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「おはよう、有紗!」
「おはよう……」
恵梨……ごめんね……。
私……朝は……元気出ないから……
朝から学校なんて……本当、怠くて……!
テンション上がんないから……。
……本当、ごめん。
「有紗は、本当、朝、弱いよね?……大丈夫?」
「…………怠い……ごめん……」
私は机に突っ伏したまま答えた。
「分かってるけど……でも……ねぇ、有紗?……吉野くんが来たよ!」
えっ……!?
……うそっ……!?
吉野くんが来たの……!?
私は机に突っ伏していた顔を上げた……!
「あっ!……有紗、やっぱり、吉野くんが気になるんでしょ……!?」
私の反応を見て、からかうように恵梨が私を突っついてきた。
……うん……まぁ……
……吉野くんの反応が面白かったから、気になってるけど……
でも……恵梨が考えてるのとは違うから。
ちょっと……興味があるだけだし……!
お節介くんと話してみたいなと思って……。
「別に。ちょっと興味があるだけ。私、行ってくるね!」
「えっっ……!?有紗!?」
恵梨が私の行動力にびっくりしてる!
……そんなに変かな?
だって……!
どうして?……って思うから……
気になるなら、確かめてみないと……。
「吉野くん、おはよう。昨日はありがとね?」
明るく、聞いてみた。
「おはよう、佐々木さん。大丈夫そうで良かった!」
吉野くんは……また、笑顔で返してきた。
……うぅん……。
やっぱり、意味不明な感じ……。
吉野くんは恵梨の言う通り、みんなに優しい感じなのかも?
それに……この笑顔が……
みんなに人気があるのかもね……。
吉野くんの態度は……昨日と同じ感じだし……
……どうしてかな??
やっぱり、お節介くんなのかも?
……うぅぅん……。
……無邪気というか……
あまりに素直な吉野くんの反応に、戸惑ってしまう。
だって……ありえないし……!
大丈夫?なんて……そんなの、私に聞く人なんていないよ。
また、夜遊びしてるの?とかなら陰で言われてるけど……。
「あれぐらい平気。でも、心配してくれてありがとね」
「女の子なんだから遅くに出歩くのは危ないよ。気を付けないとね」
えっ……!!
……また、出た……!
やっぱり……その笑顔は反則だよ。
眩しすぎるし……!
……それに……
そんな笑顔で、そんな事言われたら……
思わず素直に頷いてしまいそうになる……。
……天然なのかな……?
吉野くんと話してると調子が狂ってくる……。
「……吉野くんって、毎日、塾に行ってるの?」
吉野くんの反応に……焦って話を反らしてしまった……!
「毎日は行ってないよ?」
吉野くんの優しい笑顔が眩しくて、目をそらしたくなる。
……やばいよ……!
腐ってる私に……
……その笑顔は眩しすぎるから……。
こっちまでのほほんとしてしまいそうになる。
「そうなんだ?塾は、幼なじみの子も一緒に行ってるの?」
その……優しい笑顔を変えてみたくなって……
ちょっと意地悪をしてみた。
「……幼なじみって?」
やっぱり……!
幼なじみの子は特別なんだ?
穏やかな吉野くんの顔が少し曇ったし……。
……そっか……。
幼なじみが好きっていう、恵梨の情報は当たってるのかも……。
「仲のいい幼なじみの女の子がいるって聞いたから、一緒なのかなと思って……」
「あーー。愛奈の事かな?愛奈は、一緒じゃないよ」
……幼なじみの子は……愛奈って言うのか……
なんだ……!
やっぱり、愛奈は特別なのかも。
愛奈の話が出た途端にガード張ったし。
ふぅん……。
「私の家は、あのコンビニの近くだから、塾の時にまた会うかもしれないよ?」
焦っているのを吉野くんに悟られたくたくて……気にしてない風を装った。
「駄目だよ、夜、遅いし」
吉野くんは私の気持ちなんて、全然、気づかずに優しく言ってくれてる。
……その、真面目過ぎる優しさは……
私には、居心地が悪くてこそばゆい。
別に……あれぐらいなら平気だし……。
でも……
「ありがと。気を付けるね……」
やっぱり……吉野くんの雰囲気に……
素直に答えてしまった。
吉野くんって……
私を自然に素直にさせるなんて……
やっぱり……変な奴……。
「吉野くんと何を話したの!?」
席に戻ると、すぐに恵梨が聞いてきた。
「恵梨……愛奈って何組の子?」
吉野くんが大事に思ってる愛奈って……
どんな子なんだろう……?
吉野くんが言ってた愛奈のことが気になって、恵梨に聞いてみた。
「愛奈って、幼なじみの?有紗……吉野くんに愛奈ちゃんの事を聞いてみたの?」
……恵梨が驚いてる?
……あれっ?
恵梨も吉野くんが気になってるの?
「吉野くんは、愛奈ちゃんの事、どうって言ってた……?」
恵梨の勢いに……
やっぱり!?
……そうなんだ……!
「恵梨……本当は吉野くんが気になるんでしょ?」
私が聞くと、恵梨が慌ててる……。
やっぱり……恵梨ってば……そうなんだ……!
……へぇ……知らなかった……。
「もって……!有紗も……!?」
「私はどうかな……?恵梨は、どうなの?」
私より、恵梨……なんか怪しくない……?
「私は違うよ。吉野くんは、みんなのアイドルだから、気になるだけ!」
「本当にそれだけ?」
なんか怪しいけどな……
恵梨が思いっきり否定してるから、それ以上は聞かないけど。
でも、吉野くんって、人気あるとは聞いてたけど……
へぇ……アイドルなんだ……!?
顔は、まぁ、整ってるし
それに、優しいからかな……?
……それに……あの笑顔も……!
なんか、分かる気がしてきたけど……。
「有紗は、噂に疎すぎだから……知らないんだよ!」
「噂……?だって、興味ないし……!」
「そう……だよね……」
恵梨が私に
気まずそうにしてる……。
もしかして、私の噂話の事かな?
だったら、そんなの
気にしなくていいのに……。
この外見だし……
いい事言われてないって知ってるし。
スカート丈やピアスだって
いけないって分かってる。
大人になってから、やればいいこともあるけど……
中学生のこの時にやりたいから!
だから……
私が好きでやってる事だし
恵梨も、噂なんて気にしなくていいのに……。