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トリガーハッピー!  作者: 赤色ぼっち
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京介、出陣

 【北校舎・被服室】


 北校舎の被服室で仮眠をとっていた西条京介は、突然響き渡った銃声で跳ね起きた。

 北校舎の二階に造られた被服室はほとんどリネン室のような扱いであり、簡易ベッドがいくつも置かれたその上に、野球部などが合宿で使用する質素な布団が積み上げられている。その一部を泊りがけで作業する生徒らが使用させてもらっているのだ。当然、学校側の許可はもらっている。


 先ほどの銃声を聞きつけたのは京介だけではなかった。ドアを挟んだ廊下の方では襲撃を警戒していた仲間たちがざわざわと騒ぎ出している。

 京介は銃声が聞こえた南校舎の方を窺うべく、月の光を取り込んでいる窓に飛びつき中庭を見下ろした。北校舎と向かい合うように建てられている南校舎の一階、大道具などの制作を進めている視聴覚室では今なお戦闘が行われているらしく、オーケストラよろしく派手な銃声が鳴り響いている。


 くそ、と京介は小さく舌打ちをこぼした。出遅れた。まさか自分が眠っているタイミングで襲撃を仕掛けてこようとは。狙ってやったわけではないだろうが、つくづく己の運のなさには呆れかえるばかりだ。

 ともかく状況が分からないことには動きようがない。どうしたものかと京介が首を傾げていると、突然被服室の扉が激しい音と共に開かれた。


「起きろ京介、敵襲だ!」

 部屋に飛び込んできた男は京介がすでに起きていることを確認すると、自身も同じく窓に手をつき視聴覚室の様子を窺った。

「神崎、状況はどうなってんだ?」

 神崎と呼ばれた男は神経質そうな顔にかけられた眼鏡を中指で持ち上げ、苦虫を噛み潰したような表情で報告を開始した。


「ついさっき視聴覚室から連絡があった。南校舎から侵入者だ。敵の数は約十名、南校舎の一階が襲撃を受けてる。今北校舎に残ってる生徒を集めて迎撃する準備をさせてるとこだ」

 神崎の報告を黙って聞いていると、突然二人の見やる部屋の中が白い煙で覆われた。どうやら誰かが消火器を使ったようである。しばらくすると銃声が止み、やがて開け放たれた窓から三つの人影が飛び出した。“男子”だ。誰も銃器の類を持っていない。逃げおおせるのに必死で、武器をとることすらできなかったか。


「味方だ、誰か救援に向かえ!」

 すぐさま神崎が廊下にいる仲間たちに向かって声を張り上げた。が、すぐにその必要はなくなった。

 京介は頭上で何かが破裂したような音を聞いた。

 直後、騒がしい夜の空気を切り裂いて一発の銃弾が飛来し、逃げようとしていた一人の生徒の背中に突き刺さった。その生徒はくぐもった呻き声を上げ内蔵をまき散らせながら絶命する。そして時間をおかず破裂音が続けざまに二回轟き、残りの二人もあっさりその場に崩れ落ちた。


「な、何だ!? 何が起きたんだ!?」

 慌てたような神崎の声を聞きながら、京介は屋上を見上げた。煌々と輝く月の光が逆光となりはっきりと視認することはできないが、そこには――


「窓から離れろ!」

 京介は素早くその結論を弾き出すと、神崎の服を掴み強引に窓から引き離した。突然の出来事に為す術もなく神崎が床に倒れその刹那、開かれた窓からついさっきまで二人が立っていた場所に銃撃が加えられた。


「……狙撃かッ!?」

 信じられないというように呆気にとられる神崎を無視し、京介は急ぎ窓を閉め傍らに置かれた背嚢の中から自らの装備を取り出していく。悠長に構えている時間はない。見る限り、南校舎は完全に制圧されている。次に奴らが狙うのは北校舎だ。

 京介はサブマシンガン、《イングラムM10》を右手に持ち予備の弾倉をいくつかポケットにねじ込むと、背嚢を担ぎ弾けるように駆け出した。


「待て京介! どこに行くんだ!?」

 今度は状況を把握できない神崎が尋ねた。

 京介は億劫そうに立ち止まり、振り返りながら大声で叫んだ。


「南校舎の屋上に狙撃手がいる! 奴がいる限り勝ち目はねえぞ! 俺が行って始末するから、お前はすぐに北校舎全ての出入り口を封鎖、何人か十組の防衛に当たらせて残った全員で敵を迎え撃て! 敵はすぐに攻めてくるぞ!」

 それだけ言い残すと京介は再び走りだし、廊下の隅を折れると最上階へと続く階段を一人駆け上がっていった。


「……ったく、相変わらず勝手な奴だ」

 残された神崎はぼそりと呟きをこぼすも、すぐに鞄の中から銃とマガジンを取り出し戦う準備を始める。京介は確かに勝手な奴ではあるが、それだけの男ではないこともよく知っている。

 神崎は弾の詰まった弾倉をベレッタに装填すると、京介の残した指示をこなすために被服室を飛び出した。






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