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階層世界の龍王機(ドラグーンフレーム) ~先読み能力を持つ勇者、最弱の機体を最強へと押し上げる~  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第9章 龍の瞳、炎の瞳

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1 決戦の朝

 朝が、来た。

 ゆっくりと昇りはじめた日の光が目にまぶしい。


「終わったぞ。サラマンドラの整備は万全だ」


 整備長のバラックが冥たちの前で言った。

 陽光に照らされた龍王機は赤い輝きを放っていた。


「ありがと、バラックさん。じゃあ勇者さま、姫さま、みんな。あたし──行ってくるね」


 シエラはバラックに礼を言うと、冥たちに向き直った。

 背を向け、手を振って、サラマンドラのもとへ歩いていく。


 その背を、冥はジッと見つめていた。


「大丈夫でしょうか、シエラは」


 ユナが心配そうな顔で寄り添ってくる。


「冥が明け方までずっと特訓に付き合っていたのでしょう? 手ごたえはどうでした?」


「……分からない。伝えるべきことは全部伝えたけど、実戦でそれを使いこなせるかどうかはシエラ次第だよ」


 ため息をつく冥。


 一朝一夕に実力を上げることなど不可能だ。

 だが昨日の訓練で伝えたことを実戦に反映できれば、シエラはより力を発揮できるだろう。


 そう、実力を上げるのではなく、無駄なく使いきること。


 冥とシエラが目指したのはそれだ。

 ただし、それを実践できるかどうかは、彼女次第。


 冥はただ見ていることしかできない。

 それがもどかしい。


「実際、単純な実力でいえばコーデリアのほうが上だと思う。その実力差を、昨晩の特訓の成果でひっくり返せるかどうか──シエラの勝機はそこだけだ」


「やっぱりお前が乗ったほうがよかったんじゃないのか」


 と、バラック。


「……整備の人間が口を挟むのもなんだけどよ」


「シエラの決意は固いですから。それに彼女のほうがサラマンドラに慣れている──そこに賭けてみようと思います」


 冥はもう一度ため息をついた。

 やはり心配は尽きない。


「信じましょう、シエラを」


 ユナがそう締めくくった。


「……そうだね。僕も、シエラを信じる」


 彼女の強さを。

 そして意志と、誓約を。


 上空から爆音が響いたのはそのときだった。




「コーデリアが……来る」


 サラマンドラの操縦席で、シエラは上空を見上げていた。


 最初は、上空に浮かぶ小さな点だった。

 次に、爆発音を思わせる轟々とした推進音が響き、巨大な鳥のようなデザインの龍王機が次第にその姿を鮮明にする。


天翔ける空神(バスターイカロス)』。


 かつての四英雄、コーデリア・エフィルの空戦用龍王機。

 スロットルレバーを握りしめる両手にじわりと汗がにじんだ。


(あたしは……勝てるのかな。あの人に)


 不安が胸をよぎる。


 コーデリアの実力は、かつて戦った魔族メリーベルと同等か、それ以上。


 冥は自分の見立てをそう話してくれた。


 以前に負けたメリーベルと同格以上の相手と、戦う。

 絶対に勝たなければならないシチュエーションで。


(気持ちが重い……体がふわふわして、力が入らない……どうしよう……)


 いつもなら戦いの前の高揚感で胸が躍り、闘志がみなぎってくるというのに──。

 こんな感情は初めてだった。


 エルシオンは昨日の戦いで破壊されてしまっている。

 シエラが敗れれば、連合はコーデリアによって壊滅させられるだろう。

 彼女だけでなく、冥たちも皆殺しにされるかもしれない。


 自分の双肩に全員の運命がかかっている──。


(やっぱり、素直に勇者さまにお任せしたほうがよかったのかな)


「シエラ!」


 後悔が込み上げたそのとき、声が聞こえた。

 サブモニターに切り替えると、足元で冥が手を振っている。


 上空の爆音に紛れて、声は聞こえない。

 だが口の動きと表情で、はっきりと伝わった。


 冥はこう言っているのだ。


 君を信じている──と。


「……そうだよね。自分から志願したのに弱気になってちゃダメだよね」


 シエラは自らを奮い立たせた。


「勝ってくるよ、勇者さま」


 そして彼に伝えるのだ。

 自分の、想いを。


 あなたが好きです、と──。


 直後、バスターイカロスが地面に降り立った。

 数百メートルの距離を隔てて、二体が対峙する。


「約束通り来たけど──もしかして、乗っているのはシエラちゃんかな?」


 コーデリアが怪訝そうにたずねる。


「サラマンドラに冥くんが乗るんだと思ってたら、まさかあなたとはね。勝てると思っているの? このコーデリア・エフィルも舐められたものね」


「舐めてなんかいないよ」


 シエラが言い返した。

 いつも通りの不敵な表情で。


「あなたを倒すには、あたしで十分ってこと」


「それを──舐めてるっていうのよ! この泥棒猫がっ!」


 コーデリアがいきなり激昂する。

 イカロスのクチバシが開き、そこから砲がせり出した。


「まずあなたを殺す! 冥くんにまとわりつく盛りのついた牝犬め!」


 怒声とともに砲弾が放たれる。


 死闘が、始まった。

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あらすじ

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あらすじ

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