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006 承

 八月十三日、〈イヅチ祭〉当日。シヴィリアの街中はかなりの熱気に包まれていた。いくらサバゲーに出場するとしても、レンカは運営の人なので始まるまでは本部から動く事が出来ない。モチャは「魔物倒して準備万端にしてくる!」と言って(ダンジョン)へと走って行ってしまった。つまり、大会まではアリサ一人。去年は社員が一緒に来てくれていた為寂しくはなかったが、何故か今年は断られた。今アリサはとても寂しい思いをしていた。


「……何か食べよう、かな」


 アリサの周りにはフランクフルト、わたあめ、焼きそばなど色んな食べ物を売っている屋台が沢山並んでいた。かなり美味しそうな匂いが漂っていてとてもお腹が空いてきた。アリサはフランクフルトを買って近くのベンチで食べる。エントリーはレンカがしておいてくれているから、彼女はこうして食べる事しか暇潰しがなかった。


(……あ、これはまた体重増えるかも)


 すると自分を呼ぶ声が横から聞こえてきた。横を振り向くと自分より一個下くらいのショートヘアーの少女がいた。


「もしかして、サバゲーに出るアリサさんではないですか?」

「えぇ」


 黄色の髪と目。オレンジのパーカーに灰色のズボン、オレンジの靴を履いている少女はアリサだと知ると何故か嬉しそうな顔をして自己紹介をした。


「私はホタル・ティリスと申します! アリサさんと同じく、サバゲーに出場するので挨拶を、と!」


 ホタルは「フォレスト(他の街)」にサバゲーのチームといたが、この街の祭りの事を聞いてやって来たという。アリサは他の街でもかなりの有名人。だから見てすぐわかったそうだ。


「戦う時はよろしくお願いします!」

「えぇ、よろしく」


 ホタルは挨拶を済ませるとせっせと行ってしまった。また一人になったアリサ。さっきのホタルを「真面目な子だな」と思いながら(アリサも充分真面目だが)サバゲー開始時間までベンチでフランクフルト(二個目)とわたあめを次々と頬張っていた。


(やっぱり美味しい)







 サバゲー大会は二日間使って行われる。一日目は予選で八チームまで絞られて、二日目で一気に優勝を決めるトーナメントが行われる。

 まずは予選。四十チームエントリーしてるチームを五チーム毎、八ブロックに分かれる。そして簡単なゲームを使っての総当たり戦だ。簡単なゲームとは「トライアスロン」だ。森を走りながら、障害物を避けてゴールを目指す。三人の合計タイムが早い方の勝ちだ。

 ……まぁ、こんな事〈塔支配者(ダンジョンマスター)〉の現と元の三人には簡単なゲームだった訳で。


『レンカ選手、二分五四!』

「お、おい。嘘だろ! 障害物には大砲とかマシンガンとかあるんだぜ!」

「つか〈塔支配者(ダンジョンマスター)〉だぜアイツ! 無理! 勝てねぇよ」


 かなりレンカが目立っていた。普通の人ならてこずって五分から十分が当たり前なのだが、レンカにとっては「普通に避けれる」が当たり前のようだ。その当たり前はアリサにとっても同じだったようだ。


『アリサ選手二分三十!』

「いい運動になりました」


 アリサもかなり平気でゴールし、こんな台詞を言ってるものだからレンカ同様に目立った。


「あいつ〈BSS〉の社長だ!」

「しかも元〈塔支配者〉!」

「チートだろこのチーム」


 目立ち二連続きたからには勿論、モチャも目立った。ちなみに言うとこのトライアスロン、銃の持ち込みが許可されている。(アリサとレンカは使わずゴールしたが普通は使うのが当たり前だ)

 モチャは持ってきた初心者用スナイパーで飛んできた弾丸を全部撃ち、トラップの銃の銃口に向けて撃ってトラップの銃を壊してゴールした。


『モチャ選手四分二!』

「あれ~ モチャが三番かー。まぁ、いいや。モチャこういうの苦手~」


 偶然見に来ていたフィオラルの〈冒険者〉が驚き、咳き込んでしまい心配されていた。その人はモチャの事を知っていた。


「あ、アイツはモチャ。元フィオラルの〈塔支配者〉だっ!」

「なっ! じゃああのチームは三人共、現、元〈塔支配者〉って事かよ」


 かなりチートなチームに驚いていた観客だが奥の方でもかなり騒いでいた。どうやらフォレストから来た大会二連覇中のサバゲーチームがこの大会に出場しているらしい。難なく予選が終わったレンカ、アリサ、モチャはそっちの方へと向かった。するとアリサにとっては聞き覚えのある声が二つ(、、)聞こえた。


「流石ホタル! 今日もいい突進ぷりだったぜ!」

「ありがとうございます! まぁ、何度か当たりましたけど……」

「うんうん。いい当っぷりだったよホタル」

「ユキトさん。それって褒めてます?」


 ついさっき喋ったホタルとお兄さん的オーラを発している黄色の髪の男。そして、アリサにとって憎き奴(理由はとてもどうでもいい内容)である黒髪に眼鏡の男。どうやらホタルを(純粋に)褒めてる方がヨツグ。(多分)褒めてる方がユキトらしい。

 するとユキトが気づいて近寄ってきた、アリサの方に。


「あっ久しぶりアリサ。元気にしてた?」

「え、えぇユキトさん。無茶苦茶な依頼が無くなってとても元気です」


 憎んでる理由は無茶苦茶な依頼ばっかりしてきたから、という本当にどうでもいい事だった。後からホタルとヨツグの二人も追い付いて来た。


「先程はどうもアリサさん! 見事私達のチームも勝ち上がりました!」

「なんだホタルにユキト。二人してそのネーチャンと友達か?」


 アリサはホタルとはすぐ友達だと言ったがユキトとは断じて認めなかった。その光景にレンカとモチャは苦笑いをずっとしていた。

 知らない人もいるみたいなので自己紹介をした。まずはホタル達の方からだ。


「アリサさんにはお先に自己紹介したと思いますが、私はホタル・ティリスと申します!」


 かなり礼儀正しく、初対面の二人にとってもかなり好印象だった。次はヨツグだ。


「どうも、ヨツグ・グラッゼだ。チームのリーダーを勤めている。よろしくな」


 アリサは一瞬思った。このヨツグという人は容姿にしても性格にしても、お兄さんみたいだ、と。先程のホタルとヨツグの会話を聞いたら誰でもそう思ってしまうくらい、ヨツグの笑顔が眩しいのだ。

 そしてユキトの番。


「ユキト・リーフだよ。昔にね、アリサと仲良かった時があったんだよ」

「えぇ。かなり(、、、)昔でしたが」


 二人以外はアリサとユキトの間にバチバチと電流が流れるのを感じ、急いでレンカ達の自己紹介を始めた。

 アリサの自己紹介の番に、また電流を感じ引き留めた事以外は特にアクシデントはなく、無事に六人の自己紹介が終わった。すると、ちょうど良いタイミングでトーナメント表が配られた。


「アンタ達と当たるには決勝戦かぁ。楽しみだなホタル!」

「はい! ヨツグさん!」

「ねぇねぇレンカ~」


 ヨツグとホタルが盛り上がってる中、モチャがレンカを呼んだ。


「どうしたモチャ?」

「この大会ってさ、優勝したら何が貰えるの?」

「待ってたよその言葉!」


 六人の横の茂みから出てきたのはニッカだった。他の参加者達も気になっていたらしく、こちらに近寄ってきた。

 ニッカの説明によると、一位から三位までの共通の物が一つ。一位のチームのみが一つらしい。


「一位から三位にはまず賞金手に入る。金貨一万枚ってトコかな。んで、一位のみは……。私がタダでちょっとしたレア武器を作ってあげるっ!」


 余程レア武器が欲しいのか、盛り上がりにさらに熱が入るトーナメント進出組。(ちなみに一番のレア武器は〈塔支配者(ダンジョンマスター)〉の証であるあの武器だから、レンカ達三人は特に驚かなかった)

 運営から一日目の予選はこれで終了だというアナウンスが入り、解散となった。ホタル達と別れたレンカ達も今日はこれで解散にした。レンカは運営の仕事、モチャはダンジョンで魔物退治、アリサは〈BSS〉に一旦帰った。


「祭りのせいで暇じゃないですか? 皆さんも今日は休めばいいじゃないですか」

「そんな事出来る訳ないじゃない。明日は決勝トーナメントだから応援しに行かなきゃ。頑張ってよ社長?」


 アリサにとって姉の様で頼りになる女性「レジーナ・イフェル」。彼女は社員であり、アリサよりも高い射撃センスを持っている。


「結局レジーナさん見に来るなら出場してくれば良かったのに」


 実はアリサ、レンカと探しに行く前日の夜に彼女に聞いてみたのだ。即答で「嫌だ」と言われてしまったが。


「フフ、実はね。この前依頼で五十階層に行くときがあってさ。その時に「証」装備している子を見かけたの。あの子を“三人目”にすれば絶対優勝出来るって思ったわ」


 レジーナは一通り言った後にフフっと笑った。まるで「狙い通りね」と言っているかの様だ。「そうですか」と少し呆れ気味に言ったアリサは他の社員と協力して、依頼やら書類やらを片付けた。

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