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階層世界の龍王機(ドラグーンフレーム) ~先読み能力を持つ勇者、最弱の機体を最強へと押し上げる~  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第3章 砂塵の罠

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7 ハンデマッチ

「その足じゃ、もう避けられねぇだろ。終わりだぜ、勇者さま!」


 二発の銃撃がエルシオンを襲う。


 相手の攻撃は予測済みだ。

 だが痛みで集中が途切れ、いつもほどの精度で先読みできない。


 冥の『龍心眼(ドラグーンアイ)』はその力を半減させていた。


「ちいっ」


 左のフットペダルを思いっきり踏みこんだ。


 強引な機動で内部フレームを軋ませながら、エルシオンが左足一本で跳ぶ。

 一瞬前までエルシオンがいた地点を、ガンナーの銃弾が貫く。


 盛大な爆発と砂煙が上がった。


(なんとか避けられた……)


 いつもに比べれば読みは甘いし、反応も遅い。

 それでも、銃撃のコースは龍心眼ですでに予測済みだった。


 エルシオンが右腕と右足を使えないことを踏んで、相手は右側から攻撃してくるだろう──と。


 だから、かろうじて左足だけのジャンプでも避けることができた。


(けど、次はどうなるか)


 冥は大きく息をついた。


 龍王機の乗り手として、ドルトンの実力はメリーベルやシフォンに数段劣る。

 冥が万全の状態なら、苦もなく倒せる相手だろう。


 だが今は右腕が使えず、先ほど右足も潰されてしまった。

 満足な攻撃も、防御も、回避すらもできない──。


「勇者さま……!」


 エルシオンの足元にユナが駆け寄った。


「危ないから下がってて、ユナ」


 慌てて呼びかける。


 ただでさえ、相手は遠距離武器主体で来るのだ。

 こんな場所にいたら、いつ巻き添えを受けてもおかしくない。


「いいえ」


 ユナがきっぱりと首を横に振った。

 桃色のロングヘアが揺れる。


「私も戦います」


 青い瞳に宿る決意の光。


「生身で、龍王機と戦うなんて──」


「勇者さま」


 ユナが小さくウインクする。


「……分かった」


 一瞬の逡巡の後、冥はうなずいた。

 危険な賭けだった。


(だけどユナなら──いや、僕とユナなら、やれる)


「けど、無茶だけはしないで」


 あらためてユナを気遣う冥。


「何をごちゃごちゃ言ってやがる!」


 ドルトンが怒声を上げた。


「ちょうどいい。お前も楽には殺さねえぞ、姫さま。この俺をコケにしてくれたんだからなぁ!」


 エルシオンとユナが、ガンナーと向かい合う。


「シエラとルイーズはそこから動かないでください。巻き添えを食わないように」


「でも、姫さま……」

「私たちがお守りを──」


「これは命令です」


 後方から心配そうに見つめるシエラとルイーズに、ユナはぴしゃりと言い放った。


「……では、いいですね。冥」


「うん、ちゃんとタイミングを合わせるよ」


 操縦席でうなずく冥。

 緊張で操縦桿を握る左手にじっとりと汗がにじんだ。


「何やら魂胆があるらしいが、片手片足が使えない旧型と人間一匹、この俺の敵じゃねーよ!」


 ガンナーが一歩、また一歩と近づいてきた。


 とはいえ、さすがに無防備ではない。

 二丁拳銃を油断なく構え、慎重に距離を詰めてくる。


(集中しろ……集中……集中)


 冥は痛みをこらえ、二つの銃口をジッと見据えた。


 敵機の挙動を、駆動音を、一つも漏らさず見て、聞いて──。

 その動きを予測する。


「まずお前から死ねぇっ」


 ガンナーの銃口が向けられたのはエルシオンではなく、ユナだった。


「ユナっ!」


 それをかばってエルシオンが前に出る。

 壊れた右足を引きずるようにして、砂の上を突進した。


 が、その動きはじれったくなるほど緩慢だ。


「──なんてなっ」


 即座に反転したガンナーが、突進してくるエルシオンに銃を向けた。


「人間ってやつは、どいつもこいつも仲間をかばおうとしやがるからな。女を狙えば、絶対お前が突っこんでくると思ったぜぇ」


 突進機動の最中で、しかも片足が動かないエルシオンに、正面からの銃撃を避ける手立てはない。

 冥はペダルを踏みこみ、かまわずさらに前進させる。


「あくまでも突っこんでくる気かよ。けど──今度こそ終わりだ、勇者ぁっ!」


 ごうんっ!

 轟音が響き──、


「なっ……!?」


 声を上げたのはドルトンだった。


 横合いから飛んできた炎が、ガンナーを襲ったのだ。


 ユナの火炎魔法だった。

 もちろん龍王機に人間の魔法など通用しない。


 だが、狙いはそこではない。


「ど、どこだ……! ど畜生、どこにいやがる、てめぇ……!」


 カメラアイが炎によって塞がれたガンナーは、その火が消えるまでの数秒間、まさしく目隠し状態だ。


 その数秒のうちに、エルシオンはさらに間合いを詰める。


 すべては──先ほどの打ち合わせ通りだった。

 ユナとのアイコンタクトによる、一瞬の作戦会議。


 完璧に心が通じ合った一瞬。


「終わりだ、ドルトン──」


 冥が静かに告げた。

 黄金の剣をガンナーの胸部に突きつける。


「て、てめぇ……!」


 ドルトンの動揺の気配が伝わってきた。

 薄い装甲の向こうには魔族が座る操縦席があるはずだ。


「おとなしく逃げるならそれでいい。まだ戦うっていうなら──」


 剣を軽く押しこむ。

 ゆっくりと剣先がめりこみ、装甲がわずかに窪む。


 あと少し力を入れれば、ドルトンのいる操縦席を貫けるというアピール。


「……ど畜生っ」


 魔族が悔しげに叫ぶと同時に、ガンナーの背部が脱出ポッドと化して射出された。

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そのとき、クロムの中で『闇』が目覚める。それは絶望の中で手にした無敵のスキルだった。
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あらすじ

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