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階層世界の龍王機(ドラグーンフレーム) ~先読み能力を持つ勇者、最弱の機体を最強へと押し上げる~  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第4章 吹雪の激闘

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7 撃破

「私を倒す? これほどの力の差を見せつけられて?」


 アシュレイが嬉しそうに笑った。


 その笑い声から伝わってくるのは暴力の喜び。

 弱者をいたぶる愉悦だ。


「とことんドSだね……」


 冥が軽く苦笑する。


「ふん、私は人が苦しむ姿を見るのが好きなだけですよ」


「だから、それがドSだってば」


「性能で劣り、機体はオーバーヒート寸前。私の攻撃を見切ることもできず、ダメージは増える一方。あなたに勝つ要素など一つも見当たりませんねぇ。この絶望的な状況でどうやって私を倒すのか、教えてほしいものですねぇ」


 アシュレイはすっかり悦に入っている。


 ゲイルが後ろ足だけで立ち上がった。

 駆動音が響く

 両手足の関節が曲がり、胴体の装甲が展開され、頭部がスライドする。


 たちまち四足獣から人型へと再変形した。


 粉雪が舞う銀世界で、白い騎士の姿をしたエルシオンと、狼の獣人の姿をしたゲイルが対峙する。


(今度こそ、奴の動きを見切るんだ)


 モニターに映るゲイルの姿を見据えた。


 集中する。


 今まで以上に──視覚も聴覚も研ぎ澄ませる。


「さあ、これで終わりですっ」


 足の爪で雪の大地を削り蹴り、ゲイルが突進した。

 今度は人型のまま、エルシオンに肉薄する。


 冥は相手の動きに合わせて、左手の剣を構えて迎撃態勢を取る。


(──いや、違う)


 敵機の頭部に向かって突き出そうとした剣を、途中で止めた。


(そうか、可変のタイミングを見切るのは──)


 刹那、


 オォォォォォォンッ!


 狼の遠吠えに似た駆動音が響き渡る。

 ゲイルが空中で回転し、狼型に変形する。


「死になさい!」


 振り下ろした前足の先に、しかしエルシオンの姿はない。


「えっ、どこに──!?」


「もう覚えた」


 ゲイルの背後に回りこみ、冥が冷然と告げた。


 トリッキーな攻撃は、しょせん種が割れてしまえばそれまでだ。


 もちろん四足獣形態のスピードは脅威である。

 だが、相手の動きそのものは単調だ。


「一直線に突進して、爪で切り裂く。突き詰めれば、お前の攻撃パターンはそれだけだ」


 人型で、獣型で。

 めまぐるしく変形し、爪撃を繰り出すゲイルを、冥はやすやすと左手の剣で弾き、あるいは避ける。


「な、なぜです……当たらないっ……」


 アシュレイの声に、次第に焦りの色がにじみ出した。


「私の動きが、変形のタイミングまでが……見切られている……!?」


(……気づけば、なんてことはない話だったね)


 冥は、相手の変形の挙動をすでに見切っていた。


 敵機は変形する際に、必ず『狼の遠吠えに似た駆動音』を発する。

 だから、その音に集中すれば、変形するのか否か、そしてそのタイミングも簡単に読み取ることができる。


 単純極まりない話だ。


「おのれぇっ」


 いらだったように叫ぶ、アシュレイ。


 何度目かの突進爪撃を、冥は最小限の動きで避けた。


 人型で来ても、獣型で来ても、あるいは攻撃の途中で変形したとしても──。

 冥の『龍心眼(ドラグーンアイ)』にはすべてが見える。


 攻撃の方向さえ分かれば──そして人か獣か、どちらの姿で攻撃してくるかが分かれば。

 避けることも、迎撃することもたやすい。


「遅い──」


 冥はカウンターで剣を繰り出し、その胴を両断した。




 アシュレイを乗せた脱出艇が去っていくのを見届け、冥はエルシオンから降りた。


 ユナとシエラの元へ駆け寄る。


「なぜ作戦を無視して飛び出したのですか」


 案の定、ユナににらまれた。


「ごめん、つい……心配で」


 ばつの悪い顔をする冥。


「つい、じゃありません。機体を余計に消耗させたせいで、先ほどは大苦戦だったでしょう」


「面目ない……」


 自分に全面的な非があるため、ひたすら謝るしかない。


「……ですが」


 ユナは小さくため息をついた。


「正直、気遣っていただいたことは……その、嬉しかった……です」


「えっ」


「も、もう、二度言わせないでください」


 照れたように真っ赤になるユナ。

 クール美少女もかたなしだ。


「優しいのですね、あなたは」


「い、いや、そんな」


 今度は冥が照れる番だった。


「でも、もう心配しないでください。私だって戦えます。もう少し、私のことを信じて」


「ユナ……」


「私も……あなたのことを信じられるように務めます。その、勇者という存在に対しては色々と思うところがありますが……」


 ユナは上目遣いに冥を見つめた。

 深い青色の瞳は、不安げに揺れている。


 それでも『私は勇者なんて信じない』と言っていたころに比べれば、一歩前進だ。


「あなたは裏切ったりしませんよね、冥……? 前の勇者と違って」


「当たり前だよ」


 冥は力強くうなずいた。


 前の勇者が自分と同一人物なのが、複雑なところだが──。

 その辺りの誤解も、いずれ解いていけばいい。


 今はそんなことは関係なく、冥のことをユナに信じてもらえれば、それでよかった。

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