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3 告白

 冥はユナ、シエラ、コーデリア、ルイーズとともにビーチボールをすることになった。


「冥くん、いったよー」


 コーデリアがトスを上げる。


「よし」


 それをつなぐ冥。


「あ、しまった──」


 が、コントロールをミスして、ボールの軌道が大きく反れてしまった。

 龍王機の操縦はともかく球技は得意ではないのだ。


「任せてっ」


 シエラが素早いダッシュで追いつく。


 残像すら置き去りにするほどの超スピード。

 そのままシエラはスライディングしながらボールを跳ね上げた。


 やはり身体能力という点では、彼女は図抜けている。

 現代の世界なら、オリンピックで造作もなく金メダルを取れるだろうレベルだ。


「すごい──」


 思わず感嘆の声をもらした冥は、次の瞬間ハッと目を開いた。


「シ、シエラ……それ……」


「えっ?」


「胸が……その……」


 かあっと頬が熱くなるのを意識しながらも、つい彼女の胸元に視線を送ってしまう。


「……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 先ほどのスライディングでビキニが外れ、シエラの豊かな乳房が丸出しになっていたのだ。


「むう……ナチュラルにお色気攻撃とは、シエラちゃんも侮れない」


「──とか言いながら、なんでコーデリアまで脱いでるの!?」


 いきなりビキニを外し出したコーデリアにツッコむ冥。


 シエラに負けず劣らず豊満な胸を、先端部だけは見えないように両手で隠しながら、妖しく体をくねらせている。

 いわゆる手ブラ状態のコーデリアと、恥ずかしそうに両手で胸を隠すシエラに挟まれ、冥の心臓は破れそうなほど鼓動を打っていた。


 さらにユナは──、


「い、いくらお慕いする相手でも、自分から肌を晒すなんて……」


 恥じらいながら水着を外そうとして、さすがに自重したようだ。

 真っ赤になって、シエラとコーデリアを悔しげに見ている。


「わ、私だって……負けたくない……うう、でも恥ずかしい……」




 ぱしゃっ、ぱしゃっ、と跳ねる水しぶきが、陽光を反射して美しくきらめく。


「あはは、いくよ、姫さまっ」


「きゃあっ、もうシエラったら」


「先輩、私にも~」


 ビーチバレーも一段落し、シエラやユナ、ルイーズが浜辺で遊んでいた。


 水をかけあい、戯れる少女たちは実に絵になる。

 そんな微笑ましい光景を、冥はコーデリアと並んで見ていた。


「ふふ、やっぱり楽しいね」


「うん、戦いの連続だとこういう時間がほんとうに安らぐよ」


 コーデリアの言葉にうなずく冥。


 こんな平和なひとときがずっと続けばいいのに──。


 小さなため息をつく。


「それになんだか懐かしい気分。十年前も、ユナ殿下や皆とこんなふうに過ごしたよね」


 コーデリアが遠い目をしてつぶやいた。


 十年前、幼女だったユナや年下だったコーデリアを始めとする四英雄の少女たちと魔王ヴァルザーガを倒すために戦った日々──。


 今回ほどの苦戦はなく、一行は精神的にも体力的にも今回よりもずっと余裕があった。

 各階層での戦いの合間に、こんなふうに皆で遊んだこともあった。


 それも、今となっては遠い思い出だ。


「でも、あの時間はもう戻らない……立場も、状況も変わってしまった」


「……コーデリア?」


 彼女の笑顔はどこか寂しげだった。


 いや、今だけではない。

 この第二層で再会して以来、ときどき彼女はこういう顔をする。


 胸の内に、何か苦しみを抱えているような──。

 そんな切なげな笑顔。


「ねえ、冥くんは誰が好きなの?」


 ふいにコーデリアが体を寄せてきた。

 豊かな胸を押しつけ、ぴったりと体を密着させる。


「コ、コーデリア……!?」


 まるで溶けそうなほど柔らかい乙女の感触にドギマギとした。

 ユナたち三人は遊ぶのに夢中なのか、こちらに気づいていないようだ。


「ユナ殿下? シエラちゃん? それとも──」


「急にどうしたの、コーデリア……?」


 抱きつかれたことにも言葉の内容にもドギマギしつつ、冥はかすれた声を出した。


「私はあなたが好き」


 ストレートな告白に、息が詰まる。

 再会したときに突然キスをされたときも、胸が破けそうなほどドキドキしたが──そのとき以上に、胸の鼓動が早鐘を打っていた。


「私だけのものになってほしい……十年間ずっとあなたを想っていたのに……どうして急にいなくなってしまったの?」


 ──十年前、先代魔王ヴァルザーガを倒した後、冥はこの世界から姿を消した。


 もっとも、それは彼の意志ではない。

 魔王を討った直後、気がつけば元の世界に戻っていたのだ。


 冥としても不本意な結末だった。


 生きている実感が希薄な現世よりも、ともに戦い、心を通わせた仲間たちがいるクレスティアのほうが──いつの間にか冥にとっては心地よい場所になっていたのだ。

 ユナたちにちゃんと別れを告げることもできず、突然元の世界に戻されたことで、気持ちの整理がまったくつかなかった。


 クレスティアへの思いを引きずったまま、冥は抜け殻のようになって三年を過ごした。


 やがて、新たな魔王の襲来に伴い、ふたたびこの世界に召喚されたわけだが──。


(十年間……か)


 心の中でそっとため息をつく。


 現世とこの世界では時間の流れが違う。


 冥が現世で三年過ごした間に、コーデリアたちは十年という長い時間を過ごしていた。

 以前の戦いでは八歳だった彼女が、今では二つも年上だ。


「あなたがいなくなったときに思ったの。あのときの私は引っ込み思案で冥くんへの想いを伝えることさえできなかった。何も言えずにお別れすることになってしまった」


 コーデリアが上目遣いで冥を見上げた。


「それをずっと後悔していた──」


「コーデリア……」


「だからもう遠慮なんてしない。自分の気持ちはちゃんと伝えるし、ライバルがいるなら蹴散らしてみせる。どんな手段を使ってでもあなたを手に入れる」


 涙で潤む瞳に、ふいに妖しい光が宿る。


 同時に、たおやかな両手が伸びてきて冥の首を絞めた。


「ん……ぐっ……!?」

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