表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/117

3 VS鋼鎧鬼

「勇者よ、貴様の命──このギラスと鋼鎧鬼(フルメタルオーガ)が貰い受ける!」


 洞窟を突き崩して現れたのは、巨大な龍王機だった。


 名前の通り、鋼鉄でできた鬼のようなデザイン。

 手にした金棒といい、東エリアで戦った龍王機に似ている。

 あるいは同系列機かもしれなかった。


「ギラス……確か第三層の筆頭魔族か」


 冥は険しい表情で眼前の龍王機を見据える。


 エルシオンやサラマンドラが載せられた輸送トレーラーは敵機の向こう側だ。

 どうやって敵をかいくぐり、愛機の元までたどり着くか──。


「行け」


 が、そんな逡巡をあっさり裏切り、ギラスが告げた。


「えっ、いいの?」


「龍王機にも乗っていない相手を一方的にいたぶるなど、武人の名に傷がつく! このギラス、勇者と一対一──正々堂々の勝負を所望する!」


 そういうタイプらしかった。


「ど、どうも……」


 半ば呆気にとられつつ、冥たちは敵機を素通りしてトレーラーまでたどり着く。


「なんか相手は正々堂々と戦おうとしてるみたいだし、僕一人で行っていい?」


 勇者と一対一で戦いたい、と言っていたことを思い出す冥。


「うーん、確かに他の魔族は量産型が護衛でずらっといたけど、あいつは単機だし……二対一だとちょっと気がひけるかも……」


 と、シエラ。


「何を甘いことを言っているのですか。勝たなければ意味がありません」


 ユナが案の定、険しい顔になった。


「大丈夫、勝ってくるから」


 冥はにっこりと笑う。


「……もう」


 ユナはため息をついた。


「信じていますよ」


 それ以上は言わずに、じっと見つめる。


 よかった、納得してくれた。

 内心でホッとしつつ、冥はうなずいた。


「任せて」



 冥はエルシオンに乗って、ギラスのフルメタルオーガと対峙した。


「お待たせ。勝負だ」


 シンプルに、告げる。


「一対一の勝負を引き受けてくれて、感謝する」


 と、ギラス。

 まっすぐな性格のようだ。


 どうせなら人々を虐げないでくれるとありがたいんだが。

 冥は内心でつぶやくが、


「貴様を倒し、仲間の女も倒し、その後は反抗した人間どもをみな殺しだ」


 やはり魔族は魔族、ということらしかった。

 確かに正々堂々としているし、性格もまっすぐかもしれない。


 だがその本性は破壊と欲望に満ちている。

 人間が悪堕ちしたタイプはともかく、純粋な魔族はやはり──人間とは相容れぬ敵なのだ。


 冥は相手の印象を変え、あらためて闘志を燃やした。


「なら僕は、お前を倒してこの階層を解放する」


「無理だな」


 うそぶくギラス。


「人間ごときにこの俺は負けん。万が一、敗れたとしても、俺の後にはまだあのお方が控えている──」


「あのお方……?」


「おしゃべりの時間は終わりだ。ここからは互いの得物にて語り合おうぞ!」


 ギラスの叫びとともに、オーガが巨大な金棒を構えた。


 ──そして、戦いが始まった。


「速い──」


 冥は小さくつぶやいた。


 単純な機体性能だけではない。

 相手の間合いを計り、微妙なフェイントを交えて飛びこむタイミングの取り方。

 攻撃の軌道を読みづらくする、変則的なモーション。


 さらに牽制の火器の使い方や、複数のスラスターで機体を上手く振り回したり、と十分に一流の乗り手だった。


 だが、相手の動きはすべて見えていた。

 冥の龍心眼の前には──。


「そこだ」


 静かに、剣を振り下ろす。

 ちょうど相手からその切っ先に突っこむような形で、オーガの右肩装甲が斬り飛ばされた。


「こ、こいつっ……なんで俺の動きが──」


 見える。


 今までよりも、さらに高い精度で。

 さらに鮮明に。


 冥は、自身の集中力が常ならず増しているのを感じていた。

 第一層からここまで戦いを重ねることで、龍王機同士の戦闘に慣れてきたこともある。


 だが、それだけではない。


(そうか、これが──)


 第一層の最後の戦いで、強敵メリーベルと戦った際に会得した領域。


覇王の領域(エンペラーギア)』。


 俗に言う無我の境地である。

 究極の集中状態に入ることで、自身の能力を百パーセント発揮することができる。


(僕は、それに……立ち入りつつあるのか)


 オーガがさらに金棒を振るう。

 冥はほとんど無意識レベルで、レバーを、ペダルを、操り──易々と避けてみせた。


 反撃の剣で、オーガをカウンター気味に吹き飛ばす。


(いける──)


 手ごたえを感じ、レバーを握る両手に力が入った。


 今はまだ、自由自在に使いこなすことはできない。

 あのときも、半ば偶発的にその領域に入ったにすぎない。


 だが、もしも意図的に『覇王の領域』を使いこなせるとしたら──。


 もはや、どんな魔族が現れようと、どれほど高性能の敵機が襲ってこようとも。


 冥の、敵ではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人を寝取られ、勇者パーティから追放されたけど、EXスキル【固定ダメージ】に目覚めて無敵の存在に。さあ、復讐を始めよう。
Mノベルス様から書籍版1巻が10月30日発売されます! 画像クリックで公式ページに飛びます
et8aiqi0itmpfugg4fvggwzr5p9_wek_f5_m8_5dti

あらすじ

クロムは勇者パーティの一員として、仲間たちともに魔王軍と戦っている。
だが恋人のイリーナは勇者ユーノと通じており、クロムを勇者強化のための生け贄に捧げる。
魔力を奪われ、パーティから追放されるクロム。瀕死の状態で魔物に囲まれ、絶体絶命──。
そのとき、クロムの中で『闇』が目覚める。それは絶望の中で手にした無敵のスキルだった。
さあ、この力で復讐を始めよう──。


   ※   ※   ※

【朗報】駄女神のうっかりミスで全ステータスMAXになったので、これからの人生が究極イージーモードな件【勝ち組】
(新作です。こちらもよろしくお願いいたします)


あらすじ

冒険者ギルドの職員として平凡な生活を送っている青年、クレイヴ。
ある日、女神フィーラと出会った彼は、以前におこなった善行のご褒美として、ステータスをちょっぴり上げてもらう。
──はずだったのだが、駄女神のうっかりミスで、クレイヴはあらゆるステータスが最高レベルに生まれ変わる。
おかげで、クレイヴの人生は究極勝ち組モードに突入する!
大金ゲットにハーレム構築、さらに最高レベルの魔法やスキルで快適スローライフを実現させていく──。



小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ