はじまり
彼は……
ずっと……あの子を目つめてる……。
なんの見返りも
求めずに……
ずっと……前から……
あの子だけを……守ってる……。
「あれ?佐々木さん?こんな時間に何してるの?」
コンビニのベンチに座ってたら、同じクラスの男子に話しかけられた。
えっ……私に話しかけてるの?
誰……?
私に話しかけてくるなんて……
どうして?
しかも……
こんな時間って?
……何、それ……!?
まだ夜の7時だし……。
普通でしょ……?
えっと……
吉野くん……だよね……?
吉野くんって……
名前ぐらいは知ってるけど……
えっ……なんか、思ってたより……
嫌な感じ……
そんな感じの人だったんだ?
なんかがっかり……。
それに、普通に私に話しかけてくるなんて勇気あるね?
だって……
私って……自分で言うのもあれだけど……
クラスで浮いてるし……。
しかも……何故かみんなから、恐れられてるし……。
だから、普通に話し掛けられるなんて有り得ないのに。
それに……みんな私のこと、遠巻きに見てるだけだし……。
なのに、そんな私に話し掛けて来るなんて?
なんか……変な奴……。
「そっちこそ、何してるの?」
吉野くんの尋問するような言い方にむかついたから、嫌味な感じで言ってみた。
けど……吉野くんは……笑顔で私を見てる。
えっ……!?
私の嫌味に気づいてないのかな……?
……にぶい人なの……?
なんか……つかめない感じ……??
「塾に行く所だよ。佐々木さん、早く帰らないと家の人が心配するよ?」
……吉野くんが普通に言うから……
何なの、この人!?
えっ……家の人が心配するって……本気で言ってるの?
吉野くんって……?
真面目くんなんだ??
中二のくせに……
なんか、説教くさいし……。
せっかく、いい顔立ちしてるのに……
勿体ないな……。
「吉野くんは今から塾なの?学校終わってからも、勉強なんてよくやるよね?」
「……そんな事ないよ」
吉野くんはそう言って、私に笑いかけてきた。
……その無邪気な笑顔は……
何なの!?
何のつもりなのかな……?
さっきの吉野くんの言い方が説教みたいだったから……また、嫌味で返してみたのに……。
相変わらず……笑顔で答えてきて
やっぱり……嫌みが通じてないの?
なんか……
……変な奴……。
しかも……やっぱり笑顔でこっちを見てるし。
うぅん……意味不明……。
でも……
じゃあ……
さっきのは、嫌味じゃ無かったのかな?
普通に心配してくれてるの?
そんなの、あり得ないけど……
……吉野くんの笑顔を見てると……
胸が熱くなってきた。
……変な奴……!
調子狂うし……。
ぴろっっ!!
私の携帯の音がした。
『何処にいるの?いつ帰ってくるの?』
携帯を見ると……
お母さんからのラインだった……。
うざっ……!
あぁぁ……あ……
もう、帰らないと……。
「吉野くん、私、帰るね。じゃあ、また、明日!」
吉野くんのことが、つかめなくて……明るく言ってみたけど……
「そう、良かった……!遅いから、早く帰った方がいいよ。気をつけて……」
また、吉野くんは無邪気に笑ってる。
それに……優しく、諭すように言われてしまった。
えっ……!?
……どきっとする……!!
何だろう……!
吉野くんとは……
今まで話したこともないのに……
なのに…………?
そんな風に言われるなんて……
意味分かんないよ?
私が意識し過ぎてるのかな?
……なんか変な感じがする……。