021 起
四十八年前にやってきたレンカ、コウタ、リッド。
まず何をするか、とりあえずイズチやコルマを探そうということになった。
「雰囲気も、街並みも変わっているから全然わからん」
「レンカ、“街が”変わったんじゃなくてオレ達が“元の街並み”に来たんだ」
「おいおい。のんびりしてる時間はそんなないからな」
そうリッドは注意するが、そんなリッドもお茶を飲みながらのんびりと歩いていた。
「武器、隠しておいて正解だったな」
「コウタは隠さなくていいんじゃないのか?」
「うっせ。ノリだノリ」
「ノリ……なのか?」
三人は街に入る前に近くの草むらに武器を隠しておいた。〈塔支配者〉の「証」はこの時代ではイズチしか持っていないことになっている。リッドとレンカの武器を見られればちょっとどころではない騒ぎになる可能性がある。だから隠した。
レンカの言う通りコウタは〈塔支配者〉ではないので通常武器だから隠す必要性は感じないのだが、コウタも隠した。
「あの二人は大体噴水の方にいるはずだ。行くぞ」
噴水の所に行くと確かにイズチとコルマがいた。イズチと若い頃のコルマの写真は残されていなかったため三人とも容姿を見るのは初めてだった。
「リッド、これからどうするんだ? いきなり「未来から来ました」とか言っても絶対信じてもらえないぞ」
レンカがリッドに訊く。三人はベンチに座りつつ周りに気を付けて話し合うことにした。
「レンカとリッドの武器見せれば納得出来るんじゃないか?」
「うーん。出来れば俺たちが〈塔支配者〉ってことは避けた方がいいんじゃねぇかな」
「素直に言う」
「“証明しろ”って言われたら終わりだって」
リッドが二人の考えを却下した。「じゃあリッドは?」とレンカに問われると何も言えずに口ごもる。
「いやぁ……そのぉ。……〈死者〉が出ないようにする、とか?」
「……どうやってするつもりっスか」
「死体をこっそり別の場所に移動させる……」
「関係ない人からクレーム殺到させるつもりか」
「そうですね」
「……ノープランか」
再び無言になる三人。三人の周りだけヒンヤリとした空気が漂っているかのようだ。
「墓場。行ってみるか」
何気ないレンカの一言。何もすることがないので二人は賛成することしか出来ず、三人は墓場に行くことになった。
墓場に向かった三人。元々なのか三人が発しているのかわからないがとても重く、暗い空気が漂っていた。誰かいなかとキョロキョロ辺りを見渡したが誰もいなかった。
「双子がいるかと思ったが……いないな」
「事件当日まで現れないかもな」
「それにしても空気重いなぁ……。飴いる?」
「コウタ何時も持ってるよな。俺グレープ」
「レンカは子供だな。オレイチゴな」
「リッド十分子供っぽい」
コウタのお陰で墓場の暗い空気が少し和らいだ気がした。
「なぁリッド。双子倒した後の未来って、アリサだけではなくイズチも生き返った未来になるのか?」
「そうなるな。まぁイズチに関しては普通に生きても老人になってるだろうな」
飴をなめながらもう一度墓場を歩き回ったりしたがやはりいなかった。三人は今日はシヴィリア中を見てまわることにして墓場を出た。
街中歩いた三人。最終的に何か観光気分になってしまい広場の噴水前のベンチで若干落ち込んでいた。
「観光になったな」
「リッドのせい」
「いいやコウタのせい」
「間をとってレンカ」
「きっかけはコウタ」
責任の押し付けあいになったが口喧嘩ではレンカに勝ったことがないコウタ。今回は口がよくまわるリッドもいるのでフルボッコ状態になって負けた。
確かに観光のきっかけはコウタ。レンカ達の時代から五年前に閉店した老舗の飴屋があったのだ。コウタがとても喜んで入ってしまい、引っ張られたように渋々入るレンカ、リッド。たくさんの種類の飴があり、渋々だった二人も数分後にはノリノリになり……二時間後、今に至る。
「コウタが飴屋に入らなければ観光にならなかった」
「だって五年前に閉店の店があったんだぜ? しかも通貨は今と変わらずに金貨・銀貨。買うしかないだろ」
「あそこで一時間はなかったよな」
「最終的に二人もノリノリだっただろ」
三人は大きなため息をした。すると誰かから声をかけられた。
「ちょっといいかの?」
「お、おい。僕まで巻き込むなよ」
声をかけられた相手。それは、
「儂が死ぬとか生き返るとか……どういう意味かの?」
「墓場によったら聞こえて……悪い」
“イズチ・アズマ”と“コルマ・キグルミ”だった。未来と過去。時代が違えどこの街を守るため一週間後、共に戦うことになる……のだが。
(一番聞かれたくないとこ聞かれたな)
レンカは正直内心焦っていた。「死ぬ」とか「生き返る」は出来れば余り聞かれたくないと散々三人で話し合ったとこだったのだ。
(まぁ。何とかなるだろ)
それでもすぐに冷静を取り戻すレンカだった。




