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魔物図鑑(登場した魔物一覧 - ネタばれ注意)

・魔物図鑑は、先代の探検家たちが残した報告書レポートを魔物ごとにまとめたものである。

・転ばぬ先の杖、先人の知恵を学び、己が窮地を1つでも減らせ。

・そして若い者たちの教訓となるよう、己が経験を残していってくれ。



■■■魔王城一階

■スライム

―――【始まりの探検家】レモン

 各地で確認されているプルプルとした、ゼリー状の魔物。鍬を振るったことがある者なら倒せる。

―――【長旅】のインゲン

 沼地に生息する個体は茶色、草原に住む個体は緑色と、環境によって体色が異なる。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 生殖を調べようと張り付いていたが、分裂して個体数を増やしたぞ。こいつら生物なのか?

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 水を亜水デミに、土を亜土ヂードゥに、空気を亜霧ムドーに変える習性を持つ。農民などとの遭遇率が高いのは、奴らがその習性から一般環境下を好み、魔物生息圏の外縁部に生息するからである。

―――【兵器論】のホリーホック

 生殖などの生物的な欲求は見られず、ただ魔物の為の環境整備を求めるように見える。“生物から最も離れた魔物”と評することができる。四大精霊の昆虫型魔物と併せて、“環境整備型魔物”と称することとする。

―――【迷い家】のディフェンバキア

 彼らが魔物用の土地を整備し、そこに逃れてきた草食魔物を追って、肉食の強靭な魔物がやってくるというループが存在する。スライムの出現は、土地への死刑宣告に他ならない。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 スライムの中は真水、その口によって亜水デミを真水にろ過していることを確認した。銀の団にて彼らの口を縫い合わせたシートを作成し使用、問題は起こっていない。各地の汚染された湖や池への、浄化手段に繋がると考える。               

【主な生息地】魔王城圏外縁、各地の人里



■■■魔王城上階

人魂ウィルオ・ウィスプ

―――【始まりの探検家】レモン

 スライムより小さい、橙色のゼリー状の生物。ダンジョンの松明にいるようだ。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 熱エネルギーを主食とし、熱を保とうとする習性を確認した。松明を燃やし続けるため、魔王軍によって配置されていると推測する。

―――【万屋】ウド

 食糧庫や山に到達し、大火事を起こす事例が報告されている。その時には膨大な熱エネルギーを吸い、巨大化することを確認。

―――【虎使い】のアサガオ

 ゴブリンがこいつらの使い方を知り始めたみたいだ。火矢に括り付けて飛ばして、火事を起こそうとしてくる。奴らの武器の出来が最近よくなっているし、もしかしたら鍛冶に利用しているかもしれない。

―――【自由騎士】スイカ

 魔王軍の武器だが、質がかなりよくなっている。武器不足の国には魔物から奪うことを提言した方がいい。一部はもしかすると、人の作ったものを上回るかもしれない。人魂ウィルオ・ウィスプの鍛冶利用には、人類の未だ見ぬ可能性がある。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 銀の団、鍛冶師ゴジカにより、現在鍛治への適用が試験されている。結果が出次第、また報告する。

【主な生息地】古城、廃墟、各地の洞窟ダンジョン



宝箱紛い(ミミック)

―――【長旅】のインゲン

 箱などを殻として被る、ヤドカリに似た生態を待ち狩りの魔物。何度も手を挟まれている。厄介な魔物だ。

―――【冒険詩人】コスモス

 奴らの鋏が鋭利なものへと進化しているようだ。人里の壺などに紛れ込んで、村人の手を切り落とす事例も増えている。人を騙し捕食するべく進化した、人の天敵とも言える奴ら。各自、村へ寄った際には注意喚起を頼む。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 儂が探検家仲間への支援用に置いた宝箱に擬態する事例が増えてきたようじゃ。今後、宝箱を置くのは止め、各地のものも回収していく。見つけても近づかないか、討伐をお願いする。

―――【隻眼】のディル

 我々の警戒や対策が伝わったのだろう、彼らは擬態による狩りをメインとしなくなった。最近は徒党を組み、一匹が囮になっているうちに背後から仲間が襲ってくる。箱に擬態しているミミックを見つけたら、背後への警戒を怠るな。

【主な生息地】古城、洞窟、廃墟



■ハルピュイア

―――【始まりの探検家】レモン

 全長3メートル、鳥型の空の魔物の代表格。嘴ではなく牙を持つ。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 主食は小動物や魚、人も食す。波の国(セージュ)での目撃が多い。どうやら渡り鳥としての習性を持つようだ。夏、集団で北へ移動するのを確認した。移動後の住処は確認できていない。

―――【魔商人】モミジ

 大きい羽根を持っているから、職人への人気が高いみたいだね。高値で売れるよ。

―――【自由騎士】スイカ

 ゴブリンがハルピュイアに騎乗する事例を確認した。空飛ぶ騎馬だ、注意されたし。騎士小鬼ゴブリンナイトと名付ける。

【主な生息地】山、谷など高低差の激しい地形



□□“鳥王”ジズ      朱紋付き(タトゥー)

―――【冒険詩人】コスモス

 波の国(セージュ)で気になる話を聞いた。ハルピュイアよりずっと大きい鳥型の魔物が辺境の砦に降り立ち、騎士団と交戦したらしい。千人もの騎士が立ち向かい、壊滅。魔物はまた空へ逃げたと聞く。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 この魔物について、金色の体毛に魔王軍の朱紋が刻まれていたという証言を得た。賞金をブラックレベルに引き上げ、朱紋付き(タトゥー)“鳥王ジズ”と命名する。

―――【穴熊】のフェイジョア

 金色の体毛を持つ、大きな鳥を雲間に見たって証言を2、3聞いている。こいつは噂で片付けられなそうだ。長距離飛行が可能な故に、地上に滅多に降りないのか……。

―――【錬金術師】ドリアン

 知り合いの伝手で、大きな金色の羽を入手するに至った。着色ではなく本物の色だ。既知のどの魔物のものでもなく、持ち主として思い当たるならこやつぐらいだ。

―――【隻眼】のディル

 魔王城にて、銀の団が交戦。その存在を確認するとともに、討伐を完了したことを報告する。金色の体毛と巨大な体は噂通り、特筆すべきは筋肉質の長い尾だ。モズの早贄の習慣を引き継いだのだろう、獲物を串刺しにすることに特化し、先端は尖っている。俺含め、ほとんどの者が適わない実力を有していたが、勇者リンゴが討伐を行った。




■■■地下一階 ―――迷いの森のフロア

鬼蜻蛉ドラゴンフライ

―――【始まりの探検家】レモン

 クジラ程の大きさを持つ、空飛ぶ魔物。ムカデに羽が生えたみたいな容姿だ。ほとんどの時は満腹なのか襲ってこないが、機嫌が悪いと空から襲い掛かってくる。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 振動するような羽ばたきは、鳥よりはハチやトンボに近い。生態を観察しようと思ったが、雲の上の風の流れに乗って長い距離を移動する習性のようだ、追いきれなかった。

―――【砂塵】のゴーヤ

 発見報告のほとんどは砂漠地方とその周辺。ハルピュイアや鳥を捕食しているのを確認した。その他の生態系はよくわかっていない。

―――【自由騎士】スイカ

 雲間を悠々と飛び、長距離を渡っていく様を時々見かけるが、決まって二匹だ。番なのだろうか?だとすると、たどり着いた先で繁殖を行う習性なのかもしれない。

【主な生息地】砂漠、渓谷



樹人トレント

―――【始まりの探検家】レモン

 樹に擬態する待ち狩りの魔物。根や枝に触れると、ツルをけしかけ襲ってくる。

―――【長旅】のインゲン

 群生をするようだ。森みたいな一帯を形成し、獲物を奥地まで迷い込ませたところで襲ってくる。彼らの巣は“迷いの森”と呼称することとする。

―――【偵察屋】ナンテン

 こいつらが色々な木に化けられるのもあって、“迷いの森”も色々な種類があるみたいだ。普通の森、密林、白樺の林や竹林……偽物って見分け方は生物の音がしないかどうかだ。耳を澄ませ。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 大茸マタンゴの胞子が彼らに有効だ。持っていると襲ってこない。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 ハエトリ草のような、食虫植物に分類されると予想される。彼らの罠にかかった者は、木にツルで括り付けられ、養分を吸われていくようだ。

―――【兵器論】のホリーホック

 彼らの傍に生えている植物は、本物の植物であることを確認した。恐らく擬態用に彼らが育てているのだろう。木という括りであれば、幅広く育てられると推測される。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 根樹人トレントルートという植物魔物、幹樹人トレントウッドという肉食性の共生がその正体だと判明した。触れると襲い掛かってくるのは幹樹人トレントウッドの習性だ。無害な根樹人トレントルートについては亜土ヂードゥ下で普通の植物を育てられる可能性を有しており、銀の団でこれを利用した畑の試験を行っていく。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 上記試験について、白菜での成功例を確認した。順次、新たな品目に取り組んでいく。

【主な生息地】森林地帯



大茸マタンゴ

―――【始まりの探検家】レモン

 人が座れるくらい大きな、キノコの植物魔物。動かないので、胞子以外は無害。

―――【冒険詩人】コスモス

 食用不可、繁殖性も厄介で、正直嫌な魔物だね。胞子は吸い込むと半日寝たっきりはざらだ。ダンジョン内だと死に直結する。

―――【万屋】ウド

 樹人トレントと生息環境が似通っているのだろう、隣合って繁殖していることも多い。大茸マタンゴの笠を樹人トレント避けに調達できると便利だ。

―――【魔商人】モミジ

 不眠症の貴族さんが、この胞子を日常的に使って眠っていたんだけど、とうとう肺を病んでしまった。やはり魔素カプを含んでいるから、体にいい作用はしない。皆、注意されたし。

【主な生息地】森林地帯



■■■魔王城地下二階 ―――消失迷宮、迷宮洞窟、草原のフロア

大蜘蛛ビッグスパイダー

―――【始まりの探検家】レモン

 人より大きな体を有する、巨大な蜘蛛の魔物。

―――【長旅】のインゲン

 奴らに捕まると糸でグルグル巻きにされてゆっくり捕食される。近づくな。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 普通のクモと同じく、狩猟性と造網性の二種類が存在する。造網性が作る糸のトラップの厄介さは言わずもがな、問題は狩猟性だ。普通のクモなら隠れて襲うところ、体が大きくなり見つかりやすくなった彼らの進化は、擬態寄りの方向へ偏ると予想される。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 探検家から避けられ続けたからじゃろう、各地のダンジョン奥底で進化を重ね、多様な種類が存在しておる。大蜘蛛ビッグスパイダーを相手する場合は、目の前の個体が独自の進化を経た何らかの初見殺しを有していないか、注意が必要じゃ。

【主な生息地】洞窟、森、砂漠



迷宮蜘蛛ダンジョンスパイダー

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城にて新たに確認された大蜘蛛ビッグスパイダーの派生種。胴体の上部、各足の腿と脛に石壁を有し、足を折り畳むと一枚の岩壁に擬態できる。狩猟性の蜘蛛で、群れて石造りの迷宮を形成し、知らずに迷い込んだ侵入者を狩る。矮雄の特徴を持つ種で、雌蜘蛛は大きな館レベルに巨大。石壁が重く、大蜘蛛ビッグスパイダーに比べ擬態能力と硬さでは優れるが、バランスと素早さで劣る。

―――【悪酔い】のハッカク

 頼む、全数討伐してくれ。

―――【尾切り】のメントン

 俺からもお願いする。

―――【隻眼】のディル

 魔王城地下二階にいた母蜘蛛の自滅を確認。銀の団にて子蜘蛛の討伐作戦を実施、地下二階にいた個体については全数を駆除完了した。

【主な生息地】なし



■ミノタウロス

―――【始まりの探検家】レモン

 頭が牛、体が人の魔物。サイズは巨人トロルに近く、知性は牛に近い。

―――【長旅】のインゲン

 縄張り意識が強く、迷宮のような洞窟に棲みついては外敵を積極的に迎撃する。

―――【偵察屋】ナンテン

 鉄の国(カノン)の山の中に巨大な巣を形成している。馬鹿デカい迷宮だ、誰も近づけねえよ。

―――【竜殺し】ソルガム

 武器の扱いを覚えたようだ。棍棒のような武器をよく持ってる。力は強く、戦闘は探検家でも中級者以上の実力が求められる。

―――【自由騎士】スイカ

 牛の頭のため、両眼視野が狭く距離感を測ることに優れていない。一方で単眼視野が広く、背後を含め敵の奇襲には鋭敏。二人で挟み撃ちにして攻守を切り替えながら削り切るのが最も効果的だ。

―――【狐目】のタマモ

 反芻が爆弾岩の種を拡散するための習性であることを確認。爆弾岩とはかなり強固な共生関係にある。他にも背中合わせの陣形など、傭兵の戦い方を学び始めている傾向が見られた。

【主な生息地】洞窟、山



■爆弾岩

―――【始まりの探検家】レモン

 踏むと炸裂する、岩の魔物。天然のトラップだ、足に酷い怪我か、致命傷を負うこともある。

―――【兵器論】のホリーホック

 調査の結果、爆弾岩は岩の魔物ではなく植物性の魔物だ。ツタを伸ばし岩を集め、自身を覆って鎧を作り、岩に擬態しつつ捕食から身を守る。自身が熟すと、踏まれるなどの接触を機にホウセンカのように炸裂、種とともに岩を弾丸のように飛ばし、少なくない確率で接触した相手を仕留める。血や肉を養分とするようだ。ホウセンカに近い生態から、別名を“鳳仙火薬マーダー・バルサム”とする。

―――【旅戦士】のオクラ

 血や死肉を養分とする習性上、戦場に好んで繁殖するようだ。死体漁りに嫌われているらしい。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城にて、ミノタウロスとの共生関係が確認された。ミノタウロスが種を広げてできた爆弾岩の生息域が、ミノタウロスの巣を守る。爆弾岩で負傷した敵はミノタウロスが容易く倒し、その養分は爆弾岩が得る。

【主な生息地】岩山、洞窟




■■■地下三階 ―――砂浜のフロア

■ウォーウルフ

―――【始まりの探検家】レモン

 狼に似た魔物。肉食性。群れて生きるが好戦的ではないようだ。一定以上逃げると追跡をやめる。

―――【冒険詩人】コスモス

 無駄な争いを避ける傾向にあると推測される。縄張り意識は強いが、平和的にやり過ごせる道があればそれを選ぶ。

―――【万屋】ウド

 ゴブリンやハルピュイアなど、他の魔物と争っている事例をいくつか聞いている。友好的というよりは、ラインを見定めるべき魔物と見た。

―――【砂塵】のゴーヤ

 雪山や砂漠、環境によって体毛の違いが確認できた。派生種とみなすべきかは判断がつかないが、少なくとも習性的な違いは見られなかった。

―――【隻眼】のディル

 魔王城にて、カルブンコとの共生関係を確認した。縄張り意識の強いこの魔物では、希少な例と考える。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 銀の団にて、ウォーウルフとの共存を図ることが決定した。地下よりの魔物の防波堤として用い、その危険性について今後検証していく。

【主な生息地】森林地帯、平原、砂漠、雪山



■カルブンコ

―――【長旅】のインゲン

 大トカゲサイズの、トウモロコシに似た魔物。習性も含めエリマキトカゲに近い。サイズにしては珍しく、尾の自切の習性を残している。

―――【冒険詩人】コスモス

 尾について、剣をこすってみたらやたら切れ味がよくなった。試しに砥ぎ師に持って行ったらかなりの好評だった。売れるかもしれない。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 旅の中で砥ぎ師や商人からカルブンコの尾はないかとやたら確認されるぞ……。かなりの人気商品なのか?

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 金色の体については威嚇や体温調節用と推測する。変温動物なのだろうが、他のトカゲと比べ日向ぼっこの時間が少ない。他に、岩や土を齧る習性も確認した。

―――【魔商人】モミジ

 しっぽが最高級の砥石として、市場でかなりの高値で取引されている。根元から尾までの、粒度のグラデーションがいいみたいだね。専属の探検家も何人か出てきた。

―――【自由騎士】スイカ

 金色の体について、鳥よけの面もあると考える。空から見てて、あいつらの光沢が目に入ると近づき辛い。

―――【尾切り】のメントン

 彼らが採取した石や土が尾に蓄積する仕組みみたいだ。砥ぎ石として上等なのは、生物としての柔らかさと鉱物としての硬さを併せ持つから、と思っている。

【主な生息地】平原、洞窟、森林地帯



祝福兎イースターラビット

―――【始まりの探検家】レモン

 背中に袋がついている、有袋類のウサギ型の魔物。背中には卵などを入れ、外敵が近づくと落として囮にするようだ。

―――【長旅】のインゲン

 彼らの卵が祝福卵イースターエッグとして、世間で人気を集めている。何でも、手に入れたら幸運が訪れるとか……。有袋類な以上、明らかに哺乳類だ。卵は彼らのものではない。他の生物の巣から盗んできているのだろうか?

―――【穴熊】のフェイジョア

 盗む瞬間を確認した、奴らの卵は鳥の卵だな。雑食かつ強力な繁殖能力を持ち、各地で個体数を増やしては草木を喰い荒らしている。自然破壊能力は軽く見てはいけない。優先して駆除するよう。

―――【旅戦士】オクラ

 繁殖力も相まって、食糧として非常に優秀だ。ゴブリン達が魔王軍の行軍に帯同させているのを見た。兵糧は彼らで賄われていたと見る。

―――【狐目】のタマモ

 この前、植物性魔物の種を袋に入れているのを確認した。生息範囲の拡大に一役買っているとしたらとんでもないぞ。こいつにはもっと注意した方がいい。

【主な生息地】どこでも



戦車蟹タンククラブ

―――【始まりの探検家】レモン

 巨大な蟹の魔物。サイズは一軒家を超える。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 雑食性で暴食だ。彼らが拠点と決めた周囲は瞬く間に食い荒らされてしまう。

―――【万屋】ウド

 アカガニの大行進のような集団移動を覚えたみたいだ。巷で“赤い津波”と呼ばれているそれは、家々を吹き飛ばし畑を抉り尽くす。魔王軍の壊し屋………人類に最も被害を与えた魔物、としていいだろう。

―――【竜殺し】ソルガム

 こいつらを観察していたが、幼体が全くいない。繁殖の様子も見られん。ひょっとすると鮭のように、どこかにある故郷でしか繁殖をしないのかもしれない…………だとすると、魔王城か?

―――【錬金術師】ドリアン

 こやつらの行動は無差別で突発的、多くの農村が被害に逢っている。バリケードなどで対策を試みたが効果なし。仲間の死体を乗り越えて襲い掛かってくる。

―――【黒鮫】のコンブ

 漁師に聞いたが、蟹の漁に“刺し網”漁法というのがあるらしい。網を張って蟹を絡めとる。あの勢いで動く魔物だ、体でなくとも足を絡ませられれば、効果は高いと見た。

―――【自由騎士】スイカ

 空に逃げれる私だからこそできたが、戦車蟹タンククラブに刺し網漁法は有用みたいだ。ただ設置したところに戦車蟹タンククラブが来ないと意味がなく、使いどころが難しい。

―――【隻眼】のディル

 魔王城地下にて接敵、全数を討伐。自切の習性を新たに確認した。刺し網漁法、狭い場所での交戦ならなかなか使えるぞ。

【主な生息地】海、各地



■■■地下四階 ―――湖のフロア

■蜃

―――【放浪公子】デンドロビューム

 波の国(セージュ)でこの逸話を聞いた。迷い込んだ者は帰れない、魔の海域を形成していた魔物。巨大な二枚貝の姿をしており、こいつの近くには強靭な魔物が犇めくという。数年前波の国(セージュ)王家が十七隻の船で討伐に向かったが、帰還者はいなかったそうだ。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 砂の国(ランサイズ)で二例目の個体が発見された。王家がその討伐作戦を執り行った。結果は作戦に携わった全員が全滅。【砂塵】のゴーヤ殿も犠牲者に含まれていた。どうやら貝殻の中で幻惑魔法を熟成させ、周囲に巻き散らすようじゃ。その霧を多く吸い込むと精神が侵される……砂の国(ランサイズ)の戦士たちは廃人になっておった。重ねて、周囲にはその幻惑魔法を利用し人を騙す魔物が集まりやすい傾向にある。周囲の環境ごと支配する、かなり高度な魔法魔物と言える。

―――【隻眼】のディル

 魔王城で三例目の個体を確認、討伐した。耐幻覚魔法を関わった全員に施し、攻撃も霧からの退避も魔導士を頼った。大海蛇シーサーペントとの共生を確認。また上昇気流のある場では、幻覚魔法の霧を上へ押し上げ、被害を抑えることができる。

【主な生息地】海、砂漠



海怪鳥セイレーン

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 水辺向けに進化を遂げたハルピュイアの派生種。黒い体毛が特徴的。主食は魚のようだが、海沿いの崖に横穴を掘り巣を作る習性上、なかなか観察ができない。

―――【黒鮫】のコンブ

 黒い体毛は水をよく弾く。ウミガラスのような潜水能力を得たようだ、海面へ急降下し、しばらく水の中に潜って魚を捕る姿を見かける。

―――【自由騎士】スイカ

 断崖の巣が敵を寄せ付けないからだろう、戦ってみるとハルピュイアより脇が甘い。それに、魚を捕らえるべく口が嘴に戻ってきている。面白い進化だ。

【主な生息地】海沿い



水棲馬ケルピー

―――【始まりの探検家】レモン

 水辺に生息する、水と陸で生きる馬の魔物。魚や人を食す肉食。

―――【冒険詩人】コスモス

 上に乗った者の腿を背中の毛で掴み、そのまま水に引き摺りこんで溺死させるみたいだ。ペガサスがいなくなった後の代替として水棲馬ケルピーを飼い慣らそうと目論見た公子が、川の中へ引きずり込まれる事件が多発している。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 肺呼吸とエラ呼吸を併せ持つ両生類に近い魔物だ。哺乳類とは違い、水底にカエルのような卵を産み付けているのを確認した。

―――【万屋】ウド

 公子達で味を占め、宝箱紛い(ミミック)と同じように俺たちを標的とした進化をしているようだ。疲れた旅人がよく通りがかる街道近くに巣を作るようになってる。

―――【黒鮫】のコンブ

 雨や霧など、視界の悪い日に積極的に狩りをするように進化している。一度水中で戦ってみたが、陸と違いかなり獰猛になるぞ。気を付けろ。

【主な生息地】湿地帯、河川地域



寄生蛸パラサイト・オクトパス

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下四階で姿を確認した、新種になる。コバンザメの習性を持つタコの魔物、体色を自在に変えることが可能だ。強い魔物などにつき、その変色で狩りを助けながら餌を集めるようだ。

【主な生息地】海、湖



大蛇ビッグスネーク

―――【始まりの探検家】レモン

 人間の大きさを超す蛇型の魔物を、こう総称することにする。気質は獰猛、縄張り意識が強く、人を頭から丸呑みすることもある。

―――【教授プロフェッサー】のチューリップ

 毒を有する種もあるようだ。大蜘蛛ビッグスパイダーと同じく、多くの種に派生している。

―――【隻眼】のディル

 メドゥーサが七体の大蛇ビッグスネークを側近のように従えていた。以下に情報を示す。


■“黒色”      大蛇ビッグスネーク

―――【隻眼】のディル

 初めてメドゥーサと共に姿を現した、全身が黒色の個体。最も大きな体を有していた。地下五階、雪原のフロアにて、キリ隊員により討伐されている。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 俺もその姿は見た。カラスヘビの大蛇ビッグスネークだと思われる。


■“コブラ”     大蛇ビッグスネーク

―――【隻眼】のディル

 皿状の上半身を持った個体。地下四階、湖のフロアにて、パッシフローラ隊員が焼殺した。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 恐らくキングコブラの大蛇ビッグスネーク……猛毒を有していたと推測される。


■“トビヘビ”    大蛇ビッグスネーク

―――【隻眼】のディル

 緑色の体をうねらせ、空中を滑空する姿が目撃された個体。地下四階、湖のフロアにて、ピコティ隊員の罠により、セイレーンと争い、衰弱死した。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 パラダイストビヘビという、黄緑色の同じように空を滑空する蛇がいるから、その大蛇ビッグスネークと思われる。


■“ツノ付き”    大蛇ビッグスネーク

―――【隻眼】のディル

 地中からよく姿を現した、二本角を有する個体。穴掘りが得意のようだ。地下三階、砂浜のフロアにて、ハイビスカス隊員により討伐されている。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 ツノの形状から、サハラツノクサリヘビの大蛇ビッグスネークと推測している。


■“トゲトゲ”    大蛇ビッグスネーク

―――【隻眼】のディル

 メドゥーサと共にローレンティア団長を追い詰めた個体。体中に尖った鱗を持っており、メドゥーサ撤退戦後、地下四階湖のフロアにて勇者リンゴが討伐している。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 死体を俺も確認したが、ヘアリーブッシュバイパーという蛇にそっくりだ。その大蛇ビッグスネークと考えられる。


■“白色”      大蛇ビッグスネーク

―――【隻眼】のディル

 メドゥーサと共にローレンティア団長を追い詰めた個体。純白の体を有し、どの蛇の大蛇ビッグスネークなのかは分かっていない。アルビノなのかもしれない、とアシタバから指摘を受けている。メドゥーサ撤退戦後も死体は見つかっておらず、目撃例があれば報告をお願いする。



大海蛇シーサーペント

―――【冒険詩人】コスモス

 最近船を襲う魔物の話をよく聞く。細長い竜だと船乗りは言うけど、どうなんだろうね。龍か、蛇か、魚か……海の魔物にはなかなか切り込めない。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 船旅でこいつらに出くわし、喉から上を切り落として観察することができた。結論から言うと、こいつらは海に適応した、ウミヘビの大蛇ビッグスネーク……大海蛇シーサーペントと称することにする。船長には感謝されたが、襲われ沈められる船も多いらしい。

―――【魔商人】モミジ

 この前こいつが川上りしているところを見たよ。淡水に適応し始めている。そうなるとかなり厄介だぞ。各自、警戒を怠らないよう。

―――【黒鮫】コンブ

 淡水に適応した派生種だが、進化迷子だったようだ。絶滅しつつある。理由として、川じゃ海ほどに食料を得られなかったんだろうな。

―――【隻眼】のディル

 メドゥーサ撤退戦にて、メドゥーサの手下みたいに動いているのを確認した。どうやら、蜃の護衛としての役割を持っていたみたいだ。魔王城の地下四階にいた個体は、【刻剣】のトウガが討伐している。



尾喰いの蛇(ウロボロス)

―――【万屋】ウド

 二対の大蛇ビッグスネークがお互いの尾を噛み合っていた、という話を聞いた。眉唾だが、情報として一応上げておく。

―――【魔商人】のモミジ

 一匹の大蛇ビッグスネークが自分の尾を噛んだままじっとしていた、という目撃証言を得た。偶然にしては内容が似すぎているので、共有しておく。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下六階で接敵。実態は大蛇ビッグスネークではなく、ミミズに似た生物と判断した。蛇への擬態と雌雄同体の特徴を持ち、一個体でも自家受精で妊娠できる。その受精の姿が、輪状になり尾になった姿になっていた。

―――【隻眼】のディル

 メドゥーサ撤退戦後、銀の団により討伐を行った。攻撃性は低いと思うが、妊娠時以外の気性は未だ不明。



■■■地下五階 ―――雪原のフロア

雪男イエティ

―――【長旅】のインゲン

 巨人トロルが雪山に適合した派生種。白い体毛を有し、雪に擬態する。

―――【万屋】ウド

 知性魔物にしては臆病だが、縄張り意識と魔王への忠誠は強いみたいだ。逆に縄張りを侵さなければ襲ってこない。

―――【凱旋】のツワブキ

 臆病で侵攻はしてこないとされていた雪山深くにいた奴らが、魔王討伐を機に砦へ攻め入る事例が多く報告されている。今まで確認された巣と、討伐済かを照らし合わせて対策を行う。協力してくれ。

―――【隻眼】のディル

 地下五階に生息の跡を確認。全員が勇者一行に立ち向かい全滅したと目される。

【主な生息地】雪山




■■■地下六階 ―――砂漠のフロア

包帯男マミー

―――【偵察屋】ナンテン

 包帯でグルグル巻きにされたような人型の魔物だ。砂漠に生息し、まったく動かない。直感だが、ヤバイぞ。近づかない方がいい。俺は手を引く。

―――【砂塵】のゴーヤ

 近づいたら最後、帰った者はいないと言われ、生態系が謎に包まれている。分かっているのは砂漠の一角に住み、領土は広げず、攻撃はしてこないってことだけ。探検家組合ギルドでブラックランクの賞金を懸けたけど、実績はなしだ。

―――【虎使い】アサガオ

 【錬金術師】ドリアンが素材として包帯が使えるか調べたいっつって、挑んだきり帰ってこなかった。帰らずの話は相当マジだ。各員、注意されたし。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下六階でその生態を掴んだ。実態は砂漠百足ワームの蛹だ。幼虫はアリジゴクに似た生態を持ち、砂中に地下牢のような空間を作り、獲物を落とす待ち狩りの魔物の性質を持つ。彼らは蛹である包帯男マミーを守り、そして羽化すると鬼蜻蛉ドラゴンフライとなる。

【主な生息地】砂漠



亜蛇バッドスネーク

―――【穴熊】のフェイジョア

 大蛇ビッグスネーク程ではない、通常サイズの蛇の魔物をこう総称する。毒を有するタイプや、一部は魔法魔物に進化し厄介な効果を持ち始めているから注意が必要だ。

―――【凱旋】のツワブキ

 メドゥーサの手下として動いていた。いわゆる“石化の魔眼”、対象者が動けなくなる呪いを持っていることを確認した。

【主な生息地】砂漠、岩山



大蠍ビッグスコーピオン

―――【偵察屋】ナンテン

 砂漠でデカい蠍の魔物が出現してるみたいだな。サイズは両手に収まりきらないほど。あの鋏で足を掴まれると厄介だ、近寄らない方が吉だぞ。

―――【砂塵】のゴーヤ

 どうやら魔法魔物みたいだ。こいつに刺されて足が異様に腫れた旅人をよく見る。商隊キャラバンならいいが、一人旅で刺されると砂漠の真ん中で動けなくなって詰みだ。足首周りの武装はした方がいいな。

―――【錬金術師】ドリアン

 どうやら一部は擬態を覚えたみたいだな。砂を被って獲物の接近を待つ姿を見かける。生きるトラバサミだ、鉄靴などの装備は必須だぞ。

【主な生息地】砂漠



砂漠百足ワーム

―――【長旅】のインゲン

 砂漠で見かける大きなムカデ型の魔物だ。砂の中を泳ぐように移動し、縄張り意識が強い。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 砂を掻き分け素早く移動できるのは小さな足のおかげだろう。肉食で人を襲うから注意だ。交尾をする様子は見かけるが、子供は未だ確認されていない。砂中深くで成長する生態なのだろうか?

―――【砂塵】のゴーヤ

 攻撃は噛みつきだけだ。最初の攻撃を避ければ、後はがら空きの胴だけ。戦う時は、砂中からの初撃に集中しろ。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下六階にて遭遇。尻のない構造から、アリジゴクに似た様態の進化種と分かった。完全変態の生物であり、蛹の包帯男マミー、成虫の鬼蜻蛉ドラゴンフライへと進化をしていく。

【主な生息地】砂漠



殺人蜂キラービー

―――【始まりの探検家】レモン 

 片手を埋めるぐらいの大きな蜂。サイズは脅威だが動きは鈍く、簡単に叩き落とせる。個体のみであれば恐れる程ではないが、群れに追われると厄介。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 蜜蜂のような、植物性魔物の受粉を助ける種類は見られない。彼らは全て木や花ではなく、小生物を食す肉食の狩りバチだ。どこへでも巣を作るため、農村からの退治依頼が多い。基本的には全身甲冑をきれば安全に処理できる。巣の撤去方法をまとめたので、各員参考にしてくれ。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ 

 普通の蜂と同じく、完全変態を有する。巣では働き蜂が子供を助ける、社会性を持つ魔物だ。蟻もそうだが、彼らの組織コミュニティは全く以って興味深い。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城の地下六階で、寄生バチとしての進化を確認した。対象は包帯男マミー。通常の寄生バチは宿主の中で蛹となるが、こいつらは巣を作ってコロニーとしてしまう。砂漠で見かける殺人蜂キラービーはそういう独自の進化を遂げている可能性あり、今後は注意した方がいい。

【主な生息地】森、砂漠




■■■地下七階 ―――火山のフロア

火蜥蜴サラマンドラ

―――【偵察屋】ナンテン

 火山環境に適合したトカゲの魔物を発見した。のそのそと遅い小動物だ。火山の熱を利用して食事量を抑えてんのかな。高熱下では発光するみたいだ。恐らくは、天道蟲ライトバグの成体なんじゃねぇかな。

―――【兵器論】のホリーホック

 天道蟲ライトバグ……火精霊サラマンダーの関係は否定させてもらう。あちらは昆虫型、こちらは爬虫類だ。天敵の少ない火山環境に逃げ延びたからだろうか、ノロマで戦闘能力のない無害な魔物のようだな。

―――【穴熊】のフェイジョア

 どうも火山熱を利用する代わりに食事を極力まで抑えた種みたいだな。発光するのは求愛行動の一種でもあるみたいだ。しかし、火精霊サラマンダーと似た紛らわしい名前だけが残っちまったな。

【主な生息地】火山



■ドラゴン

―――【冒険詩人】コスモス

 さて、本日開業した探検家総会ギルドの記念すべき報告書レポート一発目として、ドラゴンのことを語ろうか。今の時代では言わずと知れた、英雄【竜殺し】オウバイが討伐した魔物最強の種だ。剣を通さない、魔物の中で最も硬い鱗。遠距離の敵を焼き払う吐息ブレス巨人トロルを超す巨体。数十年前多大な被害を齎した魔物だ。

―――【竜殺し】ジニア

 僕からは文化的な面でのドラゴンを語っておこう。ドラゴンは人類の前に初めて現れた、屈強な個の魔物だ。だから魔物の代名詞、強さ怖さの象徴シンボルになっている。それを討伐した我が父オウバイの英雄視もまた然り。両者は御伽噺として世界に広まり、ドラゴンは個体数に反して辺境の村に至る程の知名度を誇る魔物だ。

―――【竜殺し】ホド

 討伐したドラゴンの解体結果、及び父の記録から見るに、吐息ブレスは彼らの喉元にある空気袋と火打石のようになっている奥歯によって実現されるようだ。死体の空気袋に可燃性のガスが残っていた。彼らの内臓で発生したものだろう。そして喉元の伸縮を実現するために、彼らの首元の鱗は一枚だけ柔らかくなっている。これを“逆鱗”と称す、普通の剣でも貫け、奴らを仕留められるドラゴン唯一の急所だ。

―――【竜殺し】アルパラガス

 詳しい内容は補足資料に残す。長年の観察の結果、ドラゴンの生態に以下の特徴が確認された。(1)長寿であること、(2)自家受精が可能で一個体で繁殖が可能なこと、(3)但し天敵不在故に繁殖の間隔が非常に長いこと、(4)彼らが生きながらに進化を果たし、その形を変える種であること、(5)天敵不在故に進化迷子に陥りやすく、世代を下る毎に弱体化していること。

―――【竜殺し】ソルガム

 多くの竜と戦ったが、やはり第二世代のドラゴンが強い。判別は顎の形で可能だ。第二世代のドラゴンは、俺たち竜殺しの一族の中では“龍生九子”と呼ばれる。手強い奴らだ。

【主な生息地】各地


■始原竜

―――【竜殺し】ホド

 祖父オウバイが討伐した竜の情報を残しておくよ。父は朱紋付き(タトゥー)だったんじゃないかと言っていた。すべてのドラゴンの母、そして恐らく最強のドラゴンだ。魔物が現れ始めた頃から既に成体だったんだから、生まれたのはいつなのか……謎は残ったままだね。

【主な生息地】岩山


■紅龍

―――【竜殺し】ホド

 父ジニアが討伐した龍生九子が一体、紅龍の情報を残す。深紅の鱗を有する個体、吐息ブレス機能が大幅に強化され、範囲レンジと量が格段に上がっていた。その代わりに逆鱗が肥大化、潜り込めさえすれば弱点を突きやすい進化迷子が見られた。

【主な生息地】火山


■黄龍

―――【竜殺し】ホド

 龍生九子が一体、黄龍を討伐した。黄色の鱗の上に、岩のような硬い表皮を有する防御特化の個体だ。硬いが動きは鈍く、罠に嵌めて刈り取ることが出来た。

【主な生息地】岩山


■紫龍

―――【竜殺し】アスパラガス

 龍生九子が一体、紫龍を討伐した。紫色の鱗を有する毒性の強化された個体だ。薬師との連携で倒せたが、他の龍生九子も独自の進化を果たしていると予想される。私の調査結果をまとめておく。

【主な生息地】沼地


■碧龍

―――【竜殺し】アスパラガス

 尖った岩山の渓谷で目撃されている、飛行能力が強化された碧色の鱗を持つ龍だ。

―――【竜殺し】ソルガム

 碧龍については俺が討伐した。確かに厄介な相手だったが連続飛行には限界がある。着地時が狩りどころだったな。心肺機能を飛行に回した結果、吐息ブレスの弱体化も見られた。

【主な生息地】渓谷


■翠龍

―――【竜殺し】アスパラガス

 草原を駆ける姿が目撃された、走力強化の翡翠色の鱗を持つ龍だ。

―――【竜殺し】ソルガム

 翠龍討伐完了。脚部が異常に発達し、代わりに碧龍同様吐息(ブレス)の弱体化が見られた。移動速度は厄介だったが、こちらも止まった時が狙いどころだ。

【主な生息地】草原


■緋龍

―――【竜殺し】アスパラガス

 鋼球のような尾を持つ緋色の鱗のドラゴンの目撃情報がある。恐らく緋龍だろう。

―――【竜殺し】ソルガム

 緋龍についても俺の方で討伐した。尾を振り回す破壊力強化。飛行能力の弱体化は見られたが、あまりデメリットの少ない順当な強化だ。手強かったな。

【主な生息地】森林


■蒼龍

―――【竜殺し】アスパラガス

 海でその姿を目撃された、蒼色の鱗を持つドラゴンだ。水棲に適応したと考えられる。

―――【竜殺し】トネリコ

 母メディニラがこのドラゴンを討伐した。帰りの海路でクラーケンに襲われ帰らなかったから、僕から報告をさせてもらおう。魚に似た海への適合、その代わり空気袋は潜水仕様となっており吐息ブレスの弱体化が見られたようだ。

【主な生息地】海


■黒龍

―――【竜殺し】アスパラガス

 漆黒の鱗を持つ三つ首のドラゴンの目撃情報が残っている。恐らく黒龍だろう、情報を残す。

―――【竜殺し】レオノティス

 今日、魔王城地下七階で黒龍を討伐した。先祖の予想は度々あったがその実態は魔法特化、3つの魔法回路を操るドラゴンだ。強力な遠距離攻撃手段を有したが故に吐息ブレスが完全廃止され、逆鱗が消失していた。但し進化迷子として、可燃性のガスの焼却手段がなくなり体内に残留していたことも確認した。

【主な生息地】魔王城


■白龍

―――【竜殺し】アスパラガス

 蛇のような長い体と純白の鱗を持ったドラゴンだ。白龍として情報を残しておく。

―――【竜殺し】レオノティス

 魔王城地下八階で遭遇。その後空へと消えていった。体表に帯電を確認、恐らく黒龍と同じ魔法魔物だ。



■■■地下八階 ―――霧の谷のフロア

■落下草

―――【迷い家】ディフェンバキア

 魔王城地下八階で発見された新種の悪魔植物イビルプラントじゃ。崖肌に蔓を伸ばし、谷の頂上と谷底に跨って繁殖する。ここまで高低差を好む植物は他にないじゃろうな。頂上側は、谷間にツルを伸ばし疑似的な草原を作り出す。知らずに踏み込んだ者を谷底へ落とす、恐ろしき天然の落とし穴じゃ。谷底側は墜落死した獲物の死肉をすすり育つ。狩りをする植物じゃな。

【主な生息地】魔王城地下八階



■ランプ草

―――【長旅】のインゲン 

 ダンジョンの奥深くで自生していることがある、発光する花弁を持つ植物魔物だ。花の大きさは人がすっぽり入れる程度。茎から取ると光は消えてしまう。ありがたい貴重な光源だ、そのままにしておくことを推奨する。

―――【竜殺し】アスパラガス

 ダンジョンのかなり深い層でないと見かけないな。恐らくは相応に濃い魔素カプでないと発光現象が成立しないのだろう。何故光るのだろう。そこにどういう生物的戦略があるのだろう……。獲物の誘き寄せだろうか。

―――【草笛】のホシグサ

 自然とそういう巡りあわせになったのか、発光し魔物達の貴重な光源であるこの植物は、捕食対象となることが少ないようだ。光り、魔物達を助けるから食べられない……ある程度役に立てば見逃される、そういう戦略もありということかな。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 補足をしておくが、ランプ草は食べられることもある。確かに彼らは貴重な光源だ、但し疎らに点在していればその役割は果たせる。だから近くに咲いたランプ草は片方が食べられるんだ。そしてきっとそれは、彼らに必要な間引きになっている。

【主な生息地】ダンジョン深層



■煙草

―――【用心棒】のエンドウ

 厄介な新種が現れたぞ。焚火に似た煙を発する植物性魔物だ。奴らの本質は待ち狩り、中核で煙を発し、近づいたものを狩る巨大なトラバサミのような本体が地中に埋まっている。ハエトリグサのようなもんだな。ダンジョン内で仲間がいると思って焚火の方を目指すと、奴らに刈り取られるぞ。

―――【灰狼】キリン

 焚き火の煙は人間をおびき寄せるために進化したのだろうが、その香りは魔物の好みのようだ。誘き寄せの原料として使えるぞ。

【主な生息地】森、谷、砂漠



無臭草セーフライタ

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 面白い魔物植物を見つけた。強い消臭効果を持つようだ。恐らくは肉食魔物の体臭を消し狩りを助ける進化なのだろうが、人間にとっても有用だ。ダンジョン内の焚火の煙は、臭いで魔物を寄せることがあるというが、この葉を持ち歩けばリスクは軽減されるだろう。

―――【魔商人】のモミジ

 これ売れるな。旅商人から結構な人気だ。ウチで重点的に買い取らせてもらうから、各自収集よろしく頼む。

【主な生息地】森、草原



黄泉樹よみのき

―――【竜殺し】アスパラガス

 不可思議な樹型の魔物を見つけた。周囲に虫の死骸が転がる樹だ。死体の方を調べたが死因は毒。だが樹の方に毒性は見られない……が、警戒に越したことはないだろう。注意されたし。

―――【草笛】のホシグサ

 この生態が分かった。生息地域によって異なるようだが、数日おきの深夜に突如毒性を発するようだ。普段は甘美な樹液を発し虫を集め、奇襲的な毒で殺して死骸から養分を吸う。樹の棘にも毒はあるようだ、迂闊に触れると死ぬぞ。

【主な生息地】森



熊甲虫ベアビートル

―――【竜殺し】ジニア

 熊ぐらい大きなカブトムシに出会った。巨大蟲インセクトの一種だ。小回りは効かないがパワーと突進力があり侮れない。何より特筆するべきは表皮の固さ、普通の剣では通らない程だ。父の剣で倒せたが、皆は注意した方がいいな。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 草食、大人しいが縄張り意識の強い魔物だな。私も出くわしたが、皮の固さは驚異的だ。流石にドラゴン程ではないが、少なくとも巨大蟲インセクト界では最硬だろう。倒し方としてはお腹側を狙うしかない。敵をいかにひっくり返すか……相撲の様相になってくるな。

―――【魔商人】のモミジ

 彼らの表皮だが、防具職人にかなりの人気だ。軽い、硬い、加工しやすい。この魔物の素材を調達できるんならいい値を出せるぞ。

【主な生息地】森



大団子虫ロリポリ

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 巨大なダンゴムシの巨大蟲インセクト。草食の比較的大人しい魔物だが、縄張り意識は強く、外敵を察知すると丸まって集団で襲い掛かって来る。傾斜のある場所では落石群に匹敵する、なかなか侮れないぞ。

【主な生息地】森、山



死出虫デスイーター

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 どうも、魔物の死肉を餌とする虫型の魔物がいるみたいだ。彼らは肉食魔物の食べ残しや骨を分解して土へと帰す役割を持つが、厄介なのはその時に発する匂いだ。仮に死臭と名付けるが、これは魔物を呼び寄せる効果があるようだ。魔物の死体には近づくな、という古くからの探検家の経験則を裏付ける理屈が証明されたといえる。

―――【魔商人】のモミジ

 調べる程厄介な魔物みたいだなぁ。他の魔物の糧とならなかった肉片を土に返し、植物魔物の糧とするのは勿論のこと。死臭は死肉に魔物を集め、そこが局所的な蟲毒となり、肉食魔物も鍛えられる。魔物が人間に殺されたのなら、間接的に敵討ちをしてくれる魔物を呼び寄せる効果もある。多くの魔物を殺した激戦区に延々と魔物が集まり続けるのは、この死臭の効果もあるかもしれない。つまり魔物を倒す敵に、魔物を送り続けるための仕組みだ。

【主な生息地】どこでも



猫又ケット・シー

―――【穴熊】のフェイジョア

 尾を二本持つ猫型の魔物だ。大きさも習性もほとんど猫と同じ。好奇心旺盛で、人間の持ち物を盗んだり家に忍び入って荒らしたりはするが、直接的に害がある魔物ではないみたいだ。二本に増えた尾はバランス感覚の強化及び、仲間との意思疎通との強化と推測する。普通の猫より高度な会話が可能みたいだ。 

【主な生息地】洞窟、山、森



食人靫葛グラトニー・ネペンテス

―――【竜殺し】レオノティス

 魔王城地下八階で見つかった新種の悪魔植物イビルプラントだ。家屋を丸のみする程の巨大なウツボカズラ。その上蓋は小区画の森となっており、迷い込んだものを消化液の池へと誘う。大蟻ビッグアントと協力し、獲物を追い込み落とそうとする。発見した個体は全て駆除し、絶滅した可能性もあるが、各自留意されたし。

【主な生息地】魔王城地下八階



軍隊大茸アーミーマッシュ

―――【森の主】ハイビスカス

 魔王城地下八階で見つかった新種、大茸マタンゴをも超す、家ぐらいの大きさを有するキノコの魔物だよ。他の魔物に侵略されない強固な群生地帯を形成してる。堅牢さの理由はその習性、他の生物に寄生し、自由を奪って自らの兵隊とするみたい。意識を奪い、関節を支配し、殺さず生かして彼らに害為す敵と戦わせる。彼らの地帯に居続けると取り込まれるかもしれないから、近づいちゃダメだよ!

―――【悪酔い】のハッカク

 うぉぉぉぉおおお探検家組合ギルド報告書レポートに女の子の可愛らしい丸文字が!!

【主な生息地】魔王城地下八階



鬼百足(タイタンピード)

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 鉄の国(カノン)で気になる噂を聞いた。大昔の鉱山に、化け物みたいな巨大なムカデが棲んでいるらしい。長すぎて頭と尾を同時には見られないぐらいだとか、岩をも一飲みにしてしまうとか。尾ひれがつき過ぎている気もするが、情報は上げておく。

―――【五代目竜殺し】ソルガム

 この魔物と戦った。大蛇ビッグスネークのでかい方に相当するサイズ、鬼百足(タイタンピード)と名付ける。大蛇ビッグスネークと比べると筋力が少なく口も小さいが、胴の周りで無数の鋭い足が動くから、近づき辛さは上だな。恐らく毒性も兼ね備えている。現時点では軽度だが、大きな体を守るための進化に毒強化は十分考えられる。要注意だ。

―――【森の主】ハイビスカス

 魔王城地下八階で一体が確認されたよ。銀の団で討伐済み。谷には小さなムカデ魔物も沢山いるから、その中で生き残った子が長い年月をかけて巨大なサイズになるんだろうね。毒性は高いみたい。死肉を漁ろうとする魔物が全然いないよ。

【主な生息地】鉱山



鷲蜻蛉イーグルフライ

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 鷲ほどの大きさのトンボの魔物だ。魔物界でもかなり上位の飛行能力を持つ。小回りと加速はハルピュイアの比じゃないぞ。群れで狩りをして大きな肉食獣にも襲い掛かる。上空に彼らを見つけたら、すぐに何かの下に潜り込め。

―――【迷い家】のディフェンバキア

 魔王城地下八階で奴らを見た者がいるらしい。話によれば、海鳥の様に急降下し水中の獲物を狩っていたそうじゃ。無警戒な水中生物を狙った進化か……カツオドリの収斂進化、上空から降り注いでくる矢に等しいそれは厄介じゃのう。

【主な生息地】森、水辺



■溺死草

―――【兵器論】のホリーホック 

 海岸でこの魔物が数を増やしているようだ。一見すると背の高いワカメだが、近くを泳ぐ者の脚に絡まり溺死させる。その実害も厄介だが、捨て置けないのは既存の海草の駆逐だ。背の高い彼らは海に差し込む日光を独占し、元々いた海草達を弱らせていく。駆除を推奨するが、繁殖力はかなり高いぞ。

―――【黒鮫】のコンブ

 魚人フィッシャーマン達が住処や狩場にしている時もある。潜伏場所を作りやすいから要注意だ。鬼海胆をあえて持ち寄って喰わせることで駆除する方法がある。毒を持って毒を制す、というやつだな。但し繁殖した鬼海胆が残るから、結局は変わらないがな。

【主な生息地】海、湖



大水蟷螂アクアマンティス

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 かなり危険な魔物を見つけた。湖底に、水草に擬態してじっと潜む巨大なカマキリ型の巨大蟲インセクト。水場の巨体はどうあがいても勝てん。それに、水底で静かにしているのがとても不気味だ。

―――【黒鮫】のコンブ

 湖面にある程度の獲物が集まれば動き出す習性のようだな。一か月ほど観察したが、潜伏時は水草で凌ぎ、活動期は湖面の獲物を喰らう肉食だ。自分の体格に近い生物か、数の多い相手に過剰反応する。小さな水棲魔物にとっては良き守り神だ、湖奪還を考えると厄介な相手だな。

【主な生息地】湖



大竜蝨アクアビートル

―――【黒鮫】のコンブ

 水棲魔物化した巨大蟲インセクトの一種、ゲンゴロウの魔物だ。熊甲虫ベアビートル程ではないが硬い表皮を有し、水上からの攻撃を遮断する。水草を食べる大人しい魔物だが、増えすぎると既存の生態系に悪影響を及ぼす。

【主な生息地】湖



大水蜘蛛アクアスパイダー

―――【黒鮫】のコンブ

 どうやら、一部の大蜘蛛ビッグスパイダーは水棲魔物として進化したようだな。今日湖で襲われた。エラ呼吸を獲得したわけではなく、水草を固めて空気溜まりを作り、そこで肺呼吸するようだ。水際での奇襲に優れ、迂闊に突っ立っていると八本の脚で抱き寄せられてあっという間に水底に誘われるぞ。

【主な生息地】湖



大枝蜘蛛ブランチスパイダー

―――銀の団所属ズミ

 魔王城地下八階で確認された大蜘蛛ビッグスパイダーの新種です。ナナフシに近い“ウィップスパイダー”という種がいるみたいですが、その巨大蟲(インセクト)と考えられます。枝に擬態し、群れとして枯れ木林の狩場を設け、そこに迷い込んだ獲物に毒を打ち込み捕食する。社交性の待ち狩りの魔物、迷宮蜘蛛ダンジョンスパイダーの親戚と推測します。

【主な生息地】魔王城地下八階



白雷蜘蛛ホワイトスパイダー

―――【貴族上がり】のアサツキ

 地下八階の大蜘蛛ビッグスパイダーの派生種の中で、頂点を取りボスとなった新種の魔物だ。群れて外敵を排除する社交性、霧に擬態する白い体毛、矮雄の特徴と、脚の間に発達した飛膜による滑空。しかし何より彼らをボスたらしめるのは、パチンコのような糸を使った射撃だ。アシタバから昔聞いた話じゃ、“スリングショット・スパイダー”という似たクモがいるらしい。彼らは滑空する雄や岩を飛ばし、谷を越えて離れた相手に奇襲を仕掛けることができる。狩猟性の俊敏性を保持した接近戦とスリングショットによる遠距離戦、加えて群れを形成する厄介さは流石、ボスと言ったところだ。

―――【悪酔い】のハッカク

 うわ、アサツキが報告書レポート上げてるじゃねぇか。珍しいな。

【主な生息地】魔王城地下八階



妖精フェアリー

―――【放浪公子】デンドロビューム

 驚くべき魔物を発見したぞ、小さな人間だ!手のひらに乗るような大きさの魔物を森で見つけた。いずれも御伽噺のような少女の姿で、背中に生えた羽で飛空する。花のような服、微笑、あぁ、なんとも魔物の世界は摩訶不思議なことばかりだ。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 放浪公子の件、どうやら白昼夢ってわけじゃないみたいだ。今日入った森で私も見た。ある程度大型の巨大蟲インセクトになると捕食するヤツもいる。被捕食者側の魔物、警戒心は強いようだ。近づこうとすると逃げられてしまった。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ 

 どうやら彼女たちは、植物魔物と共生関係にある草食魔物だ。行動を観察したが、彼女たちは受粉や水やりなどの植物の世話をする一方で、間引く茎や葉を食料とするらしい。推測通りなら直接的には無害だろうが、植物魔物の繁殖を助けている工作員とも呼べるだろう……。

―――【穴熊】のフェイジョア

 かなり苦労したが、何匹か捕獲に成功した。色々調べたが意思疎通は図れない、習性魔物だな。欲しがる貴族がいたから売ったが、どれも早死にしたそうだ。植物魔物の森じゃなきゃ長生きできないらしい、環境適応って点じゃ脆弱な魔物だな。

―――【草笛】のホシグサ

 水草や樹木含め、様々な植物にも適応し世話をするみたいだな。群れをよく見る、繁殖力は高めなのだろう。自宅菜園用に何匹か買いたかったが、飼育するには繊細過ぎる性質らしい。

―――【泡沫姉妹】のユーフォルビア

 報告、魔王城地下八階にて銀の団と接敵。これまでと異なり魔法魔物への進化が確認された。詳細は妖精王セェノ報告書レポートを参照のこと。他者の魔法回路を暴走させる能力を有し、その際には対象へ密集する。この特徴はミツバチに見られる熱殺蜂球と合致しており、植物の世話をするという習性と併せ、彼女たちの原型ベースはミツバチと推測する。

【主な生息地】森、草原



妖精王セェノ

―――【泡沫姉妹】のユーフォルビア

 報告、魔王城地下八階にて、妖精の上位種と見られる新種の人型の知性魔物と交戦、既に討伐済み。人語で意思疎通が可能な知性レベル、背中の羽根で空中に滞空し、魔法も行使可能。魔法は配下の妖精の魔法回路を連結させる独自の形態を有し、ハチに似た社会性の群れを構築、彼女は女王蜂に当たる。確認された魔法は獲物を谷から落とす目的の幻覚魔法、敵を強制的に魔力暴走オーバーフローさせる呪殺蜂球カーズロック、呼吸を奪い窒息死させる殲滅用の絞殺蜂球エアロック、攻撃を防ぐ防御用の封殺蜂角ハニカム、敵の視界を奪う逃走用の暗殺蜂球ブラックロック

【主な生息地】魔王城地下八階

―――【狐目】のタマモ

 地下八階のボスの座に着いていた、“愚臣四将ワースレス”と呼ばれる知性魔物集団の一体らしい。谷の最上層を陣地とし、地下七階の黒龍との縄張り争いで魔力暴走オーバーフローを暴発させる魔法に行き着いたんだろうな。黒龍を始めとする魔法魔物の天敵だ。

【主な生息地】魔王城地下八階



狼飛蝗ウルフホッパー

―――【偵察屋】ナンテン

 今日渓谷のダンジョンを見てきたが、狼ぐらいの大きさのバッタの魔物を見かけたぞ。あれが巨大蟲インセクトってやつか?あのジャンプ力で迫ってくると思うとゾッとするな。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 バッタをモデルにした巨大獣インセクトだ。ジャンプするようになった狼、と見て貰えばいいだろう。雑食性で肉も食べれば人も襲う。あの重量で飛び掛かられるのは脅威だな、旅人でも被害に逢う者がいるらしい。攻撃手段は噛み付きだから、のしかかられようが冷静に払いのければ問題ないが、相手が群れで来た時は厄介だな。バッタ系は旋回が苦手だから、正面を硬く守ればまぁ何とかなるだろう。

―――【万屋】ウド

 群れた狼飛蝗ウルフホッパーが田畑を食い荒らす事例が幾つか上がっている。柵で守ったりすると案外有効だが、木製だと食い散らかされてしまう。何より群れの駆除だな。網を広げておくと案外一網打尽にできるぞ。

【主な生息地】森、草原、渓谷、砂漠



時雨飛蝗シグレバッタ

―――銀の団所属所属ズミ

 魔王城地下八階で確認された新種のバッタの魔物です。鼻先がナイフのように固く鋭く尖り、跳躍を敵を突き刺す突進攻撃とする。その威力は熊甲虫ベアビートルの甲殻を貫くほどです。カジキという魚のように、鋭利な鼻先で風を切り裂いてスピードを高めているのでしょう。群れで行動するため、一度彼らの進路に立てば体を蜂の巣にされてしまいます。

【主な生息地】魔王城地下八階



風来王イェン

―――銀の団所属ズミ

 狼飛蝗ウルフホッパー、時雨飛蝗などのバッタ型の魔物を従えるバッタの女王にして人型の知性魔物です。強靭な脚力、それに支えられた高度な跳躍能力は魔物中でもトップクラスの速度を誇り、かつ連続跳躍が可能。距離感を測る人の目と周囲を俯瞰するバッタの複眼は動体視力に優れ、近接戦での強力な瞬発力に繋がっていたと推測します。この時代において異例の新種の知性魔物となりますが、接敵した銀の団で既に討伐済みです。

―――【狐面】のタマモ

 地下八階のボスの座に着いていた、“愚臣四将ワースレス”と呼ばれる知性魔物集団の一体らしい。連続跳躍で、手下のバッタとの向きの揃い方が気味悪い、って意見も接敵時にはあったが、多分生体電流のせいだろうな。蜘蛛女(アラクネ)白兵王エーゲノットにも見られた通り、あの谷の上位種は収斂進化で同じ形に辿り着きやすかったんだろう。着地時に周辺に生体電流の信号を発し、配下のバッタに跳躍方向を伝えていた、ってとこだろうな。

【主な生息地】魔王城地下八階



大蟷螂ビッグマンティス

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 ニメートルを超す巨大蟲インセクト、カマキリの魔物だ。元々が虫界でも最強格のハンターだが、それを人間以上にしたコイツは更に手強い。両手の鎌は人間の腕を普通に両断し、一度内側に巻き込まれれば逃げられない。

―――【放浪戦士】オクラ

 何度か戦った。確かに手強い相手だな。間合い内の攻撃は高速だが移動速度自体は遅い、逃げるか遠距離攻撃で削るのを推奨する。

【主な生息地】森、草原



大花蟷螂フラワーマンティス

―――【大戦斧】のオオバコ

 えぇっとですね、新種の魔物を魔王城地下八階で確認しました……巨大蟲インセクトの、大蟷螂ビッグマンティスの一種です。膝下サイズの小柄なヤツですが、一匹一匹が花に、群れて花畑に擬態して獲物を狙う待ち狩りの魔物です。大蟷螂ビッグマンティスより攻撃性は劣りますが、膝に絡みついてくる習性があり、鎧着てないと脚狩り取られます。要注意です。

【主な生息地】魔王城地下八階



黒鋼蟷螂ブラックマンティス

―――【大戦斧】のオオバコ

 すんません、これも新種のカマキリの魔物です。見た目は真っ黒で鋼みたいな光沢のあるカマキリ、サイズは二の腕くらいっすかね。親玉の修羅王キースの体に密集して鎧の様に擬態する習性みたいです。守りを固めるのは勿論、鎧の隙間から刃を突き出して奇襲を仕掛けてきます。刃は黒龍の鎧を貫通、竜殺し(ドラゴンキラー)レベルの切れ味です。

―――【悪酔い】のハッカク

 ちょっと待て竜殺し(ドラゴンキラー)レベル!?そりゃお前、至高の武器の源泉だぜ?刃渡りじゃ劣るんだろうが、十分竜殺し(ドラゴンキラー)相当の剣の材料に成り得るだろ!繁殖性は調査したのか?群れの居所は掴んでんのか!?地下八階にどれくらい生息してんだ!!?

―――【大戦斧】のオオバコ

 その、えぇと、すんません……主の修羅王キースを倒した後、個体が散り散りに逃げていったとこまでは確認できてます………その後はまだ消息掴めてません。レオノティスさんの話では、種族存続の為にタンポポみたいに散らばったものの、地下八階の弱肉強食に磨り潰されたんじゃ、ってことでした。

【主な生息地】魔王城地下八階



修羅王キース

―――【大戦斧】オオバコ

 地下八階のボスの座に着いていた、“愚臣四将ワースレス”と呼ばれる知性魔物集団の一体らしいっす。姿形は黒い鎧を纏った騎士、両手の甲からカマキリの鎌が伸びてます。カマキリの女王ってとこみたいですね。別の報告書の通り、鎧の正体は密集し擬態した黒鋼蟷螂ブラックマンティスすね。鎧から突き出て来る彼らの刃でろくに接近もできませんが、それ以上にこの魔物の斬り合いの強さが半端じゃなかったです。ま、俺が倒しましたけどね!へへ。

【主な生息地】魔王城地下八階



大蟻ビッグアント

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 巨大なアリの魔物を発見した。大蟻ビッグアントと命名する。雑食性で何でも食べるが攻撃手段は噛み付きのみ、外殻も脆く個体では大したことはないが、大元のアリは強固な社会性を構築する虫だ。その部分が発達すれば、いずれ巨大蟲インセクト界の頂点を取るかもしれない。

―――【万屋】ウド

 比較的大人しい魔物に分類できるかもしれない。彼らの縄張り意識は強固だが、無駄に陣地を広げようとはしないようだ。一旦奪われた土地の奪還は至難の業だが、土地を与えてさえすれば大人しく引き籠る。群れの存続、籠城が本能として強くあるんだろう。

―――【錬金術師】ドリアン

 学会からの受け売りだが、普通のアリはフェロモンと呼ばれる匂いにより意思疎通を行っているらしい。大蟻ビッグアントもそうかと思ったが、どうやらビンゴだ。蟻達の歩いた直後の地面を掬って別の導線を作ると、そっちに誘導されていく。面白いな。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 フェロモンの件じゃが、大蟻ビッグアントのお尻から香水を作ることに成功したぞ。奴らは索敵は苦手のようじゃ、この“大蟻香水”を使えば、大蟻ビッグアント達の側を素通りできるぞ。

【主な生息地】森、砂漠、渓谷、草原



雷大蟻イナズマアント

―――銀の団所属ガジュマル

 えと、ディフェンバキアさんの弟子のガジュマルと言います。今日は新種、雷大蟻イナズマアントっつー大蟻ビッグアントの派生種について説明します。といっても外見はほぼ同じ、固有の特徴は三つですね。一つ、橋や櫓、船を自分達自身で造り出す“建築”の能力。二つ、魔法魔物で雷魔法を使う。噛まれると稲妻が奔ったように痛いっす。三つ、個の生死が度外視される程に強固な組織力。特に三つめは軍隊じみた統率ぶりっす。この下地になっているのは……なんだっけ。

―――銀の団所属シキミ

 “デンキ”よ。私も学会知識の聞きかじりだから詳しくないけど、デンキ信号によりボスからの指令受領、仲間とのやり取り、索敵を行っていたと考えられるわ。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 地下八階にはまだまだ彼らが残っており、大蟻香水も大量生産できるようになった。大蟻ビッグアントでお困りの探検家諸君は、魔王城を訪ねるかエゴノキ商会に問い合わせてみるのじゃ。

【主な生息地】魔王城地下八階



大蜜蟻タンクアント

―――銀の団所属ガジュマル

 お腹が滅茶苦茶膨らんでる大蟻ビッグアントの派生種っす。中には蜜が入っていて、それを砲弾みたいに遠距離から飛ばしてきます。蟻軍隊の砲撃手ですね。平時は食糧庫の役割なんでしょう。 

――ー【荒波】のベニシダ

 蜜は高い魔力導体みたいさね、魔法を簡単に通したよ。敵さんもその辺は理解していたみたいで、雷魔法を溜めてこの蟻を爆弾みたいに落としてきた。味方をそんな風に使うなんざ、全く理解できないよ。

【主な生息地】魔王城地下八階



■大羽蟻

―――銀の団所属ガジュマル

 蟻軍隊に属する派生種の一種、大きな羽の生えた蟻っす。普通の羽アリはハチみたいな羽ですが、こっちのは鳥に近いっすね。大型なんで自由には飛べず滑空、空から奇襲を仕掛けてきます。ゴーツルーさんの意見ですが、恐らく空中では彼らのデンキ信号が届きづらく、他の蟻に比べ単調な行動しかとれないのでは、とのことでした。

ーーー銀の団所属シキミ

 なかなか利益を得にくい滑空限定の飛行能力だけど、高低差の激しい谷の地形と、自分達で塔を作り出せる建築能力がデメリットを帳消しにしたんでしょうね。面白い進化だわ。

【主な生息地】魔王城地下八階



螻蛄大蟻モールアント

―――銀の団所属ガジュマル

 蟻の軍隊の工兵、足先が土をかき分ける形に進化した派生種ですね。モグラみたいに地中を掘り進み、地中からの奇襲を担当してます。ディフェンバキアさんの話では、谷の構造形成にも関与しているかも、って話でした。

―――【森の主】ハイビスカス

 蟻さん達の巣作りも担当しているみたいだね。谷の一番下に、この子たちの本拠地っぽい洞窟を発見したよ。枝分かれした深いトンネルっぽい!みんな赤ちゃんの為にせっせと餌を運んでた。働き屋さんだねぇ。

【主な生息地】魔王城地下八階



白兵王エーゲノット

―――銀の団所属シキミ

 地下八階のボスが一体、大蟻ビッグアント達を統べる女王蟻だったようね。蟻をベースとした怪力もさることながら、特筆すべきは“電気”と“知性”。雷魔法を習得し、雷撃だけでなく微弱な電流を広く行き渡らせることにより索敵、配下との連携を行っていたと推察されるわ。知性の方は他の知性魔物より頭一つ抜けていると言ってもいいでしょう、王国軍軍師に相当する傭兵術は接敵した銀の団を苦しめたものの、最終的には討伐を果たしたわ。

【主な生息地】魔王城地下八階



■マンドレイク

―――【長旅】のインゲン

 野菜の魔物を見つけた。地面に埋まり、葉だけを地上に出している根菜の形態。だがこいつらは動く。引き抜こうとするとバタバタ動き、引き抜かれると奇声を発する。俺も聞いたが、その場で倒れてしまった。間違えて引き抜かないよう注意が必要だな。

ーーー【偵察屋】ナンテン

 割と魔物に侵食されてないところでも見かける。一般人でも接しやすい魔物だ、注意喚起は必要だな。奇声を聞いて死んじまったって事例も聞いた。能動的に危害を加えることはないみたいだが……地味に厄介だな、こいつ。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 葉を地中に出している以上、光合成の習性はあり、その上で魔素(カプ)からも養分を得ていると見るべきか……。知り合いの魔道士に見てもらったが魔法魔物だ。研究のしがいはあるが、要注意だな。

ーーー【魔商人】モミジ

 参ったね、大きなビジネスチャンスを逃したみたいだ。河の国(マンチェスター)の地方都市がこいつらを使った製薬で成功を収めている。近郊の群生地を畑として、他では見ない効能の薬をいくつか開発している。マンドレイクの素材提供や群生地の情報を売ろうと思ったけど足りているからと断られた。ううむ、商売とは難しいねぇ。

ーーー【錬金術師】ドリアン

 河の国(マンチェスター)の話、個人的には少し疑問に思っている。奴ら、マンドレイク畑が枯渇した今でも薬の研究資料を公開しようとしない。技術占有のためなら分かるが……そもそもどのような治験を得て数々の薬を開発し果せたのかも不透明だ。薬の効能自体は疑っていないが、囲ってる連中がどうもな。こういうきな臭い市場には近寄るな。痛い目を見るぞ。



■■■地下九階 ―――平野のフロア

宝石狐カーバンクル

―――【穴熊】のフェイジョア

 額に宝石が嵌め込まれたフェネックの魔物だ。現状フェネック以上の危険性は持たない上に、仕留めれば綺麗な宝石が手に入ると来た。俺は既に幾つか生息地を回ったが、他の場所を見つけた奴は教えてくれ。宝石代の4割をやる。

―――【魔商人】のモミジ

 宝石はなかなかの値打ちもんだ。天然物の方が綺麗かつ入手しやすくはあるけどね。捕獲した探検家きら聞いたけど、額の宝石は魔力を蓄えるらしい。魔道士達が使う魔水晶(クリスタル)に近いね。宝石狐(カーバンクル)は魔法魔物、ただ確認されてる限りでは、腕が痺れるぐらいの雷撃の魔法だそうだ。

―――【錬金術師】ドリアン

 魔法魔物にしてはらしい嫌らしさが見られない。生態を観察したが、洞窟の岩も食料の一部とするようだ。その内の微量な鉱石が額に凝集される……カルプンコと似た性質だな。小さい体で少ない食糧、弱肉強食に晒されない僻地で生存可能なことから、戦闘面の進化が甘くなったと推測する。

【主な生息地】洞窟



這い茸(スプリガン)

―――【長旅】のインゲン

 河原で不思議なスライムを見つけた。いや、スライムなのだろうか。軟体の体で、周囲の色と同調し水色なのは同じだが、スライムと比べて大きく横長、目や口の模様は見られない。スライムを球体とするならナメクジのようなシルエット……分類に悩んでいるため、別個に記憶を収めておく。

―――【偵察屋】ナンテン

 すげぇ化け物を森で見たぜ。蹲った熊ぐらいのサイズのキノコの塊が、森をズルズルと動き回ってやがんの。鈍重そうだったからいいけど、気味悪りぃなぁ。

―――【竜殺し】のアスパラガス

 個体を捕獲して解剖した。結論から言うとこいつはウミウシの魔物だ。基本的には生理的欲求と生存欲求で行動する習性魔物。ただウミウシの特徴と同じく、周囲の環境の要素を吸収する能力を持つと推測される。インゲンさんの目撃例も同魔物と推測できたため、まとめておく。

―――【草笛】のホシグサ

 周囲の環境を吸収、というのは本当のようだ。森であれば草葉やキノコに覆われ、洞窟であれば岩や宝石を宿し、水辺なら砂利や水分、貝殻なんかを体に蓄積する。この特性は“チェンジリング"と命名した。パターン分岐についてもう少し調べてみる。

―――【竜殺し】のメディニラ

 ホシグサさんが森の中で遺体で発見されたそうです。私が村の方と埋葬を致しました。死因は毒死……彼の探索していた森にいた、何匹かの這い茸(スプリガン)の体に毒キノコが生えていたのを確認しています。恐らく“チェンジリング"は成分の凝縮も含むのでしょう。毒性のある土地では猛毒の個体が生まれる可能性があります。この魔物については各自、警戒レベルを引き上げてください。

【主な生息地】森、草原、沼地、海岸、洞窟



浮遊海月ソラクラゲ

―――【迷い家】のディフェンバキア

 魔王城の地下九階で見つかった新種、物置小屋くらいの大きさの宙に浮遊するクラゲの魔物じゃな。接近していないのもあるが、今のところプカプカと浮いてるだけで攻撃性は見られない。また、意思を持った生物の動きに見えんが……銀の団で引き続き調査を行う。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下九階の環境を考察した結果、この魔物はフロアに湧き出る魔力を食べて生きる生物だと判断した。銀の団団員が一か月観測したが捕食活動はなく日光もないフロアだ。ゴーレムと同じく、魔力を分解して生命維持に利用する進化をしたのだろうと考える。余計なエネルギー消費を抑えるため、思考能力や積極的な行動は見られず、浮遊しているだけ、という存在だ。

【主な生息地】魔王城地下九階



■ゴーレム

―――【放浪公子】デンドロビューム

 面白い魔物を見つけたぞ!体が岩でできた人型の魔物だ!というより人形というべきかな?遺跡で守衛のように突っ立っていた。あぁ、どのような生態なのだろう。

―――【竜殺し】のソルガム

 寄った遺跡に何匹かいたんで手合わせしてきた……普通に岩でできたトロル、あいつらよりは鈍重だが戦うなら気をつけろ。剣は使いものにならない、斧かハンマーが要る。極端な縄張り意識持ちのようで、奴らの領域に一歩でも踏み込むと攻撃を始め、一歩下がると待機状態に戻る……生き物なのか?コイツ。

―――【砂塵】のゴーヤ

 砂漠のオアシスにもたまに出るみたいだ。地元民は不可侵領域を設定して置物化してる。食事や繁殖の気配は見たこともないそうだ。居合わせた魔道士さんと確認したが、どうやら魔法魔物みたいだな。俺の私見でも前二人と同じく、生物というよりは人形か何かに見える。

―――【竜殺し】テンモンドウ

 この件は色々と考えてみたが、魔法で動く人形という線もあるかもな。噂に聞く朱紋付き(タトゥー)悪精霊(ジン)あたりはかなり魔法に長けていると聞く。ここまでの目撃例を統合すると、魔法で動く自律人形かまだ見ぬ形態の植物性魔物ってところだろう。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下九階の環境を考察した結果、彼らは”化学合成生物群集”という生物群に近い生態と判断した。”化学合成生物群集”は、海底で湧き出る熱水付近に形成される生態系だ。彼らは熱水に含まれる栄養を分解することで、捕食、光合成とは違ったルートで生きる為の糧を得る。ゴーレムは地下九階の湧き出る魔力を主食としていて、そのため何かを食べるといった行動は見られない。彼らによって狩猟より、餌場を守り通すことが第一使命であり、そのため縄張り意識が強いと思われる。

―――”涅槃”のグロリオーサ

 ちょっと考えてみたんだけど、ゴーレムが遺跡で見られるって話、集落形成の点で因果関係があるかもね。昔の時代って、シャーマンとか巫女とか占い的な部分に集落の意思決定を委ねていたところもあるでしょ?だから遺跡を作る時も、魔力的に由来のある土地を選んでも不思議じゃないのかも……「ゴーレムが遺跡を好む」んじゃなくて、「ゴーレムも古来の巫女も似た土地を好んだ」って仮説なんだけど、どう?

【主な生息地】遺跡付近



* * *



■■■その他

火精霊サラマンダー

―――【始まりの探検家】レモン

 洞窟に潜ると太陽があった。よく観察した結果、ホタルのような虫型の魔物が集まって発光している。とても奇妙な光景だ。夜には、星明りを模した魔物も現れた。前者を天道蟲ライトバグ、後者を夜光蟲スターバグと命名する。

―――【偵察屋】ナンテン

 潜った洞窟の先で、こいつらが照らして真昼間みたいになってるエリアを度々見かける。地上に出ちまったかと錯覚するぐらいだ。正直気味が悪いぜ。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 調査の結果、天道蟲ライトバグ夜光蟲スターバグは同じ魔物だと判明した。若い時期は昼行性で群れ、太陽に擬態して過ごし、老いると散開して星明りを真似る。この魔物を、火精霊サラマンダーと改めて命名する。

―――【兵器論】のホリーホック

 どうやら夜の間は月の満ち欠けに呼応するようだ。新月の夜は全く光を発しない。発光は捕食を避けるためだろうか?私は魔物の進化のための習性であると主張し、“環境整備型魔物”の一匹として数えることとする。

【主な生息地】どこでも



地精霊ノーム

―――【長旅】のインゲン

 魔物たちが住む洞窟が、どのようにして形成されるかが全く分からない。数年前には何もなかったところに、いつの間にか洞窟が出来上がっているらしい。土を掘る魔物が存在するのだろうか?

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 洞窟を作る魔物を発見した。オケラに似た虫型の魔物が、土や岩を掘って糞で固めているようだ。洞窟内の魔物の貴重な食糧源になっていることも確認。

―――【兵器論】のホリーホック

 どう考えても彼らが形成する洞窟は、彼らの住処としては大きすぎる。生態上の利点も見いだせない。これも魔物の進化のための習性だろうか?“環境整備型魔物”の一体として数える。

―――【竜殺し】レオノティス

 どうも彼らの作った空洞は、地盤沈下や土砂崩れを引き起こすようだ。厄介さは我々の想定より遥かに大きい。各自、注意されたし。

【主な生息地】どこでも



風精霊シルフ

―――【冒険詩人】コスモス

 洞窟の中には時折、気持ちいい風が吹くエリアがあるね。あの風はどこから来るんだろうか。今日、精霊の仕業だという話を酒場で聞いたが、なんとも幻想的ロマンチックじゃないか。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 トンボのような、虫型の魔物がダンジョン内に吹く風を生んでいるようだ。糸のように細く、目で追うのになかなか苦労する。

―――【兵器論】のホリーホック

 ミツバチの習性も併せ持ち、植物型魔物の受粉を手伝っている。しかしそれが、彼らの生態に貢献するのだろうか。“環境整備型魔物”の定義に入れることとする。

―――【自由騎士】スイカ

 地域によって基礎体温に大きく差があることを確認した。体温を羽ばたきで散らして温風や冷風を生んでいるとすれば、ダンジョン内の温度の不自然な偏りにも説明がつく。

【主な生息地】どこでも



水精霊ウィンディーネ

―――【放浪公子】デンドロビューム

 タガメと魚を合わせたような虫型の魔物が、水中によくいるのを発見した。葉っぱのような薄さで水面の揺らぎですぐ見えなくなるが、群れて泳ぎ、水流を形成している。

―――【兵器論】のホリーホック

 清らかな水を好む魔物のいる水場では水流を盛んに作り、逆に沼地では土を掘り返すなどの行動が多いようだ。他の虫型の魔物と同じく、“環境整備型魔物”が一匹としたい。

―――【黒鮫】のコンブ

 前足で穴掘りに近いこともでき、地精霊ノームと協力して新たな水路を作ることもあるみたいだ。水棲魔物の行動圏拡大もだが、決壊なんかの水害が地味に厄介だぞ。

【主な生息地】どこでも



■鬼海胆

―――【万屋】のウド

 馬鹿でかいウニの魔物を新たに発見した。その辺の魚で試したが、棘に厄介な毒性があるようだ。現状海底でじっとしているだけで、攻撃性は見られないが………。

―――【黒鮫】のコンブ

 この魔物についてだが、海藻の繁殖地帯の消失、磯焼けを各地で引き起こしているようだ。水中の環境破壊、影響を受ける既存生物は相当数いるぞ。

【主な生息地】波の国(セージュ) 海底



□□“船喰い”クラーケン    朱紋付き(タトゥー)

―――【冒険詩人】コスモス

 南の海に、一際大きなダイオウイカの魔物が出るそうだ。幾つかの商船が襲われているらしい……海の魔物は怖いね。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 海の男たちから話を聞いたが、額に朱紋があるというのは港での共通認識になっているようだな。朱紋付き(タトゥー)だ。船の襲い方が上手くなっているらしく、沈められた船も多数出ている。

―――【万屋】ウド

 海路の護衛依頼の中でこいつに遭遇した。噂通りの巨大なイカの姿、額に朱紋が刻まれているのを確認。船に触手を張り付かせてきたから、火で炙って引き剥がして、総出で漕いで逃げ遂せた。悪いが情報収集もあまりできなかった。海の上であれと戦うのは無謀に過ぎる。

―――【黒鮫】のコンブ

 クラーケンに沈められる船が後を絶たない。神出鬼没、出現エリアは定まっておらず、討伐隊の出しようもない。【竜殺し】メディニラさんの乗っていた船がこいつに沈められたそうだ。熟練の探検家さえ屠る、大海原の王………倒すには、相当の戦力と策が必要だ。

―――【魔物(ゲテモノ)喰い】のアシタバ

 波の国(セージュ)王弟ガイラルディアの指揮の下行われたクラーケン討伐作戦により、こいつの正体を掴んだ。結論から言うとダイオウイカの魔物ではなく、群体を成すクダクラゲの魔物だ。触手を含め、体のパーツの1つ1つが、分業化された仕事を有するクラゲ。海上のダイオウイカの姿は擬態の一種で、海中に何倍も大きな触手の塊のような本体がいる。作戦時は、巨体中央にあると推定される、繁殖能力を担うクラゲを倒し、仮の討伐とした。もし再びクラーケンに出くわすことがあれば、逃げに徹するのをお勧めする。イカでなくクラゲの奴らは、泳ぎが遅いはずだ。

―――【魔物(ゲテモノ)喰い】のアシタバ

 魔物解体家アセロラの解体結果が出たから報告するが、やはり群体説は真のようだ。クラーケンはクダクラゲの魔物。恐らくは魔物の混じった水中の弱肉強食で、触手による攻撃・防衛の進化が加速した。加えて泳ぎの遅い彼らは人の船を捕食対象として重視するようになり、ダイオウイカの擬態に至った。ただし個人的には、この擬態には模倣元オリジナルがいたと考える。きっとどこかで入れ替わったのだろうが………今回討伐したクラーケンは、朱紋付き(タトゥー)のオリジナルを模倣した残影に過ぎなかったのかもしれない。

―――【悪酔い】のハッカク

 クラーケンの一部が砂浜に打ち上げられたと聞いて調査に向かった。20メートル程の8本の触手が根元の肉片と共にあることを確認。タコみてぇな触手の吸盤がそもそもクラゲに近い構造だった。触手全体の構造もイカとは明らかに違う……アシタバの群体説は真だったようだな。だが気になるのは肉片のかじられ方だ。歯形がとんでもなくデケぇ………。このサイズに見合う存在は、俺の記憶じゃあのリヴァイアサンぐらいしか思い浮かばねぇな。もしかすると、実在するかもしれん。

【主な生息地】波の国(セージュ) 海洋



魚人フィッシャーマン

―――【長旅】のインゲン

 海に生息する、魚の顔、人の体をした魔物。縄張り意識がつよく攻撃的だが、何の策略もなく殴りかかってくるのみ。筋力も弱く、大の大人であれば取るに足らない。ただし、一瞬の隙をついて水中に連れ去ろうとする水棲魔物の怖さは健在だ。油断は禁物。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 どうやら沈没船から人の武器を奪って使い始めたみたいだ。槍や剣を持つ姿をよく見かけるぞ。ただ振り回すとも言えない、突き付けてくるぐらいの使い方だ。武術とは程遠く、恐れる程じゃない。

―――【竜殺し】アスパラガス

 彼らの個体を生け捕りし観察した。手錠やドアの開け方を理解できないようだ。武器の使い方からも推測はされていたが、どうやら彼らは知性魔物ではなく習性魔物だ。同じような人魚マーメイドがどうかは、個体捕獲に至れていないため分からんが………。

―――【万屋】ウド

 正面切って戦うには脅威でない奴らだが、海中への連れ去りは気を付けろ。ある商船が、夜の間に乗組員の大半を連れ去られていたという話も聞いた。特に夜、音もなく忍び寄ってくるスキルが伸びているように見える。

―――【黒鮫】のコンブ

 海中で戦うと途端に獰猛になるぞ。人型故にそれ程泳ぎのスピードが出ないから、そこまで脅威じゃないけどな。

―――【用心棒】エンドウ

 クラーケンと結託し船を襲うようになったとの噂を聞いた。朱紋付き(タトゥー)との戦闘に奴らの奇襲が混じると厄介だ。各員、用心されよ。

【主な生息地】波の国(セージュ) 海洋



□□“魚王”リヴァイアサン    朱紋付き(タトゥー)

―――【放浪公子】デンドロビューム

 船乗りのこんな噂を知っているかい。海の魔物に、いっとう大きな白い鯨がいるらしい。鼻からは一角獣のように角が突き出ているとか。サイズは大型船を軽く超し、横に付けられた船は一瞬島と間違えた、だとか。角の上に朱紋があったという話もあるから、本当なら朱紋付き(タトゥー)だろうが……。海の男たちの話は脚色が強い。眉唾めで聞いておく。

【主な生息地】波の国(セージュ) 海洋



◾️砂漠ペンギン

―――【砂塵】のゴーヤ

 珍しい新種の話を聞いた。砂漠に適合したペンギンだ。砂をよく掻く足で砂丘を昇り、砂を弾くお腹で滑って砂漠を移動する。群れで行動し雑食。見た目の可愛らしさとは真逆で、砂漠の希少な栄養源を貪り尽くす暴食性はかなり厄介だ。

―――【悪酔い】ハッカク

 こいつの件だが、かなり被害が出ている。生態系が崩れたアオシス、サボテンも食い荒らされ、アテにしていた休憩地点が消滅してたキャラバンが、餓死で全滅してたそうだ。砂の国(ランサイズ)はこいつらに懸賞金をかけるらしい……戦闘能力は低いが、砂地で早く動き回るから捕まえにくいだろうなぁ……。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 砂を弾く体毛は売れるな。腹の体毛をそりの下面に付けたところ、砂漠をすいすい進むようになった。ハッカクの言う通り捕まえにくいのが難点じゃが、討伐した者は体毛も採取しておくとよいぞ。

【主な生息地】砂漠



◾️狡猾狼(グレムリン)

―――【偵察屋】ナンテン

 厄介な狼の魔物を見つけた。ウォーウルフと違って好戦的、ハイエナに近い奴らだ。群れを成して身を隠しながら標的に近づき、気付かれぬ間に囲い込んだ後に一斉に襲い掛かる……頭が回るやつらだ。普通に狩りをしてくる。注意しろよ。

―――【三代目竜殺し】ホド

 ふむ、確かに厄介な奴らだ。勝ち目のある勝負しか仕掛けてこない故に、こちらが優位な間は討伐がし辛く、戦いになればほぼ窮地という状況に陥りがちだ。頬の毛が横長に伸びてるから、それで見分けた上でよく注意を払うべきかな。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 彼らの賢さは想定以上のようだ。どうも人間の武器を使うらしい。槍を加えて攻撃をしてきた、崖の上から網を投げつけられた、トラバサミを盗んで旅商人に向けて仕掛けた……色々な噂を聞く。悪い学習をした個体は優先的に駆除するべきだ。私が懸賞金を掛けよう。負担をかけるが、見かけたら討伐を考えてみてくれ。

【主な生息地】森、洞窟、岩山



◾️徘徊鮫(グランドシャーク)

―――【万屋】ウド

 港の方で厄介な魔物の目撃例が増えてきたな。陸に上がってくる鮫だ。短い四本の足が生えていて、岸へ這いあがってきて噛みついてくる。つーか鰐だな。ただ鮫の泳ぎの速度のまま岸に飛び出てくるから、鰐と比べて狩りの速度と飛距離が段違いすぎる。海岸じゃ、より一層魔物の急襲に気を付けろ。

―――【黒鮫】のコンブ

 元が鮫だけあって、海中で戦う際も結構厄介だなぁ。唯一の救いは足が生えたことで泳ぎが遅くなったことか。後は海岸で待ち伏せする際、背びれが出てるから割と警戒しやすいかもなぁ。あれはなんで進化で消えねぇんだろ。泳ぎに使ってる?捕食される魔物じゃないから、欠点への進化が鈍いのか?

【主な生息地】海




* * *




■■■絶滅した魔物たち

天馬ペガサス

―――【始まりの探検家】レモン

 最も美しいと謳われる、翼を有する純白の馬の魔物。

―――【冒険詩人】コスモス 

 貴族の間でこいつらを所有するのが流行っているようだ。観賞用や、肉が病に聞くとされ、雇われた多くの狩人が乱獲を続けている。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 馬鹿な者どものせいで、もはや目撃例すらなくなった。乱獲の結果だろう。絶滅したと僕は見ている。無責任な、好奇な噂のために命が、1つの美しき生物が散ってしまうなどあっていいものか。

―――【自由騎士】スイカ

 幸運なことみたいだが、生き残りの一頭を見つけた。長年人間からの悪意を受け続けたからだろう、人間の欲に敏感だ。飛翔は翼で行うのではなく、魔法で空気に抵抗力を生むことによる跳躍と滑空で構成されている。余程信頼した者じゃないと背中に乗せてくれないらしい。だが確かに、噂に違わぬ美しさだ。

―――【狐目】のタマモ

 スイカが亡くなった後、所有していた個体がどこにいったのかは分からねえみてえだ。人間に捕まってれば確実に騒ぎになっている。どこかに逃げ遂せたのだろうか……。情報を求む。



■ゴブリン

―――【始まりの探検家】レモン

 小鬼のような魔物。戦闘力も知能も人間の子供と変わらないが、容赦がないのが厄介だ。

―――【穴熊】のフェイジョア

 最近奴らが賢くなったと聞く。徒党を組み、野盗の真似事をしているらしい。ナイフの扱いも覚えている。各自、よく注意するよう。

―――【旅戦士】オクラ

 魔王軍の雑兵、頭数で言えば大半を占めている。槍兵から工作兵まで何でもこなす。厄介なのは手先の器用さ、魔王軍の武器や砦のトラップは奴らが作っているようだ。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 水棲馬ケルピーなどの馬型の魔物に騎乗する例がでてきた。厄介じゃの。

―――【隻眼】のディル

 魔王討伐後、知性魔物の暴走の件で絶滅が確認されている。生き残りを見つけた探検家は、至急組合(ギルド)に報告するよう。



■オーク

―――【始まりの探検家】レモン

 豚と人間を合わせたような魔物。二足歩行、雑食でなんでも喰い、力は強い。

―――【偵察屋】ナンテン

 武器の使い方を覚えちまったみてえだな。人間の死体から剣や斧を奪う姿を見た。

―――【万屋】ウド

 こいつらの一番の厄介さは、どんな悪環境もものともしないタフさだ。泥沼を何千里でも歩いていけるような不衛生環境への耐性と雑食性が途轍もない。

―――【旅戦士】オクラ

 魔王軍の中堅層と言える。鈍重だが肉厚で頑丈。ゴブリンの作った武器を人間より強い力で振りまわし、重い体重で盾を構えられるとなかなか硬い。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔物の中では美味い方だ。豚に似た味がする。焼いて塩がオススメだ。

―――【隻眼】のディル

 魔王討伐後、知性魔物の暴走の件で絶滅が確認されている。生き残りを見つけた探検家は、至急組合(ギルド)に報告するよう。



巨人トロル

―――【始まりの探検家】レモン

 巨大な人型の魔物。3~4メートル程度、途轍もない怪力。

―――【冒険詩人】コスモス

 若い時は一つ目や三つ目の派生種をよく見たけど、最近はさっぱりだ。進化迷子の一種だったのだろうか。駆逐済みと見る。

―――【万屋】ウド

 鈍重で長距離移動に適していないからだろう、魔物の生息領域の奥の方にいかないと遭遇しないのがまだ救いだ。俊敏でもないから、可能なら逃げた方がいい。

―――【竜殺し】ソルガム

 巨体故なのか、知能の所為か、こいつらは足元が覚束ない。草結びなどのトラップを仕掛け、転んだところで頭を叩く戦法が効く。

―――【旅戦士】オクラ

 魔王軍の前線ではかなり厄介な相手だ。その巨体から繰り出される武器の振り下ろしの破壊力たるや。鈍重で他の人型の魔物に比べ知能が低いのが救いか。

―――【隻眼】のディル

 魔王討伐後、知性魔物の暴走の件で絶滅が確認されている。生き残りを見つけた探検家は、至急組合(ギルド)に報告するよう。



□□大兵長トロールキング   朱紋付き(タトゥー)

―――【冒険詩人】コスモス

 15メートルもある、巨大なトロルを見たという男にあった。口ぶりからすると嘘とは思えない。最も大きいトロル……トロールキングと仮に名付け、情報を募る。

―――【万屋】ウド

 山の国(シャムラング)の戦線に現れ、砦を一薙ぎで破壊したらしい。背中の魔王軍の朱紋も確認した。こいつは朱紋付き(タトゥー)だ。皆、注意されたし。

―――【旅戦士】オクラ

 各国の戦線が、こいつによって崩され後退させられている。魔王軍の領土がどんどん広がっているのはこいつの所為だろう。優先的に倒すべきとして、ブラックランクにさせてもらう。

―――【凱旋】のツワブキ

 谷の国(シスク)にて死体を確認した。最後の戦いに姿を現したそうだ。【自由騎士】スイカと、その弟子三人で討伐を果たしたと聞いている。皆、弟子たちにあったら労ってやってくれ。



蜥蜴兵リザードマン

―――【長旅】のインゲン

 二足歩行、人型のトカゲの魔物。ゴブリンよりは強く大柄で、オークよりは素早い。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 変温動物の特性を残している。冬は冬眠するようだ。種族は虫や小動物。ヤモリのように壁に貼り付け、それで崖などを上る。

―――【旅戦士】オクラ

 砂漠や岩山など、魔王軍の悪路を行く進軍に多く携わるようだ。冬は姿を見せないなど、兵としては波があるが、素早く鋭い身のこなしは敵にするとかなり厄介。

―――【虎使い】アサガオ

 派生種を確認した。カメレオンのような変色能力を持った個体だ。無理をして個体は討伐したが、兄弟がいればこの進化は続くだろう。擬態能力の獲得も踏まえ、警戒されたし。

―――【隻眼】のディル

 魔王討伐後、知性魔物の暴走の件で絶滅が確認されている。生き残りを見つけた探検家は、至急組合(ギルド)に報告するよう。



□□獣王ベヒーモス    朱紋付き(タトゥー)

―――【長旅】のインゲン 

 恐ろしい魔物を見た。山ぐらいはあろうかという、巨大な四足歩行の魔物だ。鈍重で頑丈な狼と言えばいいのだろうか、動きは遅いが、その一歩で小さな集落は踏み潰せる。目的もなく歩き回っているようだったが、その周囲には配下であろう獣型の魔物が走り回る……あれが生み出す被害は分かるが、どう倒せばいいのか見当もつかない。わき腹には大きな朱紋が刻まれていた。ゴブリン達が掲げていたのを見た、魔王軍のマークだ。

―――【冒険詩人】コスモス

 この魔物、獣王ベヒーモスと名付けるが、山の国(シャムラング)へと侵攻して国を滅ぼしたそうだ。王城が一踏みにされ、そして現在波の国(セージュ)へと進軍中……。ナンテンに見張らせているが、また大災害を引き起こすのは目に見えている。近辺国家からの挙兵も得た。こいつを討伐する、みんな、力を貸してくれ。探検家組合ギルド最初の大仕事だ。

―――【竜殺し】ホド

 六千人の騎士、傭兵と探検家が挑んだ獣王ベヒーモス戦について、結果を僕から報告します。作戦の目的であるベヒーモス討伐は達成。けれど作戦参加者の七割は死亡、残りも重傷者多数。親父、そして【偵察屋】ナンテンさんを含む探検家もほとんどが死んだ。【冒険詩人】コスモスさんも恐らくは………。ベヒーモスは複数種の魔物を使役する、明らかに敵側の将たる振る舞いをしていた。以前波の国(セージュ)に降り立った金色の巨大なハルピュイアや、海で船を沈めるという巨大な鯨の魔物も同様の特徴が見られ、そしてその身に魔王軍の朱紋を刻んでいた。他の魔物とは一線を画す彼らを朱紋付き(タトゥー)と定義する。まだ残っている前述の二体には注意されたし。



□□”蠍獅子”マンティコア     朱紋付き(タトゥー)

―――【放浪戦士】オクラ

 蠍の獅子、って魔物の噂を戦場で聞いたぜ。ライオンの姿に蠍の尻尾、背中からも蠍の腕と鋏が伸びてるらしい。脇腹には朱紋があって、魔王軍の知性魔物どもの行軍を率いてる姿が目撃されたとか。本当なら朱紋付き(タトゥー)の、前線の将だ。何とか討ちたいところだな。

―――【錬金術師】ドリアン

 この魔物は橋の国(ベルサール)側の前線にいる。国の組織した討伐隊に参加した……結果は失敗、隊は壊滅で私が生きて帰れたのも幸運だが……情報を残そう。敵はライオンのように動き、蠍の鋏、尾で近接戦を捌く。獅子の狩りを蠍の武器で強化した形だ。それより特筆するべきは魔物達の指揮能力。朱印が為せる技か、人型魔物も獣系魔物も統率し前線を支配していた。こいつを討つなら軍対軍で隙を作り、個対個で撃破する必要がある……困難だ。

―――【黒猫】のチョロギ

 おいおい聞いたかよ!マンティコア、【黒騎士】ライラックが討伐したんだってよ!スゲーな、長期戦の末の大将首だ。これで黒砦は大分楽になったろうなぁ。



□□“悪魔卿”デーモン      朱紋付き(タトゥー)

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 砂の国(ランサイズ)で厄介な魔物と遭遇したので情報を残す。朱紋付き(タトゥー)だ。漆黒の体、頭から生えた二本の角、飛翔能力は失ったようだが翼を持つ。何よりこいつは魔法を使う。知性魔物で魔法魔物だ。元々高い身体能力に遠距離攻撃法を得れば、手が付けられなくなるぞ。

―――【八代目竜殺し】テンモンドウ

 噂に聞く限り、日の国(ラグド)の前線に携わっているようだ。チューリップさんの言う通り魔法攻撃は健在。また軍を指揮できるずる賢さがある。平原に戦線を構え、人間の死体を見て笑うと聞く……悪意が育っている。

―――【用心棒】エンドウ

 【刻剣】のトウガがこいつを討伐したらしい。はっ、流石は最強の傭兵サンだな。あの平原の戦いは魔王軍もかなり力を入れてたみたいだが、どうやら人間側の勝利で納められそうだ。



□□”岩巨人”タイタンゴーレム     朱紋付き(タトゥー)

―――【偵察屋】ナンテン

 ダンジョンの探索をしていたら、山間にどえれぇもんを見た。でっかい……でっかいゴーレムだ。城ぐらいの大きさはあったぞ。オマケに朱紋もついてた。あぁあ、遭遇したくねぇ……。

―――【万屋】ウド

 俺もこいつの姿を見た、確かにでかい。噂に聞くベヒーモス程じゃないが、それに次ぐかもな。巨体は全て岩でできており、普段はあまり動かないみたいだ。鉄の国(カノン)方面の戦線に居座っている。どうも魔王軍は、四体の朱紋付き(タトゥー)を前線の将として置いているみたいだな。“悪魔卿”デーモン、”蠍獅子”マンティコア、”大兵長”トロールキング、そしてこいつだ。いずれも前線で暴れ、人類の戦線を後退させる働きを見せている。

―――【六代目竜殺し】メディニラ

 鉄の国(カノン)にて、この魔物と国王軍の衝突があったそうです。私の夫ソルガムもその戦いに参加しました。結果は辛勝……タイタンゴーレムの討伐は果たされましたが……夫も相打ちとなりました。【竜殺し】は……私が継ぎます。



□□“悪精霊”ジン           朱紋付き(タトゥー)

―――【魔商人】のモミジ 

 探検家仲間から朱紋付き(タトゥー)の情報を聞いた。もっとも奴は引退だ。魔王城への接近を試みて、片目と片腕を失くしてきた。彼は直接戦ったわけじゃないが、魔王城近辺の護衛兵を統率するような魔物を見ている。全身が薄く翡翠色に発光した、宙に浮遊する人型の魔物だそうだ。印象は精霊に近い。左肩に朱紋があり、その目は宝石のように輝いていたが、遠くからでもその覇気は感じ取れた……とか。

―――【虎使い】アサガオ

 こいつと一戦交えた。というより接敵、即離脱だ。暴風、雷、炎に氷塊。魔法なんだろうが、あらゆる自然を駆使して襲い掛かってくる。マジで浮遊していたり、生態は全くわからない……未知だ。とりあえず、魔王城付近の護衛隊長はこいつらしい。魔王城に挑む奴らは会うことになるだろうが、全力で逃げろよ。こいつに構っていたらあの地下へ伸びる魔王城は踏破できっこない。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 一応記載するが、魔王を討伐した勇者一行がこの魔物を討伐したと証言しておる。大魔道士メローネ殿が撃ち合ったらしい。遺体すら採取できず、こいつの生態は未知のままじゃが……話を聞くに、亡霊ゴーストとの共通点が多いようじゃのう。



□□“魔王副官”サタン        朱紋付き(タトゥー)

―――【冒険詩人】コスモス

 雨の国(カーシャ)の難民に聞いたよ。国が亡ぶ時に、人型の魔物が大暴れしていたんだって。雷と火を操って、大地を隆起させていたらしい。神官のような服、流暢な人語を話すが肌は薄い紫で目は爛れているらしい。胸元には大きな朱紋があったとか。本当にいるのかな……いたら嫌だなぁ。

―――【用心棒】エンドウ

 一応報告いれとくぜェ。砂の国(ランサイズ)の、例の砂の革命の時に、こいつと似た姿の魔物が目撃されている。何でも王族処刑から数日後、砂漠の地平線に立って王都の方を見つめていたとか。どうも様子を見に来た、って感じだ。好戦的ではないようだが……気味悪りィな。

―――【凱旋】のツワブキ

 こいつと断言はしにくいが……谷の国(シスク)の生き残りが、似たような魔物を見たってよ。国が滅んだ数日後、同じように焼け落ちた王城の方を山の上の方に立って見つめていたらしい。霧で詳細は見えなかったが……情報から読み解けば朱紋付き(タトゥー)だ。目撃例が少なすぎるところを見ると、普段は魔王城にいる近衛兵タイプかぁ?

―――【迷い家】ディフェンバキア

 こっちも一応記載じゃが、勇者一行が魔王討伐の道中で撃破したと証言をしておる。ツワブキの目論見通り魔王城地下深くにいたようじゃ。勇者一行はあまり多くは語っておらんが、少ない情報を統合すれば魔王軍の参謀のような位置にいた魔王側近、と解釈するのが筋じゃろうな。




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■■■門番ゴルゴダ

□□エル・ドラード   蛇女神メドゥーサ   人の“条理”を識る魔物

―――【冒険詩人】コスモス 

 髪が蛇の、人型の魔物の目撃証言を得た。詳細は不明だが、この魔物をメドゥーサと名付ける。 

―――【放浪公子】デンドロビューム

 ある農村がこの魔物に滅ぼされたらしい。生き残った子供の証言を聞けた。目が合った彼女の両親が、石のように固まったそうだ。村の周辺では、“石化の魔眼”と噂になっていた。

―――【狐目】のタマモ

 気になって調べてみたが、頭にでかい帽子を被った、蛇舌の女の目撃事例は各所にあった。【魔商人】モミジも最期、こいつにやられたって噂を聞く。見た者を石にする、“石化の魔眼”は眉唾ものだが……いずれにせよ要注意だ。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下六階で接敵、朱紋付き(タトゥー)であることを確認した。門番ゴルゴダと呼ばれる、魔王軍内の組織の一員であるとも聞いている。蛇の魔物を多数従えており、意思疎通が可能。

―――【凱旋】のツワブキ

 “石化の魔眼”の正体が分かった。目自体が発するのは治癒魔法、触角を鈍らせるために用いる。実際には地下に潜らせた蛇型の魔物が、足首に噛みついて石化の呪いを齎す。足元に注意が向けば、サバクツノトカゲのように目から魔法を込めた液体を頭上へ射出、それで相手を石化させるみてえだ。肉体は全身筋肉、接近戦では今までで戦った魔物の中でも群を抜いて強かったが、【刻剣】のトウガにより討伐された。尾喰いの蛇(ウロボロス)も含めると、八匹の大蛇ビッグスネークを従えていたことになる。



□□アルカディア  人魚妃ローレライ  人の“恐怖”を識る魔物

―――【放浪公子】デンドロビューム

 船長から、一際大きな人魚マーメイドを見たという話を聞いた。銀色の魚の下半身に、白髪の人の上半身。魔王軍の朱紋が刻まれていたという。朱紋付き(タトゥー)の可能性が高く、人魚姫ローレライと名付け、個体化しておく。

―――【黒鮫】のコンブ

 海中で魔物と戦っている時に唄を聞いた。人魚マーメイドのは聞いたことあったが、それより遥かに美しく、そして恐ろしかった。あれは危険だ。追って調査する。

―――【隻眼】のディル

 メドゥーサ撤退戦で、何人かがその姿を目撃した。恐らく人魚マーメイドより高位な魔法を操る朱紋付き(タトゥー)だ。【刻剣】のトウガを連れ去り、夢霧送り(リビングデッド)にした。メドゥーサの支援をするような動きから、同じ門番ゴルゴダと推測される。

―――【凱旋】のツワブキ

 バノーヴェンの大災厄にて王族会議を襲撃。大魔道士メローネと打ち合うレベルで魔法を行使し、究極魔法アルテマも使ってきやがった。行使法は詠唱スコア、人間より高度に発達した喉で無数の音を表現し、魚の下半身で敵と距離を取って時間を稼ぎ、大魔法を繰り出してくる。魔法魔物で、水棲魔物で、知性魔物。俺の名でブラックランクの賞金首に指定する。



人魚マーメイド

―――【始まりの探検家】レモン

 上半身は美女、下半身は魚の海の魔物。水辺に腰かけ唄を歌い、人々を海へ引きずり込む。

―――【冒険詩人】コスモス

 唄は幻覚魔法、魔法魔物の一種だ。魔導士と話す機会を得たが、どうもあの唄は、海の魔導士が口ずさんでいた唄を人魚マーメイドが真似し始めたものらしい。だとすれば、学習能力があるぞ。

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 魔法を真似たというのが本当ならば知性魔物だが、それにしては魔王への忠誠が見られず気まま(・・・)な印象を受ける。人に近い知性魔物なのか、魚に近い習性魔物なのか……後世での解明を望む。

―――【魔商人】モミジ

 彼女たちの鱗が一部で、高値で取引されているらしい。命知らずの狩人が後を絶たない。参ったね。それから、漁師たちの話だと昔に比べ美人になってきている、そうだ。これも人を誘うための進化の結果と見るべきかな。

―――【黒鮫】のコンブ

 こいつらの唄の魔法については、わざわざ完全な防音をしなくてもいい。耳に軽い詰め物をして声を素直に通さないようにすれば、魔法の干渉を和らげられるみたいだ。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下三階にて、戦車蟹タンククラブを唄声で指揮している姿を確認した。水棲魔物の行進指揮役を務めているかもしれない。


■ニライ    人魚マーメイド

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 魔王城地下三階で、桜色の下半身をした人魚マーメイドの個体が確認されている。

―――【隻眼】のディル

 上記、同じ個体が地下四階、蜃討伐作戦時に蜃を守るように立ちはだかったが、ヨウマ隊員により討伐されたと聞いている。この戦略的な振る舞いから、人魚マーメイドは知性魔物である可能性が高い。



□□エデン   淫夢サキュバス    人の“愛”を識る魔物

―――【冒険詩人】コスモス 

 巷で絶世の美女の魔物だとかが話題になっている。夜の街で突然声を掛けられて、大満足・・・な夜を見させてくれるんだとさ。ところが朝になれば、そのいい目に逢った奴は死体で見つかるらしい。一応報告だけは上げておく。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 美女の魔物の続報を聞いたぞ。背中から二本の触手が生えていたらしい。こういう女が好みだと言ったら、言った通りに顔が変わったと酔っ払いが言っていた。その後、手合わせ(・・・・)したとも聞いたな。剣で打ち合いでもしたのだろうか?

―――【教授プロフェッサー】チューリップ

 この魔物についてだが、宝箱紛い(ミミック)が箱に潜むという人間を狙った進化をしたように、我々の性欲を狙って進化した魔物が現れても生物学上何ら不思議ではない。警戒だけはした方がいい。

―――【万屋】ウド

 気になる話を聞いた。実際に一晩を共にした男に話を聞いたが、舌に紋章が刻まれていたそうだ。スケッチを頼んだが、魔王軍の紋章と一致した。男は戦場に出たことはなく、その紋章を知るはずがない。本当にいるかもしれないぞ。だとしたら、朱紋付き(タトゥー)だ。

―――【迷い家】のディフェンバキア

 夢魔アルプの実例が確認された。生態的に近いこやつは上位種にあたるじゃろう。いるぞ。

―――【凱旋】のツワブキ

 【自由騎士】スイカの死に関わったそうだ。信頼できる目撃者から聞いた。こいつは実在する。谷の国(シスク)の王女に化け、国王を誑かし、国民を扇動して国を自滅させたと考えられる。恐ろしく人を理解している魔物だ。攻撃手段は背中から伸びる二対の触手。各自、用心しろ。

―――【魔物ゲテモノ喰い】のアシタバ

 鉄の国(カノン)の娼婦に化け、魔王城に潜入したところに遭遇した。顔の変化能力を確認。美女の擬態をして人に取り入り、人間に対する社会寄生を行うに至った種と推測する。メドゥーサ撤退戦では、こいつが“砂の革命”を煽ったと敵の魔物が発言したそうだ。種の更なる進化として、国に入り込むことを覚え始めている。はっきり言って、一番危険な魔物だ。

―――【凱旋】のツワブキ

 バノーヴェンの大災厄にて王族会議を襲撃。日の国(ラグド)の王妃に化け会議に潜入、八国の王族を殺戮し尽くした。尾のような触手で強者達の包囲を捌いた戦闘能力も侮れないが、やはり人への擬態能力、政治面で人間に打撃を与えられる知性、戦略性はこれまでの魔物にはなかった。現在は日の国(ラグド)の王城にのうのうと居座ってやがる。ブラックランクの賞金首に指定、恐らくは史上最も恐れるべき、絡め手の魔物だ。



夢魔アルプ

―――【冒険詩人】コスモス 

 サキュバスと似たような話で、触手が一本の個体の話も聞く。個体差なのか、派生種なのかは分からないけど、情報共有はしておく。サキュバスとの差として他に聞くのは、奴と違ってバインバインじゃないらしい、ってことぐらいかな。獣臭い諸君らに酒場で近づいてくる美女は美人局か宗教勧誘か彼女たちのような魔物だから、注意するよう。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 バインバインとは、なんぞ?

―――【迷い家】のディフェンバキア

 夢魔アルプの実在を確認した。酒場で美女に誘われたから付き合ってみたら、本当に触手が一本背中から生えておった。そこで顔の皮を剥いでみたら、下に更に別の顔がある。結局逃げられてしまったが、噂は本当じゃ。各自気を付けられよ。

―――【狐目】のタマモ

 いや、そこで顔剥ぎにいけるあんたが分かんねえよ。


■ルダス    夢魔アルプ

―――【隻眼】のディル

 メドゥーサ撤退戦で姿を現した夢魔アルプの個体だ。本人が、サキュバスと共に砂の革命を誘発したと証言した。化けていたのは砂の国(ランサイズ)の傭兵ヒスピダ……男にも化けられる、ということだ。コンフィダンス隊員によって討伐されている。


■プラグマ   夢魔アルプ

―――【凱旋】のツワブキ

 谷の国(シスク)で、国民の反乱を煽った夢魔アルプの個体がいたらしい。“赤シュシュ”と呼ばれていた反乱軍のリーダーで、女王に化けていたサキュバスと共謀し、谷の国(シスク)を滅亡へ導いた。サキュバスの手下のように動いていたところを見ると、やつの下位種として見るべきだな。【自由騎士】スイカがこいつを討ったらしい。俺も死体を確認している。



□□吸血鬼ヴァンパイア

―――【長旅】のインゲン

 血を吸う男、という噂を聞いた。普通の男と比べ歯が牙のように尖っており、首筋に噛みついて血を吸うらしい。魔物、なのだろうか………一応記録を残しておく。

―――【冒険詩人】コスモス

 同じような話を僕も聞いた。火のない所に、というやつだ。血を吸われた者は段々と衰弱していくらしい。皆、気を付けるよう。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 こいつと交戦した。胸に朱紋があるのを確認した、朱紋付き(タトゥー)だ。素早さも筋肉も人間のそれとは違う。体が熱い。僕はもう長くないのだろう。こいつには近づくな。駄目だ、謎を明かす前にこちらがやられる………。

―――【凱旋】のツワブキ

 バノーヴェンの大災厄にて王族会議を襲撃。人間を凌駕する身体能力と爪による近接戦闘で多くの騎士を屠った。爪は硬く、普通の武器なら砕かれる、武器破壊性能を有する。奴と斬り合えたのは竜殺し(ドラゴンキラー)のみ……戦うには、それなりの武器が要る敵だ。俺の名義で、ブラックランクの賞金首に指定する。

―――【魔物喰い】のアシタバ

 橋の国(ベルサール)王都を襲撃した。ヴァンパイア血戦だ。討ち取りはしたが被害は甚大、歴代でも屈指の凶悪な魔物だった。バーノヴェンで確認された近接能力は補助サブ、その主軸は伝染病を宿した配下の魔物による死の散布。黒死蝙蝠ブラックバット及び、蚊の使役を確認している。



蝙蝠男ドラキュラ

―――【黒鮫】のコンブ

 各地の港町で変な噂を聞くんだよなぁ……。たまにえれぇ美形を見かける、って女衆が囁いているんだ。銀の髪と赤い目。そのルックスに惚れちまった女がついていって……朝を過ぎても帰ってこなかったらしい。それでなくとも、窓を開けて寝てた女が消えた、なんて噂も聞く。普通に考えりゃ人攫いの業者だ。けど美形ってのがなぁ。ビッチの魔物の噂もあったろ?一応報告に挙げとくよ。

―――【竜殺し】テンモンドウ

 似た事例、女の容姿でも聞いたぞ。だが銀髪のやつなんてざらにいるし、赤い目って条件をつけても警戒レベルにはし辛いな……。

―――銀の団所属シキミ

 人型の知性魔物。彼らは七体存在し、全員が橋の国(ベルサール)で起こったヴァンパイア血戦に参加。門番ゴルゴダ吸血鬼(ヴァンパイア)の配下であることが分かった。人間離れした身体能力と黒死蝙蝠(ブラックバット)を指揮する能力を持つ。個体名は彼らの名乗りで判明している。”スロウス”。”プライド”。”ラスト”。”エンヴィ”。”グラトニー”。”ラース”。”グリード”。現在は全員討伐済み。

―――”輪廻”のマリーゴールド

 個体名”エンヴィ”と交戦しましたわ。小さな体ながら人を超えた身体能力、蝙蝠の指揮能力を確認。更に蝙蝠を踏み台にした空中移動の技術と、黒死蝙蝠(ブラックバット)と同じ血を媒介とした病気の感染……凶悪な相手でしたわ。

―――【泡沫姉妹】のユーフォルビア

 同じく、城下町で個体名”ラース”と交戦。その身体能力で蝙蝠を砲撃のように蹴り出す遠距離攻撃技術を確認。他の人に聞いても、彼らは総じて好戦的だったと聞いた。

―――【狼騎士】のレネゲード

 王城内で私も個体名”プライド”と交戦した。剣のように尖った爪、そして身体能力を生かした縦横無尽の体術。共に戦い敵を止めた橋の国(ベルサール)の騎士達に敬意を表する。

―――【成り上がり】のアサツキ

 王城中庭で個体名ラストを討伐確認。橋の国(ベルサール)の騎士どもは優秀だな。事件後死体を調べてみたが、面白いことにこいつ、男だった。蝙蝠男ドラキュラは正しく全員がオスみたいだな。ということは、子孫を作るために人間の女を攫う習性がある、と見るべきか……?

【主な生息地】なし



◾️亜蝙蝠(ダーティバット)

―――【長旅】のインゲン 

 洞窟にいる蝙蝠の中で、どうも普通とは違う種がいることに気付いた。一般的な蝙蝠より縄張り意識が強く攻撃的、牙は大きく目は小さい。そして消化器官が決定的に違う。レモンの紹介していた”大コウモリ”の亜種とするべきか……普通の蝙蝠の派生種なのか……。

―――【四代目竜殺し】アスパラガス

 消化器官が魔素カプ向けになっているのを確認した、立派な魔物だ。通常の蝙蝠をやや攻撃的にした程度で目立った際はほぼ見られない。唯一の懸念は糞だ。蝙蝠の糞は洞窟の環境に多大な影響を及ぼす。例えば消化能力を抑え敢えて糞に魔素カプを混ぜ、魔物に有利な地形造りを進めるなど……いや、これは推測の域を出ないな。

―――【錬金術師】ドリアン

 アスパラガスさんの推論は当たりだ。しかも戦略としてはより凶悪だった。彼らの糞は凝集された魔素カプを多く含み、他の魔物の餌になる一方で、従来の生物を遠ざける効果を持つ。洞窟の浅い部分、入り口付近に居を構える彼らの習性と合わせると、入り口周辺には彼らの糞というバリケードが出来上がる。これで外の生物は中に入りづらく、洞窟内の生物は外へ逃げづらくなる。後は袋の鼠となった洞窟内の生物を駆逐すれば、魔物達の楽園の完成だ。

【主な生息地】洞窟入り口



◾️黒死蝙蝠(ブラックバット)

―――【魔物喰い】のアシタバ

 橋の国(ベルサール)で起こった”ヴァンパイア血戦”にて確認された、亜蝙蝠(ダーティバット)の派生種だ。吸血鬼(ヴァンパイア)及び蝙蝠男ドラキュラの配下として動いていた。最大かつ凶悪な特徴は、彼らが伝染病の媒介体キャリアとして進化を果たしたこと。牙から、あるいは彼らの血によって、致死率の高い病を人間に伝染うつしてくる。被害規模はヴァンパイア血戦の結末通りだ。もしこつらが確認されたら早急な全数駆除が必要になる。真っ先に連絡してくれ。

【主な生息地】なし



□□アアル   蜘蛛女アラクネ    人の“強欲”を識る魔物

―――【偵察屋】ナンテン

 猟師が、下半身が蜘蛛の女を見たと言っていた。青白い肌に黒い長髪、まるで幽霊のようだったと。下半身が魚の人魚マーメイドもいるのだし、不思議ではないな。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 狩猟性なのか、造網性なのか……知能は蜘蛛なのか、人なのか、気になるところだ。食事途中の大蜘蛛ビッグスパイダーの口から女性の上半身がはみ出ていたというオチでないことを願う。

―――【凱旋】のツワブキ

 バノーヴェンの大災厄にて王族会議を襲撃。トラップのように糸を使う造網性、跳躍など強い脚力は狩猟性と、両方の特徴を併せ持つ。糸を鎖鎌みたいに扱う戦法を好み、全体的に明らかに、隠蔽物が多くある状況での奇襲戦に向いた特徴が見られた。ディルが両目を潰したが、討伐には至らず。ブラックランクの賞金首に指定する。

―――銀の団所属シキミ

 魔王城地下八階にて銀の団と接敵、【隻眼】のディルと相討ちの形だったけれど撃破を果たしたわ。振動や音を感知する蜘蛛の脚、生体電流を感じ取る索敵能力。使い分ける糸はゴム状のもの、粘着質のもの、竜殺し(ドラゴンキラー)を受け止めるほどに硬いものなど、多岐に渡るわ。ただし戦闘における本質は独自に開発された重量魔法。こちらの場所を的確に察知し、糸で囲み、重しで敵の予想の裏を掻く。終わっていれば、相手を嵌め殺す高度な戦略を有した魔物だったと言えるわね。



□□シャングリラ   賢人馬ケンタウロス  人の“叡智”を識る魔物

―――【長旅】のインゲン

 あれは見間違いだったのだろうか、草原を歩いていると、下半身が馬、上半身が人の生物を見かけた。顔の半分に朱紋。背中に弓矢。目が合うと、しばらくこちらを向いたまま棒立ちになったが、やがて遠ざかるように歩いて行った。

―――【虫眼鏡】ヘチマ

 今日森で昆虫採集をしていたら、この魔物を見た。木に隠れるように立ち、こちらを見ていた。あれは、ただの警戒だろうか。それとも観察……人か馬か、知能はどちらに近いのだろう。顔には朱紋が刻まれていた。朱紋付き(タトゥー)の可能性を見て、接触は避ける。

―――【万屋】ウド 

 この件について少し気になったから聞いて回ったが、同様の目撃例が幾つかある。しかし、どうも近年になるにつれ目撃例が減ってきているみたいだ。死んだのか?引き続き情報求む。

―――【凱旋】のツワブキ

 バノーヴェンの大災厄にて王族会議を襲撃。馬の脚力で距離を取り、遠距離魔法で攻撃してくる魔法魔物だ。複数の魔法を使い分け、そして大魔道士メローネの使い方を見て真似てきたそうだ。恐らくは敵側の軍師の立ち位置、知性には要注意……ブラックランクの賞金首に指定する。

―――【殲滅家】ストライガ

 魔王城地下八階で接敵。これまでの目撃情報とは異なり、二つの魔法を同時に使用する姿が確認された。敵は進化しているようだ。アシタバが上げるはずだった情報は、これで共有とする。



□□アヴァロン  首無し卿(デュラハン)    人の“誇り”を識る魔物

―――【始まりの探検家】レモン

 騎士の真似事をする魔物に決闘を申し込まれた。甲冑を身に纏い、首から上がない。勝利すると引き下がったが、次の日の朝にまた決闘を申し込んでくる。面白い魔物だ……。

―――【長旅】のインゲン 

 レモンの記録にあったこの魔物に、俺も会った。変わらず決闘を申し込まれる。腕は新兵レベルだ。鎧の中はどうなっているのだろう、不思議だ。

―――【冒険詩人】コスモス

 インゲンさんがこの魔物に殺されたから、共有するよ。決闘で負けたんだ。インゲンさんは、決闘をするたびに剣の扱いが上手くなっていく、とこの魔物を評していた。進化を、成長をしている。そして武術を扱う賢い魔物だ。各員、十分に注意されたし。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 僕のところにも来たぞ。臣下が激戦の末倒したが、次の日また決闘を申し込まれたから全力で逃げた。勝ち続けるのは難しい相手だ。諸君らも逃げた方がいいぞ。それにしても、どうしてこう騎士道に拘る魔物なのか。

―――【魔商人】のモミジ

 山で出くわす者が結構多いみたいだ。辺境で甲冑の男に決闘を申し込まれたという噂がかなりある。流浪の霧騎士、首無し卿(デュラハン)。新月や霧の深い、見通しの悪い夜によく出没するという。そしてもう1つ、マントの下、甲冑の背中に魔王軍の朱紋があったらしい。生身に刻むのが彼ら(・・)の流儀みたいだが、彼の場合は甲冑に刻むのが正しいのかもしれない。朱紋付き(タトゥー)の可能性が高い。

―――【凱旋】のツワブキ

 谷の国(シスク)の滅亡に関わったらしい。生存者から話を聞けた。サキュバスと組み、デュランタという男を語り騎士団に潜入していたようだ。各自、兜で顔を見せない男には気を付けろ。そして剣術は、【自由騎士】スイカでも敵わないレベルに達している。出くわしたら逃げを第一に考えるべきだ。

―――【凱旋】のツワブキ

 バノーヴェンの大災厄にて王族会議を襲撃。相手の剣術を見習う能力を持ち、それで多くの騎士を屠った。全身鎧の防御性能も厄介で、はっきり言って武術で正面からこいつとやりあうのはかなり厳しいだろう。俺名義でブラックランクの賞金首に指定する。

―――【黒騎士】ライラック

 ヴァンパイア血戦で再度交戦したため、情報を共有する。こいつの一度剣術を見れば模倣できる能力の正体は、複眼、沢山の目だ。四肢に散らばった目が鎧の隙間から周囲を見、立体的に敵の動きを捉える。煙などの目眩しは多少有効だったが、相手も敵の殺気を捉え戦う能力はあるようだ。




□□マグ・メル   寄生獣キメラ  人の“狂気”を識る魔物

―――【竜殺し】ホド

 一年前にあった獣王ベヒーモス戦の終盤、死んだと思われていた【冒険詩人】コスモスさんが、奇妙な出で立ちで姿を現した。左目が赤黒く変色していて、夏なのに長袖マフラーをしていたとか……。より特筆するべきは戦闘力、彼を知る探険家が驚嘆する程のスピードとパワーでベヒーモスとやりあった。奴の討伐はコスモスさんに助けられたのは確かだが、あの姿には人ではない何かを感じた為、ここに情報を残す。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 コスモスさんだが、ベヒーモス戦後また姿を消したそうだ。彼の消息について旅の方々で尋ねているが、音沙汰なし……亡くなられたのだろうか。

―――【放浪戦士】オクラ

 この話だが、続報がある。コスモスさんじゃないみたいだが、同じような姿になった誰彼が戦場で暴れたり、貴族や村に復讐に来たって話を各地で聞く。聞けたのは三例ぐらいだが、継続性のある話だ。どれも以前とは違う戦闘力を有していたとか。各員、警戒されたし。

―――【凱旋】のツワブキ

 バノーヴェンの大災厄にて王族会議を襲撃。今回はコスモスさんじゃなく、斑の一族の少女がその姿をしていた。アシタバとビーンの分析によると、その正体は寄生型のキノコ。宿主のパワーを増加するような動きをするらしい……。詳細は分からんが、危険度は確かだ。ブラックランクの賞金首に指定する。

―――【黒刀】のキリ

 魔王城地下八階で接敵。バノーヴェンで見せなかった新たな戦闘スタイルを確認。体を這う筋力線とは異なり、マフラーのように靡いていた部分については役割が不明だったが、必要部分に強化を行う集中強化機構と判明。マフラー部分が腕や足に巻き付くことでその部分の筋力が更に強化され、スピード、パワー共に飛躍的な向上を見せる。



□□魔王

―――【冒険詩人】コスモス 

 他の種より進化のサイクルが早く、汚染された土地でこそ生きる生物群、“魔物”……。彼らはどこからやってきたのだろうか。1つの種から枝分かれしたにしては多様な魔物が存在し、そうでないとしたら共通点が揃い過ぎている。発生という点において、魔物は不自然だ。どこかの大陸から集団で移動してきた……?

―――【偵察屋】ナンテン

 色んなダンジョンを周ったが、地図に起こすと円のような範囲に収まった。もう1つ、ゴブリンとかの人型の魔物は、その円の中心を守るように戦うことが多いみたいだ。コスモスの話を継ぐなら、この中心が発生源・・・の可能性が高い。強い魔物がいすぎて、とても近づけないけどな。

―――【放浪公子】デンドロビューム

 旅路の果てに、僕はとうとう見たぞ。円の中心、山の国(シャムラング)の山間に、城が存在する。ゴブリン達が屋上から周囲を見張っていた、魔物たちの巣だ。調べたが、あの辺りに城を建てたなんて記録はどこにもない。人ではないものがあの城を建てたんだ。仲間の負傷もあり、それ以上は近づけなかったが、何が住んでいるのか………ゴブリン達の会話の中で、“魔王”という単語を盗み聞いた。魔物たちの王が存在するのだろうか。

―――【兵器論】のホリーホック

 魔物たちの進化には時折何者かの意図が感じられる。魔物たちの環境を整備するスライムや四大精霊の虫型の魔物は、自身の利益をあまり重んじず環境作りに励む。戦場のゴブリン達は旗を掲げ、自らを“魔王軍”と呼称し、何かに忠誠を捧げているという話を聞く。魔王……本当に存在するとすればそれは、魔物の進化に干渉することのできる………もはや、神に近い存在かもしれない。

―――【放浪戦士】オクラ

 魔王の話をよく聞くようになった。魔物との長い戦争も、そいつを倒せば終わると兵士たちは認識している。ゴブリン達知性魔物が忠誠を捧げる相手……彼らはそのためなら、自らの命を捨てることも厭わない。その関係性はなんだ?ホリーホックは神に近い存在といったが……魔王とは、なんなんだ。

―――【魔商人】のモミジ 

 魔王討伐隊を編成するのが流行っているみたいだ。各国の貴族が魔王を討伐し名声を得ようと、手持ちの騎士団を特攻させているがあまり成果は上がらない。城にさえ到達できないみたいだ。逆に言えば、それだけ守りを固めている魔王城にはやはり、何かがあるんだろうな。

―――【虎使い】アサガオ

 魔王城への侵入に成功した。周辺や中はゴブリンのトラップだらけだ。どうもあの城は、下に下に伸びているらしい。ゴブリン達も下への道を塞ぐように立ち振る舞い、魔物の強さも、ダンジョンとしての厄介さも他のダンジョンとは一線を画している。地下へ延々と道が伸びているのを確認した。あの果てに、俺たちの求める何かがあるんだろうが………俺が見れたのはそこまでだ。片腕と相棒を置いてきちまった………。

―――【迷い家】ディフェンバキア

 改めて書くことでもないが、勇者リンゴが魔王を討伐したようじゃ。各地の知性魔物で構成される魔王軍が、弔い合戦のような動きをし始めたことから、魔物たちの中心にあった存在が消えたことは確かなようじゃの。しかし勇者一行は、魔王城内で見たものを一切喋ろうとはしないらしい。長年の謎、魔王の正体に迫れると思ったんじゃが………。魔王城に行こうにも、まだ屈強な魔物が残っているしのう……。



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[一言] ・デスイーター どちらかというと環境整備型よりの魔物みたいですね、 ・黒カマキリくん 女王のバッグアップ前提で生まれたからリソースを全て刃物の性能に回せたけど、言い換えるとそれ以外は通常個…
[良い点] 章が進んで更新されてると感想欄で見たので。 アップデートされてく感が素晴らしい!お疲れ様です! [気になる点] 人魚妃やサキュバス、デュラハンなどの何が人間の強みと取ったのか、ってのはネタ…
[良い点] 地下8層でルーキー達のレポートがチラホラ出てくるのが変化を感じていい ベテランから早速ダメ出し貰うオオバコとか女子が出てきたことに興奮するハッカクにクスッと来た [気になる点] ルーキーは…
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