作戦開始
あなたのS・F
もいっちょ、サバイバル・ファイト。
今度はただのコメディーです。
――ある高校に仲がいいことで評判のクラスがあった。成績もよく、イジメや暴力なんて存在しない、そんなクラス。
そのクラスの中でも、特に仲のいい一組の男女がいた。その二人は男子からも女子からも慕われており、クラスの中心的存在だった。東で揉め事あればすぐに駆けつけ、西で悩む者いれば話を聞いてやる。そんな面倒見のいい二人は互いに惹かれあい、すぐに恋仲となった。お似合いの二人だとクラスの誰もが祝福した。
だがある日、事件は起きた。
ほんの些細なきっかけから二人の意見は食い違い、仲違いを起こしたのだ。
そんな二人に引っ張られるように仲がいいことで評判だったクラスは崩壊をはじめ、気が付けばどうしようもないところまで生徒たちの心は割れていた。
そして九月十五日。高校の歴史に残る、最悪の事件は起こってしまった。
【東洋高校・校門前】
「東洋高校北校舎三階、三年十組を制圧せよ。または、校内に存在する全ての人間を捕らえなさい。その際の生死は問わない」
氷堂真冬は自分を取り囲むように集まっている仲間たちに目をやり、にっこりと微笑んだ。九月十五日、午前四時の校門前で身を潜める真冬の瞳に、怯えや緊張した様子は一切ない。ただ静かに、倒すべき敵の本陣を見据えるのみだ。
真冬は傍らで控える女子生徒に声をかけた。
「佐倉」
「はい」
名を呼ばれた女子、佐倉はこの場に集まっている者たちの中で最も幼い。佐倉は肩に担いでいた背嚢を地面におろすと、全員に見えるようにその口を開いた。
そこには《USP》といったハンドガンから、アサルトライフルにスナイパーライフル、さらにはサバイバルナイフから煙幕の類までがぎっしりと詰まっている。まだ幼さの残る女子が持ち歩くには明らかに物騒な代物だ。
「拳銃は一人につき一丁。アサルトライフル四丁、狙撃銃が一丁です。予備の弾倉はそれぞれ多めに用意してあります。その他にも数は少ないですが、ナイフと煙幕も揃えておきました。何しろ急なことでしたので充分な装備とは言えませんけど。時間があればもう少しまともな武器も入手できたのですが……」
「上出来よ。どうせ使用するのは校舎の中、あまり大きな武器があっても取り回しが悪くなるだけよ。よくこれだけの武器を集めてくれたわ」
恐縮です、と、佐倉は嬉しそうにはにかんだ。
今回この作戦に踏み切ることができたのも、佐倉の協力があってこそだ。彼女がいなければいくら人数だけいたところで、真冬はこのような強行作戦に出ることはなかっただろう。
佐倉が全員に銃と弾倉を配っていく。真冬もそれを受け取りながら、全員に向かって声をかけた。
「アサルトライフルを持つ者を中心に突入、ハンドガンを持った者は周囲を警戒しながら援護に」
仲間へ向けて簡単に指示を飛ばすと、真冬は背嚢に詰められた銃の中からスナイパーライフルを取り出した。
「香月さん、この銃はあなたに任せるわ。屋上から引金を引くだけでいい。敵も間違いなく武装しているだろうから、気を付けて」
「おっけー。体を起こさなきゃいいんでしょ」
他の仲間たちとも簡単に言葉を交わし、真冬はハンドガンとサバイバルナイフを腰のホルスターに装着すると、夜の暗闇の中に沈み込んでいる校舎へと目をやった。
真冬たちの通う東洋高校は南校舎と北校舎に分かれており、二つの校舎に挟まれるようにして公園のような中庭がある。今真冬たちから見えるのは南側の校舎だけだが、一階の視聴覚室にはまだ明かりが点いている。
見る限り、正面玄関にいる見張りは一人だ。
真冬は意地悪く口の端を持ち上げた。ふつふつと、“狩る側”としての意識が真冬を高まらせた。
――見てなさい京介。私と敵対したことを後悔させてやる。
その呟きは言葉には出さず、
「準備はいいわね。まずは南校舎を制圧する。作戦、開始」
深い闇に紛れて真冬たちは行動を開始した。