2 VS天翔ける空神
随分と間が空いてしまいましたが続きを投下します(´・ω・‘)
更新止まっている間もちょっとずつブクマが増えていたみたいで本当に感謝です<(_ _)>
これからもまったりペースで更新していきたい……
加速力に特化し、高速戦闘を主体とするサラマンドラは、通常の龍王機よりも乗り手の負担が大きい。
そのため、コクピットは独特の形状をしている。
シートには通常の龍王機のような背もたれがなく、馬の鞍を思わせる座席にまたがる格好だ。
前方のレバーを握るためには上体を前傾姿勢にする必要があり、まさしく馬に騎乗しているようなポーズで操縦することになる。
おかげで、通常のシートよりも操縦者が受けるGが軽減され、高速戦闘にも対応しやすくなるというメリットがあった。
反面、小回りが利きにくいため、中距離や遠距離の戦闘では被弾のリスクが増える。
砲撃戦を主体としたイカロスと戦うには、とにかく距離を詰めなければならない。
離れた距離から一方的に砲撃を受けたら、こちらに勝ち目はない──。
「くっ……!」
放たれた砲弾を、シエラは間一髪で避けた。
さらに二発、三発──。
イカロスが放つ砲撃を、シエラは前進と後退を繰り返しながら避けていく。
前傾姿勢のため、豊かな胸元がぶるんぶるんと揺れ続けた。
男なら誰もが生唾を何度も飲みこみそうな、扇情的な姿だ。
とはいえ、ここは密閉された操縦席内だから、気にする必要などない。
(……勇者さまになら、見せてもいいけど)
思わずそんなことを考え、シエラは慌てて意識を前方に向けた。
今は、この戦いだけに集中する。
「ちょこまかと逃げるんじゃない!」
コーデリアが苛立たしげに叫んだ。
イカロスの口内と翼の付け根の砲がいっせいに火を噴く。
少しずつ角度とタイミングをずらし、避けづらくした弾丸の雨。
(思い出すんだ、勇者さまとの特訓を)
シエラは目を開いて、攻撃の軌道を予測する。
──昨晩の冥との訓練で学んだのは、防御面だ。
サラマンドラとイカロスの戦いは、間合いで決まる。
遠距離を保つことができれば、イカロスの勝ち。
接近して近距離戦に持ちこむことができれば、サラマンドラの勝ち。
そのために──砲撃をかいくぐり、敵の懐に潜りこむために、冥とマンツーマンで特訓したのだ。
敵の攻撃の見切り方を。
中央から、右から、左から。
次々と飛来する弾群を、シエラは機体を左右に振って避けた。
着弾した弾丸が爆炎と爆風をまき散らす。
衝撃波で機体が激しく揺さぶられる。
当然、操縦席内も地震さながらに揺れていたが、シエラはただまっすぐにモニターだけを見据えていた。
砲弾は相変わらず止むことなく飛んでくる。
だが──よく観察してみると、一定の間隔で攻撃が止む時間帯が存在していた。
(そっか、装填している間は攻撃できないってことだね……!)
どうやら、おおよそ十六秒に一度、砲弾を再装填して撃ち出しているようだ。
ならば、その間隙を突くことができれば──。
「……今っ!」
ほとんど無意識に叫びながら、シエラはフットペダルを踏みこんだ。
サラマンドラの各部から刃のように生えた予備エネルギーパックが同時に弾け飛ぶ。
すべてのエネルギーを注ぎこんだ、全開加速。
大地を蹴り、背中から噴煙を吐き出しながら、サラマンドラは瞬間的に亜音速にまで達した。
「ぐっ……ううっ……」
全身に強烈に叩きつけられる重力に、シエラの口からうめき声がもれる。
体中の骨が軋む。
それでもアクセルは緩めなかった。
なおもペダルを踏みこみ、どこまでも加速する。
「いっけぇぇぇぇぇぇっ!」
雨あられと降り注ぐ砲弾を、避けられるものは避け、残りは装甲に弾かせる。
彼女の、人間離れした動体視力と反射神経だからこそ可能な荒業。
もちろんノーダメージというわけにはいかない、多少の被弾は無視して突き進んだ。
イカロスに白兵戦の手段はない。
距離さえ詰めれば、こちらの勝ちだ。
「だから──これで終わりっ!」
烈炎槍破──!
至近距離まで接近したサラマンドラが、イカロスの胴体部めがけて必殺の槍撃を繰り出した。





