼下がり、魔王城の正面で、【悪酔い】のハッカクが嬉々とした声を上げる。
集った探検家組合の探険家たちは、報告書を書き上げて達成感に満ちた顔つきだ。
対面するはアシタバやツワブキ、銀の団所属の探検家達。
つまりは彼らの出発と、見送りの場面だ。
昨日の夜、ツワブキ・プロジェクトの参加者が発表された。
日の国以外の七国に、それぞれ担当の探険家が付く。
月の国担当、【庭番】のビーン。
橋の国担当、【黒猫】のチョロギ。
森の国担当、【灰狼】のキリン。
河の国担当、【尾切り】のメントン、【鷹狩り】のパキラ。
波の国担当、【悪酔い】のハッカク。
鉄の国担当、【山篭り】のクレオメ。
砂の国担当、【白山羊】のゴースティン。
「……………お前も立候補していたのか」
別れの場で、アシタバはメントンとパキラに近づく。
「いやー、カルブンコ牧場って強力な商売敵が現れちゃったからね。
ちょっとした転職だよ、転職」
「………………………」
浮かない顔をするアシタバに、二人は顔を見合わせる。
メントンは少し、口調を優しいそれへと変えた。
「ごめん、悪ふざけが過ぎちゃったね。
気にしないで、単にやりがいがあるって思ったんだ。
世界の食糧難を解決して、そして敵に立ち向かう一助になる。
パキラともよく話し合った。危険なのもよく理解している。
でも、アシタバがここで頑張ってるんだ、俺もこのぐらいしなくちゃ」
メントンが、パキラが、アシタバを真っ直ぐに見てくる。
今まで彼らを避けてきて、しっかり見ようとはしなかった。
素直に彼らに助けを求めていたら、アシタバのこれまではきっと、もう少し楽な道のりになっていたんだろう。
「あはは、といっても俺達の腕じゃ、どこまでできるかだけど………」
「いや」
そうじゃないと、アシタバは知っている。
大蟻地獄の縄張りを看破した、メントンの慧眼。
「お前は、いい探険家だよ」
自覚はしていなかったが、アシタバはこの時初めて、二人の前で笑っていた。
メントンも、パキラも、少し目を見開いて、次には笑い返す。
一年前の咲き月、スライム関係の時に、笑い方を気にしていた頃が遠い昔のようだ。
そして一匹狼だった探検家時代とも違う。
集団の一員となって、自然な笑顔ができるようになっていた。
「…………気をつけろよ、メントン、パキラ。敵は…………」
「あぁ、分かってるよ、アシタバ。アシタバこそ気をつけて」
青空のように笑い、メントンが手を差し出してくる。
お互いに拠点を持たない探険家は、再会までが長い。
だから別れはしっかりと区切る。
「本当に、気をつけてな」
それが初めてだろう、アシタバはメントンと握手を交わす。
「うん、大丈夫、とは言えないけど……………本当に分かってるよ」
メントン達に成長を見せられたように、確かにこの一年でアシタバは変わったのだろう。
笑えるようになって。仲間が出来て。味方の作り方を覚えた。
「…………………行っちまったなぁ。
いると騒がしいが、いなくなるとちょっと寂しくもなるやつらだぜ」
探検家達が魔王城を出発した後、アシタバとツワブキはなんとなしに空を眺めていた。
「しっかし、今回は珍しくドジったじゃねぇか。正直慌てたぜ」
「………………悪かった」
今回はアシタバの判断ミス。そしてツワブキの好判断に助けられた形だ。
正直、頭が上がらない。
「ま、このツワブキ様にかかればちょちょいのちょいよ!
なっはは、みたか?団長を大砲で送り届ける俺の奇策!
あぁそうだ、包帯男と殺人蜂は残すことにした」
「え?」
「ま、包帯男ってより大蟻地獄の方だけどな。
奴らの防衛力はいいぜ。下層からの魔物の盾になる。近寄らなけりゃ害もねぇ。
唯一の懸念は成虫化した時の、鬼蜻蛉のリスクだが、殺人蜂達が抑止力になるなら心配も減る。
当の殺人蜂達は、探検家にとっちゃよく処理する相手だ。
巣に近づきさえしなけりゃ、あるいはしっかり準備すりゃあ怖くねぇ。
あいつらは、警備兵として使える」
「……………………そうか」
使える。それがツワブキの、魔物を残すかどうかの判断基準だ。
人間が利するものがあるかどうか。人に牙を剥く魔物など、もっての外。
こちらの世界に来て、アシタバは大人になった。
小さい時は疎ましい感情さえ持った両親へも、今は一定の理解を持つ。
キリに言ったように、彼らも親の立場は初めてだったのだろう。
その中で、変わるのが難しいことが、あったのかもしれない。
許す、まではいかないが、そう思えるようになった。
子供の時には見えなかった、親の笑顔の裏側が見えるようになって。
それでも今目の前にいる男の考えは、まだ読めない。
「俺が白銀祭の時に言ったこと、覚えてるか?」
「冬休み中に、俺に注目が集まるってやつか」
「あぁそれだ。実際、クラーケン討伐作戦や王族会議やらで外出多かったがな。
でもどっちでも、お前は目立ったろう。
んで農耕部隊は樹人畑をモノにしやがったが、その起点はお前だ。
冬の蓄えを改めて見直して、団員の中でお前の実績は再評価されてる」
「でも今回はしくじったけどな」
「判断ミスはあったが、見ようによっちゃダンジョンに迷い込んだ子供を救出して、今まで未知だった敵の正体を掴んで帰ってきたわけだ。
実際そういう論調で話を流しといてやったぜ。
ま、お姫さん送り込んだ件と合わせて、1つ貸しだな。
とにかく俺が言いてぇのは、お前は冬休みの間、いい感じに目立てたってことだ。
その一方で、クラーケン討伐の吉報は先月のバノーヴェンの大災厄で叩き潰された。
新しい時代が来たんだ。世界は不安がっている。
魔王城でも、背中で団員達を安心させられる奴が要る。
お姫さんはよく育ってくれた。でも一人じゃ足りねぇ。
オレやディル、ライラック。トウガはあぁなっちまった。勇者は計算できねぇ。
魔王城では人か魔物で、俺達と共に来いと言ったな、アシタバ」
それは、迷宮蜘蛛の後の話だ。よく覚えている。
「門番は隠れるのを止めた。世界は荒れ始める。
時流は待たないぜ。時が来たんだ。俺の言っていることが分かるな?」
「………………あぁ」
よく分かってる。時が、来たんだ。
同刻、ローレンティアの部屋では、キリとローレンティアが向かい合って座っていた。
キリの真剣な話をする姿勢、正座を、何となくローレンティアも真似てしまう。
「ティア、その………ここを出ようと思ってるの」
向き合う二人の背後には、それぞれのベッドがある。
白銀祭、斑の一族の急襲に備えた名残、二人の寝室。
「うん、サクラちゃんのことだよね」
地下六階から戻った後、サクラの見せた脆さについては、アシタバから共有されていた。
魔王城に移ったばかりの時、一人のベッドが寂しく思えた経験は、二人ともにあった。
「しばらく、サクラと暮らしてみようと思うの。
イブキの代わりをしようっていうわけじゃないけど………。
でも、そうべきだって思った」
キリが視線を上げる。
迷いの森で、暗殺者として相対した時の目とは離れた、温度が宿った顔。
彼女もまた成長していて、その姿にローレンティアは笑ってしまう。
「うん。きっと合ってるよ、それ」
「やー、心配してたんだよサクラちゃん!
登校決めたんだって?本当に嬉しい!」
銀色学級ではガジュマルの妹、レタスがきゃいきゃいと声を弾ませていた。
サクラはすまし顔をして、隣で文学本とにらめっこをするニーレンベルギアの面倒を見る。
「別に、こいつの保護者役よ。
ベニシダの奴から会話のサポートしてくれとは言われてるしね…………」
「それでも十分十分、一緒に勉強してこう!
あ、弟達にはガツンと言っておいたから!もう大丈夫!」
サクラの地下六階での独断専行は、キャロット達には勇猛な鉄砲玉のように映ったらしい。
お灸を据えられたのか、認められたのか、今日はあまり突っかかってこない。
「………………あなたも悪かったわね。蹴っちゃって」
サクラの右後ろに座っていたピコティは、相変わらずサングラスだった。
「気にするな。あれしきの戯れ、許してやるのが王の器というものよ」
「誰?」
ピ、と指でサインをするピコティは、余裕があるのか変人なだけなのか分からない。
「あ、そうそう、私戦闘部隊に入ることにしたから。
ニーレンベルギアも一緒よ。これからよろしくね」
一瞬の静寂。やがてどよどよと、教室の隅にいたキャロット達がどよめく。
銀色学級からの戦闘部隊参加者、その二人目と三人目だ。
今まで、ただ一人だったからこそ崇められてたピコティがどんな反応をするのか、サクラは横目で様子を見。
そしてピコティは純粋に、笑っていた。
「そうか!へへ、ようやく同世代が来たか!賑やかになるな!
だが気をつけろよ、ダンジョンは一流の戦士でも油断できないんだからな!」
「…………うん、今回ので身に染みた」
人の輪に入るには、力を誇示しなければ駄目だと思っていた。
でも違う。みんな興味を持ってくれて、そしてピコティも喜んでくれる。
殺し道具として成長してきた自分が、上手く輪に馴染めるのだろうか。
その自信がなかったから、外圧的な態度を取ってしまった。
農村や町で暮らしてきた子供と、自分が一緒の教室で?
不安なんだ。自分は多分、変だから。
「やっぱりおかしいかな、この年でダンジョンに潜るのって」
「えー?全然おかしくないよ」
「そう?」
「うん、私、ここに来る前はダンジョンで四年間魔物と一緒に暮らしてたし」
ガジュマルの妹、ディフェンバキア製の虹の家で、ダンジョン内生活の経験があるレタスがあっけらかんというので、なんというかサクラは、目を丸くしてしまう。
「………………あなたも結構変わってるのね」
自分が悩んでいることはもしかしたら、あまり大した事じゃないのかもしれない。
「ピコティってやつ蹴っちゃったのは、あいつの反応が良過ぎたから………。
只者じゃないって思ったら、体が動いてたの。
蹴るつもりはなかったの、本当よ」
「ええ、分かってるわ」
その夜は、キリとサクラで組手をしてみた。
斑の一族にとっては日課、そして、サクラの力を存分に発散させる機会だ。
「なんか、入る前は普通のやつらが一杯なのかと思ってたけど!
変な奴ばっかりね、狼飼いに爆弾娘に呪われ団長にダンジョン暮らしに……!」
「そうね、戦闘面だけじゃない面白さを持った人が、ここには沢山いると思うわ」
キリも、里では出会えなかった人たちと、ここで沢山知り合った。
サクラも今から、新しい世界に触れていくのだろう。
「ちょっとキリ、もう少し手加減してくれない?
お母さんとやるときはもっと…………」
「ふふ、悪いけれど、私は訓練でも手を抜かない性格だから」
始めは母親の、イブキの代わりを務めようとした。
あるいは自分の、優しい母親を真似ようともした。
でも違うのだろう。キリとサクラには別の、良い形があって。
二人ともここで変わっていける。
「う、きゃあ!」
サクラの隙を穿って、キリが背負い投げを決める。
力及ばず、仰向けにひっくり返されたサクラは、しかし笑っていた。
「バカ、大人げないのね!」
「………………どう、サクラ。ここは楽しめそう?」
斑の一族の里で生まれ、殺し道具として育った少女。
喪失感も、不安も、きっとなくなってはいないけれど。
「ええ」
どこか満足げに笑うサクラを見て、キリも笑い返した。
同刻、食堂では、昼の見張り番を終えたアシタバ、オオバコと、秘書ユズリハが珍しく夕食を共にしていた。
「えぇ、そうです。サクラさん、ベニシダさん、サンゴさん、シンジュさん、ニーレンベルギアさん。
昨日五人全員からの配属希望を頂きまして、全員戦闘部隊入りとなりました。
サクラさんとニーレンベルギアさんは銀色学級との兼業ですね」
ほぉーん、とアシタバとオオバコは顔を見合わせてしまう。
「ベニシダ達は四人で班作るんだろうな。
サクラはどうするか……ま、ツワブキと相談だ」
「いやー新入隊員か!後輩だぜ後輩!
先輩として、いいトコ見せないとな」
「ふふ、よろしくお願いしますね」
翌月の初めに、戦闘部隊内の所属が改めて発表されることになる。
【荒波】のベニシダを班長とした、ベニシダ班の新設。
そして、ヤクモ、ヨウマ、ユーフォルビアらトウガ班への、サクラの加入。
画して戦闘部隊は、52人、10班の新体制へと移行する。
「あーそうだ、アシタバ、アシタバ、知ってるか!!」
この頃のオオバコの話の切り出しはそればかりだなと思ってしまう。
「なにをだ?」
「話変わるけどよ、リンドウ王子!前に魔王城に来たろ?
それに王族会議でもいたあいつ、日の国で反乱起こしたんだってよ!
もう鎮圧されちゃったらしいけど………」
「……………情報が遅い」
アシタバは思わず、ユズリハと顔を見合わせてしまう。
銀の団は、探検家総会を終え、新規入団者の受け入れを終えた。
けれどその間に世界は、何かの胎動を始めていた。
日の国、リンドウ王子の叛乱発生。ゲッカビジン王妃が鎮圧。
鉄の国、三つの内乱が勃発。いずれもブラックベリー王子が鎮圧。
橋の国、第一王子ティノローズを支持していた派閥が謀反、セトクレアセア王子が鎮圧。
河の国、剣の国へ経済制裁を展開し、彼らを擁護した波の国と一触即発の政局にまで発展するが、現状は沈静化。
月の国、ムルチコーレ卿の内乱、卿の領と、周辺二家の領が日の国に侵略、制圧される。
時代は変わった。変化は待たない。
誰も彼をも飲み込む流れの中で、立ち尽くしてはいられない。
生きることは変わっていくことだ。
だからいつか、選択の時がやってくる。
ウォーウルフの群れの様子を見るのは、アシタバの日課だ。
クリンユキフデを連れて地下三階に下りると、双眼鏡で個体数と、各個体の様子を調べていく。
「個体数変化なし、子供が大きくなってきたな。
冬も越えたし、そろそろ繁殖期か?どうなんだ、ユキフデ…………あれ?」
双眼鏡を外して、白いウォーウルフが隣にいないことに気付く。
見れば、少し離れたところでこっちを見ていたサクラに近寄り、手のひらをれろれろと舐めている。
「なんだサクラ、来たのか。見物か?」
「ちょっとでも魔物の勉強をしようと思って、お前がいるって聞いたから。
それよりなんなのこの子、前も私の手舐めてたよね?」
「あぁ、そいつな、その体毛のせいで群れから離れて、一匹で生きてたんだ。
だから、お前に同じ臭いを感じたのかもな」
それを聞いたサクラの目が優しくなるのを見て、なんというか、アシタバは安心してしまう。
サクラとクリンユキフデの姿は、幼い自分とアーベキーナを見ているようだった。
「かわいいのね、この子」
「あぁ、魔物だが普通の犬と変わらないよ。生き物は好きか?」
「んん、好きかな。私、探検家ってのになろうと思う」
「ここで経験を積むなら、それが一番近いだろうな」
「ねぇ、お前はどうして探検家になったの?」
「俺か?」
言われてアシタバは、自分の過去を思い出してしまった。
病院のベッドの上で読み漁った、沢山の生物図鑑。
アーベキーナの純白の体を美しいと思った。
ツワブキとディルに会って、探検家というものを知って。
スイカは、魔物知識と探検家の面白さを教えてくれた。
アセロラの手を引いて谷の国を出る時に、探検家になることを決めたんだ。
あまり人と交わらず、魔物と近い職種、きっとアセロラを隠しやすい。
それに。
「俺も生き物が好きなんだよ。
世界に広がる色んな環境に、沢山の生き物たちがいる。
彼らがどんな風に生きるのか、観察して、推測して、解明した時の面白さといったら。
宝箱を開けたみたいで………そう、飽きないよ」
【自由騎士】スイカに、そういう話をされた。
サクラから見て、自分はどう映っているんだろうか。
「サクラ、ここではやっていけそうか?」
「正直、まだ自信はない………けど、やってみる」
「あぁ、いいな。銀色学級の同世代の子たちには会ったか?
行儀よくしてれば、主婦会の人たちに受けがいい。
休みの日には、牧場班のところに行って動物を見るのもいいし。
地下二階の工房街をたまに歩くと、新しい作品があっていいんだ。
戦闘部隊でも、キリや俺がいるんだ、上手くやっていける」
魔王城に来て、一年が経った。
ここに来たばかりの時は、やっていけるのか不安に思うこともあった。
でも色んな人と知り合って、変わっていった。
これからは、どう変わっていくのだろう。
「大丈夫だ、サクラ。魔王城はきっと、楽しいよ」
もう自然に笑いかけることができた。
それを受けるサクラも、笑って見せる。
銀の団の、二年目が明けていく。
十七章十五話 『Day7 銀の団、二年目』
第十七章 了




