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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

虫捕りに行こう

作者: 孤独

桃色の桜は散り、緑豊かな木々が埋め尽くす憩いの場。

空は照り付ける太陽と、青い空にちょっと白い雲。


麦わら帽子をかぶって、白のワンピースを着て、この時のためと言っていいサンダルはすぐに足を馴染ませ、虫取り網を自分の背より高く掲げた。


「虫捕りに行こう!」


今日は自分と同じくらいの年頃のお友達数人と、公園まで来たのんちゃんであった。

男の子、女の子。色々合わせて子供7人の虫捕り。


「カブトムシとかいんのかな」

「うわぁっ!蚊がうようよいるよ~……」

「虫よけスプレーもっと撒こうぜ」

「私、アゲハ蝶捕まえたーい」

「ちっちい蜥蜴とかげいるかなー」


各々のやる気は様々。虫を本格的に捕りに来たもの、度胸試しとかそんな理由。子供だからこそ、純粋にその行いで起こる成果を楽しんでいる。木登りをしたり、飛ぶ虫に虫捕り網を振り翳したり。


「セミだー」


のんちゃんはおもむろに木に停まるセミを捕まえ男の子達へ、楽しそうに見せる。


「おおぉっ、のんちゃん。セミを普通にいけるのかよ!」

「うえっ、俺は虫全般ダメなんだけど」

「急に飛んだりしない?触っても大丈夫?」

「全然大丈夫だよ」


山とかで暮らしていた時期がのんちゃんにはあるため、動物や昆虫類は結構好きであった。男子の中でもたじろきするセミにも、喜々として掴んでいる。


「お、こっちには蜥蜴がいるぞ!」

「マジで!」

「捕まえてー」


発見し、手を出すも、素早い蜥蜴や昆虫は必至の男の子達の手や網を避ける。にも関わらず、のんちゃんは捕ろうという意識を消して、優しい手で数々の虫を捕っていく。肩に掛けている虫かごに、どんどん虫がたまっていく。


「カブトムシ、クワガタ、カマキリ、アゲハ蝶」

「のんちゃん。アゲハ蝶がカマキリに食べられてるんだけど……」


残酷なところもしょうがない。ごめんねって、アゲハ蝶さんに言ってあげるのんちゃん。カマキリさんには罰として、頭をコリコリといじってやる。もうしないで、なんて言っても意味ないし。


「またアゲハ蝶、捕まえるよ」

「のんちゃんって虫捕りが上手いんだね」

「よく色々な虫を捕まえられるね。男子共が情けない」

「えへへへ、虫とか動物は好きなんだよねー。そのままの生き方をしていて、カッコいいよね」


のんちゃん、アゲハ蝶を見つけ、ゆったりとした網の振り下ろしの一発でアッサリと捕獲。別の虫かごに入れて、欲しかった子にアゲハ蝶を渡す。それと同じくらいのタイミングで


「やったーー!蜥蜴ゲットー!」

「すばしっこいよな!」


男の子がのんちゃんに負けじと、蜥蜴を苦労の末に捕まえて見せびらかす。俺達だって男だぞって、アピールして、のんちゃんから好印象をとろうとしているが、


「がんばれ!がんばれー!」


のんちゃんは自分が捕まえたクワガタとカブトムシの一騎打ちを楽しそうに観戦していた。


「まさか、のんちゃんがここまで虫が好きだったなんて」

「虫に怖がるのんちゃんをカッコよく捕らえる俺達を見せて、ポイントアップを図ろうとしたが」

「全然、見向きもしない」


男の子なりの簡単な勇気アピールといったら、嫌がりそうな虫の退治なり、捕獲であろう。カブトムシを持ってきて自慢するアピールも、ちょっとした注目の的になる。

とはいえ、のんちゃんを相手にするのは……



「あ」


あまりにも相手が悪い。のんちゃんの容姿は可愛くても、感覚は変人の部類に入るだろう。クワガタとカブトムシの一騎打ちの横に映ったのは、ムカデの行進。まだ捕まえてないという理由であっさりと手で掴んで、


「ねーねー、ムカデがいたよー」


そのウネウネする動きに足がいくつもあるムカデを掌に乗せて、みんなに見せびらかすことにはどん引きどころか、逃げ出した子も何人かいるほどだった。


「うわぁ!気持ち悪い!」

「ちょ、それはさすがにどこかに投げて!」

「えー。そんなに怖いかな?害虫だけどさ」


分かってるならさっさと放せ。


「絶対、あれ。毛虫やミミズ、ゴキブリにもビビらないぞ。むしろ、喜んで掴みそうだ」

「だな。だからこそ、そんなのんちゃんが俺は好きだ」

「男って感じじゃないんだけどな。クラスで一番、可憐だ」


よく気色悪い虫に平然と触っていられると、男の子達も半ば色々と負けを認める形となった。

そして、今回の虫捕りでのんちゃんについて気が付いた事があった。


「のんちゃんって、虫とかは平気なんだよね」

「うん。好きなくらいだよ」


虫かごにいる虫達を楽しそうに見ているのんちゃんに確認したいこと。


「もしかして、もしかしてだけど。のんちゃん、あんまり。男の容姿に好みってないの?虫が平気なら、変な話さ」


可愛い子が、生まれ持つ容姿に興味を抱かないとしたら、とてつもない……


「虫だから気持ち悪くてもいいんだよ」


それはとってもいい笑顔で言っていて、人を見ていないような眼でもあった。なんか将来、どSキャラになりそうだ。


「男の人は、やっぱりカッコよくて、清潔感のある人が好きかなー。虫みたいに気持ち悪い人は好きじゃないよ。虫の生き方は好きだけど、虫みたいな人は嫌い」


のんちゃんと付き合うにはやはり、当然ながら容姿が一番大事。

まぁ元々、高嶺の花と思っている人の方が大勢いることだろう。



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