表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

019 転

「さて、ホシカゲさん。私、しょーじき現役の頃より弱くなったと思うのですが」

「大丈夫ですよ。わたし、サバゲー大会見に行きましたけど、結構強かったと思いますよ」

「見られてたんですか……。恥ずかしいです」


 二人がこんなに呑気な話をしているように思えるが、この会話……“戦いながら”されていた。意外とまた余裕はあるようだ。


「中々当たらないですね……」


 アリサが基本前衛、ホシカゲが後衛を担当し、イヅチを攻撃していたが、避けられるわ防がれるわ。全然駄目なのだ。つまり、現在硬直状態となっていた。

 するとーー。


「よいしょっと」


 そんな男性の呑気な声が聞こえたと同時に、イヅチが気絶した。急なことだったので、二人はとてもビックリした。


「真っ正面から戦うから当たらねぇの。邪道じゃないと勝てないワケ。わかる? 邪道。こうして後ろからドカッと一発、首元やれば、ハイ終了。アリサはクソ真面目だからなぁ」

「……“リッドさん”。最近見かけませんでしたが……。引きこもりだったんですか? 太りますよ」

「いやいや、外にはいたぜ。ただ俺がいたのは〈パルテナ〉だったけどな。帰ってきたら〈死者(アンデット)〉がうろついていたからメッサ驚いた。どうやら、家の中には入ってこないから〈街人〉は全員無事だ」


 それを聞いた二人は安心した。アリサは〈街人〉を、ホシカゲは(コルマ)を心配していたのだ。

 リッドは周りをキョロキョロするとアリサに訊いた。


「ところでレンカは? 一緒じゃないのか?」

「レンカさんは墓地に行きました。一人なので少し心配です……」

「そんなに心配ならさっさと行くか」


 アリサは頷く。

 レンカと別れて三十分後。アリサ達も墓地に向かった。







「なに……これ」


 墓地に到着した三人は信じられないような光景があった。

 ……コウタとレンカが倒れていた(、、、、、)のだ。そして、マルルが武器のヴァリアントサイズでレンカにとどめをしようとする所だった。


「レンカさんっ!」


 アリサはマルルに剣で攻撃したが避けられた。マルルはジャンプしながらアリサ達から離れてクルルの方に向かった。


「あれっ? アリサさん達早いねぇ。……初代でも役に立たなかったんだ。あーあ、残念」

「……あ。久しぶりだね、ホシカゲ」


 クルルがホシカゲに気づき話しかけてきた。ホシカゲは双子の年が昔と変わらなかったことにとても驚いた。


「うぐっ……。あ、アリサ……?」

「ーー! レンカさん、大丈夫ですかっ!」

「俺は……大丈夫だ。なんとかな。それより、コウタが……」


 アリサがレンカの元へ、ホシカゲとリッドがコウタの元へいた。二人とも、離ればなれに横たわっていたのだ。アリサがリッドの方へ顔を向けるとリッドは大丈夫だ、と言う。どうやら気絶しているだけのようだ。


「俺は、大丈夫だ。問題ない。コウタを連れて……逃げろ」

「だ、駄目ですよ! レンカさんも……ボロボロじゃないですか」


 レンカは立ち上がろうとするが、怪我が酷いせいで立ち上がれなかった。


「うーん。まぁ、今回目的に“レンカさんを殺す”は入ってないから……別にレンカさんは無理にしなくていいですよ?」

「じゃあ、目的って何ですか? 〈死者(アンデット)〉は二人の仕業ですかっ」

それ(アンデット)はねー クルル姉が作ったんだ! ま、計画をたてたのはわたしだけど。頑張ったんだよ? それでね……目的はー」


 アリサが感じることが出来なかった。一瞬でマルルの武器の(ヴァリアントサイズ)の先端がアリサの喉元についていた。


「ーーっ!!」

「……バイバイ。アリサ・アルケミスさん」

「アリサさん危ないっ!」

「アリサ!」

「あ……アリサっ!!」


 ホシカゲ、リッド、レンカが叫び、アリサの方に駆け寄るがもう遅かった。


「……さよなら」


 クルルのアサルトの弾がアリサの左胸を貫いた。

 みんな、この瞬間はスローモーションに感じた。

 アリサはゆっくりと、倒れていった。


「アハハハハ!! ……目的はアリサさんだったんですよ。クルル姉、頑張ったね!」

「うん。頑張った」


 みんなアリサの元へ駆け寄った。ホシカゲは思いっきり泣いていた。リッドは泣いていなかったが、とても悲しい表情だった。レンカは空を見ていた。


「……雨だ」


 レンカが呟く。雨はぽつぽつと降りだし、一分後くらいには大降りとなっていた。いつの間にか、あの双子は消えていた。


「あの双子は一体何なんだよ……」

「……悪魔、そう言ってました」


 リッドの呟きにいつの間にか起きていたのかコウタが答えた。コウタの表情はとても暗かった。


「ダンジョンの魔物は日々進化するのは……皆さんならわかりますね。古株はゴブリン族、新入りは機械族みたいに。ダンジョンが現れて初代〈塔支配者(ダンジョンマスター)〉がイヅチ・アズマ。それから二年後くらいに〈死者(アンデット)〉が襲いかかってくる事件が起きた。悪魔族は……その少し前に現れてた魔物、らしいです」

「じゃあ、お前はあの双子の……悪魔に騙されていたってことか?」


 コウタは頷き昔話を始めた。


「オレは昔〈冒険者〉を育てるトレーナーでした。教え子達はまだ小さくてとても元気だった。でも……自信があったんでしょうね。上の階に挑戦してしまい、死んでしまった。オレ、凄く悲しくて……そしたらあの双子が現れたんです。『〈冒険者〉になろうとする奴は間違った選択をしたことに気づいてない。過ちに気づいた貴方なら、アイツらに“死”という罰を与える資格がある』って」


 その言葉にコウタはのせられ、〈初心者狩り〉を作り、初心者〈冒険者〉を殺しだした、と。コウタの昔話が終わるとレンカが話し出した。


「俺は、コウタがただ騙されただけだってわかって少しホッとした。だから……一発殴って仲直りした」

「あのパンチは痛かった」


 話は一旦終わった。でも悲しみに終わりはなかった。


「……まだだ。まだ終わらねぇよ。これじゃあ……あの双子の勝ちじゃないかよ。そんなの、俺は認めねぇ」


 急にリッドがそう言った。そしてレンカとコウタに「明日俺の家に来てくれ……武器を持ってな」と言い、墓場を去った。

 痛みが治まり、動けるようになったのでホシカゲ、レンカ、コウタの三人でアリサを埋葬し、手を合わせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ