表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/117

8 VS城塞巨人

 冥とコーデリアのことを考えると、自分でも情けなるくらいに心が乱れてしまう。


(だけど、今は目の前の戦いに集中しなきゃ)


 シエラは自らを奮い立たせ、操縦レバーを握り直した。


 モニター上にはこちらへ向かってくる敵の量産機の姿。


 本来なら、サラマンドラの敵ではない。

 にもかかわらず、一撃を受けてしまった。


「もう、油断しないからね」


 シエラが凛と告げる。

 表情が引き締まり、戦士のそれへと変わっていく。


 右からファングの銃弾が、左からはナイフが、それぞれ迫った。

 挟み撃ちだ。


「そんな程度でっ」


 サラマンドラの加速力は二機の攻撃をはるかに上回っていた。


 フットペダルを踏みこむと同時に、真紅の龍王機が閃光と化す。


 一瞬にして最高速に達する加速力が、強烈なGとなってシエラの全身に叩きつけられた。


「ぐ……うっ」


 内臓を揺さぶられるような不快感に耐え、シエラはさらに加速する。

 銃弾をかいくぐって右の敵機を槍で切り裂き、振り向きざまに左の敵機を貫く。


 まさに──秒殺。


 動力部を破壊された二機はその場に崩れ落ちた。


「シエラ、冥たちの援護に向かいましょう」


 ユナに言われ、シエラは愛機を要塞の側面へと向かわせる。


 彼女たちが正面から敵を引きつけていた間に、冥とコーデリアは急襲をかけているはずだ。

 おそらくそちらは魔族の幹部が操る専用機が出てくるだろう。


 だが、冥にコーデリアまで加わった今なら、そう問題なく倒せるはずだ。

 今ごろはとっくに勝負が終わっているかもしれない。


 そう思った彼女の視界に跳びこんできたのは──。


「えっ……!?」


 傷を負い、背中から白煙を上げるエルシオンの姿だった。


        ※ ※ ※


「おほほほほ、何体で来ようとこの『城塞巨人(ルークタイタン)』の敵ではありませんよお~!」


 魔族バームトトが哄笑した。


 その乗機であるルークタイタンは巨大な城に手足が生えたようなデザインだ。

 全長はエルシオンの二倍近くあるだろうか。

 城の形をした胴体部のいたるところから砲が突き出ていた。


「城塞巨人は最新鋭の第七世代機『重装巨人(パンツァータイタン)』のベースとなった優秀な機体。旧型のエルシオンなど相手になりませんよお~!」


「パンツァータイタン……あいつか」


 冥は以前に戦った魔族シフォンのことを思い出す。


 最新鋭である第七世代機を操る強敵だ。

 敵の関節部にダメージを与える戦法で、かろうじて勝ったがエルシオンとの性能差は圧倒的だった。


 正面からぶつかれば勝ち目がないほどに──。


「けれど、しょせん重装巨人よりも低スペックな機体でしょ」


 バスターイカロスに乗ったコーデリアが鼻を鳴らす。


「ましてこっちは二人がかり。勝ち目があるなんて思わないことね、魔族」


 挑発的な態度は、十年前とは別人のようだった。


「笑わせないでくださいよお~! たとえ敵が何体いようと、この一斉射撃の前では──ファイヤー!」


 バームトトの叫び声とともに、ルークタイタンが体中の砲をいっせいに撃ち放った。

 その弾数、実に数百。


「こっちの台詞よ! 『魔弾の射手』コーデリアの銃撃を見せてあげる!」


 バスターイカロスの両翼の付け根にある砲がせり上がった。

 轟音。

 そして閃光。


 無数の火線が前方の空間を薙ぎ払う。

 続けざまに起こる爆発。


「くっ……ううっ」


 荒れ狂う爆風と衝撃波に、軽量のエルシオンは吹き飛ばされそうになる。

 やがて、その爆風が消え去ると、


「ぬるいわね」


 コーデリアが不敵に言い放った。

 敵機が放った数百の砲弾は、イカロスの砲撃によって一つ残らず撃ち落とされていた。

 正確無比という言葉すら生ぬるい、すさまじいまでの精密射撃。


「相変わらず……すごい」


 冥は息を呑んだ。


 先の大戦でも、コーデリアは飛行タイプの龍王機『空王の翼(ウィングイカロス)』を駆り、得意の遠距離射撃で大活躍したものだ。


 そうしてついた異名が『魔弾の射手』。

 銃撃や砲撃において、彼女の右に出る者はいない。


 そして、その腕は健在どころか、ますます磨きがかかっているようだった。


「砲弾は私が全部撃ち落とす。冥くんは接近して、奴を倒して」


「分かった」


 冥はエルシオンを前進させた。


 ルークタイタンがふたたび一斉射撃を放つ。

 が、そのことごとくをコーデリアが撃ち落とした。


「……さすがだね、コーデリア」


 背中を任せられる頼もしさに、冥は口元を緩める。

 まるで先の大戦のときのようだ。


「そ、そんな馬鹿な……一発残らず撃墜されていく……!?」


 バームトトの声は驚きを通り越して、恐怖がにじみ出ていた。


「く、来るなぁぁぁぁっ……!」


 全身の砲門を開いて撃ち続けるルークタイタン。

 だがいくら砲弾を撃ち続けても、イカロスのたった二つの砲から放たれる火線がそのすべてを撃墜する。


 冥のエルシオンまで一発も届かせずに──。


「終わりだ、バームトト」


 黄金の剣を振りかぶるエルシオン。


 ──刹那、


「っ……!?」


 強烈な衝撃がエルシオンを背後から吹き飛ばした。


(背中を……撃たれた!?)


 驚いて振り返る。


「えっ……!?」


 そこには、砲をエルシオンに向けたイカロスの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人を寝取られ、勇者パーティから追放されたけど、EXスキル【固定ダメージ】に目覚めて無敵の存在に。さあ、復讐を始めよう。
Mノベルス様から書籍版1巻が10月30日発売されます! 画像クリックで公式ページに飛びます
et8aiqi0itmpfugg4fvggwzr5p9_wek_f5_m8_5dti

あらすじ

クロムは勇者パーティの一員として、仲間たちともに魔王軍と戦っている。
だが恋人のイリーナは勇者ユーノと通じており、クロムを勇者強化のための生け贄に捧げる。
魔力を奪われ、パーティから追放されるクロム。瀕死の状態で魔物に囲まれ、絶体絶命──。
そのとき、クロムの中で『闇』が目覚める。それは絶望の中で手にした無敵のスキルだった。
さあ、この力で復讐を始めよう──。


   ※   ※   ※

【朗報】駄女神のうっかりミスで全ステータスMAXになったので、これからの人生が究極イージーモードな件【勝ち組】
(新作です。こちらもよろしくお願いいたします)


あらすじ

冒険者ギルドの職員として平凡な生活を送っている青年、クレイヴ。
ある日、女神フィーラと出会った彼は、以前におこなった善行のご褒美として、ステータスをちょっぴり上げてもらう。
──はずだったのだが、駄女神のうっかりミスで、クレイヴはあらゆるステータスが最高レベルに生まれ変わる。
おかげで、クレイヴの人生は究極勝ち組モードに突入する!
大金ゲットにハーレム構築、さらに最高レベルの魔法やスキルで快適スローライフを実現させていく──。



小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ