渡り廊下の攻防戦
【北校舎・正面玄関】
北校舎一階の玄関に築き上げたバリケードの一角が、絶え間なく撃ち出される銃弾によって派手に飛び散った。
「このままじゃ長くもたないぞ! もっと資材持って来い!」
やかましく鳴り響く銃声の中で男子の誰かが叫んだ。
神崎は京介の指示通り二階と三階の出入り口を封鎖し、念のため教室の防衛にも三人向かわせた。その迅速な対応は神崎の手腕と言って差し支えないものであったが、一階の正面玄関だけは間に合わなかった。敵の主犯格と思われる一つ年下の女生徒、佐倉は相当に頭がキレるらしく、北校舎の出入り口が封鎖され始めたと気付いた瞬間、全ての部下たちを呼び集め玄関に集中攻撃を仕掛けてきたのだ。侵入こそ防いだものの、即席のバリケードを築くので精一杯だった。
こちらが八人なのに対し、襲撃者の人数はおよそ十名、人数ではこちらが不利だ。敵は弾薬に余裕があるのか雨のような銃撃を浴びせてくる。
そして神崎らにとってもう一つ厄介なのが――狙撃手の存在。
「やられっぱなしでたまるか!」
仲間の一人が立ち上がり、敵を一掃するべく手にしたSMGをむちゃくちゃに撃ち放った。派手な音をまき散らしながら銃口が火を噴き、砂埃を巻き上げながら女子を数人内臓と一緒に吹き飛ばす。
「や、やった!」
銃を撃った生徒が喜びの声を上げる。が、それも長くは続かなかった。
突如、一際高い銃声が轟き、彼の後頭部から赤い花が咲いた。眉間に銃弾をくらったのだ。撃たれた男子は悲鳴を上げる間もなくその場に崩れ落ちる。これで何人目だろうか。
「頭を出すな! 狙撃されるぞ!」
これが神崎らの攻めきれない最大の理由だった。敵の銃撃の合間を縫って攻撃を仕掛けようとすると、屋上にいるスナイパーから狙撃される。バリケードの影に隠れていれば狙撃されることもないが、それではこちらも攻撃ができない。隠れたまま闇雲に弾をばら撒いてみるが、そんなものが敵に当たるはずもない。屋上の様子を影から窺ってみるも、暗闇の中どこにいるやもしれぬ狙撃手を探すなどできるわけもなく、仮に見つけたところでこの装備ではどうにもならない。
神崎は心の中で小さく舌打ちをこぼした。
煮え切らない。このままではジリ貧だ。唯一の救いは敵が数に任せて攻め込んでこないことか。だがそれもいつまでもつか分からない。狙撃手がいる限り、神崎らに勝ちの目はないのだ。
(――京介、何やってるんだ? まだ狙撃手は見つからないのか?)
頼みの綱は一人屋上へと向かった京介だけだ。神崎は手にしたSMGを強く握りしめ、京介が狙撃手を倒してくれるまでの時間を稼ぐためにトリガーを引き続けた。