004 結
最近始まったアリサの日課となりつつある日記。今回は〈初心者狩り〉との戦い、そしてその後を書いていた。
『〈初心者狩り〉のリーダーがレンカさんの知り合いのコウタさんだと知って驚きました。あの組織は左隣の街、フィオラルにもいると聞きます。あの組織はいつもあの会議の議題になるのです。
そしてその後、シヴィリアではレンカさんと警察が協力して〈初心者狩り〉の殲滅を行ったそうです。と言っても殆どはあの時にレンカさんが倒してしまったので、案外すぐに終わりました。ですが、まだリーダーのコウタさんや仲間のクルルやマルルも捕まってないですし、他の街にもアジトはあると聞きました。これからどうなるのでしょう。そして、レンカさんとコウタさんはまた仲良く出来ますかね……?』
日記帳を閉じ一息つくアリサ。よらほどお疲れだったようだ。横に置いてあるお茶を一口飲むと大きなため息をした。
「〈初心者狩り〉か……コウタさんとレンカさん。昔の関係とやらに戻れるのでしょうか」
「別に仲が悪いって訳じゃない。俺はコウタがリーダーだと知らなかったししかもあんな事する理由が気に入らなかったから、怒っただけだ」
「そうなんですか……って何でいるんですかレンカさん!」
後ろから声が聞こえたと思い、後ろを振り向くとレンカが何時の間に立っていた。どうやらある頼みをしにきたようだ。
「アリサは知ってるよな。毎年やるお祭り〈イヅチ祭〉を。今年は八月十三、十四にやるんだ」
「えぇ。シヴィリアの初代〈塔支配者〉であったイヅチ・ミカグラが作ったからその名が使われた……と。私結構好きですよ、このお祭り。ついつい食べ過ぎてしまいます」
〈イヅチ祭〉は二日間行われる。場所は関係なく街全体で開催されるのだ。だからかなり豊富な種類の店があってアリサはかなり食べてしまい、翌日筋肉痛が酷くて依頼に行けなかった事件が起きた程賑やかな祭りである。毎年〈塔支配者〉と運営委員の人達が主催するため最近はレンカも率先して手伝っていた。
「今年の祭りではな、少し変わった事をする予定なんだ。その用意を手伝ってほしい」
「構いませんが……何をするのですか?」
するとレンカは一度部屋を出て何かを持ってきた。初心者用のブラストだ。
「五十階層に到達した〈冒険者〉限定。初心者用の銃を使っての……サバイバルゲームだ」
「……それで」
「あと一人加えて一緒に出てほしい」
アリサはポカンとしてしまった。本当にサバイバルゲーム、略してサバゲーをするつもりなのか。
「本当にやるのですか? てかこれは誰が考えたのですか?」
「考えたのは運営委員会長だ。だから……もうやるしかない」
アリサは悩んだ。今彼女の心は「楽しそう」が半分に「めんどくさそう」が半分なのだ。だがこの前の〈初心者狩り〉の件を考えるとレンカに息抜きは必要だと思った。
「……わかりました。やりますよ、やれば良いんですよねっ!」
「あぁ、悪いな」
仕方なく(半分楽しみに)依頼を承諾した。
次章〈イヅチ祭〉編です。アリサやレンカ達がサバゲーやります。