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5 勇者さま、修羅場なひととき

 四英雄。


 それは先代魔王ヴァルザーガとの戦いにおいて、勇者とともに戦った四人の少女たちだ。


 それぞれが専用の龍王機を駆り、数多の魔族を打ち倒した。

 だが、新たな魔王がクレスティアに侵攻した際、立ち向かった四英雄は敗北し、全員行方知れずになってしまった。


 ユナからそう聞いていたのだが──。


「無事だったんだね、コーデリア」


「ええ、魔王軍の追手からなんとか逃げのびて、ね」


 コーデリアがぱちんとウインクをする。


「この人が四英雄の一人……?」


 一方のシエラは目を瞬かせて冥たちを見ていた。


 コーデリアから唇を奪われた直後に駆けつけた彼女は、まだ事態についていけない様子だ。

 そして、事態についていけない少女がもう一人──。


「いくら四英雄だからといって、いきなり冥の唇を……う、奪うなんて」


 ユナが怒りの声を上げる。


「どういうつもりですか、コーデリア!」


「唇を……奪った? キスしたってこと……?」


 シエラが顔をこわばらせた。

 ぴしっと音が聞こえるくらいに、はっきりと。


「どういうことなのかな、勇者さま?」


 異様なほど無表情になったシエラが冥を見つめる。

 はっきり言って、怒った顔なんかよりよっぽど怖い。


「あたし、詳しく聞きたいなー」


「く、詳しくって言われても……」


 冥はたじたじとなった。


「冥は、誰とでも軽々しくキスをする人だったのですか……?」


 ユナも同じく無表情で、じとっと冥を見つめている。

 唇を自分の指で撫でて、物憂げなため息をついた。


「私とのことも……あなたは、軽い気持ちで」


「か、軽い気持ちなんかじゃないよ! 僕は──」


「ん? 姫さまとも何かあったの、勇者さま」


 すかさずツッコんでくるシエラ。


「い、いや、それは……」


 冥は焦って口ごもる。

 もはやドツボにはまった状態だ。


「あらあら、二人とも怒らないで。十年ぶりの再会が嬉しくて、私が暴走しちゃっただけだもの。冥くんは何も悪くないよ」


 コーデリアが艶然と微笑んだ。

 それから、うっとりと頬を染めて冥を見つめる。


「私のファーストキス、冥くんに捧げられて嬉しい」


「やっぱり、キスしたんだ……」


 シエラはため息をついた。


「……ふうん、あなたも冥くんのことを」


 コーデリアはそんなシエラを見て、納得したようにうなずいた。


「冥くんも隅に置けないのね。前の大戦のときも私たち全員から求愛されて、今回もまた新しい女の子を侍らせているなんて」


「前の……大戦?」


 シエラが怪訝そうな顔をする。


「どういう意味? 勇者さまと、先代の勇者さまに何か関係が?」


 周囲の空気が凍りついた。


 そう、冥が先代の勇者と同一人物だと知らないのは、この場ではシエラだけ。

 もし彼女が事実を知れば、冥のことを糾弾してくるかもしれない。


 以前の、ユナのように。


 そうでなくても、関係に亀裂が入ることだってありうる。

 いずれは話さなくてはいけないかもしれないが、今はまだそのときではなかった。


「あなたこそ何を言っているの? だって冥くんは前の大戦でも勇者として──」


「ち、ちょっといいかな、コーデリアっ」


 冥は大慌てでコーデリアを物陰まで引っ張っていった。

 チョコスティックでできた針葉樹の陰だ。


「もう、急にどうしたの? 冥くん」


 驚いたようなコーデリアに対し、冥は答える余裕がなかった。

 心臓がバクバクと高鳴っている。


 おそらくコーデリアは、先代の勇者と冥が同一人物だとシエラに話そうとしていたのだろう。

 悪気はないのだろうが、やはりそれは困る。


 今のうちに釘を刺しておいたほうがよさそうだった。


「ちょっと話しておきたいことがあるんだ。シエラには僕のことを、まだ黙って……」


 言いかけたところで、頭がフリーズする。


「何か?」


「な、な、何か? じゃないよ!? なんで脱いでるの!?」


 冥は声を上ずらせて叫んだ。


 そう、何を勘違いしたのか、コーデリアは身に着けていたゴシックドレスを脱いで下着姿になっていたのだ。


 意外に肉づきのよい体つきは、生唾を飲みこむほどグラマラスだ。


 白いブラジャーとショーツは布地の面積が驚くほど小さく、申し訳程度に大切な部分を隠すのみ。

 豊かな胸の盛り上がりも、くびれた腰や艶めかしいヒップラインも、至近距離で目にすると、頭がカーッと熱くなるほど刺激的だった。


「あら、てっきり逢瀬に誘ってくれたのかと」


「いやいやいや」


「でも、すぐ向こうにユナ殿下とシエラちゃん……だっけ? がいるのに。冥くんって十年前に比べて、随分大胆になったのね」


「いやいやいや」


「私はいつでも準備OKよ。あなたが望むなら、大切に守ってきた純潔を捧げ」


「ち、違うってば!」


 冥は顔を赤くしてコーデリアの言葉をさえぎった。

 昔は四人の中で一番の潔癖だったのに、いつの間にかやけにエロいキャラになってしまっている。


(まあ……十年経ったんだしね)

ラブコメシーン書いてると、ついつい分量が膨れがち……

そろそろ話を進めねば^^;

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あらすじ

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そのとき、クロムの中で『闇』が目覚める。それは絶望の中で手にした無敵のスキルだった。
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