8話目
ども。
お久しぶりですー。
+×+×+×+×+×+×+×
文目ちゃんが学校に来なくなってしまってから3週間。
やっと覚悟を決めた僕は、文目ちゃんの家へと(住所はクラス名簿で調べた)向かった。
『椚田』と言う表札がかかっている、古めかしい大きな家。
深呼吸をして、インターホンを鳴らした。
『……はい』
中年女性の声が、スピーカーを通して聞こえる。
「あの、えっと……文目ちゃんの、…友達の桜野柚樹といいます。文目ちゃんに会いに来たんですけれど……」
『…そう。わざわざありがとう』
プツリとインターホンは切れ、代わりに引き戸の扉が音を立てて開いた。
その先には、40代くらいだろうか、優しそうな雰囲気の女性が立っていた。
「えぇっと……柚樹さん、だったかしら」
「はい」
「文目は部屋にいるから行ってあげて。あの子の部屋は二階の一番手前の部屋だから」
「あぁ……ありがとうございます」
「ええ。ごめんなさいね、今はお菓子は切らしてしまっていて……。」
「大丈夫です。文目ちゃんと話したらすぐ帰りますので」
そう。と、おそらく文目ちゃんの保護者にあたる女性はうなずいて、それから微妙な表情で僕に告げた。
「今のあの子を見ても……どうか、嫌いにならないであげてね」
+×+×+×+×+×+×+×
木造の階段を上がり、文目ちゃんの部屋の前で立ち止まる。
『今のあの子を見ても……どうか、嫌いにならないであげてね』
その言葉の意味はよく分からなかったけれど、覚悟を決めた手前、後にはひけない。
深く深く深呼吸をして、僕は扉をノックした。
「文目ちゃん。えっと、桜野だけど。入ってもいいかな?」
返事はない。
仕方なく、扉を開け、中に入った。
文目ちゃんの部屋。
片付いている、というより、最低限の物しかない。本棚と、勉強机と、ベッド。ポスターはおろか、カレンダーすら貼っていない。
そして。
ベッドの上に、膝を抱えて座っている文目ちゃんに対し、僕は笑顔で言った。
「はじめまして、美作文目ちゃん」
+×+×+×+×+×+×+×
ありがとうございました。
いつの間にか8話目です。
これからもよろしくお願いします。