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階層世界の龍王機(ドラグーンフレーム) ~先読み能力を持つ勇者、最弱の機体を最強へと押し上げる~  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第4章 吹雪の激闘

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3 冥とユナ、触れあう想い

 祭りは思った以上に盛況で、どこも人でいっぱいだった。


 大通りの左右には露店が並び、菓子や軽食を売っていたり、射的などの遊戯店があったり、と現世とあまり変わらない風景が広がっている。


「みんな、楽しそうだね」


 冥がにこやかに祭の喧騒を見つめた。


「ええ、魔族の侵攻で苦しむ日々が、少しでも癒されればいいのですが」


 隣りを歩くユナがうなずいた。


「あ、姫さまだー」

「ユナさま~」

「姫さま、今日はゆっくり楽しんでいてください~」


 時折、周囲の人々がユナに気づいては恭しく頭を下げる。


 王女だから、指導者だから、というだけではない。

 その指導力や第一層のエリアを二つ奪還したという実績などもあって、実際に多くの民に慕われているようだ。


「先輩、次は射的に行きましょうっ」


「あ、いいねー。勝負しよ、勝負」


「先輩って本当に勝負大好きっ娘ですね。及ばずながら、このルイーズ・クリスティーナがお相手させていただきますっ」


「ふふふ、あたしワクワクして来たぞ」


 シエラとルイーズは露店を前にはしゃいでいる。

 戦いから解放されたひとときは、きっと彼女たちにとっても貴重なはずだ。


「きっと、みんなユナに感謝してるよ」


 楽しげな二人を見ながら、冥がユナに微笑んだ。


「お祭りの企画者ってユナでしょ」


「私はただ、皆の英気を養うために提案しただけです」


 ユナは表情一つ変えずに淡々と言った。


「ユナの優しさだと思うな」


「わ、私は優しくなんてありません。おかしなことを言わないで」


 ぷいっと顔を背けるユナ。


「そんなに冷徹ぶらなくてもいいじゃないか」


「私は連合の指導者ですから。常に毅然とあらねば」


「今は普通の女の子でいいじゃないか。ユナも楽しみなよ。気楽に。ね?」


「……ふう」


 ユナが小さく息をついた。


「そういうところは先代によく似ていますわ」


「……そう、かな」


「ただ、あなたの言うことにも一理はあります。私も英気を養う必要がありますししね。残り二エリアの奪還に向けて──」


 ユナが顔を上げた。


 相変わらずその表情はクールだ。

 だけど、わずかに──だが、確かに。

 彼女の雰囲気が和らいでいるように思えた。


「では、勇者さまのお言葉に甘えて。少しだけ、お祭りを楽しんでみますね」


 ユナがかすかな笑みを浮かべる。


 可憐な笑顔に、心が甘く疼く。

 呼吸が苦しくなるくらい、胸が詰まる。


「そういえば、勇者さまの世界にもこういうお祭りはあるのですか?」


 ユナがたずねた。


「うん、あるよ。こういうゲームとか、あるいはお菓子やちょっとした食べ物とか……うん、全体的な雰囲気はけっこう似てるかも」


 左右に並ぶ露店を見回して、冥。


「魔族がいない平和な世界だと文献にありました。きっと誰もが幸せに暮らせる理想郷なのでしょうね」


「うーん……魔族はいないけど、戦争している国はあるし。それに受験戦争や就職活動とか、ブラック企業とか犯罪とか」


「???」


「あ、ごめん。いきなりこんなこと言っても分からないよね」


「勇者さまの世界にも色々とある、ということですね」


「うん。とにかく、平和な理想郷って言うのとは違うかもしれない」


 冥は小さくため息をついた。


「でも、頑張ってる人はいるよ。そういうのを変えようと努力したり、人にやさしくしたり、思いやったり」


 夜空を見上げる。

 ドーン、ドーン、と音がして、花火が舞っていた。


「いい人がいて、嫌な人がいて。笑ったり、怒ったり。癒されたり、傷つけられたり──そういうのは、この世界も向こうの世界も変わらない気がする」


「もしかしたら今ごろは、勇者さまの世界のどこかでも同じように──」


 ユナも一緒に花火を見上げていた。


 そう、向こうの世界でも同じように。

 どこかの町ではお祭りがあって。

 冥たちと同じ年ごろの男女が楽しそうに笑って。

 あるいは、恋人同士が語らって──。


(あ、いやいや、僕とユナは別にそういう関係ってわけじゃないけど)


 冥は思わず顔を熱くした。


「あの」


「えっ、何? へ、変なこと考えてないよ、何もっ」


「?」


 慌てる冥に、ユナは不思議そうに首をかしげた。

 それから、はにかんだ表情で微笑む。


「今日はありがとうございます、冥」


「お礼を言うのはこっちのほうだよ。楽しい時間をありがとう、ユナ」


 言いかけたところで、ハッと気づいた。


「今、僕のこと……冥って」


「『勇者さま』という呼び名では先代を思い起こすので──」


 まるで言い訳でもするように、妙に早口で告げるユナ。

 落ち着かなさそうに桃色の髪に手をやる。


「あ、あなたさえよければ、これからは冥と呼ばせていただきたいのですが」


 ユナの頬が赤く染まっていた。


 祭の熱気のせいだけではなく、もしかしたらこれは──。


(照れてる、ユナ……?)


「ご、ごめんなさい。馴れ馴れしかったでしょうか」


「そんなことないよ」


 冥はにっこり笑った。


「名前で呼んでくれたほうが嬉しい」


「では……冥」


「ん?」


「あ、いえ、今のは呼んだだけです」


 ユナがますます顔を赤くした。




 ──そして五日後。

 エルシオンの整備が終わり、北エリアの紋章奪還作戦が始まった。

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