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階層世界の龍王機(ドラグーンフレーム) ~先読み能力を持つ勇者、最弱の機体を最強へと押し上げる~  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第5章 星天世界、勇者の選択

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2 世界の危機

『繰り返します。先ほど北アメリカ大陸が消滅しました』


 あまりにも唐突なニュースに、冥はあ然として画面を見つめた。


『これは映画でも特殊映像でもありません。こちらをご覧ください』


 映像が切り替わり、外国らしき風景──おそらくアメリカ合衆国だろう──が映し出される。


 その上空に、空間から染み出すように黒いなにかが現れた。

 まるで闇そのものを凝縮したような、漆黒の球体。


 黒球は地面に落下して弾け散り、黒い霧となってすさまじい勢いで広がっていく。


 次の瞬間、すべてが消えていた。


 アメリカ大陸があった場所は広大な海に変わっている。


 あまりにも。あっけなく。

 大陸一つが消滅したのだ。


「な、なんだこれ……?」


 冥はますます呆然となって画面に釘付けになる。


 北アメリカ大陸が消滅?


 そんなことはありえない。それこそ、アナウンサーは否定していたが、特殊映像を見せられているとしか思えないの──。


「間違えてドラマに切り替えちゃったのかな」


 冥は苦笑して別のチャンネルに切り替えた。


『北アメリカ大陸消滅のニュースは、世界各国に衝撃を与えています。アメリカ合衆国の消滅で、世界の経済、社会、軍事などさまざまな面で計り知れない影響が出るとみられ、政府は現在、情報収集に全力を尽くすという声明を──』


 さらに別のチャンネルにしても、やはり同じニュースだ。


「て、手の込んだドッキリ……だよね、はは」


 さらに別のチャンネルに変える。

 やはり、そこでも同じニュースだ。


 全部のチャンネルを見てみたが、どこも『北アメリカ大陸が突然消滅』のニュースを報道していた。


「ドラマじゃない……!?」


 ドッキリの可能性も考えたが、さすがにすべての民放や国営放送局までが示し合わせて、そんなことをするとは思えない。


「どうなってるんだよ、これ……」


 冥はパニック状態だった。


「世界の危機という奴だね」


 突然、声が響いた。

 床から黒い霧のようなものが染み出してくる。


「えっ……?」


 二メートルほどの高さにまで伸びた黒い何かは、いったん弾けて収束する。

 フードとローブをまとった人のような姿を取った。


「しばらくだね、勇者くん」


「君は……!」


 冥は驚いて人影を見つめる。


「あのときの──」


 西エリアの紋章を取り返した際、不思議な空間に飲みこまれた。

 そこで出会ったのが、目の前の人影だ。


「なんで、ここに……? いや、そもそも誰なんだよ、君は」


「先代勇者でも魔王でも、好きなように呼べばいい」


 フードをゆっくりと下ろす。


 現れたのは、冥にそっくりの顔だった。

 ただし目元を覆うような黒いゴーグルをつけているのが、大きな違いだ。


「僕……?」


「ややこしいから魔王でいいや。魔王って呼んでよ。なんかカッコいいし」


「……ノリ、軽いね」


 呆れる冥。


 胸の中に、不思議な安堵感が訪れた。


(あれ、なんだ……この気持ち)


 自分でもそんな気持ちになるのが不思議だった。


(僕、喜んでる……?)


 魔王とはいえ、クレスティアに関係のある存在が現れたことが、なぜか嬉しい。


「余はあまねく闇を統べる者。死と恐怖を司る支配者。君臨せし魔界の王」


 ばさり、とローブをはためかせ、魔王が苦笑した。


「──なんて仰々しいのは趣味じゃないんだ。先代魔王のヴァルザーガとは違ってね」


「ま、まあいいけど……」


 どういったノリで接すればいいのか困る魔王だった。


「どうして、こっちの世界に魔王が……?」


「ん、魔王っていうのは、そもそも『星天世界(マテリアノヴァ)』からやって来た存在なんだよ。ここは、いってみれば僕の生まれ故郷だね」


「マテリア……ノヴァ?」


「あれ、知らないんだ? 勇者なのに?」


「悪かったね」


「あはは、ごめんごめん。拗ねないでよ」


 魔王が親しげに笑った。


「『心の力』が重きを占める階層世界クレスティアに対して、『物質』が重きを占めるこの世界を、マテリアノヴァって呼ぶんだ。他にも神々の住む『天上界』とか負の想念の吹き溜まりである『魔界』とか、世界はいくつもの様態が折り重なり、存在している──」


 完全に説明モードの魔王。


「いくつもの世界がある、ってこと?」


「そういうこと。少し話が脱線したね。じゃあ、世界の危機について説明するよ」


 魔王は引き続き説明モードに入った。


「かつての大戦で勇者に討たれた魔王──もちろん僕じゃなくてヴァルザーガのほうだよ──は、完全に消滅していなかった。君に討たれる瞬間に残した強烈な憎悪のエネルギーは魔界で力を蓄え続けた」


「強烈な、憎悪……」


 おうむ返しにつぶやく冥。


『たとえ肉体は滅びても、この意志は滅びぬ。いずれ必ず──もう一度、この世界に……』


 ヴァルザーガが討たれたときの、最期の言葉を思い出す。


「そして、ようやく力を取り戻したんだ。で、手始めに勇者の故郷であるこの世界を滅ぼすことにしたのさ。復讐のときが来た、って意気込んでね」


「えっ、じゃあ、アメリカ大陸が消えたっていうのは……」


「そ。ヴァルザーガの仕業」


 魔王が平然と告げた。


 さっき見たニュースを思い出す。


 ──突然、上空に出現した黒い何かが大陸を飲みこみ。

 ──あっという間に大陸そのものを消滅させてしまった。


「それがヴァルザーガの暗黒魔法だ」


 魔王の説明に、冥は言葉が継げなかった。


 こともなげに大陸一つを消滅させる力。


 ヴァルザーガとは、それほどまでに圧倒的な存在だったのか。

 以前の大戦では、互いに龍王機に乗って戦ったため、分からなかった。


「……っていうか、龍王機に乗らないほうが強いんじゃ?」


 素朴な疑問をぶつけてみる。


「色々と制約があるんだよ。力を振るうにも、ね」


 言葉を濁す魔王。


「クレスティアではできないことがこっちではできたり、こっちではできないことがクレスティアでできたり──ま、少なくとも大陸を消滅させるなんて真似は、向こうの世界では無理だね。ヴァルザーガにも。僕にも」


「……そうなのか」


「ま、それはともかく、この世界のヴァルザーガはとんでもない破壊の化身だってことさ。仮に世界中の軍隊が束になってかかっても、一瞬で吹っ飛ばされるだろうね。ヴァルザーガがその気になれば、今この瞬間にだって世界は滅ぶ」


「そ、そんな……」


「で、世界を救うことができるのは、君だけだって話さ。これが、僕が言いたかった本題」


 黒いゴーグル越しに魔王が冥を見つめた。


「今度はクレスティアじゃなく、このマテリアノヴァを救うんだ、勇者くん」

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そのとき、クロムの中で『闇』が目覚める。それは絶望の中で手にした無敵のスキルだった。
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