017 起
十月三十一日。シヴィリアでは朝からハロウィンパーティーが行われていた。カボチャや魔女など、みんなコスプレをして楽しんでいた。
「うわぁ、凄いですね……流石初代〈塔支配者〉がお祭り好きイヅチさん。街の人に受け継がれてますよ。きっと」
「それは多分関係ないと思うぞ。……もうすぐ時間だな」
噴水の近くでレンカとアリサはある人と待ち合わせをしていた。すると、二人を呼ぶ声が聞こえた。待ち合わせの人が来たようだ。
「レンカー、アリサー、久しぶりーっ。モチャだよーっ!」
「久しぶりと言っても二ヶ月くらいだけどな。まぁ、久しぶりと言われれば確かに久しぶりだな」
「お久しぶりです、モチャ。〈イヅチ祭〉ぶりですね」
〈イヅチ祭〉のサバゲー大会で一緒にチームを組んだモチャであった。祭りが終わると、協調性を学びにパーティーに入りダンジョン攻略をするらしく、二ヶ月程会っていなかった。
「あれからどうです? 協調性、しっかり学べました?」
「うん! パーティーの仲間みんな優しいし、とっても強いんだよ」
モチャの表情は二ヶ月前より明るく、無邪気になりアリサは「よかったです」と言って微笑んだ。
三人は街を歩いていた。三人の有名度はかなりあるせいで、どこを歩いても声をかけられていた。
三人は昼になったのでファミレスで昼食を食べた。すると三人が座っている席に一人の女性が現れた。
「始めまして。アリサ・アルケミスさん、レンカ・クロヴィンさん」
「……あんたは?」
「ホシカゲ・キグルミ。と言えば……お分かりでしょうか?」
「ーー! もしかして、コルマさんの妹さん……」
ホシカゲは頷く。レンカも驚いていた。モチャはよくわからなかったのでーーフィオラル出身者なので仕方がないーー頭に?マークが沢山あるような表情をしていた。
「一体、何のご用ですか?」
「……コルマお兄ちゃん。私の兄がお二人をお呼びですので、来て頂ければ」
「そっかぁ。じゃあモチャはここまでだね。行ってきなぁ」
「悪いモチャ」
「すみません……」
二人はモチャと別れホシカゲについていく。ホシカゲが向かった所は街の外れの小さな家だった。
「お兄ちゃん。お二人連れてきたよ」
中に入ると老人が椅子に座っていた。
「ありがとうホシカゲ。……さて、アリサとは改めて、コルマ・キグルミ。アリサが読んだ本の著者だ。よろしくな」
「知ってたんですね。……では、あなたの妹のツキカゲさんが……」
コルマは頷く。
「あぁ、そうだ。あの本は全て僕の体験談だ」
「……何であんたは俺たちを呼んだよんだ?」
コルマは少し下を向き、考えていた。そして二人の方に向き、訊いた。
「この世界の“昔話”を知って、どう思ったか。教えてほしい」
アリサとレンカは顔をお互い見て、コルマのの方に戻した。アリサから言うようだ。
「少し……驚きました。この世界が一度時が止まったなんて。それに、〈死者〉って魔物は見たことないから……戦いづらいと思いました。〈塔〉にはアンデットモンスターは〈骸骨兵〉が一般的でしたので」
「俺は本は読んでないから具体的な内容はわからないが……。一つ、アリサから話を聞いて気になったことがある。……クルルとマルルがいたのか?」
コルマは少し驚いた表情をした。
「あの双子を知っているのか?」
「あぁ。〈初心者狩り〉の幹部的存在だ。一度、会ったことがある」
「外見は?」
コルマが訊いてきたことにアリサはよく意味がわからなかった。でも、本を読んだ彼女だからこそわかることもあった。アリサはもしかして……。と思い、コルマに言ってみた。
「昔の双子は少女だった。今は私たちより年とってないと可笑しい。でも……」
ここでレンカもわかってきた。
「俺たちが会った二人は年下だった。「年をとってない」ってことか?」
「……恐らくは」
部屋の中は暗い雰囲気が漂っていた。
「コルマお兄ちゃん、大変だよ!」
急にホシカゲが入ってきた。とても慌てた表情で、手にはホシカゲの武器、アサルトが構えられていた。
「どうしたんだ? そんなに慌てて」
二人の武器はそれぞれ家にある。今は非常用のミニブレードーーナイフみたいな感じ。武器としてショートブレードがあるため、この名前となったーーしかない。
「は、墓場から……〈死者〉が……。昔のあの出来事がまた、起きたの!」