018 承
「〈死者〉が!? ……コルマさん、危ないのでここにいてください」
コルマは頷き気を付けろよ、と三人に激励を言う。三人は頷いた。
まずはそれぞれ家に戻り武器をとってくる。そして、墓場に行く計画だ。
「わたしはアサルトでサポートをします。……アリサさんほど上手ではありませんが、頑張りたいと思います」
「よろしくお願いしますね。ホシカゲさん」
「よろしくお願い……します」
「フフ、敬語下手だね。レンカさんって。タメ口で大丈夫だよ」
「……悪い」
「それじゃあ。レンカさん、ホシカゲさん。行きましょうか」
三人は武器を構え、小屋を出た。
街中はとても大パニックだった。〈死者〉が街中に現れ、必死に〈冒険者〉が倒していた。しかも、ある所は〈街人〉の家族が〈死者〉になっているらしく、泣きながら殺さないでくれ、と〈冒険者〉に頼んでいた。
アリサとレンカの武器は苦労はしたが、とってくることが出来た。
「じゃあ、墓場行きましょう」
ホシカゲが行こうとすると、
「ーー! ホシカゲ危ないっ!」
レンカがホシカゲを押し、剣で急に現れた〈死者〉の攻撃を防いだ。その〈死者〉の生前は、ホシカゲがよく知る人物だった。
「イヅチ……さん?」
「え? ……じゃ、じゃあ。この〈死者〉が……」
「凄い力だ。〈死者〉のせいかもな」
レンカの目の前にいる女性。彼女が初代〈塔支配者〉だった「イヅチ・アズマ」
今の彼女は虚ろな目をして不気味な呻き声をしてるただの“死人”となっていた。
「……ホシカゲさん。墓場に今、誰がいるのか見えますか?」
三人がいる地点は墓場に少し近い。目がいい人なら誰が墓場にいるのかわかる。三人の中で一番目がいいのは正直レンカだが、今はイヅチと戦闘中だ。だから、二番目に目がいいホシカゲに訊いたのだ。戦っているレンカはいつまで持つかわからない。それくらい、やはりイヅチは強いのだ。
ホシカゲは目を細めたりしながら遠くを見る。
「うーん。……あっ、あの双子とぉ。もう一人。……えーっと、茶髪、かな? の男子が一人いるね。ちょうど、レンカさんくらいの年頃ですね」
「まさか……!」
ケトラ姉妹と“現時点”手を組んでいるのはコウタしかいない。
アリサは考える。その間、彼は何も言わずイヅチの足止めをしていた。全て、アリサを信頼しての行動だった。
「……レンカさん。イヅチさんの足止めは私に任せて、墓場に行ってください」
アリサがイヅチを攻撃して、レンカにそう言った。アリサの精一杯の殺気が伝わったのかイヅチはしばらく様子を見るかのように少し離れた所から動かなかった。
「ホシカゲさんが「墓場に茶髪の男子がいる。レンカさんと同じくらいの年頃」と。……今、あの双子と一緒にいる可能性がある人物と言えば?」
「コウタがいるのか?」
「恐らくは。……ですから、行ってくださいレンカさん」
レンカは悩んでいた。
このことにコウタが関わっているのなら、確かに自分が向かった方がいい。だけど、そうしたらイヅチはアリサに任せきり……いや、ホシカゲがいる。だけど女性二人、いくら一人は元〈塔支配者〉だとしても、自分ですら押さえるのに必死な相手だ。大丈夫なのか……。
「レンカさん」
「ーー!」
急に呼ばれはっと意識をアリサに向ける。アリサは緊張しているかと思いきや、微笑んでいた。
「私だって元〈塔支配者〉です。それに、〈冒険者サポートセンター〉社長ですよ。……少しは、私にも任させてください」
アリサの目はとても真剣だった。ついでに、後ろでは、張り切っているホシカゲの姿も見えた。
「……わかった。イヅチのことは任せた」
「はいっ。……ふふ。任されました」
「わたしも頑張りますよっ!」
三人顔を見合わせ、頷く。すぐに走り、レンカは基地へ向かった。イヅチが追いかけようとしたが、アリサとホシカゲがアサルトの弾の嵐で阻止した。
「イヅチさん。私がお相手です」
「イヅチさん。コルマお兄ちゃんをそれ以上苦しませないでください。……わたしが、貴女を本当の意味で。……“殺します”」