024 結
翌日、シヴィリアの外にひっそりと五人がいた。近くにはタイムマシンがある。
「これでオレ達が未来に戻れば終わりだ。新たな未来として始まる。オレも……消える」
リッドはレンカが鐘を鳴らした後の未来から来た人間。その未来の可能性が一旦潰えた今、リッドの存在は消えてしまうのだ。
それぞれ別れを告げる。寂しいけれど、生きていればまた未来で会える。
「それじゃあ、お別れだな。……ありがとな、イズチを守ってくれて」
「絶対! 儂は長く生きるからな! だから、また未来で会おうぞ! 約束じゃ!」
リッドがスイッチをいれる。周囲が光輝く。彼らの未来を変えるための戦いは……勝利で終わったのだ。
新たな未来、シヴィリアの広場にて。
噴水のベンチに“彼”は座っていた。誰かを待っているようだ。
「わりぃレンカ! 遅れちった」
「コウタ、二分遅刻だな」
待っていたのはコウタだったようだ。「前の未来」の記憶はなくなっていた。けど、その違和感はレンカもコウタも、感じているらしい。もしかしたら、蘇る可能性があるかもしれない。
日付は七月に巻き戻っていた。
「それにしてもレンカって時間にウルサイよなー。……あれ、いつからだっけ?」
「……いつから、だろう?」
その時、噴水を挟んで反対側の方で声が聞こえた。とても聞き覚えのある声だった。でも自分はその声の主は知らない。
「もー、アリサ社長! 急がなくてもケーキ店は逃げませんよ!」
「だけど期間限定で早く売り切れてしまうんですよ? なくなったと思うだけで……あぁ! 早く行きましょうヒバリさん!」
レンカはその声の主の姿を見たかったがコウタに呼ばれ断念した。
もしかしたら、すぐに会えるのではないかと少しの期待を抱いて。
ここは、もう一つでもなく死ぬ間際の幻覚とも呼べる場所。リッドの本来の世界。
「リッド。よくここまでレンカさん達を導いてくれましたね。ありがとう」
母親がリッドの頭に手をのせる。
「すっげー疲れた。もう……休んでいいかな、母さん」
リッドがそう言うと母親は優しい笑みを浮かべ頷いた。
「私も……一緒です。これからはずっと……」
母親ーー「ルシエ・スイレン」とリッドは目をつぶる。もうこのような世界が生まれないことを願いつつ、二人はこの世界と共に消えていった。
幸せとなった未来。それでもやはり事件はやってくる。事件まであと約一年。これからの物語は……それまでしばしの休息。平和の物語になることだろう。




